Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

最強の妖怪

2006/06/21 09:16:34
最終更新
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ページ数
1
※注意書き
1.俺設定注意
2.少しオリキャラ分注意
3.句点使用率小なので読み辛さ注意








紫さまぁー……

すかー、すぴゅー

紫さまぁー……

ほにゃ……?あら、どうしたの橙。私の寝床に来るなんて珍しいじゃない

その……怖い夢を見て眠れなくなっちゃったんです……。それでその、一緒に寝て欲しいなって……

藍じゃ駄目なのかしら?

えーとそれは……

それは?

藍様はふかふかだから……

……そうねぇ、確かにこの季節にあのふかふかはきついわよねぇ。良いわ、いらっしゃい

はい!それじゃ失礼します






懐かしいわぁ。昔、藍が橙くらいの時もよく一緒に寝たものよ

藍様が私くらいの時ですか?

そうよ。それで眠れない藍の為に昔話を聞かせてあげたりしたんだから

そうなんですかー

そうなのよー。丁度良い機会だし、橙も昔話を聞いてみる?

はい!

よしよし、素直なのは良い事よ。ちょっと長いお話だから、眠たくなったら遠慮なく眠っちゃいなさい


























それは昔々、幻想郷ができて間もない頃の事でした
その時はまだ弾幕ごっこの様な物は無く、血で血を洗う戦いをしていました
人々は妖怪に対抗するために英知を振り絞り
妖怪は人々に対抗するために強力を付けました
良くも悪くも、正しい人間と妖怪の付き合いだったのです

そんな妖怪の中に、とても強い西洋の妖怪が居ました
ちょっとウェーブのかかった長い金髪は美しく
手に持った剣は猛々しく
背にした黒翼は禍々しく
人を魅了し、妖を畏怖させる。その当時では自他共に認める幻想郷最強の存在でした

ある時、その妖怪は森の中で一人の少年を見つけました
格好の得物を見つけた妖怪は、少年の前に姿を現しました
「人の子、人の子。生きて私のお腹に入るか、骸となって私のお腹に入るか、特別に選ばせてあげよう」
少年は妖怪の姿を見ると、驚きもせず、怖がりもせず、困り顔でこう言いました
「翼を持った妖怪さん、小鳥が巣から落ちました。飛んで巣まで送ってください」

妖怪は驚きました
妖怪は、恐れ、慄き、泣き、叫び、必死に命乞いをする人間しか知りません
そんな妖怪にとって少年は不思議な存在だったのです
妖怪は一つ考えました。子供を食べても満たされない、ならば大きくなってから食べてしまおう
そして小鳥を巣へと戻し、少年をわざと逃がしてあげる事にしました

少しの月日が経ちました
少年は青年へと成長し、妖怪は最強のままでした
妖怪が森を歩いていると、家がポツンと建っていました
久しぶりのご馳走だ、と。妖怪は家の中に入っていきました
そこには一人の青年が住んでいました

妖怪は青年の前に立って言いました
「人の子、人の子。生きて私のお腹に入るか、骸となって私のお腹に入るか、特別に選ばせてあげよう」
青年は妖怪の姿を見ると、驚きもせず、怖がりもせず、困り顔でこういいました
「美しい髪の妖怪さん、ご覧通り私は痩せています。腹の足しにはなれません」
妖怪が青年をみると、なるほどとても痩せていました

妖怪は察しました、きっとあの時の子供だろうと
妖怪は、恐れ、慄き、泣き、叫び、必死に命乞いをしない人間を一人しか知りません
そんな妖怪にとって、成長した少年は興味の対象でした
妖怪は一つ良い事を思いつきました。痩せているなら、私がたっぷり太らせてみよう
そして何処からか米に肉に山菜に、青年の家に持ち込み始めました

少しの月日が経ちました
青年は中年へと成長し、妖怪は最強のままでした
妖怪が持って来た食料のお陰で、中年は人並みに太りました
その姿はとてもとても妖怪には美味しそうに見えましたが、妖怪はもっと美味しく食べるために我慢しました
そして妖怪は辛抱堪らず、中年を食べる事にしました

ごろりと寝転ぶ中年の前に立ち、妖怪は言いました
「人の子、人の子。生きて私のお腹に入るか、骸となって私のお腹に入るか、特別に選ばせてあげよう」
中年は妖怪の姿を見ると、驚きもせず、怖がりもせず、困り顔でこう言いました
「鋭い刃を持つ妖怪さん、私は幸せを知りません。それでは食べられても美味しくありません」
妖怪は中年の言葉に、そうなのかと感心しました

妖怪は暫く悩みました
妖怪は、恐れ、慄き、泣き、叫び、必死に命乞いをした人間の美味しさを覚えています
そんな妖怪にとって、中年の言葉は的を射ている様に思えてきました
妖怪は一つ気紛れを思いつきました。私の寿命はまだまだ長い、人間のお遊びを真似してみるのも一興だと
そして妖怪は住処を移し、中年と形だけの祝言を挙げました

少しの月日が経ちました
中年は老年へと成長し、妖怪は最強のままでした
妖怪と暮らすようになってから、老年はとても幸せそうでした
その老年を見ていると、妖怪はとても不思議な感情が溢れてきました
そんな中年もとうとう、床から起き上がる事ができなくなってしまいました

虚ろな目をした老年の前に立ち、妖怪は言いました
「人の子、人の子。小鳥も巣へと返した、体もたっぷり太らせた、幸せも沢山あげたつもりだ。今度は何をすればいい?」
老年は妖怪の姿を見ると、ニッコリ微笑み言いました
「寿命の長い妖怪さん、長年使ったこの体。未練は最早ありません、お好きになさって下さい」
それだけ言うと、老年は静かに目を閉じました

妖怪は老年が眠っているのだと思いました。今まで食べた人間は五月蝿かったからです
だから妖怪は老年を起こそうとしました
耳元で大きな音を鳴らしました。老年は目を覚ましません
何度も何度も揺さぶってみました。老年は目を覚ましません
色んな場所を叩いてみました。老年は目を覚ましません

妖怪は老年が死んだ事を知りました
何故だか目から水が出てきました
妖怪は訝しがって、水を服の裾で拭います
けれども水は、止まる事がありませんでした
妖怪は老年の骸に手をかけず、そのまま家を去りました

少しの月日が経ちました
老年はもう居ません、妖怪は最強のままでした
妖怪はあの日からずっと水を流し続けています
何度も何度も止めようとしましたが、止まる事はありませんでした
そんな妖怪の元に、一人の人間が立ちはだかりました

「何で貴女は泣いてるの?」
人間は妖怪に聞きました
「私に理由は分からない。勝手に目から流れ出る」
妖怪は人間に答えました
それだけ言葉を交わすと、人と妖は戦い始めました

戦いは三日三晩続きました。どちらも満身創痍でした
先に倒れたのは妖怪でした。目からは水が流れてました
妖怪は自分の死を感じました。それが幻想郷の掟だからです
でも妖怪は、そんな事もどうでもよくなっていました
そんな妖怪を、人間は見下ろしていました

「強い力は身を滅ぼす。その力、封じさせてもらいます」
人間はそう言うと、一枚の御札を妖怪の美しい金色の髪に結び付けました
それでも妖怪の力は抑える事はできませんでした
そこで人間は、一計を案じる事にしました
人間は、一人のとても気紛れな妖怪を連れてきました

人間はとても気紛れな妖怪の力も借りて、最強の妖怪の肉体と魂を分離させました
気紛れな妖怪は、最強の妖怪の魂に仮初めの肉体を与えました。そして最強の妖怪の肉体に自らの魂を使って封印を施しました
そして肉体と魂が一緒にならないよう、仮初めの肉体の髪の毛に強力な御札を結びました
力をほとんど封印された妖怪は、元は黒翼だったであろう闇を仮初めの肉体に纏い、ふらふらと森の奥へと飛んで行きました
人間は残された猛々しい剣を、里へと持ち帰りました。後にそれは、里を守る者に代々受け継がれる様になりました





























そして少しウェーブのかかった長い金髪を持った妖怪は、自分の住処に帰りましたとさ

すぅー……すぅー……

ふふふっ、やっぱり最後まで聞けなかったわね。藍と一緒

みゅにゅ……藍さまぁー……

このお話にはまだ少しだけ続きがあるのだけれどね、それはまた今度の機会にしましょうか
お休み、橙


























──とても強い力と妖怪の記憶をほとんど持った体をで暮らす事になった気紛れな妖怪は


──何時の事だったか、深い哀しみを乗り越えて


──可愛い式と、可愛い式の式と一緒に、それは幸せに暮らしているそうな








俺にだって……こういうトンデモ設定を書いてみたい時くらいある……。
アティラリ
コメント



1.ほん削除
成程、この発想はありませんでした……

2.名無し妖怪削除
よかです。たいが、よかです。
3.名前が無い程度の能力削除
え…私は頭が良くないから読み取れてない様な気もするけど、
これってルーミアと紫の昔話…なのか。