じぇねりっく

「依姫」

　今日も玉兎達の訓練をしていると、何やら壷を持ってお姉さまがいらっしゃった。
　ああ、あんなに手をぶんぶぶんぶと振って、走って可愛、はしたない。

「お姉さま、玉兎たちの前ですから……」
「そんなことは今さらどうでもいいじゃない。 それよりこれよ！」

　そういってお姉さまは抱えていた壷の蓋を開けて、私にも中身が見えるようにしてくれた。
　あれ？

「蓬莱の薬じゃないですか！」
「そう！　八意様が残されていったものの一つみたいなの」
「だからってそんな、ただでさえ私たちの立場は……一つ？」
「と、豊姫様ー」
「待ってくだせぇ……」

　私の悪寒と前後するように、最近よく会う二人の門番が大風呂敷を持ってやってきた。
　まさか。

「お、お姉さま？　もしかして」
「よいしょっと」
「っと、いきなり降ろすなよ！？」

　緑色の、古典的な大風呂敷から出てきたのはお姉さまが抱えていたのと同様の、壷、壷、壷。

「もしかしなくても、これ全部蓬莱の薬よ？」

　なんと。
　八意様もきちんと後片付けしておいてくださいよ！
　そんな私の心の叫びなど、お姉さまのお耳には届かないようだ。

「さあ、不良在庫を一掃しましょうか」
「ういーっす。 レイセン配るの手伝え！」
「訓練ちゅーなのっ！」
「よ、依姫様もこちらを、どうぞ」
「はい？」

　女性が苦手らしい門番が何やら差し出してきたので、なんとなく受け取ってしまう。
　無理やり玉兎達を連れてきたお姉さまは、地べたに座って筆をとった。
　そして。

「じぇ～ね～り～っく！」

　お姉さま独特の、丸っこい書体のひらがなが、壷に加えられた。
　じぇねりっく。
　一般的な、枠にとらわれないというような意味だと思った、が。

「はい、みんなこれを全部の壷に書いて、あそこにある」

　お姉さまが指差した先にあったのは、ワゴン。
　そこにあった札にある文字は。

『大特価』

「処分品用ワゴンに入れてね！」
「いや、あのお姉さまそれは」
「依姫！　時代はジェネリックなのよ！」


　あ、必死なお姉さまかわいい。
　そんな煩悩とジェネリックなのかーという暗示が効いてきた。

「ですよねー。　時代はジェネリック！」
「「「「「「ジェネリック！」」」」」」

　その後、結局ジェネリック蓬莱の薬は売れずに焼却処分に相成ったそうな。

　つい、カッとなってしまいました。
　お付き合いありがとうございました。