Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

呪詛呪動

2006/07/03 08:43:07
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魔理沙は 骨を焼く激痛に身悶える 骨格を支える肉のクッションは機能を停止し
狭叫と積んだガラス繊維の束を一房人房粉々に砕くように 骨を刃が駆け抜け
脳髄が針に突きたてられた擬憶に惑う

奇異ィィと全身の神経が逆立って 端から砕かれる錯覚に陥る
身の崩壊をそこで止めるために 下半身を破壊の具現たる魔砲にて打ち砕かんと脳が命令を出すほどに。
己が内に宿した魔理力による 脳髄と独立した論理防衛的エーテルが 刹那の間に魔を活性化し
脳より下る狂おしい信号を打ち消したため 事体は魔理沙の自滅に終わらず 世界は更なる破壊に見舞われた。

魔による自己防衛を意識できず 捌け口を失ってさらに暴走した脳は
天へと郷へと世界へと 宇宙が理の幻想に仇為す呪詛を膿み 
エントロピーの抑圧された論理体系に於いて存在し得ないその超怨(音)は
ただ “がああぁあぁあぁあぁあああぁああぁああああ” というノイズのみを世に具現して
天に砲を向けた 世界の敵たる魔理沙の手の内より 一直線に伸びる物質理論の存在の否定と相成った。

崩れ落ちる天井すら蒸発し 覗いた天の青色さえ 量子論の否定される破壊中で色素を奪われた
これは負の発現であった。

陰陽の代表たる人、妖、畜生、そして霊
四力、論理、混沌秩序の理を包括する幻想の宇宙
こういった正の存在を 喰らい 吸い 消し 崩壊させて無に帰すばかりでなく
過剰にその存在因果を反転させるのが負。
その負が、この時生まれた魔砲の属する意思だった。

これほどまでの負を内に秘めた正たる人など本来ありはしない矛盾。
矛盾すら負に帰す力。
魔る沙たる魔理沙のキャパシティの底知れなさに 世界が震え 全幻想防衛機構が始動した。




巫女は自動であった 本人の意思は自動で発現し 曖昧さで理由付けられ 巫女の動機となった。

運命は現在を定義することで 潜在的に未完成であった。
本来包括されるべき未来は量子の不確かさに似て、予知の不完全さを生む。
元来 運命という漠然とした因果律のもう一回り外の存在は 正とも負とも定まらない。
しかし 現在に定義され時流に囚われた運命の主は 揺らぎの様な時流の不意のバーストを嫌い
それを理由としてその発現初期に消し去ろうとした。

魂は情報の有機的な絡み合いであり しかし 世界の加護によって存在し得る二次的なものではない。
最早、無限を生むことすら出来るほどに癒着した情報によって形成された精神世界は
実在する物質と同格に幻想の宇宙の表裏一体となっていた。
故に霊は正であり 魂の姫は負が消し去る死と輪廻の側面を守るべく
負の発現の鍵を 己の司る精神世界へと誘い 取り込んでしまおうとした。

永遠は あらゆる可能性をその無限の時を持って絶対とした禁忌の存在だった。
永遠の前で可能性は全て1であり 起きない事は何も無く あらゆる平行世界は
世界を異にせずとも 時間という次元のみを違にして同じ宇宙に存在できた。
それ故の全知であり しかし現在を定義したことで受け入れた時流による制約で 全知は逐次的なものとなった
それは 限りあるものにとって見れば あらゆる問題を時間のみを消費して解決する天才となった
運命にも似た制約ゆえに 永遠もまた正の側面に囚われる かくして永遠もまた負の発現を忌み嫌った

裁きは本来魂と物質との中間に居て どちらにも属する二次的なものであり 負と相対する役目を持たない。
けれど、裁きは二分する事に於いて絶対であり 負の発現たる元凶を定義し正と負に分断する事は出来た。
矛盾を嫌う裁きは 負を正から分断し純化することで 理路整然とし結果を絶対のものとする事を能動理由とした。
付け加えたならば 分断された正を無関係化することで その正としての弱い存在を守ろうという秘めた意思を持っていた。

唯一 境界だけは 如何に力の比率が変わろうと確かに存在するものである
片側が絶えるまで動かぬと腹に決め 面倒くさいと暖を取った。
境界は知っていたのだ 仮に一方が全てを埋め尽くしたならば その内が二分化されるだけである事を。
故に さしあたっての問題は近所付き合いに過ぎず それはきまぐれ以外には放棄されていた


また ジャーナリズムは 在る処に必ず在る


こうして集まった各々が 屋根の無くなった霧雨邸のなかに立つ 負の発現と相対していた

霊夢が レミリアが 幽々子が 永琳が 映姫が 文が それぞれに意思を表情に込め 魔理沙に問うた

「いったい、何があったの? どうするつもり?」 と

負の発現者は 問われたことで エントロピーを収縮させ いくらか存在し得る意味を為し音として発した

「イタイイタイ 死ね死ね 死んじゃえ 世界なんて滅びろ っははは! イタイイタイ
 何もかもを呪ってやるぜ!! 怨音 怨怨 おおんおん!!
弁慶の泣き所打ったーーーーーーーーー!!!」

脛を抱え! 負の発現者は! 涙目で呪詛を吐いた!


この時点で巫女は自動的に興味を失った


「永琳、あれにとびっきり強い麻酔薬打っといて 戻れないくらいの」
「任せて霊夢」
「ねぇねぇ、あれ可愛いから、誘ってうちに持って帰っちゃ駄目かしら?」
「止めときなさいよ、こんな風に屋根壊されるわよ。それにしても、本、失われて無いかしら……パチェが機嫌悪くするわ」

永琳が、注射針を魔理沙の腕につきたてたてる直前に

ゴン! カシャ! と

麻酔よりも強烈な昏倒笏打が振り下ろされて その事実は瞬く間に世界に知れ渡る運命となった。

「バカらしい。帰ります、私は忙しいのです。わざわざ心配して来てあげたというのに。はぁ小町に笑われるわ」
「私も、すぐに記事にしてきますね 号外ですよー」

かくして、眠る元凶一人を空の下に残し 各々は思い思いに散っていった
幻想郷の日常茶飯事たる出来事の一幕 一時閉幕と申し上げ候。



「魔理沙が直ぐに正気に戻ったからバカ話だったけど、あの娘の精神力が少しでも足りてなかったら本当に大変なコトになっていたって事、何人気付いているかしら」

後に、境界は楽しそうにひとりごちたと言う。



こんな、微妙なパワーバランスの上に成り立ってる幻想郷? と言うお話でした。

追記 少し血迷っていた部分を削除。
読了感謝申し上げます。
らららくらら
コメント



1.らくがん屋削除
シリアスな勢いを崩さずオチになだれ込むその姿が美しすぎる。
削除部分も読みたかったなあ……。
2.削除
>弁慶の泣き所打ったーーーーーーーーー!!!
うわぁぁああああははははははははは!!!
ってリアルに叫んで笑ってしまった。怒られた。
3.らららくらら削除
感想ありがとうございます。
笑ってもらえたら本望です。
もっともっと勢いがほしい。