Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

狭いようで広い幻想郷 3

2010/07/29 16:51:12
最終更新
サイズ
8.67KB
ページ数
1

分類タグ


※注意:独自解釈が含まれます。
     そういったものが苦手な方は、激しくスルーしてお読み下さい。




3人で森を進む。
適当に自己紹介しながら、のんびりと歩く森の中。
とても危険があるような感じはしない、穏やかな森。
今すぐにでも、木陰から小動物でも現れそうな雰囲気だ。
この男の人は『葉月 悠』。
なんでも、人里で依頼を受けたらしいんだが・・・。
「ほら、人里に居るだろ。最近食事処始めた、外来人のおっさん。」
「あぁ、私も一輪と食べに行ったことがあるが、中々良い物を提供してくれるよな。」
そう返答する、ナズーリンさん。
私も噂に聞いたことがある。
でも、あの店の店主って・・・。
「中々の変わり者だって聞いたことありますよ?」
「あぁ、確かに変わり者だ。」
葉月さんが答える。
「日系ロシア人・・・、だっけか?まぁ、意味はわからんが。この幻想郷のある国の人間とはちょっと違うよな。いや、料理は絶品なんだが。あの語尾に『~アルよ』って付けるのは外の風習か何かか?」
いや、そんな話聞いたこと無いんですけど。
「っていうか、最近幻想郷に迷い込んできたばっかりだろ?あの適応性の早さは中々のものじゃないんかな?てか、なんでそんなやつが、この調味料について知ってるんかねぇ?」
人里の誰かにでも聞いたか?
そう首を傾げる葉月さん・・・、って。
「え!?調味料!?」
「なんか、私たちの情報と食い違ってないか?」
ナズーリンさんも問いかける。
「おぉ、あんたらソレを何の目的で探しに来たんだ?」
私は、自分が薬屋をやっていること。
そして、薬草だと自分の師匠から聞かされたことを話す。
「確かに、それは薬の効果としてもある。だが、それと同時に調味料としても使えるっていう変わった一品なんだ。」
そういえば、師匠が他にも使い道があるとかなんとか・・・。
「と、いうと。それは調味料としても貴重なのかい。」
「あぁ。味としてはピリッとくる辛味が特徴なんだが。これが色々な料理にあってな。なんか栄養も豊富で幻の調味料って言われているんだ。」
「葉月さんは、その調味料を使った料理って食べたことあるんですか?」
私も永遠亭の料理を任されるときがある。
ナズーリンさんも確か料理をするって言ってたっけ?
そういう訳で、興味深そうに聞く私たちに。
「食ったことあるぜ。以前、この森に一緒に入ったダチ・・・、あぁ、このハルバードくれた奴な。ソイツが森の探索の後、その調味料を使って料理を振舞ってくれたことがあるなぁ。」
いやぁ、美味かったなぁ。
そう言って、感慨深そうに思い出に耽る葉月さん。
そういえば・・・。
「そのご友人さんは、どういった知り合いなんですか?」
少し黙る葉月さん。
その後、こう口を開いた。
「元々、外の神様でな。でもどこか人間っぽくて取っ付きやすかった奴だ。まだ人間と妖怪がいがみ合っていた時代。あいつは、人間サイドでありながら、幾つかの強力な妖怪のトップとコネクションを持っていてな。それが功を奏してか、今の弾幕ごっこやスペルカードルールも結構うまく浸透していったんだ。」
「ん?というと。」
ナズーリンさんが尋ねる。
「スペルカードルールとかは、かなり前から考えられていたってことかい?私の見解では、霊夢、今の博麗の巫女が始めたような気がしたんだが。」
そうだ。
私たちは迷いの森でひっそり隠れ住んでいたから幻想郷の歴史については詳しくないが、確か霊夢さんたちと初めて対峙したときに知ったような。
「定着させたのは、確かに今の巫女だな。だが考えてみろ?いくら妖怪にも好条件な部分があるとはいえ、ありゃ人間のような力の弱い側に有利なルールだぜ。そんな方法が、いくら博麗の巫女だからってすぐにあんなに広まると思うか?」
確かに・・・。
いきなりそんなルールを提案したって、納得するはずがない。
力の強いトップクラスの妖怪ならまだしも、弱い妖怪がわざわざ人間に有利な条件を容易くのむはずがない。
「では、それ以前から事前準備があったと?」
「その通り。幻想郷の有様を危惧した妖怪の賢者。そして、二、三代くらい前か?その時の巫女。そして、トップクラスの妖怪とコネクションを持っていた神様。メインは、この3人だな。特にアイツには実力以上に信頼があった。結構地道に交渉に当たったみたいだったな。そして色々な奴らと協力しながら徐々にルールを裏から広めていく。トップクラスの連中が納得すれば、下に仕える妖怪たちも従う。大勢の妖怪がそのルールをのめば、他の妖怪も真似をせざるを得ない。」
「なるほど・・・。」
そんな裏事情があったなんて。
「中々おもしろい話だな。君はそういう裏事情にも詳しいのかい?」
ナズーリンさんの問いかけに対して、葉月さんは。
「まぁ、ちょこちょこな。ただ、そこまで関わったりしてはないかな。でも情報は入ってくる。」
そういって、葉月さんは空を仰いだ。



その後も、ナズーリンさんを先頭に森を歩く私たち。
やっぱし、特に危険があるような森には見えないんだけど。
そう思っていると。
「おっと、ここだ。」
そういって、歩みを止める葉月さん。
目の前には、ちょっとした岩場。
登ろうとすれば結構な高さだが・・・。
「飛ぶかい?」
そう提案するナズーリンさん。
確かに、空を飛べば難なく越えれそうな気がする、が。
「いや、ダメだ。」
そういって、岩場のの隅のほうの草むらを掻き分ける葉月さん。
「お、あったあった。これだ。」
そこには。
人が膝を付いたら通れそうな小さめな穴が一つ。
「ここを通るぜ。上はダメだ。」
「上になにかいるのかい?」
そう尋ねるナズーリンさんに。
「あぁ、鳥の妖怪がいる。強いぞ。さらに数も多い。鳥だからな。空中戦になるとかなりキツイ。以前来たときは上を通ってしまったんだ。苦戦したな。まぁ、何とかやり過ごしたが、それでも危険を回避するには越したことはねぇ。狭いだろうが、こっち通るぞ。」
そういって、穴を進んでいく葉月さん。
「ナズーリンさん・・・。」
「わからない。ただ、この森が危険だという裏づけにもなる情報だ。葉月も先に通っていったんだ。こっちが安全なんだろう。」
そういって、続いて穴を通っていくナズーリンさん。
なんか、少し不安になってきた。
何事も起きなさそうな穏やかそうな森。
こんな所に、思いがけない危険が潜んでいると思うとゾッとする。
気を引き締める。
容易く見つかるはずがないのは先刻承知。
そう思い、私も2人の後に続いていった。



少し長めの穴を通り抜け、再び森に出る。
そのあとは順調だった。
少し休憩を取りながら、とりとめのない話をしながら歩き続ける。
もう、だいぶん歩いただろうか。
「ここをまっすぐ行ったところかな?反応が強くなりはじめた。」
そういって、歩みを早めるナズーリンさん。
と、そこで。
「ちょっと悪いが。この先だろ?遠回りになるが、迂回するぞ。」
「ん、なんでだい?」
「いや、この先に森の主みたいなのがいてな。そいつはテリトリーを張っている。以前来たときは、ちょうどこの先がテリトリーだったはずだ。対峙するとやっかいだ。避けて通るぞ。」
そういって、遠回りの道を歩いていく葉月さん。
その後を追いながら尋ねる。
「そんなに危険なんですか?」
「あぁ。今じゃ、スペルカードルールとかがあるから、万が一ってことさえなけれりゃ大丈夫ってのが通説だな。だが、そんなものが通用しない場合もある。」
「例えば?」
「そうだな。主に2つのパターンがあってだな・・・、っ!!」
その瞬間。
葉月さんが担いでいたハルバードを振り下ろし、焦った表情で身構える。
「な、何があったんだい?」
そう尋ねるナズーリンさんに。
「・・・構えろ。あんたらもそれなりには戦えるんだろ。ってか悪い。まさかテリトリーの位置がこんなに変わっていたとは!」
つまり・・・。
「えっと、近くにその危険な妖怪がいると・・・?」
「全神経を集中させろ!気配を読み取るのに集中させろ!近いぞ・・・!」

そういった瞬間。

周りの、空気が、凍った。

「あ、あ・・・。」
ヤバイ。
これは不味い。
いま迫ってくるのは避けられない絶望と恐怖。
あれと対峙してはダメだ。
そのくらい、私にもわかる。
昔、月から逃げてきたときの恐怖が蘇る。
いや、それ以上か。
かつて感じたことの無いプレッシャーが全身を襲う。
なんとか、隣ののナズーリンさんを見る。
冷や汗を流し、尻尾が逆立ち、顔を強張らしている。
ナズーリンさんも感じている。
このどうしようもないプレッシャーに完全に頭が混乱している。

どうする?

そうすればいい?

その回らない頭で必死に考えていた。
その時。

ずどんっ!!!

葉月さんが振り下ろしたハルバードが大地を揺らす。
そして、こう叫んだ。
「臆すな!うろたえるな!!思考をクリアにしろ!!のまれたら負けだぞ!いいか、自分より強い敵に会った時こそクールになれ!勝てなくていい!逃げてもいい!ただ、生き延びることを考えろ!!敵わないことは恥じゃない!生きて、生き延びた者が勝ちだ!!そのためには、自分より強い相手にどう立ち向かうかだ!」
そして、静かにこう呟いた。
「安心しろ。俺が先陣切って戦う。あんたらは余裕があれば援護をしてくれればいい。いざとなりゃ逃げろ。コイツとは以前対峙したことはある。まぁ、アイツがいないってことが少し不利だが。信じな。俺は負けやしねぇ。」
そして、再び構える葉月さん。

その言葉を聞いて・・・。
少なからず混乱は消えた。
構える。
そうだ。
どう立ち向かうかが大事なんだ。
私は昔、仲間を見捨てて逃げた。
それは、もう変えようの無い事実。
でも。
私は今、生きている。
生きているからこそ。
逃げて生き延びたからこそ。
こんなところで死ぬわけにはいかない。
隣のナズーリンさんを再び見る。
先ほどとは違って、目に力が宿っている。
ネズミのしぶとさを見せてやろう。
そう言っているかのように。
一つ深呼吸。
そして、息を吐く。

プレッシャーはある。
恐れもある。
だが、もう気負いはしてない。
後は目の前の敵に全力で立ち向かうのみ!

「で、どんな敵なんだい?」
そう尋ねるナズーリンさん。
「さっき言ったよな。ルールが通用しない奴がいるって。」
そういって、ハルバードを横に構える。
「一つは、狡猾で、力がある程度あって、己の欲だけに生きる意図的にルールを無視する輩。」
手に力を込める。
「そして、もう一つは。」
くるぞ、と言って上を見上げる。
「そんなルールなんてちっとも理解しない、本能に生きる凶悪な化物妖怪だ!!」
ソイツは、上空から私たちの前に降り立った・・・。
3話目、完了です。

独自解釈について。
スペルカードルールを実際に行い、定着させたのは霊夢だと思います。確か、「東方紅魔郷」と、それ以前の事件が関係していたはずです。
でも、それ以前に、こういった類の事件を想定して、うまく広めるための下準備があったんじゃないかと。
そこで考えられたのが、紫と何代か前の博麗の巫女。
紫は妖怪の賢者ともあって、地位的にトップでしょう。ただ、胡散臭いという設定になっている。一人では少し説得するには難しいかと。
以前の博麗の巫女は、霊夢のように、結果的には人間とも妖怪とも仲良くなるような気質があったかどうかは分かりません。ただ、どちらかというと人間サイドの守護者的存在であろうと。なら、やはり説得は中々難しい。長い時間がかかるとなれば、寿命のことも考えられます。
そこで、もう一人、力があって、双方に説得力のある人物がいたんじゃないかと思って用意してみました。種族的には妖怪でも人間でもない第3の立場的な人がいいかなと思って、神様にしてみました。
後は本文の通りです。

あくまでも、私の個人的な妄想なので、そこまで気に留めなくても結構です(笑。

次の4話目は、バトルメインです。多分、一番描写が難しいところにはなるとおもいますが、頑張りますのでお付き合いの程よろしくお願いします。

おそらく、5話目で完結します。その後に書く予定にしているものは、オリキャラも独自解釈もない普通のお話になると思います。
できれば、そちらも含めて、引き続き読んでもらえると大変嬉しいです。
エクシア
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
ふむふむ成る程、解釈が面白いですね。
4話目を楽しみにしてます!