Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

もてる香霖

2009/05/15 01:15:57
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雲ひとつ無い空の下、目の前に見えるは湖。
湖の上では氷精が氷を張って寝ている。
「こーりんこーりん、餌を付けてくれ」
呼ばれたから横を向くと魔理沙が棒を持っている。
棒の先からは一本の細い糸がぶら下がっていて終わりには針が付いている。
つまり僕と魔理沙は釣りをしに来ていた。
釣りをしに来ているのだが
「何で僕がつけなくちゃいけないんだ」
一緒に釣りをするのは魔理沙が小さい頃以来だがいい加減自分で付けれるだろう。
「私はミミズが持てないんだよ」
「待て待て。魔理沙は小さい頃にミミズを捕まえていたじゃないか」
小さい魔理沙では針が危ないから餌は僕が付けていたが、ミミズを捕らえるのは魔理沙の役目だった。
「ある時餌をウドンに変えたらいつの間にかミミズが気持ち悪く思えてもう今じゃ持てないぜ」
「じゃあウドンで釣ればいいじゃないか」
「せっかくミミズを持てる奴がいるんだ。たまにはミミズで釣ってみたくなるじゃないか。頼むぜ香霖」
魔理沙の足元を見ると餌入れが無い。
だからひくつもりはなさそうだし放っておくとうるさいから僕は付ける事にした。
「ほら」
「おお。ありがたいぜ。」
魔理沙が湖に糸を垂らしたのを確認して僕も自分の針にミミズを通し湖に投じた。
「なー香霖、勝負しないか? この湖ででかいやつを釣った方が勝ちだ」
「嫌だね。釣りとはそういう事をするものではないと僕は考えている。いいかい魔理沙、釣りとは」
「私が負けたら借りてた物を一つ返すぜ」
人の話を聞かないのはどうかと思うが魅力的な話の前ではどうでもいいな。
「僕が負けたら?」
「香霖堂にある物を一つ貰う」
リスクが高すぎる。
いくら使い方が分からなくても渡したくない物がほとんどだ。
魔理沙は絶対に勝つ根拠でもあるのか?
「何故急にそんなことを言い出したんだい?」
「こういうものは勝負しないとつまらないからな」
根拠は無いのか。
湖を見渡すと寝ている氷精、そして僕のポケットの中には……良し。
「この湖で?」
「ああ」
「でかいのを釣った方が?」
「そうだぜ」
「乗ったよ」
「よーしみてろよ香霖。あの道具は私の物だ」
魔理沙はずいぶんと意気込んでるようだがこれが成功すればまず僕の勝ちだろう。
隙間妖怪から口さえ通れば何でも入ると言われ外の物と交換した三次元のポケットからロケット花火と百円ライターを取り出す。
……後になってポケットの中にスキマを作っていた事に気づいた時には自分の馬鹿さ加減に腹が立ったが。
まあもったいないから僕の服に付けて珍しい物を見つけた時入れている。
「香霖何それ?」
「これはロケット花火と百円ライターで百円ライターの方はこのボタンを押すだけで火が点く。
ロケット花火はこの紐に火を点けると勢いよく飛んでいくんだ。きっと弾幕ごっこがしたくてここに迷い込んだ外の人間が作ったと僕は推測してるよ」
「ふーん。そんなもの取り出してどうするんだ?」
「こうするのさ」
ロケット花火の紐に火を点ける。
狙いは湖の上で寝ている氷精のちょっと上。
次の瞬間ピューという音がして氷精の上で爆発した。
氷精がビックリしたような顔で辺りを見回していたがこちらに気づいたらしく向かってきた。
「なにすんのさ。豚と一緒に冷凍するよ」
「おい香霖。チルノなんか呼んでどうすんだよ」
「ああ、チルノ君といったか。すまなかったチルノ君。弾幕を張ってみたかったんだが失敗してね。これをあげるから許してくれないだろうか」
さっきのポケットの中から飴玉を取り出す。
自分でも何が入ってるか分からないから今度整理するとしよう。
「何これ?」
「飴だよ。袋から取り出して中の物を口の中に入れて舐めるんだ。結構美味しい筈だよ」
「ふーん。そこまでするならあたいは最強だから許してあげてもいいかな」
どうやら作戦は成功したようだ。
「さあ魔理沙。僕の最初の獲物はチルノ君だよ」
「それはおかしいだろ」
「どこが? ぼくはちゃんとチルノ君を『この湖』から飴玉で『釣って』みせたんだ。条件はちゃんと当てはまっているだろう?」
「くっ。これで勝ったと思うなよ。チルノよりでかいのを釣ってやる」
これでとりあえず一安心かな。
「ねえ、あたいにもやらせて」
「ああいいよ。僕の予備を貸そう」
「よーし。あたいが一番でかいの釣ってみせるね」
チルノ君が湖に投げた。
投げ方も良いし竿の持ち方も良い。
決して余所見もしてないし釣ろうとしている気持ちは分かる。
だけど
「餌をつけないでどうするんだい?」
「餌? 餌ってあの銀色のじゃないの?」
銀色……針のことだろうか?
あれだけで釣る事ができたならばそれこそ最強な気がする。
僕はチルノ君に竿を引き上げるように言って自分の足元から餌箱を持ち上げた。
「これが餌だよ。これに銀色の奴を通すんだ」
「何これ? うねうねしてて気持ち悪い。無理。触れない」
「チルノも香霖に付けてもらったらどうだ?」
魔理沙が竿を引き上げて餌の付いた針を見せつけてきた。
どうやら餌が駄目になったらしい。
魔理沙とチルノ君の針に餌を通し、ついでに僕の竿を引いてみると餌が駄目になっていたので取り替えて湖に投げた。
しかし魔理沙もチルノ君もミミズが気持ち悪いとは。
もし年頃の女の子が皆そう思っていたらミミズはまるで父親の様じゃないか。
娘が小さい頃はパパ、パパとべったりされていたというのに大きくなるとキモいと言われたり、どこぞの馬の骨とも分からない奴に奪われたりするところが。
僕もいつか味わう日が来るのだろうか?
まだ子どもをつくる気にはならないけど。
そう考えていたらうきが沈んだので僕は竿を引いた。
自分は持てません。
小さい頃は持てたんですけどねミミズだのカタツムリだの。
寝っぱなし人生
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
ミミズってw
2.名前が無い程度の能力削除
これは騙されたww

短いながらも雰囲気もよく、タイトルも素直に上手いと感じました!
3.名前が無い程度の能力削除
ミミズと父親の類似点について言及した良書ww
4.名前が無い程度の能力削除
最初、タイトルでなんだか不安になった感じだったんですが
なるほど。「持てる」香霖だったわけですか。
香霖はきっといい父親になるんだろうなぁ。
5.名前が無い程度の能力削除
すっかり父親な心理ですね、香霖 w
6.名前が無い程度の能力削除
最後の数行がものすごく理解できます
ですよねえ、娘から見た父親って、そういうところありますもんねえ
いずれは「お父さんの下着と一緒に選択するの?」とかいわれちゃうんだ
7.名前が無い程度の能力削除
 カタ○ム○。字を見るだけでも寒気がするくらい嫌いです。というか小さい頃はトラウマ級に嫌いでしたね、あれ。
8.名前が無い程度の能力削除
お上手でした。本当に。