あいらびゅー、べいべー！

「あいらびゅー、べいべー！」
　幻想郷中を飛びながら手を大きく広げる。うーん、最高に気分がいいっ！


　ふっふっふ。今年もこの季節がやってきました。春です。そう、春ですよ。

　まだ早い、まだまだ早い。そう言う人も沢山いるでしょう。ですが、甘いです。甘えている場合と違います。

　人間の言葉に「明日出来ることは今日やる」みたいな言葉があった気がします。素晴らしい言葉です。つまり、一ヵ月後出来ることは一ヶ月後よりも一日前にやるということで、その一ヶ月後の一日前に出来ることは一ヶ月前の二日前やるということです。そうして順繰り順繰り指を使って数えていったら、今日じゃん！　となったわけです。

　ふっふっふ。私、滅茶賢い女。





「あいらびゅー、べいべー！」

　春を伝える妖精として、まだまだ冬の妖怪が元気な今でもやれることは沢山あります。準備です。
　そのために、今の叫ぶ言葉はいつもの「春ですよー」ではなく「あいらびゅー、べいべー」なのです。

　毎年不思議でした。春ですよーと一生懸命伝えても、どうも鬱陶しそうな顔されるだけだなと。何故不思議かって、人は朝を伝える鳥の鳴き声を喜びます。でも春を伝える私の声を喜ばないのはおかしいと思ったのです。


　そう考えた私は等々答えに辿り着きました。人間の言葉に「他人に愛されるには、他人を愛さなければいけません」みたいな言葉があった気がします。素敵な言葉です。つまり、私は今まで愛してほしかったけれど、他人を愛したことが無いのではないかと思ったのです。だから今年は春を伝える前に沢山の他人を愛そうと決めました！

　しかし困ったことに私は他人の愛し方をまだ分かりません。大人になれば分かるそうなのですが、それじゃあ遅いのです。どうやって愛を伝えようかと悩んでいたところに、守谷神社の方々が現れました。

「愛ですか。そうですね……。熱いハートでアイラビュー、ベイベーと叫べばいいのです！　本当に伝わります！　熱いハートが大事です！　熱気が大事なんです！　もしいまいち分からないのなら、何故かしらないけれど奇跡の力で動くディーブイディーでイエモンのライブでも見ます！？」

　緑色の巫女の方が教えてくれました。優しいお方です。でもその後の神様達も混ざった会話が熱すぎて怖かったから、逃げ出してきてしまいました。蛙の可愛らしい神様の方に関しては、“いえもん”とやらがどうのこうのとか言って泣き出してしまいましたし。


　そんなこんなで神様達もお墨付きの、魔法の言葉で幻想郷中を愛するのです！
　そうして、春には立派に春を伝える準備を整えるのです！

　ふっふっふ。私、滅茶マメな女。





「あいらびゅー、べいべー！」
「ええっと、どうしたんですか？」
　紅魔館内は怖いから門番に沢山愛を伝えた。


「あいらびゅー、べいべー！」
「あらあら、まだ春にはちょっと早いわねぇ」
　白玉楼で沢山の幽霊を愛した。


「あいらびゅー、べいべー！」
「春……かしらね。まぁ姫には関係無いのでしょうが」
　竹林を愛で一杯にしながら駆け抜けた。


「あいらびゅー、べいべー！」
「あやや、気の早い春の知らせ。いつもと変わらぬ風景に、いつもと違う内容の彼女の叫び。これはいい記事になりそうです」
　妖怪の山だって忘れない。


「あいらびゅー、べいべー！」
「地上は春か。妬ましい」
　最近では地底にも春を届けることにしている。


「あいらびゅー、べいべー！」
「ご主人、あれはなんだろうか」
　最近幻想郷に出来た命蓮寺の人にも、春の素晴らしさを伝えるためにあいらびゅー、べいべー。


「あいらびゅー、べいべー！」
「あー、もう。うっさくて昼寝も出来ないじゃないの」
　寝かせる暇なんて与えない。春眠暁を覚えずっていうやたら格好いい言葉ありますしね。寝てる場合と違います。



「幻想郷全部に、あいらびゅー、べいべー！」


　今年こそ私は滅茶出来る女です！

彼女ほど「！」が似合う人も珍しい。
ぬいぐるみになってもおかしくなく、UFOキャッチャーの景品で巷で見ても違和感なさそうで、ガチャポンであれば中高生に大人気。そんな愛くるしい姿してますね。
ぬいぐるみはこいしちゃんが抱き枕にしてそうです。

ここまで読んでくださった皆様に、あいらびゅー、べいべー！


！　少し前に投稿者名を変更させていただきました。こちらでは初めてですので一応書いておきます。今後も十パーセントの殺伐と二十パーセントの平和とそして七十パーセントの妥協からなる、決して緩々じゃないけれど、それなりに平和な幻想郷を少しでも楽しんでいただけたらなぁと思います。

誤字報告ありがとうございます。
今度こそ無いと思った矢先にこれだよ……。