Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

oh! Maria!

2009/03/03 03:44:16
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「小町様! 総員15名、定刻通り揃いました!」
「よろしい。諸君らは選ばれた者達だ。数々の審査と試験をくぐり抜け、戦場に立つことを許された精鋭達だ」
小町は言葉を切り、鎌の柄をドンッと地面に突き立てる。
「だがしかし! それは戦場で生き残ることと同じでは無い。わかるな」
「サー・イエッサー!!」
「毎年、何人もの同志が志半ばでその命を落としている。行方しれずになる者もいる」
ジャリ、ジャリと河原を踏みしめ、小町は隊員ひとりひとりの顔を見る。
「ここにいる全員に『生きて還れ』とは言わない。だが、あたいは忘れない。敬愛する四季様の為に命を賭して戦った者達のことを!」
「サー・イエッサー!!」

     ※
          ※
時節は冬、処は彼岸。
年が明けて間もないこの時期、三途の河原の一角に16名の死神が集合した。
小野塚 小町を筆頭とした彼らは、とある目的のために上司である四季映姫=ヤマザナドゥの家へと向かっていた。
もちろん年始の挨拶ではない。
おせちをたかりに行くのでもない。
お年玉? そんな歳でもないだろう。
歩み続ける彼らの瞳は使命に燃え、一糸乱れぬ歩調は彼らの意志を表わしていた。
彼らの行軍を目にした者達は皆、思わず道を譲ってしまう程の気迫。
それを発しながら、一団は己が任務を果たすため脇目もふらず進んでゆく。

     ※
          ※
「まもなく四季様の家に到着する。ここから先は何があるかわからない。気を引き締めて行くんだ!」
「サー・イエッサー!!」
目標地点まであとわずか。そんなときに事件は起きた。

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!
「ぐあっ!」
「ぎゃっ!」
二人の死神が躰を押さえてうずくまる。
残りの隊員達はすぐさま地に身を投げ出す。
「何事だ!」頭をかばいながら、小町は側にいた隊員に問いかける。
「四季様の家の方角からです。無数の弾幕が飛んできています!」
玄関先を見ると、鉢植えに植えられたヒマワリが3つ、こちらに向かって元気に弾幕を掃射していた。
「風見幽香か!」
「くそう、あんなもの送りつけやがって!」

愚痴ってみても状況は変わらない。ヒマワリが吐き出す、すさまじい勢いの弾幕に死神達は頭を上げることもできずにいた。
こんなところで立ち止まっている場合ではない。なんとしてもたどり着かなければならない理由が彼らにはあった。
この事態を打開すべく、一同が頭を悩ませていると突然弾幕が止んだ。
「なんだ……弾切れ、か?」
一人の死神がゆっくりと立ち上がる。
「バカ! 罠だ!!」「え?」
小町が叫ぶ。遠くでヒマワリが嗤った気がした。

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!
「う、うわぁーーーーーー!!」
一方的だった。3つのヒマワリから放たれた弾幕は、正確に立ち上がった死神を捉え打ちのめした。
くるくると回転しながら愚かな男の躰が舞う。
小町は、この機を逃さなかった。
「あんたの犠牲は、無駄にしない!!」
寝そべった体勢から横回しに大きく腕を振り、持っていた鎌をヒマワリに向けて投げつける。
がしゃん、がしゃん、がしゃん
鎌はうなりを上げて飛んでいき、ヒマワリの寄るべき足場、植木鉢を粉々にする。
自らの弾幕の勢いでヒマワリ達は仰向けに倒れ伏す。
その様は、往年のフラワー○ックを彷彿とさせたが、それを見た死神達の顔に笑顔は無かった。

「まったく、非道いことしやがる……」
「わざわざヒマワリを選んだのも、外に置かせる為の策かもね。太陽の方向を向いていなかった時点で気づくべきだったよ」
「小町さん、被弾した3人はもう作戦が継続できる状態ではありません」
「……そうかい。なら置いていく」
ざわめきがあたりを満たす。
「あたいたちの目的は、四季様の家に到達し、任務を全うすることだ。負傷者3名を連れての作戦行動は危険が大きすぎる」
「しかし!」
「異議は認めない。負傷者のために人数を割くことも現状では難しい」
死神達は押し黙る。小町の言葉を理解できていたからだ。
感情に押し流されてしまうほど、彼らが受けてきた訓練は甘くなかった。
「行軍を続行する。返事は?」
「サー・イエッサー!!」
※ 
     ※
          ※
仲間の屍を乗り越えて、彼らは目的地に到着した。
呼び鈴を鳴らし、しばし待つ。しばらくの時をおいて玄関の扉がゆるやかに開く。
そこには、立っているのもやっとな様子の、疲労を色濃く滲ませた映姫がいた。
「ああ、小町。それにみんなもよく来てくれました……」
直後、その場に崩れ落ちる映姫。小町が慌てて駆け寄る。
「大丈夫ですか!?」
「……平気です、まずは現状を。全体数の把握と人間、妖怪側の仕分けは終わっています。あとは危険度に応じて処理、礼状の発送をお願いします」
「はい。任せてください。そのために、あたい達は来たんですから」
映姫を抱えたまま、小町は死神達に号令を下す。
「これより『四季様に宛てられたお歳暮対策』を開始する!!」
「サー・イエッサー!!」

昨今の不景気により、形骸化しつつある『歳暮』という風習が幻想郷において確固たる地位を築くのに時間は掛からなかった。 
巷は日頃の感謝、もしくは憎しみを込めて贈り物を死合う群雄割拠の時代に突入した。
死者の魂を人、妖問わず送り、行き先を示す閻魔という職に就く者が人々の尊敬と憎悪を一心に集めたとして、なんの不思議があろうか。
そんなわけで映姫の元には、とても一人では対処できないほどのお歳暮が届く結果となった。
せっかくの正月休みを満喫してもらいたい。
そんな有志の活動から始まったお歳暮対策ではあったが、近年はあまりの希望者の数に厳しい検査と試験を課しふるい落とさなければならなくなっていた。
その理由は、届くお歳暮の量と質に起因していた。

「初めて見たが……凄いな、こりゃあ」
邸宅、と呼べるほどの広さを誇る四季映姫邸に、所狭しと詰め込まれたお歳暮はその数、実に3000を越える。
あるものは、普段の仕事ぶりに感謝をこめて。
あるものは、自身が死んだあとの温情を求めて。
なまじ、手の届く範囲に閻魔という存在があるために起こった事態である。
年末の仕事納めからこちら、ほぼ不眠不休で送られてきたお歳暮の仕分けを行っていたであろう映姫の努力は涙なくして語れない。
残った12人は8・4に分かれ、配送物の確認と礼状作成に取りかかった。

     ※
          ※
一方その頃、映姫の寝室にて。
「はい、四季様。あーんしてください」
「こ、小町、いいです。自分で食べられますから」
「ダメです。四季様は今、病人なんですからね。今日は思いっきり世話をさせていただきますよ」
「…………もう。あーん」
小町は、かいがいしく映姫の看病をしていた。

     ※
          ※
積まれた荷物の山を切り崩し、中身を確認ながら二人の死神が話し合っていた。
「なぁ」
「ん? どうした?」
「俺……この作戦が終わったら、小町さんに告白しようと思うんだ」
「そっか」
「驚かないんだな」
「知ってたからな。お前の気持ち」
「そうか」
それきり無言で作業を続ける二人。
山の下側からひとつの包みを取り出した瞬間、悲劇は起こった。
グラッ、ガラガラガラガラ、ドサー!
「あ、あ、あーーー!」
「こ、小町さーーん!!」
突如起きた雪崩に巻き込まれ、二人の姿は一瞬で見えなくなった。

     ※
          ※
一方その頃、映姫の寝室にて。
「ん……気持ちいいですか? 四季様」
「ええ、気持ちいいですよ。生き返るようです」
「ふふっ、そういってもらえると嬉しいです。さ、次は前を」
「ちょっ、自分で拭けますから……」
「えー」
「えー、じゃありません。は、恥ずかしいじゃないですか」
「それが見たいんですよ」
小町は、かいがいしく映姫の看病をしていた。悔悟の棒で殴られてはいるが。

     ※
          ※
積まれた荷物の山を切り崩し、中身を確認ながら二人の死神が話し合っていた。
「なぁ」
「ん? どうした?」
「なんで、河童からのお歳暮が『危険度A』の場所に置いてあるんだ?」
「そこらへんのは後で特別な処理班が担当するんだからむやみに触るなよ」
「でも気になるなぁ」
「おい、やめろって!!」
「なんだよ、爆発するわけじゃあるまいし」
必死に止める同僚の言葉も聞かず、河童のお歳暮を開封する死神。
中に入っていたのは。

「低周波治療器?」
「みたい……だな」
「ほらみろ、やっぱりどうってこと無かったじゃないか」
「ああ、そうだな。悪かった。満足したんなら作業を続けよう」
そんな河童からのお歳暮は、地面に置かれると同時に「ヴンッ」と鈍い動作音を立て。
ドカーーーーーン!!!!!!!
轟音と共に爆発した。

     ※
          ※
一方その頃、映姫の寝室にて。
「ん……こまち」
「なんですか、四季様」
「なんだか眠くなってしまいました」
「はい、ゆっくりお休みください」
「その、ですね」
「はい?」
「一人では寂しいので、手……手を握っていてくれませんか?」
「……はい、喜んで」
小町は、かいがいしく映姫の看病をしていた。

     ※
          ※
「お前達は、今日一日で本物の戦士に一歩近づいた。四季様の為に尽力してくれたこと、感謝している!」
「サー・イエッサー!!」
「四季様も大変感謝されていた。後々お礼に伺います、とのことだ!」
「ありがとうございます!!」
「以上をもって、この部隊による『四季様に宛てられたお歳暮対策』を終了する。解散!!」
小町の号令で部隊員は帰路につく。
あるものは生き残った現実に喜び。
あるものは散っていった同胞の為に悲しむ。
その誰もが、やり遂げた者だけが取り得る表情をしていた。
去りゆく部隊員を見送ってから、小町は。

「四季さま~~~~、今日、泊めてくださ~~い!」
全力で映姫の元へ走っていった。

丸儲け 知らぬは閻魔 ばかりなり


<了>





おまけ
妖怪の山、その麓にある河城にとりの研究室にて。
「あれ? このケーブル、何だっけ。………………ま、いいか」
にとりの発明品が原因なら死んでもいい
めたる
[email protected]
コメント



1.謳魚削除
死神さん達は死亡フラグの乱立がお好きの様で。
あとがきは魂の底から同意。
ケーブル忘れるにとりん可愛いよにとりん。
2.名前が無い程度の能力削除
小町何もしてねぇww
このSSが甘いのは散っていった戦士達のおかげなんですね