この日もいつものように読書とついでレベルの店番をしていた。
仕方ないだろ?
だって、今日もお客はまったく来ないのだから……。
それに今日は大雨だ。こんな日に誰も来るはずがないさ。
ふと窓から外を見てみる。
ザーッと雨が降っている。それも尋常ではないほどに。
言うならばバケツ一杯の水をひっくり返したかのような感じである。
「ま、店から出る気もないし、別に僕には関係のないことさ」
雨がポタポタと店の屋根を打つ。
この音をBGMにして、僕はまた読書へと戻ろうとしていた。
そんなときである。
カランカラン……。
ドアベルが香霖堂に鳴り響いた。
こんな大雨の中に誰が来たのだろうか?
読書をやめ、ドアのほうへと視線を向けると、
「霖之助さん。ちょっと雨宿りいいかしら?」
びしょ濡れのアリスがそこに立っていた。
それに走っていたのだろう、少し息も切らしていた。
「ああ、タオルは……いるだろうね」
「お願いするわ」
ぽたりぽたりとアリスの髪や服から雫が滴り落ち、床を濡らす。
まあ、濡れたところでドア近くに困るものがあるわけではないが……。
早く持ってきたほうがいいだろうな。
「ほら、アリス」
「ありがと、霖之助さん」
タオルを手渡す。
頭からわしわしと豪快にではなく、水を落とすかのように上から下へ手で髪を撫でるかのように手を動かす。そして、集めた水をタオルに落としていた。
なるほどうまいやり方だと思った。あれならたしかに床に落ちないだろうし。
「今日はずっと雨が降っていたような気がしたんだが?」
タオルでまた拭いているアリスに向かいそう言った。
「あら? 霖之助さん知らなかったの? 朝はまだ降ってなかったのよ」
「そうだったのかい? 読書で知らなかったよ」
何かに集中してしまうと、なぜか他事が気にならなくなってしまうのが僕の癖だ。
これはいいことでもあるが、悪いことでもある。
なぜかと言うと、人が来たときに僕が気づかない場合がある。
まあ、大抵は霊夢や魔理沙なので別にいいと言えばいいのだが、相手をしないと何をしでかすか分からないから気づかないというのは少し悪いのだ。
「ふふっ、霖之助さんらしいわね。雨に気づかないなんて」
そう、笑いながらアリスはタオルを僕に渡す。
「濡れた服はどうするんだい? 何か良ければ服を貸すが……」
流石に濡れた服で長時間いるというのもよくないと思ったので提案をしてみる。
「貸してもらえるのであればありがたく貸してもらうわ」
「ああ、なら適当に持ってくるよ」
タオルを置きにいくついでに服を取りに行く。
その前に聞くことがあった。
「どんな服でもいいかい?」
「へんなのじゃなければ別になんでもいいわ」
「了解」
タオルを洗濯する籠に入れて、服を探すことにする。
服を入れてあるタンスを開ける。
そこには、霊夢の着ている巫女服や、魔理沙の来ているエプロンドレス、後は僕が創作した服が入っていた。
創作と言っても、そんな大層なものではないのだが……。
「これくらいかな?」
ある一つの服を持って、アリスの元へと向かうことにした。
* * *
「なかなか似あっているよ。アリス」
「あ、ありがと……。じゃなくてっ! なんでこの服なのよ」
顔を赤く染めてアリスが呟くように言う。
「なんでと言われても、霊夢や魔理沙の服よりはそちらのほうがアリス的にはいいと思ってね」
「だ、だからって、紅魔館のメイド服は……は、恥ずかしいわ」
そう、アリスの着ている服は紅魔館のメイド長である咲夜の服をイメージして作った服だ。
メイド服はゴスロリと呼ばれるフリフリのレースが多いものであり、スカート丈は短いほうが動きやすいと咲夜も言っていたためその言葉に従った。
咲夜のと違う点は、肩紐タイプであり、露出度が高くなっていることだ。鎖骨や、肩などが露出しており、いつもとは違う印象を受ける。
「ふむ、そうかい? 僕的にはアリスの服も似たような感じだと思ったからそれのほうがいいと思ったのだが……」
「そ、それはそうなんでけど……」
アリスはそう言いながら、しきりにスカートをぎゅっと掴んでいる。
「どこか不安かい?」
ふるふるとアリスは首を横に振る。
「そうじゃないわ。ただ……そのスカートが短くて……」
なるほどそういうことか。
いつものアリスの格好はロングスカートだったな。
今は咲夜みたいな太ももを晒す短めのスカートだ。
アリスの普段から見えない白い肌の太ももを少しだけ凝視してしまった。
「ど、どこ見てるのよ! 霖之助さん」
どうやらじっと見ていたらしい。アリスの機嫌が少し悪くなったような気がする。
「でも――で――よりは――よね」
アリスが一人呟いているが、聞き取れない。
「アリス?」
「え? ああ、なんでもないわ」
なんでもないのなら別にいいのだが……。
「ね、霖之助さん。この格好ってなにか分かるわよね?」
「メイド……だろ?」
嫌な予感がした。
「なら、私がこれから言う言葉も分かるわよね?」
「いや、想像もつかないが……」
アリスの言いたいことがなんとなく分かってしまったからである。
「嘘ね。顔には分かってはいるが、納得は出来ないって書いてあるわ」
どうやら見破られてしまったらしいね。
「服が乾くまでの間、霖之助さんのメイドになるわ」
なんでこうなるのかね、まったく。
「お茶を飲んでまずは落ち着こうか、アリス」
「なら、私が淹れるから霖之助さんは座ってて」
そういって、パタパタと僕の移住スペースへと走っていくアリスを僕は止めることが出来なかった。
いや、正確にはしなかったというべきなのだろう。
理由としては、今この空気を壊すのは悪いと思ったからだ。
まあ起きてしまったのであればそれに順応することも大事だと思う。
「お待たせ、霖之助さん」
「ああ、ありがとう」
湯呑みを受け取り、一口飲む。
「これは……中々うまい淹れ方じゃないか」
「ふふっ、ありがと」
「あ、今はご主人さまと呼んだほうがよかったわね」
「ぶっ」
思わずお茶を噴き出してしまった。
なんて発言をするんだ、アリスは。
「どうかしました? ご主人さま」
「い、いやなんでもないよ……」
ずいっと顔を近づけてくるアリス。
ま、まずい……。直視出来ないぞ。
アリスは――ではなく、幻想郷にいる女の人は基本美人、もしくは可愛いものだ。
霊夢や魔理沙だって黙っていれば可愛いが、性格があれだから困る。
だから顔を近付かれると直視出来なくなる。
「なーんてね」
アリスはそういうと、顔を遠ざける。
「霖之助さんて意外にウブなのね。顔を赤く染めちゃって」
「まったく、からかうのはやめてくれ……」
「いいじゃない。霖之助さんをからかうのが楽しいんだから」
からかうのが楽しいとか悪趣味だね、まったく。
などと言っている間に雨が止んでいた。
「あら、残念。もっと霖之助さんを弄ろうかと思ったのに」
「それはよかったよ。これ以上やられていたら僕も我慢出来なくなるところだったからね」
「それは押し倒すという意味でかしら?」
「説教でという意味でだよ」
「残念ね、それは」
押し倒してほしかったのかい。
「霖之助さん。またくるわ」
「ああ、今度は晴れた日に買い物に来てくれよ」
「ええ、分かったわ」
アリスの服が入った袋を渡すとドアを開けて出て行った。
「……あ、服着ていたままだったな」
まあいいか。彼女なら返しにきてくれるだろう。
そんなことを思いながら、カウンタに置きっぱなしだった本を手に取り、そして読書へと戻っていった。
「ご主人さま。御奉仕しにきましたわ」
そして、しばらくの間服を返しにきたかと思えばまたメイドの格好をして僕をからかいに来たのであった。
勘弁してくれ……。
仕方ないだろ?
だって、今日もお客はまったく来ないのだから……。
それに今日は大雨だ。こんな日に誰も来るはずがないさ。
ふと窓から外を見てみる。
ザーッと雨が降っている。それも尋常ではないほどに。
言うならばバケツ一杯の水をひっくり返したかのような感じである。
「ま、店から出る気もないし、別に僕には関係のないことさ」
雨がポタポタと店の屋根を打つ。
この音をBGMにして、僕はまた読書へと戻ろうとしていた。
そんなときである。
カランカラン……。
ドアベルが香霖堂に鳴り響いた。
こんな大雨の中に誰が来たのだろうか?
読書をやめ、ドアのほうへと視線を向けると、
「霖之助さん。ちょっと雨宿りいいかしら?」
びしょ濡れのアリスがそこに立っていた。
それに走っていたのだろう、少し息も切らしていた。
「ああ、タオルは……いるだろうね」
「お願いするわ」
ぽたりぽたりとアリスの髪や服から雫が滴り落ち、床を濡らす。
まあ、濡れたところでドア近くに困るものがあるわけではないが……。
早く持ってきたほうがいいだろうな。
「ほら、アリス」
「ありがと、霖之助さん」
タオルを手渡す。
頭からわしわしと豪快にではなく、水を落とすかのように上から下へ手で髪を撫でるかのように手を動かす。そして、集めた水をタオルに落としていた。
なるほどうまいやり方だと思った。あれならたしかに床に落ちないだろうし。
「今日はずっと雨が降っていたような気がしたんだが?」
タオルでまた拭いているアリスに向かいそう言った。
「あら? 霖之助さん知らなかったの? 朝はまだ降ってなかったのよ」
「そうだったのかい? 読書で知らなかったよ」
何かに集中してしまうと、なぜか他事が気にならなくなってしまうのが僕の癖だ。
これはいいことでもあるが、悪いことでもある。
なぜかと言うと、人が来たときに僕が気づかない場合がある。
まあ、大抵は霊夢や魔理沙なので別にいいと言えばいいのだが、相手をしないと何をしでかすか分からないから気づかないというのは少し悪いのだ。
「ふふっ、霖之助さんらしいわね。雨に気づかないなんて」
そう、笑いながらアリスはタオルを僕に渡す。
「濡れた服はどうするんだい? 何か良ければ服を貸すが……」
流石に濡れた服で長時間いるというのもよくないと思ったので提案をしてみる。
「貸してもらえるのであればありがたく貸してもらうわ」
「ああ、なら適当に持ってくるよ」
タオルを置きにいくついでに服を取りに行く。
その前に聞くことがあった。
「どんな服でもいいかい?」
「へんなのじゃなければ別になんでもいいわ」
「了解」
タオルを洗濯する籠に入れて、服を探すことにする。
服を入れてあるタンスを開ける。
そこには、霊夢の着ている巫女服や、魔理沙の来ているエプロンドレス、後は僕が創作した服が入っていた。
創作と言っても、そんな大層なものではないのだが……。
「これくらいかな?」
ある一つの服を持って、アリスの元へと向かうことにした。
* * *
「なかなか似あっているよ。アリス」
「あ、ありがと……。じゃなくてっ! なんでこの服なのよ」
顔を赤く染めてアリスが呟くように言う。
「なんでと言われても、霊夢や魔理沙の服よりはそちらのほうがアリス的にはいいと思ってね」
「だ、だからって、紅魔館のメイド服は……は、恥ずかしいわ」
そう、アリスの着ている服は紅魔館のメイド長である咲夜の服をイメージして作った服だ。
メイド服はゴスロリと呼ばれるフリフリのレースが多いものであり、スカート丈は短いほうが動きやすいと咲夜も言っていたためその言葉に従った。
咲夜のと違う点は、肩紐タイプであり、露出度が高くなっていることだ。鎖骨や、肩などが露出しており、いつもとは違う印象を受ける。
「ふむ、そうかい? 僕的にはアリスの服も似たような感じだと思ったからそれのほうがいいと思ったのだが……」
「そ、それはそうなんでけど……」
アリスはそう言いながら、しきりにスカートをぎゅっと掴んでいる。
「どこか不安かい?」
ふるふるとアリスは首を横に振る。
「そうじゃないわ。ただ……そのスカートが短くて……」
なるほどそういうことか。
いつものアリスの格好はロングスカートだったな。
今は咲夜みたいな太ももを晒す短めのスカートだ。
アリスの普段から見えない白い肌の太ももを少しだけ凝視してしまった。
「ど、どこ見てるのよ! 霖之助さん」
どうやらじっと見ていたらしい。アリスの機嫌が少し悪くなったような気がする。
「でも――で――よりは――よね」
アリスが一人呟いているが、聞き取れない。
「アリス?」
「え? ああ、なんでもないわ」
なんでもないのなら別にいいのだが……。
「ね、霖之助さん。この格好ってなにか分かるわよね?」
「メイド……だろ?」
嫌な予感がした。
「なら、私がこれから言う言葉も分かるわよね?」
「いや、想像もつかないが……」
アリスの言いたいことがなんとなく分かってしまったからである。
「嘘ね。顔には分かってはいるが、納得は出来ないって書いてあるわ」
どうやら見破られてしまったらしいね。
「服が乾くまでの間、霖之助さんのメイドになるわ」
なんでこうなるのかね、まったく。
「お茶を飲んでまずは落ち着こうか、アリス」
「なら、私が淹れるから霖之助さんは座ってて」
そういって、パタパタと僕の移住スペースへと走っていくアリスを僕は止めることが出来なかった。
いや、正確にはしなかったというべきなのだろう。
理由としては、今この空気を壊すのは悪いと思ったからだ。
まあ起きてしまったのであればそれに順応することも大事だと思う。
「お待たせ、霖之助さん」
「ああ、ありがとう」
湯呑みを受け取り、一口飲む。
「これは……中々うまい淹れ方じゃないか」
「ふふっ、ありがと」
「あ、今はご主人さまと呼んだほうがよかったわね」
「ぶっ」
思わずお茶を噴き出してしまった。
なんて発言をするんだ、アリスは。
「どうかしました? ご主人さま」
「い、いやなんでもないよ……」
ずいっと顔を近づけてくるアリス。
ま、まずい……。直視出来ないぞ。
アリスは――ではなく、幻想郷にいる女の人は基本美人、もしくは可愛いものだ。
霊夢や魔理沙だって黙っていれば可愛いが、性格があれだから困る。
だから顔を近付かれると直視出来なくなる。
「なーんてね」
アリスはそういうと、顔を遠ざける。
「霖之助さんて意外にウブなのね。顔を赤く染めちゃって」
「まったく、からかうのはやめてくれ……」
「いいじゃない。霖之助さんをからかうのが楽しいんだから」
からかうのが楽しいとか悪趣味だね、まったく。
などと言っている間に雨が止んでいた。
「あら、残念。もっと霖之助さんを弄ろうかと思ったのに」
「それはよかったよ。これ以上やられていたら僕も我慢出来なくなるところだったからね」
「それは押し倒すという意味でかしら?」
「説教でという意味でだよ」
「残念ね、それは」
押し倒してほしかったのかい。
「霖之助さん。またくるわ」
「ああ、今度は晴れた日に買い物に来てくれよ」
「ええ、分かったわ」
アリスの服が入った袋を渡すとドアを開けて出て行った。
「……あ、服着ていたままだったな」
まあいいか。彼女なら返しにきてくれるだろう。
そんなことを思いながら、カウンタに置きっぱなしだった本を手に取り、そして読書へと戻っていった。
「ご主人さま。御奉仕しにきましたわ」
そして、しばらくの間服を返しにきたかと思えばまたメイドの格好をして僕をからかいに来たのであった。
勘弁してくれ……。
それはそうとアリ霖いいよね!
それはそうと、アリ霖って良いよね。
それはそうと、アリ霖って良いよねぇ。
それはそうと、アリ霖って良いですよね!…目覚めたかも…
それはそうと、アリ霖って良いですね。
この二人は初々しさと大人の雰囲気が同居してて、なんか良い。
それはそうと、アリ霖って良いですよね。