Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

空の花 ~魔法使いの場合~

2010/08/17 09:58:51
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「こ、香霖。祭りに行かないか?」

夏の暑さがまだまだ続く葉月の中頃、何時もの様に朝から魔理沙がやって来てぐでーっとしていた。ただ何時もと違ったのは、別段何をする訳でも無く無言で俯き、時折思い出したように顔を上げては何かを言いたそうに口を開いて、顔を赤く染め口を閉じる事の繰り返しだった。
そして日が最も高くなる頃になり、ようやく魔理沙が発した言葉が冒頭の台詞だ。

「祭り?」

「おう、今日やるあれだぜ」

「知ってるよ」

先日里に出向いた時には、魔理沙の実家も準備で大忙しだった。

「騒がしいのは苦手だよ」

「じゃあ聞くけどな? 騒がない祭りなんか祭りじゃないだろ?」

「……まぁ、それはそうだが」

「それに、たまには何時もと違う事をしてみるのもいいと思うんだぜ?」

「フム……」

「……駄目、か?」

考える。
確かに魔理沙の言う事も一理ある。騒がない祭りは祭りではないし、たまになら騒がしいのも嫌いじゃない。
それに、霊夢と一緒に行けと言っても恐らく魔理沙は聞かないだろう。
昔から何故か祭りには、親父さんでも奥さんでもなく僕と行くと言って聞かなかったのだ。それを毎回聞いていた辺り、僕はやはり魔理沙に甘いようだ。
そして、今回も。

「……分かったよ。嫌だと言っても聞かないだろう……」

「ほ、ホントか!?」

「嘘を吐いて人を落ち込ませる程僕は落ちぶれてはいないよ」

嘘で人を踊らせるのは、竹林の兎だけで十分だ。

「じ、じゃあ香霖。私は準備してくるぜ」

「……準備?」

「見てのお楽しみだぜ! じゃあまた後で来るからな! やっぱり行かないとか言ったら店ごと殺すからな!」

物騒な言葉を言い残し、魔理沙は飛び去っていった。

「準備……か」

何の準備か気になったが、魔理沙は見てのお楽しみと言っていた。
このまま考えていれば、いずれ結論に辿り着くだろう。
だが、それでは意味がない。見てのお楽しみなのだから。
そう思い、僕は考えるのを止めた。





***





日も沈みかけた頃、僕は店で魔理沙を待っていた。

「遅いな……」

そう呟いた時、店の扉が勢い良く開かれ、来客を知らせる音が響き渡った。

「香霖、待たせたな!」

「本当に待ったよ。全く……」

「やー悪い悪い。コレ着るのに手間取った!」

「ん……?」

言われ、魔理沙を見る。

「浴衣かい?」

「祭りといったらこれだぜ!」

そう、浴衣。黒に近い青に赤い帯の、普段の対照的な衣装に近い色合いだ。

「どうだ?」

「あぁ、似合ってるよ」

「おぉ、香霖がお世辞を言うとはな。明日はレーヴァーテインが降るぜ」

「君の中で僕はどんな奴なんだ? それにお世辞じゃない。本当に似合っているよ」

「本当か?」

「あぁ」

「じ、じゃあ……」

「ん?」

「かっ……可愛いか?」

「あぁ、可愛いよ」

「!……へへっ、さんきゅー」

「あぁ。……さて、じゃあそろそろ行こうか」

「おう! さーて、食べまくるぜ!」

「財布は僕だからって全く……」

「早く行くぜ香霖! 祭りが終わる!」

「そんなすぐには終わらないよ……」

何故か顔を真っ赤にした魔理沙に手を引かれ、僕は里に向かって歩き出した。





***





「香霖、あれあれ! あれ食べようぜ!」

「ん? 林檎飴かい?」

「おう! 林檎飴林檎飴!」

「昔から変わってないね……」

「美味い物が好きな事なんて変わってたまるか!」

「はいはい……」

◆◆◆

「香霖、あれ!」

「綿菓子かい?」

「おう、あの甘いのは癖になるぜ。私はこれが楽しみで今日ここにいると言ってもいいぜ」

「そうか」

「おう! だから……」

「駄目だよ」

「えー!?」

「綿菓子はその重量に反してかなりの大きさだ。荷物になるし、食べ歩くには少々不便だよ。買うなら最後にしなさい」

「ちぇー」

◆◆◆

「香霖、お面が売ってるぜ!」

「買ってどうするんだい?もうあんなので遊ぶ歳でもないだろうに……」

「記念だぜ」

「やれやれ……」

「この早苗のお面一つくれ!」

「これは……凄いな」

◆◆◆

「あ、店主さん」

「ん……妖夢か」

「一人か?寂しい奴だな」

「ち、違います!幽々子様にお財布盗られて逃げられたんです!」

「「うわぁ……」」

「な、何ですかその哀れむ様な目線は!」

「いや、財布の中が広くなる様子しか想像できないからね……」

「私も香霖に同じくだぜ」

「……みょん……」

「妖夢~」

「あ、幽々子様~何処行ってたんですかー!」

「ほら、妖夢の分よ~」

「わ、かすていらじゃないですか!」

「カステラか……香霖、行くぜ!」

「はいはい……全く、甘い物に目が無いんだから……」

◆◆◆

「お、霖の字じゃないか。奇遇だね」

「小町……仕事はいいのかい?」

「年に一度の祭りだよ?来なきゃ損だよ。それより……」

「……何なのぜ?」

「霖の字も隅に置けないねぇ!魔法使いと付き合ってたなんてね? 憎いね、コノコノッ!」

「なっ、つ、つつつつつつつつつつつつつつつつつつつつつつつつつ付き合うって……ま、マスパるぜ!?」

「そうだよ小町。付き合ってなんかいない」

「そうだぜ!まだ付き合ってないぜ!」

「おやそうだったかい。それじゃ、アタイはもう行くよ」

「さっさと行っちまえ!馬鹿!」

「ふふーん……お? 射的……『等身大博麗霊夢抱き枕』? 天狗に高値で売れそうだね!ちょっと……」

「審判『ラストジャッジメント』」

「イ゙ェアアアア!!!」

「「あ」」





***





「……さて、ここらでいいだろう。人も少ないし」

「だな」

空に月が浮かび燦然と輝く頃、僕と魔理沙は里から歩いてすぐの所にある丘に来ていた。

「楽しかったかい?」

「おう! いっぱい食べれたしな!」

言って、魔理沙は手に持った綿菓子を頬張った。

「あっまーい!! やっぱり祭りにはこの甘さだぜ!」

「余り食べ過ぎると体に毒だよ?」

「これが毒なら私はとっくに死んでるぜ」

「やれやれ……」

そこで会話は途切れる。里の方から人達の喧騒が聞こえてくる。

「………………」

「………………」

「なぁ香霖」

「ん?」

「香霖は楽しかったか?」

「あぁ。偶には騒がしいのも悪くはないね」

「そう思うならちょっとは宴会出ろよなー」

「生憎だね。レミリアじゃないが、行ったら物珍しさに鬼や天狗に飲み比べを挑まれるに決まっている」

「つまんねーなー。私なら喜んでその勝負は受けるってのにさー」

「酒は百薬の長だが、余り飲みすぎても良くないんだよ?」

「酒に呑まれる前に呑んでやるぜ!」

「やれやれ……」

再び、静寂。

「………………」

「………………」

「………………」

「………………」

打ち破るのは、矢張り魔理沙。

「なっ……なぁ香霖?」

「何だい?」

「香霖は……愛してた奴とかいないのか?」

「……昔僕が愛した人かい?」

「そうだぜ」

「フム……」

言われ、記憶の海に潜る。
軽く百年近く生きてきた。そんな事が無かった訳ではない。
だが……

「……さて、忘れてしまったな」

半妖である以上、人には先立たれ妖怪には置いていかれる。どちらにしても孤独なのだ。
まだ子供である魔理沙がそれを聞いて、どうなってしまうかは想像に難くない。

「えー!? 何だよそれ!」

「憶えていても面白いものではないよ」

「むー……なら」

「なら?」

「なら……今はどうなんだ?」

「今?」

「おう。今愛している奴がいるのかって事だ」

「いると思うのかい?」

「……いないのか?」

「愛してる人はね」

「愛してる人『は』……? じ、じゃあ、すっ、好きな奴ならいるんだな!」

「好きな人かい?」

「そうだぜ! さぁ香霖教えろ! 何処のどいつだ!」

「フム……」

……言葉のあやだったんだがな。
まぁいいかと思い、考える。
霊夢は世話の焼ける妹分だし、咲夜は料金をちゃんと払う良客。どちらも好意はあるが、好きという程ではない。
幽香は僕の事なんて子供の様に思っているのだろう。小町も同様だ。
なら……

「僕の好きな人は……」

「すっ、好きな、人は……?」

「好きな人は……」

























































































其の時、

僕の言葉を遮るように、今年一発目の花火が上がった。

「おぉ、始まったか」

「……ん? おー!綺麗だぜ!」

発射地点から離れている為か、魔理沙は後方で上がった花火に気付くのが遅れた様だ。

「香霖香霖! 今の見たか!?」

「あぁ見たよ」

「すげー! 花火すげーぜ!」

先程のしおらしさは何だったのだろうか。質問の答えを聞くのも忘れ、魔理沙は花火に熱中している。

「……フッ」

ここまで無邪気にはしゃがれると、何だか何もかもどうでもよくなってくるな。
そんな事を思い、僕ははしゃぐ魔理沙の横で静かに花火を見ていた。





***





「……さて、花火も終わったし、そろそろ帰ろうか?」

「おう、そうだな!……あ!」

「ん、どうした?」

「さっきの答えをまだ聞いていないぜ!」

「あぁ。好きな人がいるのかだったね?」

「おう! 教えてもらうぜ香霖」

「フム。僕の好きな人は……」

「好きな人は!?」

「好きな人は……







































































秘密だよ」

「………………」

「………………」

「………………ゑ?」

「………………」

「えぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええ!!!???」

「どうしたんだい?」

「なんでなんだぜ!?」

「だって、恥ずかしいじゃないか」

「でも!こんな生殺しがあって良い筈ないぜ!」

「魔理沙に大人の恋愛はまだ早いよ」

「ぬあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」

「どうした?」

「負けると分かってる戦より勝てるかもしれない戦のほうが怖いんだぜー!!!」

「まぁ油断大敵という言葉もあるしね。しかしそれは何かの隠喩かい?」

「うっさい馬鹿! 帰る!!」

「あ、おい」

「香霖の馬鹿!」

「……?」
ネタが無いのに無理矢理書いた結果がコレだよ!
どうも、唯です。
続編希望との声がありましたので、霊夢ときたら次は魔理沙だろう。みたいな感じで書き上げました。
続編を希望してくれた方ー、こんなのでよかったですか?
深夜に書いたから絶対gdgdですよね……多目に見ては……くれないか^^;
糖分は私換算で10~20%でしょうか。
あと甘いって何ですか。本気で誰か教えてください。
今回も誤字脱字その他ありましたらご報告下さい。
最後に、ここまで読んで下さり、有難う御座いました。

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コメント



1.投げ槍削除
もうね、良くやった、この言葉しか出てきませんよ
魔理沙が可愛すぎる、どうしてくれる
2.下上右左削除
やばい、これはやばい、それはもう異常な程やばい
魔理沙かぁいぃよぉうぅぅ・・・
3.奇声を発する程度の能力削除
小町wwww
魔理沙可愛いよ魔理沙
4.高純 透削除
続きあざーっす!!作者様マジGJ!!

>そうだぜ!まだ付き合ってないぜ!
”まだ”なんて、魔理沙はかわいいなぁ。

次回は早苗さん辺りだと予想。大穴でレミリアかな。
5.けやっきー削除
>だって、恥ずかしいじゃないか
全くそんな素振りも見せずに言ってそうw

いやぁ、にやにやさせてもらいました!
6.削除
コメ返しでございまーす

>>投げ槍 様
魔理沙は可愛いです。どうもしませんw

>>下上右左 様
そんなにやばかったんですか!?
魔理沙は可愛いですよね!

>>奇声を発する程度の能力 様
こまっちゃんは犠牲になったのだ……w
魔理沙可愛いよ魔理沙

>>高純 透 様
気付いてくれましたかw
そんな感じで無意識に言って、後々気付いて大慌て……っていうのが魔理沙らしいと思いますw
ば、馬鹿な……設定上なら考えていたレミリアを当てた……だと……!?

>>けやっきー 様
多分無いですけど、霖さんは「愛してる」も無表情で言いそうですねw
にやにやしましたか!良かった……

読んでくれた全ての方に感謝!