Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

吸血鬼は十字架を怖がらない

2009/08/10 19:11:11
最終更新
サイズ
4.5KB
ページ数
1

分類タグ


「ええっ!? 十字架は怖くないんですか!?」

 夜闇の中、宴会に沸く博麗神社。その一角から上がる驚嘆の声。

 『東風谷 早苗』、奇跡を起こせる元”外”の人間。守矢の神を祀る風祝だ。その
眼前の、妙に誇らしげな幼い姿は『レミリア・スカーレット』である。十字架といえば
そう、吸血鬼。聖なるシンボルを掲げれば恐れおののき倒れ伏す、それが外の世界の
常識であったのだ。

 そう思っていざ吸血鬼であるレミリアに話を聞いてみれば、笑いと共に否定の言葉。

「あぁ。なんだってあんなものを怖がらないといけないかな」

 もう一度そういって、傍らのメイド『十六夜 咲夜』に酌を促す。グラスになみなみと
注がれる鮮血色の液体。咲夜特性ヴァージンメアリーだ。ノンアルコールカクテルなので
お子様でも安心である。レミリアは満足そうに頷いてからグラスをあおる。その姿は
まさにカリスマ。

「……って、うむ?」

 玻璃の器から唇を離し、早苗を見てから眉をひそめるレミリア。咲夜もそちらを見て、
くすりと笑った。その早苗は、箸を十字に構えレミリアに向けながら、やたら神妙な
顔をしている。しばらくそうやった後に、一言。

「ほ、本当に十字架は効かないんですねぇ」

 そんな事を言うのだからついついレミリアも吹き出してしまった。

「くく……はは、ははははは!! さ、早苗。だめだよ、だめだめ。それは箸だ。十字架
なんかじゃぁない! あはははは!! やはり外の世界の人間は面白いな!」

 笑いのツボにでも入ったのか、腹を抱えて笑い転げるレミリア。咲夜も声を上げては
いないが、笑いをこらえている雰囲気は早苗にも伝わる。少々むっとした。

「ほ、本当ーっにっ、十字架は怖くないんですね!? な、なら今度ちゃんとした
十字架で試して構わないですよね!?」

 息巻き急いて問いかける言葉に、
「えぇ、構わないわ」
レミリアはにやりと大物っぽい笑みを浮かべて返した。






 その次の次の日、である。

「お嬢様、早苗さんがいらっしゃったそうですが、いかがいたします?」

 テラスにて優雅に星空と紅茶を楽しんでいたレミリアに報告するのは咲夜である。
門番である『紅 美鈴』から妖精メイドに、妖精メイドから咲夜にへと伝言が走った。

「ほう、来たか。通してあげなさい」

 紅茶を飲み干すとやおら立ち上がるレミリア。部屋へと戻れば、上座に置かれた豪奢な
椅子に腰掛ける。咲夜も妖精メイドに早苗を通すよう指示を与え終えて、レミリアの横に
佇んだ。

 新たに注がれた紅茶で喉を潤し、不意に不敵な笑みを浮かべるレミリア。

「なぁ、咲夜」

「はい?」

「やはり外の人間とは面白いものね。この私、夜の王レミリア・スカーレットを試そう
だなんて」

 そう呟き、クククっと喉を震わせ密やかに笑う様はまさにカリスマの権化。

「今にあの娘にもレミリア様の御威光が分るかと」

「ふふ……あの娘の驚く顔を想像すると、背筋がゾクゾクとするわね」

 どこか悪役っぽい笑みを交し合うふたり。

 と、
「お嬢さまー。早苗さんがいらっしゃいましたー」
ドアの向こうからはきはきとした美鈴の声。門から直接連れてきたのだろう。ふん、と
一つ息を吐いてレミリア。わざと大儀そうに言う。

「通せ」

「はい、かしこまりましたーっ」

 そんな返事があってから、応接間の大きな扉がゆっくりと開く。招かれた風祝の少女が
一歩、部屋の中に入る。その手に十字架を握り締めて。

 その瞬間だった。レミリアの手から紅茶のカップが落ち、乾いた音を立てて割れる。
笑顔は引き攣り、思わず椅子から滑り落ちそうに……いや、滑り落ちた。腰を抜かしたのか
這いずり回り、怯えた声で従者の名を呼ぶ。

「さ、咲夜ッ! 咲夜ぁっ!?」

 しかし返事が無い。おそらくは面倒ごとを避けて姿を消したのだろう。ひらりと
レミリアの眼前に落ちたトランプ、。ハートのエースには、
”がんばれ夜の王☆ さくや”
とやたらめったら少女趣味全開の筆跡で書かれてあった。逆上してそれを引きちぎる
レミリア。その彼女に人影が落ちる。

「レミリアさん」

「ひっ!?」

 早苗の声に振り向いて、悲鳴を漏らしながらあとずさるレミリア。早苗は手にした
十字架を大きく掲げている。それを見て、レミリアは瞳に大粒の涙を溜め、いやいやと
首を振る。

「さ、早苗。そ、その十字架を、は、離しなさい、い、今すぐ、今すぐに……ひぃいっっ!!」

「何言ってるんですかー。本当に効き目があるかどうか、まだ試してないんですよ? 
それとももう効いてるんですか?」

「にゃ……何をバカな! こ、効果なんて出てるわけないで……はっ!?」

 墓穴を掘った。レミリアはそう直感した。今の言葉を受けた風祝の少女は朗らかな
笑みを浮かべた。

「じゃあ、いきますよ。てやぁーっ!!」

 妙な掛け声を上げて、早苗は十字架を天へと更に大きく掲げた。ひっ、と小さく息を
呑むレミリア。もはや身体は萎縮し、足も手も動かない。涙で滲んだ視界の向こうで、
早苗が十字架を振り下ろす。

 その十字架は、十字架というべきだったろうか。いや、違うだろう。それを正しく
描写するならこうだ。

”オンバシラ二本を十字に組み合わせ、外れないよう十字の基部を注連縄でぐるぐる巻きに
したもの”だ。

 そんな凶悪な代物の効果を確かめるために、今まさに、早苗はレミリアの小さな
額めがけて十字架を……!!












 
咲夜「そんな訳でお嬢様は電柱恐怖症になられたようです。あれ、電柱ってなんでしょう?」

れみ「やぁ、やぁなのぉ……硬くてぇ、太くてぇ、痛いのやぁらろぉっ!!」

 え? 早苗さんの細腕でオンバシラなんて振りかざせるのですかって? そりゃぁ。

\  /
●  ●  <そんな常識に囚われてはいけませんよ!
" ▽ "   あとたいていのことは奇跡で何とかなります。

らしいです。はい。白でした。

[email protected]
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
こ れ は ひ ど い
やっぱり早苗さんはどSだな
2.名前が無い程度の能力削除
いやこれ別の意味で恐がらせただけじゃねぇかwww
てか読まなくていい空気を読んだものだな、少女趣味さんよぅ
3.奇声を発する程度の能力削除
奇跡を使えばなんでもなるのかwwwwww
もう、早苗さん=天然どSでいいんじゃない?w
4.名前が無い程度の能力削除
それは十字架と呼ぶには、あまりに大きすぎた。
大きく、太く、大雑把すぎた。

それはまさに……鈍器以外の何者でもねぇだろう、おいwww
5.名前が無い程度の能力削除
う~~~ん?
6.名前が無い程度の能力削除
めーりんもこんな物騒なもん背負った客を普通に通すなよw
7.名前が無い程度の能力削除
違うからww
それ物理的な攻撃ですからぁぁっ!ww
8.名前が無い程度の能力削除
なんだこれ
9.名前が無い程度の能力削除
聖なる神徳パワー(笑)を直接叩き込まれたのですね
10.名前が無い程度の能力削除
いくらなんでも応接間の扉でかすぎるだろw
オンバシラ通せる大きさとかw
11.名前が無い程度の能力削除
吸血鬼じゃなくても怖いだろwww
12.名前が無い程度の能力削除
ただの物理火力www
13.名前が無い程度の能力削除
美鈴がなんか一言言えwww
14.名前が無い程度の能力削除
これは恐ろしい物理攻撃力www
15.名前が無い程度の能力削除
流石美鈴。
何も言わずにお通しする、それが美鈴のスルースキル。
グリモなんちゃらに絵を描かれなかったからって拗ねんなよ
16.名前が無い程度の能力削除
硬くて太くて痛いのはヤだよね。
17.名前が無い程度の能力削除
オンバシラを吸血鬼にって
彼岸島思い出した