Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

とある人形の2月14日

2010/02/14 17:28:08
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その日の出来事は、なぜかさしたる意思も持たないはずの私の中に強く刻まれたんだ。
何かって?それはこれから追々話すからまぁ待って欲しい。
そもそも今話しているお前は誰か?私は、とある妖怪と一緒に生活している、小さな人形さ。
君はあれだろ?あの人形ヲタの……あぁごめん、口が過ぎたな。待て、刺されるのは痛くは無いが、
妖怪になりきれていない私は修理が必要だから面倒なんだ。

まぁとにかく、忘れてしまわないうちに誰かに聞いて欲しかったんだ。頼むよ。
そうさ、私はそもそも物を覚えるようにできていない。だから、君ならと思ってな。
……ありがとう。

さて、話を始めようか。





その日は、久しぶりに晴れた日曜日。
湖から竹林まで大きな虹が架かり、空気は実に澄んで、あの大きな山の天辺までが望めそうなほどだった。
冬の間は鈴蘭よろしくいつもおとなしくしていることが多い主人が、ん?ああ、まぁこう呼ぶほど主従関係
があるわけではないが、ここではとりあえずそう呼ばせてくれ。その主人が、この日ばかりは決して浅くなく
雪の積もった丘の上を、くるくるとはしゃぎまわっていたんだ。
私?私はちょっと離れて眺めていたよ。本当に嬉しそうに雪の上を踊るんだ。いつまでも見ていたいって
思ったね。時々スカートがひらっと翻って、え?話が進まない?むしろこの辺の記憶が大事だとあぁわかっ
たからその槍みたいなのを向けないでくれ。

主人はそうしてしばらく鼻歌交じりに踊っていたのだが、突然立ち止まると手を打って、雪の中から一株
の鈴蘭の根を掘り返したんだ。おぉ、よく知ってるね。そう、根にも毒はある。主人はその毒を含んだ根を
小さな手編みの籠に入れて「スーさん行くよ」って私を手招きするのさ。スーさんってのは私のことさ。
私は鈴蘭の精が人形に乗り移ったものらしい……ってまぁこれは竹林に居る医者の受け売りなんだが。
とにかく私は主人に付き従って、その医者のところへ向かったのさ。

気持ちよく飛ぶこと半刻ほど経って、竹林の入り口に着いた。ところが、いつもだったら……ん?すまない、
名前が思い出せないんだ。耳がへにょりとした……おおそうそう、うどんだ。君も彼女の事を知っていたの
か。あまり自信が無い?まぁとりあえずこの場はうどんでいいことにしよう。そのうどんが、居ないのさ。
主人が言うには、あの竹林の中は飛んでいっても歩いていっても迷ってしまうから、こういう日はいつも
うどんが迎えに来ていたらしい。どうしようもないんで、二人でじっと待っていたさ。ずっと雲一つ無い
空を見上げてな。途中カラスが一羽飛んで行っただけで、他には何もありゃしない。

そんなこんなで時間が過ぎ、主人がだんだんうつらうつらと舟を漕ぎ始めたとき、突然ガサッと背後で物音
がして振り返ってみたら、全身茶色まみれのうどんが立っていたんだ。しかも薄い笑いを浮かべてるときた。
「今日の落とし穴はチョコレート風呂だなんててゐったら…もう…」とか何とか呟いてて、って君は怖く
ないのか?そういうのには慣れてる?というかうちもそうだった?そうか、君も苦労しているんだな。
とにかく主人はそんなうどんに連れられて竹林の奥の屋敷に向かったんだ。屋敷に着く直前でうどんが突然
穴に落ちてしまって出てこなくなってしまったんだが、目の前がその屋敷だったから大丈夫だった。

屋敷に入ると、あの医者……そう、永琳といったな。永琳が出迎えてくれた。その様子ときたら
それはもう微笑ましいもんだった。どうしてこんなに遅くなったの?とやさしく声を掛けたり、肩に付いた
雪を払ってあげたり、首筋に付いた小さなほこりを撫でるように取ったり、しまいには冷たくなった唇を
ってあのヤブ医者まじで一回この毒で心臓止めてやろうかっ!っーっ!っーっ!

すまない。ついかっとなってしまった。反省はしているから、後で君のご主人にこの穴の修繕をお願いしたい
んだが……ありがとう。わかった、話を続けよう。

主人は確か季節に1回くらい、永琳に鈴蘭を一株届けているんだ。何でも妖怪の薬の原料なるらしくて
な。その代わりに何かを教わって帰るんだ。主人はまだ生まれたばかりの妖怪でな、何か新しいことを覚える
のが嬉しくてしょうがないんだよ。もう眩しいくらいの笑顔で「永琳!今日は何を教えてくれるの!」
ってもうこれが…っ…はい。それでその日はチョコレートの作り方を教わることになったんだ。君のほうが
よく知っていそうだね。そう、そのバレンタインデーの話も一緒に教わったさ。それで、主人はじゃぁゆーか
に贈るって張り切ってね。最初は永琳はほとんど手伝わずに材料とやり方だけを教えて、主人も頑張っ
たんだ。だがね、君なら知ってのとおりチョコレートというものは上手く作るのが難しい。固まらなかっ
たり、ぼそぼそになってしまったり。その度に主人は挫けずにコンティニューするんだが、如何せん上手く
できない。
10回目を数える頃にはもう目じりに涙が溜まって、手も震えていたよ。

そこで、奇跡が起きたのさ。11回目に、ついにその涙が容器に落ちた。主人はやり直そうとしたが、永琳
はそっと、続けるように促した。そうして、そう、チョコレートは完成した。主人の喜びようときたらね……
あぁありがとう。後で洗って返すよ。うん。だがね、涙なしには語れないこのくだりには、裏があるんだ。
主人は自分の涙で出来上がったって思っているんだが、実はそうじゃないのさ。永琳はね、主人が落とした
涙を、一瞬で別のものにすり替えたんだ。まじかるえーりんZ(チョコレート用)に。
いや君、ここは笑うところではない。後から聞いたんだが、そのまじかるえーりんZ(チョコレート用)は、
どんな人でも美味しくチョコレートを作ることができる魔法のような薬なんだそうだ。もし主人がこのことを
知ったらきっと大層落ち込むから、絶対に言わないでくれ。…そうか、ありがとう。ハンカチを返すときに
何かお礼を添えるよ。

そうして主人は念願の自作のチョコレートを胸に、幽香の所に向かった。主人は緊張していたよ。
私も同じだった。美味しいと言ってもらえるか。それ以前に果たして受け取ってもらえるのか。とね。
もう夜は更け、やっとその大事な人の家に着いたときには亥の上刻に差し掛かっていた。ところが、だ。
家はもぬけの殻だった。ドアさえ開け放ったまま…というより破れたままだった。誰でも何かあったと思う
に足る有様さ。主人はおろおろするばかりだったが、探す宛てがあるわけでもない。私が肩とぽんぽんと
叩いたら、わかってくれたようで、その破れた玄関に座って待つことにした。

その日は新月で真っ暗だった。だからもう、とにかく不気味でね。山で野犬が遠吠えをする度に主人は
びくびくしていたんだ。妖怪に襲われなくて良かった。そればかりは月が無いことに感謝したよ。
さらに待つこと半刻程。もう日が変わろうかという時分に幽香は帰ってきた。とても息を切らしていてね、
よく分からないが「あの天狗今度見つけたらマジ殺す」なんて殺気立っていたものだから、主人ともども
震えて声も出なかった。そうして幽香が玄関に足を踏み入れて、やっと私たちに気が付いた。すると、あっと
いう間に雰囲気が柔らかくなって「どうしたの?こんな時間に」なんて優しく声を掛けるものだから、
主人はわんわん泣いてしまって、あの大妖怪風見幽香がおろおろするばかりでな。これは傑作だった。
今思い出し……ぷっ…くっ……あははははあはあはっ!っーっ!っーっ!

えっ?こっちの穴は自己責任で直せ?いやそこをなんとkはいすみませんそうします。
でだな、もうこれで最後だ。何とか主人を宥めたところで、幽香は部屋の奥から小さな包みを持ってきて、
きょとんとする主人に「今日は何の日?」と聞いてきたのさ。主人が答えると「良く知ってるわね」って
頭を撫で撫でしながら「これは私から」…っそう!ゆうかりんがチョコレートをくれたわけさ!えっ?
名前が?いやそんなことはこの際置いておくんだ。ゆうかりんの思わぬ先制攻撃に主人はびっくりして
自分が作ったチョコレートの包みを取り落としてしまってさ、それを拾い上げて「これはもしかして私に?
あぁありがとうメディスン」なんて言って主人を抱きしめちゃうわけよ!もうそれからというもの
ちゅっちゅちゅっちゅで……っておい君どこへ行くんだ!むしろここからが…おーい!





「あら、上海どこに行ってたの?」
「シャンハーイ...」
「ど、どうしたの?というかどうして槍を持ってるの?何かあった?」
「シャンハーイ...」
「まぁいいわ。あ、そうそう、このチョコレートまた魔理沙に届けてちょうだい。何回渡しても
受け取ってくれないのよ…なんでかしら。私の愛のエキスを練りこんだ特製チョコレートなのに…」
「......モウヤダコノゲンソウキョウ」
とある天狗から、ゆうかりんがニヤニヤしながらチョコレートを作っている写真をもらったのですが、焼き増しいりませんか?

【追記】
これが初投稿です。批評ありましたら是非お願いします。
red vinegar
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
上海…苦労人形だなぁ…
焼き増し一枚お願いします!!!
2.ずわいがに削除
アリス!上海自律してるっ、自律してるよ!?
3.ぺ・四潤削除
ゆうかりんならさっきチョコ持ってきて今ここでニコニコしながらシチュー作ってくれてるから写真は別にいいや。

アリス、愛のエキスって「愛」の「液」……!?
4.名前が無い程度の能力削除
メディスン・永琳・幽香の組み合わせのほのぼの(?)話はいいですねえ。
大好きです。
これからももっとこの組み合わせが増えればいいのに…