Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

月、虫、睡魔

2010/08/27 14:40:16
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――――――――ジィジィ コロコロ チンチロリン     虫が鳴く。

      



 夜中、私は目が覚めた。


 今は夏だ。昼間こそ暑かったが、夜はそれ程でもない。 
  

 今夜は特に寝苦しくもなく、布団に入ってからすぐ夢の世界に入ることができた筈だ。いや、夢は見ていないかもしれない。

 目が覚めてすぐもう一度眠ろうと試みるが、一向に眠れそうに無い。
そこで、夜風に当たろうと自分の部屋の障子を開き、縁側に座っていることにした。





―――――ジィジィ コロコロ チンチロリン ギィギィ ギィギィ チンチロリン 



 外に出たことで虫の声がさっきより大きく聞こえた。
外の世界では虫の声に耳を傾ける事は無くなったのだろうか。

 空を見上げると、丸い月が見えた。今日は満月で、幽々子様とお月見をしたところだ。
白玉楼では満月の日はお月見をする事になっている。

 そういえば、満月は、見るところによって兎に見えたり、蟹や人の横顔に見えたりするそうだ。
どうでもいいか。


  
 夜風に当たりながら月を見ていると、いきなり何者かに後ろから抱きつかれた。
ふわっと桜のような香りがして、聞きなれた優しい、どこか気の抜けた声が聞こえた。


「よ~う~む~~」
「幽々子様でしたか。驚かさないでくださいよぉ」


 後ろから抱きついてきた者の正体、それは私の主人である、西行寺 幽々子様だった。


「幽々子様、なぜ起きておられるのです?」
「幽霊が夜中起きていたら何かおかしいかしら?」
「いえ、そんなことは」


 とは言ったものの、よく食べ、よく寝る、とても健康な幽霊である幽々子様が起きているのはやはりおかしい。
少し質問を変えよう。


「何か、あったのですか?」
 
 と、聞いてみると、幽々子様は私の隣に座り、ふんわりと優しい顔で丸い月を見つめながら、


「夢を見たの。人が倒れていて、私が私じゃないみたいで、ぼ~っと桜の木の前に立っていて。なんだか悲しい夢だったわ」

「桜の木、というと、あの西行妖ですか」 

「そう、かもしれないわね。でも、変な夢を見て眠れないなんて恥ずかしいから誰にも言わないでね」

 そう言って幽々子様はこちらを向いてにっこり微笑んでくれた。
そして、

「で、妖夢。あなたはどうして起きてるのかしら」 




 絶対聞かれると思っていたが、この質問は困る。
ただ目が覚めただけであって、特に何も無い。先に幽々子様に話してもらったので、言わないわけにはいかない。
何も無いなんて言ったら絶対、つまらないと言われるだろう。






「私はただ眠っていたらいきなり目が覚めてしまって。それで夜風に当たろうかと」

「な~んだ。つまらないわねぇ。もっと気を利かせなさいよぉ~この半人前ぇ~」


 言われると思った、思ったけど、あまりにも反応が予想と一致しすぎて、なんだか涙が出てきた。
あと、ほっぺたをつつくのはやめて頂きたい。








「ところで」
「はいィ!?」


 少し気の緩んだところでいきなり話を出されるのは驚く。

「さっき抱きついたときに気付いたんだけど、大きくなったわねぇ。妖夢」

「まぁ、半分人間ですから」

 私だって半分だが人間だ。成長だってする。
が、幽々子様が言っていたのは身長の事では無く・・・







「違うわよぉ、胸の事よ、む~ね」
「イィーヤッ!!」
ガッ

「シャイセッ!」
「安心してください。峰打ちです」
「でも峰打ちってたまに死んじゃうらしいわよ?ショックとか骨折とかで」
「幽々子様はもう亡くなっているではないですか」
「わ~ん。ひどいわ妖夢ぅ~」


 幽々子様はいきなりみょんな事を言い出すから困る。
思春期の私にそんな事を言ったのが悪い。ん?私って何歳だったっけ。



「あいたた。ねぇ妖夢。お腹すいちゃったわ」
「えぇ!?さっきお月見のお団子たくさん食べたじゃないですか。具体的に言うと86個も」
「よく覚えてるわねぇ」
「90個作って私は4個しか食べてませんから」


「ダメかしら?お夜食」
「ダメです」


「月見れば~腹が鳴るなり~白玉楼」
「ダメです」


「胃袋がッ!勝手にッ!」
「なんかカッコよくいってもダメです」



「ううぅ、妖夢のけちー」


 幽々子様が私の肩に顎を乗せて涙目で顔を見てくる。
これ以上幽々子様の目を見ているのはヤバイ、主に理性が。

 とりあえず話題をすこし変えることにしよう。


「ところで幽々子様、お師匠がいたときはお月見の時どうでしたか?」

 そう言ってみると、幽々子様が何か思い出したように肩から離れ、困ったように笑いながら、


「そうそう、妖忌ったらお月見の時、お団子じゃなくてしゅーくれーむって言うお菓子を作ったのよ~?もちろん全部頂いたけど」



 そう、お師匠はお月見の時にお団子以外の物を作るのだ。
私が昔食べたのは、びーふしちゅーとかいうものだった。
団子の方が良いと言ったら脳天にチョップされた。
今となってはいい思い出だ。うん。 



「だから妖夢がここに来て、初めてお月見団子を作ってくれた時、ほんとに嬉しかったわぁ~」
「えぇっ!?あっありがとうございます」


 予想外の言葉だった。まさかそんなに喜んでくれていたとは。
そういえばここに来て初めてのお月見で幽々子様が少し泣いていたのはそういうわけだったのか。



「妖夢もいつか妖忌みたいに何処かにいってしまうのかしらねぇ~?」

 幽々子様から離れる、そんなことは今まで一度も考えた事は無かった。たぶんこれからも考える事は無いだろう。


「いえ、私はいつまでも幽々子様の傍に」

「ありがとう。私も同じよ、妖夢」

「たとえこの身が砕けようと、幽々子様をお守りしまふ!すみまふぇん!かみまみた!」

「あらあら、頼もしいわねぇ。噛んじゃったけれど」




――――ジィジィ コロコロ チンチロリン 


 

 少しの間、沈黙の時間が流れた。
話す話題が無くなった。というわけでは無い。 
ただ2人だけ近くにいるという実感がある。


 人は安心すると眠くなるというが、本当だったようだ。
いまになってやっと眠くなってきた。


――――ジィジィ コロコロ チンチロリン 


 幽々子様は相変わらず優しい顔で月を見上げている。眠くは無いのだろうか。  
とりあえず聞いてみなければ。


「ゆゆこひゃま、ねむくないのれすか?」 
「そう言ってるあなたの方が眠そうだけれど?」

 幽々子様の言うとおり、確かに眠い。意識が夢の中に半分以上入っている。
うまく舌が回らない。 

 瞼がとても重く感じる。
まばたきをするだけで夢の世界のお迎えがやって来そうだ。



 
――――ジィジィ コロコロ チンチロリン 





「妖夢」

 しばらく睡魔と格闘を続けていると、いきなり幽々子様から声が掛かった。
私が幽々子様の方を見ると、手招きして、

「眠いでしょう?ひざまくらしてあげる」
と、微笑んだ。 



 いつもなら嫌だと拒むだろうが、今はこの睡魔に打ち勝つ自信も無く、何より主人の善意だ。 
少しくらい甘えてもいいだろう。

 とりあえず、失礼しますと声を掛けて、幽々子様に膝枕してもらうことにした。
こんな姿をお師匠が見たら怒るだろうな、と一瞬考えたが、そんな考えはすぐ頭の外に飛んでいってしまった。



「おやすみなさい、妖夢」
「・・・・おやすみなさい」









――――ジィジィ コロコロ チンチロリン

 
 目を瞑ると、虫の鳴き声がよく聞こえる。


――――ジィジィ コロコロ ジージージー
 


 幽々子様が頭を撫でてくれている。



――――ジィジィ コロコロ チチチチチ

 

 2人だけの時間が過ぎていく。



――――ジィジィ ギコギコ チンチロリン リーンリーン チンチロリン










 意識が夢の世界に入っていくなか、虫の声に混ざって、小さな声が聞こえた気がした。                                                                                      

 「これからもずっとよろしくね、妖夢」
                          


――――ジィジィ コロコロ チンチロリン     虫が鳴く。
 え~。はじめまして。ながれだま。といいます。
初めての投稿なので、うまく書けていない所があるかもしれません。
 
 これからもっと勉強して、表現などをうまくできるようにしたいです。

 この作品は、先日、満月を見る→うわ、やべぇ月すげぇ!→テンション上がってきた。
という流れで書いてしまいました。

 
 夜に聞く虫の鳴き声っていいですよね。
ながれだま。
コメント



1.けやっきー削除
昨日の月、私も見ました。
まんまるで、かつ少し赤みがかかってて、それはもう。
「うわ、やべぇ月すげぇ!」って感じでした。

それはともかく、妖夢可愛いなぁ。
2.奇声を発する程度の能力削除
ジィジィ ギコギコ チンチロリン♪
とても良かったです!
3.拡散ポンプ削除
師匠のしゅーくれーむに笑ってしまった。
妖忌、おめぇ洒落たジジイだな……。
4.エクシア削除
妖忌じいさん、洋食のほうがお好きですかww
5.ながれだま。削除
>>1
  そうそう!すごかったですよね!
>>2
  ジィジィ ギコギコ チンチロリン♪
ありがとうございます。

>>3
 妖忌「じゃろ?わし、洒落てるじゃろ?」

>>4
 妖忌「今度一緒にあつぷるぱいでも食べながらお茶でもいかがかな?」
6.非現実世界に棲む者削除
ゆゆみょん最高!