Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

なりきること

2009/07/25 13:46:58
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 今宵、月は紅く煌々と浮かび上がっている。

 風も無く、音も無く、ただひたすら夜のみが時に沿って進み続けているのみであった。

 紅く、そして赤いこの屋敷においてもこの幻想郷他の地域となんら変わらず、ただの例外一つも無く成り立ち続け、唯の一つ違うとすれば、この屋敷の主たちが夜の世界の生者であるという点のみであった。


 数少ない窓からは、闇の中においてひどく不釣合いな輝きを放つシャンデリアと薄暗い蝋燭の明かりのみが、ただ外に向かって流れ続けている。














 レミリア「レッドムーン・プリズムパワー!メイクアップ!」

      「愛と勇気のセーラー服、美少女戦士!」

      「セーラーレミリア!」


 赤い屋敷の中でもひときわ紅い部屋の中でただ一人、幼き悪魔がかつての英雄の装束にその身を包み込み、見栄を切っていた。


 咲夜「お嬢様。」


 不意に扉が開かれ、従者が一人その姿を現した。


 レミリア「あら、咲夜。ちょうどいいところに来たわ。」

 咲夜「セーラー咲夜については全力で拒絶いたします。」

 レミリア「残念ね。せっかく青いセーラー服を用意したのに。」

 咲夜「お嬢様の考えに賛同する者を探し出すことは非常に困難かと。」

 レミリア「困ったわね。巫女には赤いセーラー服、使いの者には緑のセーラー服、
       狐には黄のセーラー服、盗人には着ぐるみをそれぞれ用意したのだけど。」
      「ついでに言えば、店主にタキシード。」

 咲夜 「残念ながら、皆無でしょう。」
     「…付け加えるのならば、この幻想郷のどこにも銀水晶は存在せず、
      また将来的にクリスタルゲンソウキョウに改名される可能性も…極めて低いと思われます。」
     「さらには、お嬢様が道具屋婦人に成り果ててしまうという根本的な問題があります。」

 レミリア 「それは、由々しき事態ね。特に最後述の部分について。」
       「…少々、歯がゆくもあるけれどセーラームーンごっこは中止にせざるを得ないわ。」

 咲夜「最良の決断かと。」


 レミリアが片手を振ると、身にまとっていたセーラー服が刹那のうちに消え、いつもの赤いドレスへと移り変わった。


 レミリア「私は退屈よ。いつもそうなのだけれど、今は、特に。」
      「…かといってなにやら企むほど暇ではない。」
      「いえ、どちらかと言えば、何でもいい、新しく考え出すのは、今はとても億劫…。」
      「それゆえに暇が消え去るほどの新鮮さと、新しく考える必要の無い手軽さの両立を模索すれば…。」

 咲夜「必然的にごっこという結論に至ります。」

 レミリア「その最有力候補が一つ失われたわ。」

 咲夜「申し訳ございません。」

 レミリア「致し方が無いわ。しかし、このような状況を事前に想定して複数候補を選定していたことが不幸中の幸いね。」
      「次なる最有力候補を選択するメポ。」

 咲夜「重ねて残念ながら、前述の理由及び結論がそのまま当てはまります。」

 レミリア「大丈夫。第一期よ。」

 咲夜「それでも最低、五名必要になります。」
    「加えて、主格二名はそれぞれ、黒と白。
     支援側に至っては両名、クリーム色で、とてもお嬢様のイメージとは釣り合わないと思われます。」

 レミリア「では、第三期か。」

 咲夜「察するに選定における要点において、知名度及び人気が大きなウェイトと占めていると思われます。」
    「…その点から考慮した場合、妥協とするにはあまりにも不適当かと。」

 レミリア「迅速なる認識ができたわ。」
      「…では、あなた自身の率直な考えをぜひ聞かせて欲しいのだけれど。」

 咲夜「かしこまりました。…僭越ながら少々聞き耳を立てていただけると幸いでございます。」
    「この十六夜咲夜、積極的介入、特に着用は全力かつ、全意において拒否いたしますが、
     その他演出、手配等の黒子的役割の全てにおいてはお嬢様の意志、意向の全てが完全に満たされるまで、
     並びに満たされ続けるまで労力を惜しまぬ次第でございます。」

 レミリア「つまるところ、私個人単独で成立し、なおかつ他者の強制的、契約的介入によらず、
       さらには好意的、誘惑的介入を期待することの出来るものが現時点における最有力の候補であると?」

 咲夜「十六夜咲夜の総意にございます。」

 レミリア「で、あるならば…。」

      「…」

      「…直ちに衣裳部屋より衣装及びリボン二つを用意しなさい。」

 咲夜「かしこまりました。月光浴の中さぞかし見栄えることでしょう。」
    「選曲はいかがなされましょう?」

 レミリア「私はただ唯の一つ崇拝される存在よ。」

 咲夜「ただちにご用意いたします。」


 その言葉と共に従者の手には、主の望みのものが抱えられていた。時を操るその力は赤い悪魔の失われやすい興味、衝動を長く成り立たせる。

 従者と主は各々のなすべきことを各々が持つその力を持って執り行った。
 僅か一刻経たぬうちに完全なる「なりきり」にその身、心を移すことのできた幼き悪魔は、終始笑顔のみを外に放ち続けていた。

 そうして、すべてが最良の形で整い終わり、レミリア・スカーレットは静かに脇に控える従者に問うのであった。


 レミリア「…今宵、確保できた場所についてだけれども。」

 咲夜「博麗神社ですよ。博麗神社。」
蓮子「メリー、大変! 大学が火事よ!」




P.S.

ご指摘ありがとうございます。
 一部改定しました。
KISIDO
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
左側の合わせが中途半端。
2.名前が無い程度の能力削除
なんかよくわからんが咲夜△www