Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

本人たちの思う以上に世界の歯車は噛み合って回ってる。

2009/08/31 23:59:38
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 お誕生日。
 それはちょっとした祝い事。
 だから、祝ってあげてもいいかな、なんて思ったのよ。

 ……だって、そういうことしてあげないと、可哀想じゃない。
 いつだって、あの子はひとりぼっちだったから。

 ふぅ。まったく。なんでこの私があんなのの世話を焼かないといけないのかしらね。
 私は善人過ぎるわ。

「ねぇ霊夢。あなた、何か欲しいものある?」
「何よ突然。日頃出してる茶の駄賃代わりに紫が里へ買い出しにでも行ってくれるの?」
「そんなわけないでしょ。稚児じゃあるいし」
「なんなら茶菓子もつけるわよ」
「栗饅頭百個」
「大損じゃない」
「私のお腹周りが得し過ぎて悲惨な目に合いそうだから私も遠慮しておくわ」

 さすがにそんなに食べたら私のお腹が危険な包容力を持ってしまうわ。
 
 と、何か眉を寄せ目を細くして強めに私を睨んでくる。
 そんな怪訝そうに見ることないじゃない。失礼な子。

「いいから何か答えなさいよ」
「なんで答えないといけないのよ」
「私が質問をしているの。質問に質問を返さない」
「何よ偉そうに」

 むかっ。
 
 なんか腹立つ。
 私は親切で云ってあげてるのに。

「勘違いしないことね。あなたほど弱い巫女もないわ。何、私より強いつもり?」
「何よ、云うわね。人と妖怪がそんなに違うものだっていうの?」
「本当のことでしょ?」
「大差ないじゃない」
「見た目がでしょ? 実力は雲泥じゃない」
「ぐっ」

 忌々しげに口元を歪めて舌打ち。
 やーい、いい気味。
 
 ……そうじゃないわよ。
 もう。私がしたいのはプレゼントの話。いけないわね、どうも霊夢の相手をしてると調子が狂う。
 子供っぽ過ぎるんだわ、この子は。

「ほら、いいから答えなさい」
「嫌よ。気味悪い」

 こいつはっ!
 まったく。一々癪に障ることを云うんだから。

「自分の身の回りに必要なものを把握しておくことは大事なことなのよ。それができないなんて、あなた本当に不出来ね」
「紫、その小馬鹿にした笑みやめなさい」
「あら、さっきあなたもしてたわよ」
「そんな顔できるのはあんたくらいのものでしょ」

 霊夢が苛々してるのが良く判る。
 参ったわね。そんな気分にさせたいわけじゃないのに。

「悪かったわ。いいからなんか云いなさい。悪いようにはしないから」

 折れてあげる大人の余裕。
 ふふん。

「……なんなのよ……えっと、じゃあ」

 と、眉を寄せて。真剣に考え始める。
 
 あ、でもあんまり無茶云うんじゃないわよ。分をわきまえなさいね。

「味噌か、とろこぶ」
「そういうのじゃないわよ!」
「なんで怒ってるのよ!」

 馬っ鹿じゃないの!
 そんなもん聞いてないわよ!
 
 ……ぐっ、私も苛々してる。
 今のは霊夢に非はないわ、くそ、落ち着いて。

 深呼吸。
 
「味噌ととろこぶね」
「……何よ、わけわからないわね」
「気にしないで」
「無茶苦茶よあんた」

 五月蠅いな。判ってるわよそんなこと。
 
 しかし、誕生日祝いに味噌ととろこぶ。
 ……嬉しいか、それ?
 安さが爆発している上に、もって数ヶ月の命。
 あげた私が悲しいわ。

「……あっ」

 ん?
 霊夢がなんか真顔になってる。なんか欲しいものでも思い付いたのかしら。
 
「どうしたの?」
「え、あ。なんでもないわよ」

 何よ、違うの。
 残念だわ。

「そういえば紫、紅茶でも飲んでく?」

 おや?
 珍しいわね、紅茶なんて。
 ……というか、ティーサーバーなんてあったんだ。似合わないわね。

「何、どういう気まぐれよ」
「いいじゃない別に」
「いいけどさ」
「あ、でもティーカップはないから湯飲みになるけど」
「……よくそれで客に出そうと思うわね」

 無神経というか、雑というか。
 繊細さが足りないわ。まぁ、気にしないけどさ。私も、たぶん他の妖怪連中も。
 ……人間だってそうか。

「……そうね。たまには、ティーセットが欲しいなぁって思ったりもするわ」
「ふぅん」

 少しは考えてるんだ。
 いいじゃない。客人に気を遣うのは招き手の義務だわ。
 そういうところに意識が回ってきてると少し安心。

 さて。問題は祝いの品だけども。
 どうしたものかしらねぇ。
 
「味噌にとろこぶかぁ」
「なっ!」

 ん?
 霊夢が鳩が豆鉄砲を食ったような顔してるわ。

「どうしたの?」

 訊ねてみれば、顔を赤くして拳を握る。

「こ、この! 馬鹿にして!」
「何よ突然!」

 なんで怒ってるの!?
 
「なんでもないわよ、馬鹿っ!」
「なんでもないのに馬鹿呼ばわりするのはおやめなさい」
「五月蠅いのよ、保護者面しないで」
「保護者になんてなりたくないわよ。いつまでも子供なんだから」
 
 といっても私は保護者代わりなのよね。
 でも、理由なく怒るのはなにかしら。私なんかしたかしら。
 ……してないわよね。
 
「お茶飲んだら帰ってよ」
「判ってるわ。長居する理由もないしね」

 そこまで云うと、互いに沈黙。
 湯飲みを受け取ったけど、なんか礼を云う空気でもなくて沈黙。
 
 紅茶に牛乳が入っていて琥珀色だったりして、なんか湯飲みとミスマッチ。
 普段こんなので飲んでるのかこの巫女は……
 ……あかんで。

「これやっぱり合わないわ」
「うっさい」
「高速道路を走るスプリングボックみたいな感じだわ」
「す、すぷり、何?」
「バシリスクの方がしっくりくるかしら」
「落ち着け意味が判らない」
「何にしても合わないわよ」
「五月蠅いなぁ。判ったわよ」

 頭掻いて誤魔化す。
 やっぱり恥ずかしいとは思ってるんだ。なら紅茶出さなきゃいいのに。
 ……あ、そっか。ティーセットをプレゼントするっていうのも手よね。そうだわ、そうしましょう。

 どこで手に入れようかしら。隙間に落ちてないかな。手頃なの。
 いいや、後で藍に探ってきてもらいましょ。

「うん、紅茶美味しかったわ。またね」
「しばらく来なくていいわよ」

 憎まれ口を。

 そうして、私は家に帰った。
 帰宅後、隙間に藍を投下して探させたけど見つからなかったので霖之助のところにあったティーセットを盗んだ。ついでに服まで盗んだ。いらないからあげた。
 
 
 そして訪れ来る誕生日。
 想定の範囲内だった。
 そりゃさ。
 
 わいわいがやがや
 
 ……混むわよね。

 多い多い。そうだったわ。最近あの子好かれてるんだった。
 いやぁ、人気ね。なんであんなのが好かれるのか判らないわ。
 しかし。
 
 わいわいがやがや
 
 有象無象がわんさかおるわ。
 じゃまくせー。
 
 手にしてると流石に恥ずかしいので、サランラップでラッピングしたティーセットは隙間に隠してる。
 どう渡そう。
 いつ渡そう。

 わいわいがやがや

 散れ者共!

「何してんのあんた?」
「わひゃぁ!?」

 おう何やつ!? 巫女か! 霊夢か!

「ビックリさせないでよ!」
「私何もしてないわよ!」
「背後を取ったじゃない!」
「あんたがこっちにケツ向けてただけでしょうが!」
「ケツ云うな!」

 はしたないわね。

「ん」
「ん?」

 手を伸ばしてきた。

「何? ハンカチ持ってないの? 自分の服で拭きなさいよ」
「トイレ出たてじゃないわよ!」
「違うの?」
「違うわよ!」

 あぁ、プレゼント催促してたのね。

「えっと、その」
「何、ないの?」
「なくもないのだけど」
「じゃあちょうだいよ」
「えっと」

 みんな小物が多いわね。まずい、私の箱大きい。恥ずかしい。

「まだ熟成中なのよ」
「え、本気で味噌なの!?」
「うふふのふ」
「……まぁ、足りてないけどさ。まだ」
「後であげるわ」
「ありがと」
「湿気た顔で感謝しないでよつまらない」
「だってー」

 と、そこまで云ってから、この集まりの主役は腕を掴まれ、人混みに消えていった。
 さようなら霊夢。
 吐かないようになさい。
 
 はぁ。私も幽々子とでも飲んできましょう。


 それからそれから。
 
 見事、轟沈者の群れ。
 酔い潰れたか帰ったか、その二択しかないのが面白い。

 うわ、酒くさっ。
 
「紫……まだいたの?」
「顔真っ赤ね」
「飲み過ぎ」
「何飲んだの?」
「ん~、うどん?」
「できればお酒についてを聞きたいわ」
「えっとね。ラムとブランデーと」
「一つめから想定外なのだけど。日本酒じゃないの?」
「あとビール」
「駄目だわこの子、酔って聞いてない」

 ここまでフラフラした霊夢は久しぶりに見るわね。
 ま、ウワバミ多いし、付き合って飲んでりゃそうなるわ。主役はつらいわね。
 でも、このくらいの方が都合良いかな。

「はい、霊夢」
「ん~、何コレ?」

 隙間から箱を出して渡す。

「プレゼント」

 霊夢は食い入る様に箱を睨んでいる。
 
「変わった容器の味噌ね」
「味噌違う」
「……味噌田楽?」
「味噌から離れなさい」
「じゃあラーメンだ」
「あなたお腹空いてるの?」
「……うん」

 隙間三分クッキング。

 隙間を漁ります。
 出ましたカップ麺。
 お湯を注ぎます。
 完成。

「はい」
「ありがとう……バリバリする」
「そういうものよ」
「ばりばり」

 とりあえず食べてるから好し。

「ほら、開けた開けた」
「ラップが貼り付いて開けづらいんだけど」
「はい、ラジオペンチ」
「ハサミがいい」
「そんな貴方に朗報です。この高枝切り鋏は」
「小さいの」
「……はい」
「ちょきちょき」

 開封。
 そして箱が開かれた。

「……あれ?」

 霊夢は首を傾げた。

「何?」
「何でこんなの入ってるのよ。味噌ととろこぶじゃない」

 こ、こいつ……

「……何よ、そっちの方が良かったの?」
「そんなわけないじゃない。これが欲しかったのよ!」

 おぉ!?

 ……酔ってるのか素直ね。可愛いわ。
 
「やるじゃない紫。愛してる」
「くっ、油断した、今の効いた……」
「キスしたげようか」
「その辺にしときなさい酔っ払い」

 可愛いけど往きすぎは良くないわ。
 節度が大事。

「んー。じゃあ、紅茶淹れてあげる」
「あら」

 嬉しそうな顔。
 嬉しく成るじゃない。好いことした。後で霖之助に代金支払ってあげましょう。

「好いティーセット手に入れたしね」
「もう使う気? 気が早いわね」
「使ってなんぼでしょ」
「それはそうよね」

 そういうと、すくりと立った霊夢は台所へと向かっていく。
 
「霊夢」
「ん?」

 寝惚け眼が振り返った。
 
「おめでとう」

「……ありがと」

 素直に礼を云われ、少し硬直。
 ……ビックリ。酒の力って凄いのね。

 と、照れたのか、霊夢はさっさと台所へ消えてしまった。
 
 ふふ、可愛かった。
 今日の紅茶は、砂糖いらないかも知れないわね。
ちょっと真面目な作品書いたから真面目な後書き書く。

初めまして。僕、焼き竿。
焼き竿
コメント



1.sirokuma削除
全力でニヤニヤさせていただきました。
2.喉飴削除
あまっ!
あまーい!
甘かったです。
3.削除
>サランラップでラッピングしたティーセット
声出して笑いました。
微笑ましい距離感がいいですね。
4.削除
ハッハッハッ、ゆかれいむとはやってくださる(砂糖嘔吐中…
霊夢可愛いよ霊夢いや二人とも可愛いよ!?(何
5.名前が無い程度の能力削除
>ティーセットを盗んだ。ついでに服も盗んだ。

こーりん「ひ、ひぃー!」
紫「ちょっと大きめ…しょうがないか」


こうじゃないのですねw
6.名前が無い程度の能力削除
ゆかれいむ来たッ!

甘すぎない感じが良いですねぇ。
7.謳魚削除
何てちゃんとされた焼き芋さん…………!

格好良いぜアンタ。

ん、ただ、ちょと、限k~~~~~~!(砂糖嘔吐無制限開放中


…………ふぅ、次で二十連チャンか…………。
8.名前が無い程度の能力削除
甘々な感じながらも、ゆかりんの霊夢への接し方が原作や原作関連書籍の雰囲気を踏襲しててとても良かった
9.名前が無い程度の能力削除
ゆかれいむってほんとーに良いものですね
っていうか焼き竿さんって焼き芋さんじゃなかったんですね、あとがきで気付いたw
10.名前が無い程度の能力削除
俺も焼き芋だと思ってた…サーセンw

紫+霊夢=我が幻想郷
11.名前が無い程度の能力削除
紫てめぇ勝手に人の家から盗んだ物プレゼントしてるんじゃねぇw
ちゃんと後で代金払えよ
12.名前が無い程度の能力削除
芋じゃない…だと?
ほんとスイマセンでした;
あま
うま
13.名前が無い程度の能力削除
さ、サランラップて…
せめて普通にラッピングをwww
14.謳魚削除
二回目失礼しまーす。



御名前間違えてすいませんしたぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
15.奇声を発する程度の能力削除
名前間違えて覚えてたぁぁぁぁ!!!!!
芋だと思ってたwww

確かに砂糖はナッシング!
16.名前が無い程度の能力削除
ゆかれいむっていいね!
17.名前が無い程度の能力削除
初見はどこからどうみても焼き芋です
本(ry
18.名前が無い程度の能力削除
おぉ、甘い甘い

芋と間違えてすいませんでしたぁ!
19.名前が無い程度の能力削除
理不尽だw
20.名前が無い程度の能力削除
>「ありがとう……バリバリする」
それまだ3分たってな(ry