「……」
「……」
澄んだ眼に真横から射られている。
身動ぎ一つしない立ち姿は青く、懸命さを感じさせる。だからといって何もしてやらないが。
「……」
「……」
清澄で哀調の懇願が篭もった視線。
これこそ一途である。受け流し甲斐があるというもの。
「……」
「……」
すさり。空気中の魔力が一歩分揺らめいた。
「……」
「……」
ごくりと唾を飲む音がしたが向きはしない。
代わりに首を軽く傾けた。ただのストレッチの動作に驚いて息を詰めたのが分かって、笑んでしまいそうになる。高まる緊張感が心地良い。
「……」
「……」
すさり。
この空気の中で一歩進むとは、大変よろしい。歩みは続けてこそ。
「……」
「……」
一歩、二歩、三歩。本を読んでいる私の視界の端に小さな足が入り込んで、止まった。
呼吸が聞こえて、何かを言おうとまごついているのが分かる。
だが訊いてはやらない。願うだけでは、叶わない。言わなければ、伝わらない。
ここは悪魔の館。魔の者たちの中でヒトが生き抜くためには、言葉が不可欠なのだ。
しばらく待って、小さい声。
「パチュリーさま」
「何」
顔を上げて咲夜を見ると、強張った顔で服の裾をぎゅっと握って直立していた。
ラピスラズリの眼が強く光っている。
よろしい、あと一息よ。魔女に願いを、その口で。
何度目かの深呼吸を聞いて、
「その本をかしてください」
「ふむ」
これ? と横に据えておいた本を掲げる。咲夜の好きなシリーズの最新作だ。
「約束は?」
「よごしません。かんそうを書きます」
「よろしい。私もまだ読んでないから此処で読んでいきなさい」
「分かりました、ありがとうございます!」
ソファーに埋もれるように座った咲夜と、読書を再開した。
ん? ああ。いいわよ、おやすみ。
「お呼びですかーっと、あらまぁ」
「ブランケットを掛けてあげて」
「分かりました。可愛いですねぇ」
「そうね」
肯定した。私の猫候補なのだ、膝に乗せて可愛がるのは当たり前。
と思っていた日が懐かしい。今ではもう、彼女を猫にするのはほとんど諦めている。少し外飼いをしているうちに犬と呼ばれるようになっていたのだ。
しかし猫の素質があるような行為はしてくるので、微かな希望は残している。
知れてないと思って澄まし顔で紅茶を淹れる咲夜に気づかれないように、膝の上の銀髪を摘まみ落とした。
(鈴でもつけようかしら)(レミリア様に怒られますよぅ)
「……」
澄んだ眼に真横から射られている。
身動ぎ一つしない立ち姿は青く、懸命さを感じさせる。だからといって何もしてやらないが。
「……」
「……」
清澄で哀調の懇願が篭もった視線。
これこそ一途である。受け流し甲斐があるというもの。
「……」
「……」
すさり。空気中の魔力が一歩分揺らめいた。
「……」
「……」
ごくりと唾を飲む音がしたが向きはしない。
代わりに首を軽く傾けた。ただのストレッチの動作に驚いて息を詰めたのが分かって、笑んでしまいそうになる。高まる緊張感が心地良い。
「……」
「……」
すさり。
この空気の中で一歩進むとは、大変よろしい。歩みは続けてこそ。
「……」
「……」
一歩、二歩、三歩。本を読んでいる私の視界の端に小さな足が入り込んで、止まった。
呼吸が聞こえて、何かを言おうとまごついているのが分かる。
だが訊いてはやらない。願うだけでは、叶わない。言わなければ、伝わらない。
ここは悪魔の館。魔の者たちの中でヒトが生き抜くためには、言葉が不可欠なのだ。
しばらく待って、小さい声。
「パチュリーさま」
「何」
顔を上げて咲夜を見ると、強張った顔で服の裾をぎゅっと握って直立していた。
ラピスラズリの眼が強く光っている。
よろしい、あと一息よ。魔女に願いを、その口で。
何度目かの深呼吸を聞いて、
「その本をかしてください」
「ふむ」
これ? と横に据えておいた本を掲げる。咲夜の好きなシリーズの最新作だ。
「約束は?」
「よごしません。かんそうを書きます」
「よろしい。私もまだ読んでないから此処で読んでいきなさい」
「分かりました、ありがとうございます!」
ソファーに埋もれるように座った咲夜と、読書を再開した。
ん? ああ。いいわよ、おやすみ。
「お呼びですかーっと、あらまぁ」
「ブランケットを掛けてあげて」
「分かりました。可愛いですねぇ」
「そうね」
肯定した。私の猫候補なのだ、膝に乗せて可愛がるのは当たり前。
と思っていた日が懐かしい。今ではもう、彼女を猫にするのはほとんど諦めている。少し外飼いをしているうちに犬と呼ばれるようになっていたのだ。
しかし猫の素質があるような行為はしてくるので、微かな希望は残している。
知れてないと思って澄まし顔で紅茶を淹れる咲夜に気づかれないように、膝の上の銀髪を摘まみ落とした。
(鈴でもつけようかしら)(レミリア様に怒られますよぅ)
ネコ咲夜さんも良いよね。
氏の咲夜さんとパッチェさんの関係が好きです。
いろいろ過去を想像させられます。
だるまさんがころんだみたいに様子を伺ってる咲夜さんが可愛いww
「よごしません。かんそうを書きます」
↑
僅かに隙を見せたこの舌足らずな話し方でパッチュさんに可愛がられてた昔の様子が目に浮かびます。
咲夜かわいいよ。
ロリに目覚めてしまいそう……いや、ペドか。
アナタのせいですよwww