Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

第一回 もしも話大会開催

2010/08/11 15:53:53
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人里にある屋敷で、年甲斐もなくフリフリの服を着た妖怪が叫んだ。


「第一回、もしも話大会開催よー!」

「わー」

「ぱちぱちー」


叫んだ妖怪は握りこぶしを天に向け、うきうきとした気分を隠そうとしない。

その姿は、普段の彼女からは考えられないほどだ。

対し、彼女と同じ席に座る少女二人は、別にどうでもいいといった雰囲気を漂わせていた。

目を横一文字に、悲しみを背負った胸を机でつぶし、適当に手を打っている。


「ちょっと阿求に慧音、ノリが悪いわよノリが」

「そうは言うがな賢者殿。私たちは幻想郷の今後についての会議に呼ばれたはずなのだぞ?」

「お茶おいしー」


慧音の指摘も「かんけーねー」といった風に、賢者と呼ばれた妖怪、八雲 紫が答えた。


「あ、それ嘘。貴方達を集める口実ね」

「さらっと嘘を認めた!? 阿求もお茶飲んでる場合ではないぞ!」

「せんべいおいしー」

「せんべいを頬張ってる場合でもない!」


阿求のマイペースさに息を荒げる慧音。

彼女の生真面目さが、この雰囲気を許せないのだろう。

割れんばかりの勢いで机を叩く。

むしろ割れた。


「慧音は悪い子ね~。人の家の備品を壊すなんて」

「す、すまない。つい勢い余って……阿求大丈夫か?」

「お茶おいしー」

「阿求ーーーしっかりしろおおお阿求ぅぅぅーーーー!!!」

「あらあら、木片が阿求の頭にささって血がぴゅっぴゅでてるわ……なんで私が説明しているのかしら?」




少女治療中……




で、それからどうなった。


「第一回、もしも話大会開催いえーい!」

「わー」

「まだやるのかそれ」

「もちのろんよ♪」


頭に包帯を巻くことになっても、臆さない阿求は最強かもしれない。

むしろ普通に妖怪の賢者と話をしている時点で、人間の中でも特殊だろう。

むろん、精神的な意味で。


いざ仕切り直しと、三人は各々の座り方で落ち着いた。


「ということで、100行ほど前座も置いたことだし始めましょうか」

「私はもう諦めた。好きにしてくれ」

「お茶美味しー」


うららかな普通の一日。

なんでもないこの日、ついに第一回、もしも話大会が開催されたのだ。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


●もしも霊夢が男の子だったら


「おっす霊夢ー今日も巫女服が似合ってるな」

「うっさい魔理沙。好きで着てるわけじゃない」


魔夏の太陽がパラダイスしている神社に、一人の巫女がすんでいました。

巫女の名前は博霊 霊夢。れっきとした「男の子」です。

でもちょっと女の子っぽい顔つきに、本人は悩んでいるらしい。


「いまさらだけどさ、どうして霊夢が巫女なんかやってるんだ?」


魔理沙の素朴な問いに、霊夢は顔をしかめながら答えました。


「家にこれしか服が無い」

「あー……」


あまり裕福とは言えない神社では、それは仕方のないことなのでしょう。

しかも知り合いは女の子しかいないため、誰かのお古を貰うというわけにもいかないのです。

そこで魔理沙は何かを思いついたようで、勢いよく霊夢に詰めより言いました。


「アリスに服作ってもらいなよ! ほら、あいつなら人形の服たくさんつくってるし、お前の服くらいすぐ作ってもらえるって」


これはいい案だ。と一人うなづく魔理沙を、霊夢は悲しげに答えました。


「もうお願いした。そうしたら紫が出てきて言ったの」


――その巫女服を着た時点で、あなたは博霊の巫女の跡を継いだのよ。

――巫女としての責務を果たさない限り、ほかの服を着ることは許されないの。

――もし男の服をきようものなら、この幻想郷は壊れてしまう。

――それはそれは悲しいことですわ。


「うさんくせぇ」

「私もそう思って試したんだけど……博霊大結界がすごい軋みを上げたから急いで脱いだわ」

「ふぅん。だからしゃべり方も女の子っぽいんだな?」

「え?」

「ん?」



風が、流れた。



あくる日、「だぜ」言葉をマスターしようと、必死に練習している博霊の巫女を一目見ようと多勢の参拝客が訪れたが、それはまた別の話。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



紫の妄想話が終わった。


「霊夢が男の子だったら、今ごろ私身ごもってるかも♪」

「だまらっしゃい犯罪妖怪」

「阿求ひどいッ!?」


紫のかわいいヴォイスを一太刀で伏せる阿求。

すでに、もしも話とは自分の妄想でお茶をしばこうとしているだけと、見抜いているようだ。

そんななか、慧音だけが顔を赤らめて何かを呟いていた。


「そ、そうか……巫女服の中にお、おおお、男の子のシンボルが隠れて……」

「……ねぇ阿求」

「なんでしょう?」

「慧音って、ソッチ系の人だったのかしら?」

「妹紅さんと中がいい時点でお察し下さい」

「なるほど……ん?」

「ふぅ、お茶はやっぱり4番煎じですね」


会話が成り立ってないが、本人たちは気にしていない。

だって、すでに慧音の妄想話もとい、もしも話が独り言で語られていたからだ。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



●もしも霊夢が男の子だったら(慧音Ver)


煌くお花畑の中に、彼女は立っていた。

太陽は花にかけられた水に反射し、少女を照らす。

少女の白い髪が、その光に答えるかのように風になびいていた。

その姿はまるで、お姫様のように見える。

お姫様は両手を広げ、風を受ける。

そしてくるくると踊りながら、小さなダンスパーティを謳歌していた。

鳥たちが歌い、花は踊り、水が跳ね、空が照らす。

半刻ほど踊っただろうか。

はたっと止まり空を見あげ、お姫様はつぶやいた。


「霊夢……か♪」





それは数日前まで遡る。

藤原妹紅が珍しく人里を走っていた時のこと。

その日は慧音と、壊れた(妹紅が壊した)校舎を修繕すると約束していたのだ。


「やばいやばい。慧音は時間に厳しいからなー。遅れると怒られてしまう」


朝も早い時間。

まだ人通りが少ない道だったからか、妹紅は油断していた。

ここを曲がったら寺子屋までの近道、とばかりい勢いを殺さず曲り角へ突っ込んだのだ。

そして、妹紅の目は赤と白に染まった。


「きゃっ!」


どんっと、何かにぶつかったようだ。

壁にしては柔らかく、軽い何か。

まるでそれは人間にぶつかったかのような感じ……というか、人間だった。


「す、すまない。急いでいたから……いや、本当にすまなかっ……た?」

「あいったたた……んもう、お尻うったじゃない」


目の前に尻もちをついて倒れている女の子がいた。

紅白の巫女服に身を包んだ、可愛い子。

どこかの神社の子だろうか。

そんな事を考えていると、妹紅は少女から目を放せなくなっていた。


「あああぁぁぁぁぁ!!!」


耳をつんざく声が、静かな里を駆け巡った。

叫び声と同時に、少女が涙していたのに気がついた。

どこか体を痛めたのだろうか。

妹紅は元人間とは言え、悠久の時を生きてきたのだ。

力は普通に人間をとうに凌駕してしまっている。

その力でぶつかったのだ。

骨の一本や二本折れていてもおかしくはない。


「ど、どこか痛いのか!? 医者をすぐに呼ぶからじっと……」

「いちご大福!!」

「……は?」

「さっきの衝撃で、いちご大福を落としちゃったのよ!」


少女の前、妹紅の足もとに、土に汚れたいちご大福だったものが転がっている。

これならば妹紅も知っていた。

守屋庵の一日限定30個のいちご大福だ。

連日これを目当てに、あの慧音さえも並ぶという。

むしろ妹紅も何度か並んだこともあるし、食べたこともある。

いちごをつぶした餡に、いちごが丸ごと沢山入っているのだ。

さらにその味はまさに嗜好の一品。

そのいちご大福だったものが、ずいぶんと変わり果てた姿になっていたのだ。

少女が叫ぶのも仕方がないだろう。


「す、すまない……」

「せっかく珍しくおさい銭が入ってて、朝早起きしてずーーっと開店を楽しみにして……やっと買えたのに」

「そうだ! 今から走ればまだ間に合うかも」

「私で最後の一個だった」

「あぅ……」


弁償という言葉すら出すことが許されない状況とは、こういうことをいうのだろう。

妹紅にできることというならば、頭を下げるしかない。


「本当に、すまないことをした」

「はぁ……いいわ。泣いたらすっきりしたし。また明日にでも買いなおすわよ」

「許してくれるのか?」


かばっと頭を上げた先に、笑顔があった。

星の煌きのように見えるその顔に、妹紅はまた見とれてしまった。

もし妹紅が男の子なら、まちがいなく惚れていただろう。

ぱっぱと少女はお尻についた埃をはらい、じゃぁねっと横を過ぎる。

少女が、行ってしまう。


「待って、君の名前を教えてくれないか」

「はい?」


何かの予感だろうか。

気がついたら口から言葉が発せられていた。

Who are you?

これが、運命の始まりだと知らずに。


「私の名前? 霊夢よ。博霊 霊夢あんたは?」

「藤原妹紅だ」

「ふぅん。変わった名前ね。といっても、私もだけど」


ふふっと笑うその子につられ、妹紅も笑う。


「そんなことない。女の子らしい、可愛い名前じゃないか」

「おんなのこ……らしい?」


少女の瞳に影が宿ったように見えた。

少しうつむいた少女の目が髪の毛に隠れて、肩も微妙に震えている。

笑っている?

いや、そうではない。

さきほどのいちご大福落下事件。

その時よりも、妹紅はやばいと肌で感じ取っていた。

妹紅がふんだもの。それは地雷。

怖々ながらも、霊夢に声をかけようと近づいた瞬間。

地雷は爆発した。


「れ、霊夢……どうし……」

「だーーれーーがーーー女の子よ!! 私は、お・と・こ!! 正真正銘おとこなんだから!!」


そう叫びながら、少女、いや少年は巫女服のスカートをたくしあげる。

そこには男性のシンボルが、まばゆい光を放っていた。

直視できないほどの光で分かりにくいが、そこには確かにあった。

女の子にはないものが、バラに包まれながら存在していたのだ。


「どう? わかった? 私は男の子でしょ? ねぇねぇ!?」

「わかった、わかったから、その……スカートを降ろしてくれ。目の保養、じゃなくってあわわわ」

「……ごめん、少し取り乱した。最近ずーっと女の子~女の子~言われてきたから、悲しくて」


なんとか平静を装いながら、妹紅は考えたいた。

これは運命という名のチャンス!?

いやいや、そうじゃない。

妹紅には分かっているのだ。この少年の苦しみが。

妹紅も髪の毛を切った時期があった。

そして男の子に間違われること間違われること。

それもう一度死んで、髪の毛を元に戻したくらいに。


「その……何回も申し訳ないことをした」

「……私も、いろいろとごめん。その……見苦しいものを見せちゃって」

「いやいやむしろありがとうと言いたい」

「は? え? あ、あぁ……そ、そうなんだ」


少年はなにを思ったのか、少し妹紅から距離をとろうとしている。

人間の本能で危険を察知したのかもしれない。

なにせ妹紅は人間ではない。蓬莱人なのだから……

というのはもちろんそうでなく、本能で感じ取ったのは貞操の危機だろう。


「まてい! 何を勘違いしている!」

「えーだって……めくった私も私だけど……」

「あぁむそっち方面へ持っていくな! 私は許してくれてありがとうって言ったんだ!」

「なんだ、そんな事。いいのいいの、いつも周りにいる奴らのほうがひどいし」

「どんな人たちなんだ……」

「ん~……ま、いいじゃない。それよりも急いでたんじゃないの?」


少年の指摘に慌てて空を見上げる。

太陽はすっかり昇ってしまった。

慧音は完全に怒り心頭だろう。


「ほらほら、そんな顔するくらいならちゃちゃっと行って謝ってきなさいな」

「そうするよ。ありがとう……でもどうして待ち合わせしてるとわかったんだ?」

「なんとなく、勘ね」

「そ、そうか……」

「ほーらもう、私にかまってる暇ないでしょ。行った行った」

「あ、あぁおおう。押すな、って」


背中を押され、寺子屋への近道へと入れられていく。

行かないと、でも言わないと。

最後に、と妹紅は背中へむけて言葉を放った。


「そうだ、霊夢」

「ん?」

「あのさ、よかったら……」



そして約束が一つ増えた。


――明日、一緒にいちご大福を食べよう。


和やかな朝。

きっとこれから騒がしくなる朝に。

二人は出会った。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



「お茶がおいしー」

「そうね、やっぱり甘いものにはお茶よねー」


ゆっくりと5番煎じのお茶を飲み干した。

慧音はまだ妄想の世界から抜け出してないようだが、阿求と紫はもう満足といった顔だ。


「さて……お茶も飲みほしたことだし、そろそろお暇するわ」

「お疲れ様です紫さん。お陰さまで執筆が進みそうですよ」

「いいのよ。また困ったらお呼びなさいな。次は……さとりあたりはどうかしら?」

「いいですね。あの方についてはまだ私も調査中ですので、助かります」


何やら画策が進む中、空気は完全に終了モード。

慧音の妄想も終焉へと向かっているが、少女マンガ的ラブシーンなのでカット。

それではまたね、っとスキマに消えていった紫に手を振りながら、阿求は執筆へと取り掛かることにした。









「慧音さんは乙女っと……あーお茶がおいしー♪」
もしも宝くじが当たったら紅楼夢に出店するんだ……と画策するこじろーです。
東方テスト対策ドリル……なんてゲームっぽく作っても売れない気がしてきたよ?

それは置いといて、あっきゅんってどこか霊夢に似ていると思うんだ。
二人して縁側でお茶飲ませ隊一名参上!!

ではまた将来にお会いいたしましょう。またにてぃ~♪
こじろー
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
阿求のマイペースすげえwwww
第二回の開催を楽しみにしてます!
2.名前が無い程度の能力削除
趣旨をちょいとばかり勘違いしていました
もしも阿求が妖怪だったらーとかやってほしいと思った

かわいそうなのは霊夢か妹紅か
3.こじろー削除
>奇声様
回数が増すごとにあっきゅんがカオス化するんですねわかります

>2様
そ れ だ
可愛そうなのは慧音の脳内空間=われの脳内空間カーモシレーナイー