Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

運命チョコ

2006/02/14 09:29:27
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 二月十四日。
 最近、外に出始めたフランにとっては初めてのバレンタイン。
 去年まではそんなものさっぱりわからなかったのだが、館の中のメイド達からその事を聞いたのだった。
「好きな人にチョコねぇ……」
 好きな人。そう考えて出てくるのは姉であるレミリアと、自分をここから出してくれた魔理沙。
「よ~し、私もチョコ作ろう!」
 フラン、11日の一大決心であった。


「で、何で咲夜さんじゃなくて私のとこなんですか?」
 ヴワル魔法図書館内部にある簡易厨房。そこにフランと小悪魔はいた。
「だって、咲夜もチョコ作ってて急がしそうだったし~」
「はぁ、咲夜さんも大変ですねぇ」
 紅魔館のメイドで咲夜を慕う者は多い。それに咲夜もおそらくはレミリアにあげるのだろう。
 それで、私のとこに来るのは信頼されているということなのだろうか。
 図書館の仕事は残っているが、ここで手伝わなければ妹様は切れる。間違いなく。
「わかりました。じゃ一緒にチョコを作りましょうか」
「わーい! 小悪魔ありがとー!」
 そして、チョコを作る準備をする。ちょうど小悪魔もパチュリーに渡すチョコを作ろうとしていた所であった。なら多少手間が増えるだけだ。

「いいですか。まずはこの板チョコを細かくきざんでください」
 ある程度まで手で細かくしたチョコを包丁で砕いていく。
「ん~、こう?」
 ミカン箱を台座にして、背丈をあわせたフランも小悪魔の見よう見まねで刻んでいく。
「う~、めんどくさい~。こうレーヴァティンでジュッってやっていい?」
「だめです。それじゃチョコは跡形もなく消えてしまいますよ。手間暇かけるから手作りはおいしいんですよ?」
「う~」

「次はこのチョコを溶かします。そのままやるとこ焦げちゃうので、お湯であっためて溶かしま……ああ妹様だからレーヴァテインはやめてください!」
 レーヴァテインで加熱しようとするフランを慌ててとめる。
「む~……」
 徐々に不機嫌になっていくフランに小悪魔は内心冷や汗が止まらない。
「で、ですね。この溶けたチョコと生クリームを混ぜます」
 なんとかフランが暴れだす前にチョコを完成させなければ。
「で、この混ぜたやつをこのパットに流し込みます。あとはこれを冷蔵庫で冷やすだけです」
「冷やせばいいの? じゃちょっといってくるね」
「あ、妹様どちらに?」
 もう完成したと思ったのか、厨房を出て行くフラン。
「ここからが肝心なんですけど……」
 飽きっぽいのはいつもの事とはいえ、小悪魔が呆れているとすぐにフランが戻ってくる。
「ねーねー冷やすんでしょ? ならこの氷精もブチこんでおけばよくない?」
 その右手には気絶したチルノ。冷やすと聞いてチルノを捕まえにいったらしい。
「ははは……、な、ならそうしましょうか……」
 心の中でチルノに謝りながら、チョコと一緒に冷蔵庫一緒に放り込む。
 とりあえず妹様の機嫌はなんとかなりそうだ。
「じゃ、できるまでお茶してましょうか。おいしいケーキがありますよ」
「わーい」


 数時間後。
「では、この固まったチョコを正方形に切ります。妹様その持ち方じゃ指も切っちゃいますよ」
 慌てて後ろからフランの手に自分の手を添えて動かしてやる。
「おーおーおー。小悪魔凄いー」
 そうして一口サイズの正方形のチョコがおよそ20ほどできる。
「あとはこれにココアパウダーを振れば完成ですよ」
 こうして、簡単ではあるが生チョコが完成した。小悪魔に取っては針のむしろの時間ではあったが。
「これでお姉さまと魔理沙にチョコが渡せる! ありがとね、小悪魔!」
 満面の笑みの妹様に、今までの疲労は吹っ飛ぶ。
 これがあるから性格のわりに妹様は人気者なのである。
「ああ、もう日が変わっちゃいましたね。妹様もレミリア様に渡しにいったらどうですか?」
 気が付けば0時を回っている。14日になった。
「うん、じゃーねー小悪魔ー」
 できたばかりのチョコを皿に盛って、姉の所に向かうフラン。
「妹様は元気ですね。……さて、私もパチュリー様に渡して来ようっと」


「おねーさまーーーーー!!」
 廊下を歩いていたレミィに声が届く。
「あらフラン。随分と嬉しそうね。どうしたの?」
「あのねあのね! お姉さまにバレンタインのチョコ作ったの! 食べてー!」
 そういって小さい正方形のチョコの乗った皿を差し出してくる。
「あら、そういえば今日はバレンタインだったわね。ありがとうフラン、頂くわ」
 そういって一つを指で摘みあげて口に放り込む。
 口の中に広がる甘い香り。
 グルメのレミリアとしては、まだまだの味なのだがフランが作ってくれたものが不味いはずなどないではないか。
「おいしいわ、フラン。私はチョコを作ってないからあげられないけど、ホワイトデーにちゃんとお礼はするわね」
 妹の頭を撫でてやる。
「えへへへへー」
 妹を地下から出して正解だったと思う。よく物やメイドを壊すが、色々な事を知り、今回のような事だってある。地下に封じ込めていた頃にはなかったものだ。
「お姉さま、魔理沙今日は来てないの?」
「魔理沙? 今日は見てないわ。まぁ日が昇れば来るんじゃないかしら?」
「ほんと? じゃ今日は寝ないで待ってよーっと! じゃーね、お姉さまー!」
 そういって飛んでいくフランを優しく見守る。
 運命を見れば、今日は魔理沙は来ない予定だった。だが、妹が苦労して作ったチョコを食べに来ないとはいい度胸だ。
 だから、こっそり魔理沙の運命を操作する。魔理沙に繋がっていた他の運命を解き、妹の運命と繋げる。
 可愛い妹の為だ。他の運命など知ったことか。
 運命操作の結果に満足し自分の部屋へ向かう。
 おそらく咲夜がチョコを用意して待っているはずだ。
 心持ち早足になりつつ、レミリアは自室へ向かうのだった。




フラマリはいい。心が洗われる。
レミフラっぽいのは気にしないで。私は平気。
新角
[email protected]
http://yaplog.jp/sinkaku/
コメント



1.名無し妖怪削除
やべ。フランちゃんくぁわいすぎ。
姉バカのレミリアもいいねw