Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

秘封倶楽部が爆発した。

2010/01/24 23:27:26
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 蓮子が爆発した。

「――メリーの馬鹿っ!」

 叩きつけられたクッションが、ぼふん、とフローリングの床に間抜けな音を立てる。
 私はそれを、呆然と見つめているしかなかった。
 何か言葉をかけなきゃいけない。蓮子に、今目の前で肩をいからせる蓮子に、何か――。
 頭はそう考えるのだけれど、言葉は口の中で空転するばかりで。

「もう――知らない」

 吐き捨てるようにそう言い捨てて、蓮子はくるりと背を向ける。

「あ――」

 私はその背中に手を伸ばそうとするけれど、蓮子の背中がひどく遠くて手が届かない。
 蓮子は歩き出す。私の足は凍りついたまま。蓮子は振り返らず、何も言わず、ゆっくりと歩いて、靴を履いて――部屋のドアが、バタン、と乱暴に閉められて。
 あとには、まだ口もつけていない、湯気をたてたままの夕食と、その傍らに立ちすくむ私だけが残された。

「蓮……子……」

 どうして。
 どうしてこうなってしまったのだろう。
 いつも通り、私たちは一緒にこの部屋に帰ってきて、一緒に晩ご飯を食べようとしていた。
 普段通りの、何も変わらない夕方のはずだったのに。

 ふたりぶんの夕食が、テーブルの上で少しずつ冷めていく。
 それはそのまま――私の蓮子の距離のようにも思えた。
 作りたての熱さは、時間の経過とともにだんだんと薄まっていく。
 そのことに、私は鈍感だったのかもしれない。
 だから――こんな。

 蓮子が投げ捨てたクッションは、いつだか私が買ったキツネ柄のもの。
 随分可愛いのにするのね、と苦笑した蓮子に、私は答えた。
 一緒に暮らすんだから、すぐそれと分かるものの方がいいでしょ? と。
 その時蓮子は、照れくさそうに帽子を目深に被り直したっけ――。

 ああ、思考が空転する。
 今、部屋に蓮子はいなくて、料理は冷めていっているのに。
 私の思考は現実から逃げ出して、蓮子との甘い時間だけを追い求めてしまう。

 ごはんが湯気を立てているおそろいのお茶碗。
 本棚に並んだ、間違えてふたりとも買ってしまった同じ2冊の本。
 狭い部屋にひとつのベッド、ふたつ並んでいる枕――。

「あ……」

 帽子掛けに、いつもの蓮子のトレードマークの山高帽が残っていた。
 忘れていったのだ、蓮子が。
 ――それは、私に動き出す理由を与えてくれる為のものだった。
 山高帽を手に取る。いつもの、これを被った蓮子の不敵な笑みを思い出す。
 その笑顔は、私にとっての、どうしようもなく――代え難い宝物。

 何と言って謝ればいいのだろう?
 どんな言葉で蓮子と向き合えばいいのだろう?
 ――読んだ小説に、恋人と喧嘩したときの仲直りの仕方はあっただろうか。
 そんなシーンはいくつもあった気がする。だけどそれは、私と蓮子の話じゃない。
 蓮子にはちゃんと――私の言葉で謝らないといけないから。
 私は部屋を飛び出す。脇目もふらずエレベーターに乗った。一階へ。ボタンを押して、《閉める》のボタンに手を掛けて、

 ――誰かが、エレベーターに飛び乗ってきた。

「え……?」

 エレベーターのドアが閉まる。動き出す。
 私は山高帽を抱きかかえたまま、凍りついてその顔を見上げる。
 蓮子だった。
 蓮子は目を伏せたまま、壁際に立つ私に歩み寄って――。

 蓮子の手が、エレベーターの壁に触れた。
 蓮子の顔が、吐息が、近付いた。
 ――私の心臓が、爆発した。

「……ごめん」

 消え入りそうな声で、蓮子が囁く。
 それだけで――泣き出しそうなほどに安堵している自分に、私は気付く。

「……ううん、私の方こそ、ごめんなさい」

 首を振って、軽く微笑んだ。笑うことが出来たはずだ。
 目の前にある蓮子の顔が、優しく笑い返してくれたから。

 目を閉じる。蓮子の吐息が近付く。
 唇の感触が、私のそれにゆっくりと触れて――。


 エレベーターが止まった。
 ドアが開いた。


「……あらあらあら、ごめんなさい、お邪魔だったかしら」


 風見優花さんが困り顔でこちらを見ていた。



 私たちは爆発した。
 そそわスレ>>930に捧げます。


*追記
 これを投稿したら30分後にそそわが落ちた件について。創想話が爆発した!

>>1
 風見優花さんについては無印の方の拙作『ヒマワリの咲かない季節』『スタンド・バイ・ユー』をご参照くださいまし。

>>4
 スレの爆発シリーズの作者さんでしょうか。
 拙作のネタ返しありがとうございました。
浅木原忍
[email protected]
http://r-f21.jugem.jp/
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
仕事が速いw
優花は誤字じゃなくてワザとかな?
2.名前が無い程度の能力削除
御馳走様でした。東方っぽいキャラという前提の筈なのに優花さんに紫っぽさを感じた私はきっと異端。
3.名前が無い程度の能力削除
スレで何があったのかは分からないけどありがとう930と作者様
なんだこの夫婦・・・私も爆発した
4.爆発削除
この爆弾は甘い香りがする。とろけそう。
5.名前が無い程度の能力削除
結婚済みな二人ですね
爆発した
6.名前が無い程度の能力削除
既に同棲…いや結婚か!?
素晴らしい。実に素晴らしい。
7.奇声を発する程度の能力削除
うぉいwww …爆発しました。
>2さん
ナカーマ
8.名前がない程度の能力削除
ニア だいばくはつ
9.名前が無い程度の能力削除
爆発って芸術なんだな
俺怖くなったよ
10.ぺ・四潤削除
これを読んだ直後に爆発が起きて本当にこの作品が原因かと思った。
11.名前が無い程度の能力削除
これほどに美しい爆発オチは未だ嘗て見たことがない
12.名前が無い程度の能力削除
>私はそれぞ、呆然と見つめているしかなかった。
それを、かな

ごちそうさまでした。
大変美味しゅうございました。
13.名前が無い程度の能力削除
蓮メリの筈なのに…蓮メリのはずなのに…優花さんに全ての関心を持っていかれてしまうwww
14.プロピオン酸削除
ゆうかりん………
15.非現実世界に棲む者削除
蓮メリはどれだけ喧嘩してもすぐに仲直りできるほどに絆が強いんですね。