Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

餓巫女伝 ~白銀の章~

2006/07/08 08:59:46
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 数年前のことである――



 終わらぬ冬の原因を探し、終結させるため、博麗霊夢は飛び立った。
 雪原を飛び回り、妙に元気だった氷精をのして、いつしか霊夢は雪深く積もる山へと入っていた。
 そして、しばし当てもなく飛び続けた後――

 白銀の世界。
 木も草も岩も全てが雪に埋もれ、何もかもが白い空間。
 唯一白でないのは、天を覆い尽くす墨色の雲のみであった。
 そして、その異空間に身を任せる内、霊夢は異変に気がついた。

 ……ああ、“何か”いやがるわね。

 何か、もしくは誰かが存在する。霊夢はそれに気がついた。
 しかしその気配が妙である。確固たる、一個の気配ではない。
 まるで白銀そのものに、意思があるかのような気配である。
 静かな、それでいて不気味な気配だ。
 静かなくせに、その後ろに大きな力を潜ませているのが霊夢には判る。
 ゆったりとした大気の風のうねり。それ自体に、ものすごい力があるのと同じことだ。
 流れる水のような。舞う風のような。どっしりとした山のような。
 そんな気配だった。


「出てきなさいよ」


 大きくも、小さくもない声で、霊夢は言った。
 一秒、二秒、三秒、……十秒。
 何も起きない。
 霊夢は、ふうっ、と息を吐いた。

 その瞬間、霊夢のすぐ後方に、はっきりとした気配――“敵意”が出現した。

 霊夢は、ぞくり、と背に震えが走るのを感じた。
 十六夜咲夜の時間停止を初めて味わった時、否、それ以上に強力な震えであった。
 ずっとぼんやりとしか存在していなかった気配が、いきなり自分の後ろにはっきりと現れたのである。
 たまらなかった。

「ぬうっ!」

 霊夢は叫んでいた。
 叫んで、体を前方へと飛ばし、身を捻って後ろを向き、ありったけの符を投げた。
 びゅうっ、
 と、符が白銀の空間を裂いた。
 手ごたえは、無い。

 ……外したの!?

 霊夢は動きを止め、素早く首を左右に振る。何もいない。
 なので体を反転させ、後ろを向き、


 ――その一メートルほど先に、太い体をした女がいた。


 静かな、岩のような女であった。
 体のつくりの何もかもが肉厚であった。
 頭も、首も、肩も、胸も、腹も、脚も、手の指までもが太い。
 眉も、太い。
 眼も、太い。
 鼻も、太い。
 唇も、太い。
 眼から放たれている柔らかな眼光までもが、太い。

「――ふふっ」

 唇から漏れる声も太かった。
 ゆったりと大気の流れに身を任せている姿は、大きな力が、そのまま女の形となって、そこに“在る”ようであった。


「……あなた、何者よ」
 ようやっと、霊夢が口を開いた。
 女は何をするでもなく、ただ太い笑みを顔に湛えている。
 口が、動いた。

「冬が好きな、ただの妖怪さ――」

 その太い声は、威圧するものではなく、しかし重みのある声だった。

「その妖怪さんのせいで、冬がいつまで経っても終わらないのかしら?」

 言って、霊夢はしかし『違うな』と思っていた。
 目の前の女の力強さは、この尋常でない冬とは無関係であるように感じたからである。

「そいつは違うよ。私は、冬が長いからここにいる。それだけさ」
 どこかさばさばとした調子の声だった。

「でもね、冬が長すぎるのも困りものさ。少しならいいが、こうもずっとだと眠くなっちまう――」
 ふああ、と女はあくびをした。

「なら、私が冬を終わらせてくるわ。だからここを通しなさい」
 霊夢が言った。

「そうね、それもいいかもしれないわね」
 女が言った。

「私があなたにちょっかいを出したのは、こんな山奥まで来る人間が珍しかったから。それだけさ。
人間どころか、妖怪や妖精もめったに来るやしない。
ここまで来る物好きはチルノちゃんくらいね。さっき帰ったけど」

 女は、ふわふわと、道を譲るように脇へどいた。
 霊夢はその横をゆっくり通りながら、内心冷や汗を浮かべていた。

 ……弾幕ごっこならともかく、がちんこの殴り合いになったらどうなっていたか。



 霊夢は、女から十メートルほど離れたところで振り返り、言った。
「ところであなた、名前はなんて言うのかしら」

 女は、太い笑みを浮かべつつ答えた。


「レティ・ホワイトロック。昔は『レティ尾象山』の名で通っていたわ――」

 
季節感無視。そしてレティファンに刺されかねない内容。――だが私は謝らない!!
らくがん屋
コメント



1.ぐい井戸・御簾田削除
あんた、そのあとがきはよう――仮面ライダーじゃねえのかい?
2.レティファン削除
あははーさすよー?
いやおもろかったけどw
3.( 0M0)削除
>――だが私は謝らない!!
ショチョオ!
4.名無し妖怪削除
っていうか、通すのかよw
「弾幕(や)ろうぜ──」って展開だと思ったのにw
5.名無し妖怪削除
たまらぬ贅肉であった
6.deso削除
獏好きとしてはたまらぬなぁw