Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

移り気

2010/07/24 01:23:35
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しとしと

糸のような雨が降る

春の夏の狭間

紫陽花の葉がゆれている











「ただいま戻りました」
「藍、ちょっとこっちにいらっしゃい」

縁側の方から声がする。
まだ起きているなんて、珍しい。なんだろうか、今日の仕事は特に問題もないはずだ。それとも…
傘を置き、声の場所へと向かう。

「お待たせしました。なんでしょうか?」

紫様は縁側に腰掛けて庭を眺めていた。
まだ暑くなりきらないこの季節、こんな夜中に雨の中にいては冷えてしまうのでは…

「大丈夫よ。雨はあたってないし、じきにあがるわ。それより、何か気付いたことはない?」

心配が顔に出ていたようだ。紫様は庭を気にした様子で私に問いかけた。また何か企んでいるのだろうか。
月明かりのない夜。いまや雨は霧のよう。しかし我々妖怪にとってこの程度の距離は見渡せる。
…特に違和感はない。

「ここに座って、よく見てごらんなさい」

紫様の隣に腰を下ろすと、一段と視線が低くなる。やっぱり湿っている。漂う水滴に土のかおりがわずかにまじる。

「なんでしょうか。特には…」
「ほらほら、なんかあの辺とか」

ほらほら、と、心なしかわくわくしているようだ。
指さす方へと注意を向ける。こんもりと茂る紫陽花。色は判別できないが、暗闇にとけきれずに咲いている。
しかし待て、紫陽花? 庭に紫陽花などあっただろうか。毎朝の庭掃除、桜がすっかりたくましくなった今日この頃、しかし紫陽花はなかったはずだ。

「いつの間に紫陽花など植えたのですか?」
「あら、やっぱり気付いちゃった。何だと思う?」
「紫陽花でしょう」
「そうじゃなくて、なんで紫陽花があるのか分かるかしら?」
「いえ、分かりません」
「…ちょっとは考えなさいよ」
「紫様の深遠な考えなど私ごときでは到底…」

いじけてしまった。実はそんな姿が可愛らし…

「冗談はここまでにして。まぁ私が植えたんだけど、なんでだと思う?」
「そうですね。確か紫陽花には毒があったはずです。妖怪はともかく人間相手になら…。もとい………おや?」

雲の切れ間から、やわらかな光がさした。いつの間にか雨はあがっていたようだ。花びらが、光を受けてかすかにきらめく。
色は紫色、藍色、そして桃色。まるで私たちのよう。しかし…

「橙色ではないのですね」
「むきになって探すものではないでしょう?」
「ええ、…ええ」
「はいはい、分かったわよ。すぐに見つけてきてあげるから、拗ねないの」
「きれいですね」
「………」



とん、と肩に重みが増す。私も少し、頭をあずける。

――明日の夜も雨らしいわよ

――橙を、連れてきます

――橙は知っているかしら

――いえ、知らないでしょう

――お願いするわね



少し照れくさいが、橙も喜んでくれるだろう。











ぽたん

しずくがひとつこぼれ落ちる

春の夏の狭間

紫陽花の葉がゆれている
紫陽花の花言葉は「移り気」と「一家団欒」
変わる心もあれば、変わらぬ心もある。



初めての方は、はじめまして。
初めてではない方は、………いないはずですね。拡散ポンプといいます。
二次創作に限らず、一つの話を作って投稿するというのはこれが初めてです。
投稿の仕方はこれで合っているのかなぁ。

読んでいただき、ありがとうございます。
拡散ポンプ
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
静かな感じでとても素晴らしかったです。
2.けやっきー削除
落ち着いた雰囲気が大好きです。
一家団欒、本当に変わらない心ですよねぇ…