※あとがきまでが本編です
※先に謝っておきます、ごめんなさい
↓
言葉など、出なかった。
否、そんなものでは追い付かなかっただけ。
言葉で表現することなど到底出来ない程に美しすぎるその光景に、私はただ、見惚れることしか出来なかったのだ。
満月の雪の夜、狂気の満月の光に照らされた雪は紅に染まり、自身達が降り積もる枝を飾り立てる。
生命の熱を奪う雪の冷気と、精神を狂わせる月の狂気が、永遠に咲く事がないであろう花の代役を果たす。
それは、雪と月によって咲いた花。
鮮血のように紅い、ヒトを死へと誘う紅い花。
今この瞬間、確かに、私の目の前には、満開の西行妖が咲き誇っていた。
――私は、この光景を知っている。
紅雪の花が咲き誇るこの光景を、私は桜の花が咲き誇る本来の光景と瓜二つである事を無意識の内に認識していたのだから。
永遠に咲く事が無い筈の桜の花を、私は実際に見た事がある筈なのだ。
――一体いつ、何処で?
そこまでは思い出せない。
記憶の中で舞い散る桜の花弁が私を包み込んで視界を遮り、そして思考を遮ってしまうから。
思考は、桜の花弁の洪水に流されてゆく。
もう戻ることが出来なくなってしまうくらいに深い、記憶の底へ。
堤防すらをも破壊し、桜は流れ続ける。
――何故こんなにも、この桜は紅い?
聞いた事がある。
紅い桜の下には、死体があるのだと。
人間の血を養分にするから、血のように紅い花が咲くのだと。
――ならば、この桜の下に眠るのは、一体誰?
知っている、この桜の下に眠っているのは、
――パリン
何かが割れる音を、私は最後に聞いた。
***
「怖い夢を見たのよ。
内容は覚えてないけど、とても怖い夢。
自分が自分でなくなって、そのまま消えてしまうような夢」
「縁起でも無いことを言わないで下さいよ、幽々子様。
今はお花見を楽しみましょう」
「・・・ええ、妖夢の言う通りね。
折角のお花見の席だもの、楽しまなきゃ損だわ」
「はい、そうですよ。
お団子も沢山用意してありますから」
「お酒もありますかしら?」
「みょん!?」
「あら、紫。
あんまり妖夢を驚かせないで頂戴。
貴女もお花見?」
「ええ、私達も混ぜて下さいな」
「・・・お久し振りです、幽々子様」
「あらあら、随分と懐かしい顔が出てきたわ」
春の麗らかな陽気の下、四人は、真新しい切り株に腰掛ける。
周囲には、満開の薄紅の桜。
絶好の、花見日和。
雪月花が魅せた妖の夢は、忘却の彼方へ。
※先に謝っておきます、ごめんなさい
↓
言葉など、出なかった。
否、そんなものでは追い付かなかっただけ。
言葉で表現することなど到底出来ない程に美しすぎるその光景に、私はただ、見惚れることしか出来なかったのだ。
満月の雪の夜、狂気の満月の光に照らされた雪は紅に染まり、自身達が降り積もる枝を飾り立てる。
生命の熱を奪う雪の冷気と、精神を狂わせる月の狂気が、永遠に咲く事がないであろう花の代役を果たす。
それは、雪と月によって咲いた花。
鮮血のように紅い、ヒトを死へと誘う紅い花。
今この瞬間、確かに、私の目の前には、満開の西行妖が咲き誇っていた。
――私は、この光景を知っている。
紅雪の花が咲き誇るこの光景を、私は桜の花が咲き誇る本来の光景と瓜二つである事を無意識の内に認識していたのだから。
永遠に咲く事が無い筈の桜の花を、私は実際に見た事がある筈なのだ。
――一体いつ、何処で?
そこまでは思い出せない。
記憶の中で舞い散る桜の花弁が私を包み込んで視界を遮り、そして思考を遮ってしまうから。
思考は、桜の花弁の洪水に流されてゆく。
もう戻ることが出来なくなってしまうくらいに深い、記憶の底へ。
堤防すらをも破壊し、桜は流れ続ける。
――何故こんなにも、この桜は紅い?
聞いた事がある。
紅い桜の下には、死体があるのだと。
人間の血を養分にするから、血のように紅い花が咲くのだと。
――ならば、この桜の下に眠るのは、一体誰?
知っている、この桜の下に眠っているのは、
――パリン
何かが割れる音を、私は最後に聞いた。
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「怖い夢を見たのよ。
内容は覚えてないけど、とても怖い夢。
自分が自分でなくなって、そのまま消えてしまうような夢」
「縁起でも無いことを言わないで下さいよ、幽々子様。
今はお花見を楽しみましょう」
「・・・ええ、妖夢の言う通りね。
折角のお花見の席だもの、楽しまなきゃ損だわ」
「はい、そうですよ。
お団子も沢山用意してありますから」
「お酒もありますかしら?」
「みょん!?」
「あら、紫。
あんまり妖夢を驚かせないで頂戴。
貴女もお花見?」
「ええ、私達も混ぜて下さいな」
「・・・お久し振りです、幽々子様」
「あらあら、随分と懐かしい顔が出てきたわ」
春の麗らかな陽気の下、四人は、真新しい切り株に腰掛ける。
周囲には、満開の薄紅の桜。
絶好の、花見日和。
雪月花が魅せた妖の夢は、忘却の彼方へ。
なんか吹いたw