Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

『娘が親に甘える時間って短いよね』の巻き

2009/08/10 18:49:29
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朝の陽射しが部屋を包み、起こすことを躊躇わせるこの時間。

八雲紫の式神である、八雲藍は暖かな布団の中で重き瞼を微かに開けた。

「…ん、もう朝か…。朝食を作らないと…」

家事は藍の担当である。

彼女の主人である、紫は夜行性で夕方から夜が活動時間である。

従って、藍が家事を放棄すれば全員が困るという話になる。

「さて、起きなければ…ん?」

起きようと、体を動かしてみるが左腕が妙に重い。

藍はその理由が大凡分かっているため、

布団をそっと退けてみた。

すると、案の定藍の式神である、橙が左腕を抱き枕にして熟睡していた。

「こら、橙。離れなさい」

顔をにやけさせて「離れなさい」と言われても、説得力は皆無である。

「んー。らんしゃまの腕、暖かーい…」

と、呟いてまた夢の世界へ旅立ってしまった。

頭でも叩いて無理矢理離すことは可能である。

だが、それでは橙がかわいそうだし、自分がそうしたくないのである。

もし、橙に嫌われてしまったら…。なんて思ったら手が出せるわけがない。

「仕方ない…。橙が起きるまで待つとするか…」

橙が起き、八雲家の活動し始めたのは午後に入ってからだった。






「さぁ、橙。今日の勉強を始めるぞ」

藍は毎日橙に、勉強を教えているのだ。

藍の考えでは、「八雲家になるなら、少しでも博識であったほうがよい」

というものらしい。

「えー、勉強きらーい…」

素直に勉強してくれたら苦労はしないのは、どこの親も変わらないだろう。

「えー、じゃない」

橙の嫌そうな顔を見てると、どうしても甘やかしたくなるが、

彼女の将来の為、ガマンするしかなかった。

「じゃあ終わったら遊んでくれますか?」

「まじめにしたらね」

勉強さえしてくれれば、遊ぼうが甘えてこようが、

構わない、寧ろウェルカムである。




昼食を終え、勉強をし始めたのだが…。

「だから、橙。111×111=111じゃないだろう」

「だって1×1=1じゃないですか。だから多くなっても…」

こんな具合で、さっきからまったく進まない。

「1桁の場合はそうかもしれないが、多くなると数も変わるんだ」

問題に悪戦苦闘中の橙の顔もずっと見ていたいが、

それだと、勉強の意味がなくなってくる。

「そっか、繰上げになるんだ!」

悩んでいた顔が、一瞬でぱぁっと明るくなった。

この顔はいつ見てもかわいいものである。

そして時間が経ち、橙の勉強も区切りのいい所で終わった。

「よく頑張ったな、偉いぞ」

自分で考え、、頭を撫でてやる。

「えへへ、らんしゃまの手気持ちいいですー…」

目を細め、私に擦り寄ってくる橙が堪らなく愛しくなる。

「さて、約束だ。何して遊ぶ?」

橙がまじめに勉強してくれたので、こちらも約束を守らなければならない。

「うーん…。らんしゃまの尻尾で遊びたいんですけど…ダメですか?」

手を前で組み、目をキラキラさせて頼む橙。

そんな上目遣いでお願いされたら、断れるわけないだろう。

「あー、分かった。好きにするといい」

自分が親ばかだってことぐらい分かってる。

けど、橙の喜ぶ顔を見てると親ばかでもいいかな…って思ってしまう。

「えへへ、らんしゃまの尻尾ー」

顔は見えないが、多分幸せな顔をしてることだろう。

私の尻尾で幸せになれるのなら、毎日でも構わないと思っている。

もふもふ。






夕刻が近くなり、今晩の晩御飯の食材を買いに行こうとすると、

そっと、私の裾を掴み「私も行くー…」とでも言ってるかのように、

目が語っていた。

「橙は今日は何が食べたい?」

化け狐と、猫又という種族問題を除けば、

二人は人間の一般家庭のそれと、然程変わらないだろう。

「らんしゃまの作る料理だったらなんでもいいですよ」

嬉しいことを言ってくれるが、親にとってそれは困る注文の1つである。

「じゃあ今日はカレーにしようか」

そういって橙と二人、夕暮れに沈む町を歩くのだった。






晩御飯を終え、お風呂に入ろうとしてた時だった。

「らんしゃまと一緒に入りたいんですけど、いいですか?」

いくら同姓で、家族だからといっても気恥ずかしいものもある。

かと言って、断る理由もない。

「いいぞ。入ろうか」

服を脱ぐ際、彼女の細やかな肌に目がいってしまった。

さすがにこれ以上は危ない種類に入ってしまう。

できるだけ、目を逸らして入るようにした。

「ねぇ、らんしゃま。どうして私のこと見てくれないんですか?」

「え?ちゃんと見てるよ?」

さすがに1回も目を合わせてないと、そう思うのも無理はない。

「私のことが嫌いになったんですか?だから顔を合わせないんですか?」

あぁ…、余計な邪念が彼女を傷つけてしまったようだ。

これでは親失格だな…。

「そんなことないよ。私は橙のこと大好きだよ」

たかが、肌に目をやったぐらいで何を怯えていたのだろうか。

「私もらんしゃまのこと大好きです!」

この子は本当にいい子だ。できればずっとこうやって甘えててほしいが…。

それは難しいというものだろう。

何れこの子も成長し、今のように甘えなくなるだろう。

だから、今この時を堪能しなければならない。

そう思いながら私は、体を洗うために風呂から上がるのだった。







「さて、もうそろそろ寝るか」

現在の時刻は深夜に回ろうとしている。

明日も早起きな為、そろそろ寝なければならない。

布団に潜って半刻は過ぎた頃。部屋に橙が入ってきて、

「らんしゃま…。怖いから一緒に寝ていいですか…?」

大方、怖い夢でも見たのだろう。

朝に橙が腕に絡まってたのも頷ける。

「ああ、いいよ。一緒に寝ようか」

そういうと、橙は昨日のように

左腕に小さな手と足を絡ませてきた。

「やっぱりらんしゃまの腕あったかいです…」

妖怪の結婚制度はどうなってるんだっけ?と、

くだらないことに深く考えるのも最近多くなった。

何れ橙が好きな人も出てくるだろう。

そうなれば私はお役御免となるのだろう。

それはそれで、寂しいが橙が幸せならそれでいい。

「おやすみ、橙」

「おやすみなさい、らんしゃま」

そういって私は意識を手放した。

















「ねぇ、私の事忘れてない!?晩御飯は?ねぇ藍?」

その日、紫は1日中彼女らに忘れられていたそうな。

「いいわよ…。一人で晩御飯食べるから…。味噌汁美味し」
ども。

橙の口調が人によって様々なので、苦戦しました。

ちぇええええええんを入れたかったんですけど、

藍のテンション的に出せませんでした。

悪しからず
だふん
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
なんて危なっかしい愛情…!
だがそれがいい、和むのぜ。
2.名前が無い程度の能力削除
俺もこんな藍みたいな妖怪になりた・・・え?無理なの?
3.名前が無い程度の能力削除
ああ、橙かわいいよかわいいよ橙