Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

唯一つの不変なる真実

2009/07/25 06:38:18
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「私、は――」

八雲紫が目を覚ます。
マヨヒガの自室。几帳面に敷かれた布団に彼女は臥せていた。
直後、思い出し、そして現実を突きつけられる。

「ああ、私、は……」

敗北したのだ。





ただやられた訳ではない。
せめてもの抵抗として一撃だけは与えたが、そんなことは何の意味も成さなかった。
他に為す術など何も無かった。
軽い気持ちで彼のものに挑み、そして真正面から、高い矜持と共に粉砕された。
境界を操る能力など、一切通じはしなかった。
何度挑んでも結果は変わらなかった。
奴は『唯一つの不変なる真実』を最強の武器へと変え、紫を散々に打ちのめしたのである。

「そしてこの様、ね」

力尽き、倒れたところを式に救助されたのだろう。
奴はそんな我々を歯牙にもかけず、悠然と見下していたに違いない。
まさに無様。
慢心が無かったといえば嘘になる。
しかし、たとえ最初から全力で挑んだとしても、結果は何も変わらなかったであろう。
だが――
はらわたが煮えくり返る思いとともに紫は身を起こした。そして無言で側に控える忠実な式に告げる。

「藍。もう一度、奴に挑むわ」

それを聞いた式はわずかに顔色を変える。

「……紫様。お言葉ですが、何度挑もうと、結果が変わるとは思えません」

敗北が確定しているというその言葉に、紫の眉が不快気に寄る。
しかし式はそれに怯むことなく言葉を重ねる。

「彼奴はある意味で閻魔と同質の存在です。いえ、はっきり言って彼女以上です。
 そもそもからして逆らえるような相手ではありません。
 真の意味で誰にもどうする事の出来ない不可抗力なのです……!」

だが紫は頑なだった。

「わかってるのよ、そんなことはッ!
 だが、このまま引き下がれると思って!?
 この八雲紫ともあろう者が!
 それに、それに可能性は決してゼロではない筈よッ!」
「紫様……!」

平時の彼女であれば、僅かな可能性に縋りつくのではなく、僅かな可能性を百パーセントに変える方程式を打ち立てる筈だ。
藍は彼女が冷静さを欠いているのを認めた。
非常に珍しい事であるのは確かだ。しかし、全く有り得ないことでもない。
短い付き合いではない。時に彼女が取り乱す様も、数えるほどには目にした事もある。
そしてそんな時の、彼女の役割も決まっていた。

「ならばせめて、勝つ可能性を少しでもお上げください。
 彼奴めは傲慢です。何度でも紫様の挑戦を受ける事でしょう。
 しかし、私は私が主と定めた貴女が、何度も何度も無様に地を這う姿など見とうありません」

何とぞ、と、藍は地に付して懇願した。
その様に紫もようやく冷静さを取り戻した。

「……わかったわ。今は、貴女の言に従いましょう」
「有難う御座います」
「計画は貴女に一任します。正直、今の私は正気とは言い難いわ」
「承りました」

その日から、紫の修行が始まった。
紫に限らず、成長が緩やかな妖怪が、鍛錬によって地力を伸ばすのは、人間のそれよりも困難だ。
特に大妖怪ともなれば、伸びしろも尽きかけていることが多い。
それでも紫は諦めなかった。執念、いや、怨念とすら呼べた。
一日の睡眠時間を半分以下に減らし、宴会への参加を控え、己の式や式の式、博麗の巫女をも巻き込んで厳しい修行を積み続けた。
異変の前触れかと天狗や黒白などがちょっかいをかけても、目もくれなかった。
幻想郷じゅうの注目を集めながら、紫はそれらの情報全てを遮断し、藍のプランをもとに、ひたすら自己練磨を続けた。





そして三ヵ月後。
遂に決戦の時が来た――

「もはや多くは申しません。御武運を――」
「紫様、頑張ってください! 負けないで!」
「ったく、ここまで人を付き合わせて何も言わずに一人で行くつもりなんてね……。
 あんたがそれほど本気になって、何と戦うつもりなのかは知らないけれど、絶対に勝ちなさいよ?」
「私にはなんだかよくわからないが、努力する奴は嫌いじゃないぜ。頑張れよ!」
「他ならぬあんたの為だから事情も聞かずに神社での宴会も控えたんだ。
 事が済んだら紫の名で大宴会開いてもらうからね?」
「同じく。事が済んだら存分に取材に応えていただきますからね?」
「……少し前まで外の世界で暮らしていた私は、多分誰よりも貴女の葛藤に共感できると思います。
 貴女に私と守矢の神の、力及ぶ限りの奇跡を。心から、応援しています……!!」
「貴女の運命が少しだけ良い方向に向くようにしておいたわ。……勘違いしないで。
 五年に一度あるか無いかの咲夜の頼みだもの。
 私には事情はわからないけど、しくじったりしたら承知しないわよ?」
「私の薬を頼ろうとしなかった貴女の勇気と英断に、心から敬意を表するわ。……頑張りなさい」

決戦の空気を感じ取り、神社に集まった幻想郷の住人たちの声援。

「みんな、ありがとう。……行ってきます!」

紫は感涙しながらも背を向け、決戦の場へと歩を進めた。





「幽々子様、紫様に何か声をかけなくてよろしいのですか?」
「……私には、今の紫に対して何も口にする資格は無いわ。ただ、祈るだけよ……」





……やがて。
誰のものとも知れぬ咆哮と、轟音が、虚空に響き渡った――




















戦果:
 霊夢はレベルが10上がった!!
 藍はレベルが5上がった!!
 橙はレベルが20上がった!!
 橙は八雲の姓を授かった!!
 紫はレベルが1上がった!!
 紫は体重が500グラム下がった!!
「紫よ……私は悲しいわ。貴女なら、食の真理を理解できると思っていたのだけれどねぇ……。
 まあ良いわ。体重を変えられると思い上がっているのなら、いつでもかかっておいでなさい。
 ンフハハハハハハハハハハハハ…………!!」



黒荷々 計
Chronica Hakari

種族:体重計の付喪神。
能力:真実を突きつける程度の能力。

何故か破損率の高い八雲家の体重計がその恨みを晴らすべく妖怪化したもの。
彼女の真実を突きつける程度の能力は、ただ相手に数字を示すだけの、基本
何の害も無い能力であるが、示された数字は、境界を操ろうが空を飛ぼうが魔
法を用いようが奇跡が起ころうが運命を操作しようが覆す事は出来ない。

物理攻撃に弱い事は弱いが、それをしてしまった時点で、ある意味相手の負け
である。年頃の女性にとっては非常に性質の悪い相手。
そして唯一の天敵は幽々子。





ごめんなさい、嘘です。
そして読んでいただき、どうもありがとうございました。

追記:誤字修正しました。指摘感謝です。
隙間風
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
これはwwwただのダイエット話じゃねーかww
そして、よく見たら橙がめちゃくちゃ進化してる件ww
2.GUNモドキ削除
こ れ は か て な い www
3.名前が無い程度の能力削除
ある意味で幻想郷最強の妖怪だな


橙レベル上がりまくりー
4.名前が無い程度の能力削除
後書きのサンホラでふいたwwww
5.名前が無い程度の能力削除
女性が多い幻想郷ではチートクラスの能力ですな。
6.名前が無い程度の能力削除
誤字
博霊の巫女をも巻き込んで→博麗

蓮子が出るのかと思ったら…オチはかなり早く読めたが楽しかった。素敵な名前まで付いてるしw