Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

幻想郷で一番熱いあの人の話

2009/02/22 00:22:11
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「何でこんなことになったんだろう・・・」

藤原妹紅は今の自分の置かれている立場にそう嘆いた。

目の前でスペルカードを構えているのは普通の魔法使い、霧雨魔理沙。

そして二人を囲むように、幻想郷中の人妖達が観戦していた。



事の発端は一月ほど前。



図書館。

「魔理沙、今日こそは今まで持っていった本を返して貰うわよ」

「残念だが、それは無理な相談だぜ。今日もしっかり借りていくぜ!」

いつも通りの光景。ただ、普段よりも互いに弾幕勝負に熱くなっていた。

「大人しく捕まりなさい、魔理沙!!」

月符「サイレントセレナ」

「おおっと、本気出してきたな?それじゃこっちも一気に決めさせてもらうぜ!」

彗星「ブレイジングスター」

互いの弾幕が衝突し、その衝撃は図書館全体を揺るがした。

「くっ!!」

火力で押し負けたパチュリーが床へと倒れこんだ。

「私の勝ちだな、それじゃあこの本は借りていくぜ」

そう言って、魔理沙は意気揚々と図書館を後にした。

「ケホッ・・・うぅ・・・また持っていかれた・・・」

・・・グラッ。

「・・・え?」

パチュリーが上体を起こそうとしたその時だった。パチュリーめがけて本棚が倒れこんできた。

「まさかさっきの弾幕の衝撃で・・・?」

パチュリーは魔法で本棚を支えようと試みた・・・が、先ほどの弾幕勝負で息があがっていて思うように詠唱に集中できない。

「くっ・・・小悪魔っ!」

か細い声で小悪魔を呼んだ・・・が、すでに小悪魔は魔理沙が来たときにやられてしまったらしくのびてしまっている。

そんなことをしているうちに、本棚はパチュリーの目の前まで迫ってきていた。
幾分、人間より頑丈な種族だとしても、こんな巨大な本棚に押しつぶされてはただの怪我では済まないだろう。

「きゃあああ!!」

パチュリーの悲鳴が図書館へと響き渡った。

「・・・おい」

「・・・え・・・?」

いつまでも来ない本棚の衝撃の代わりに、誰かの声が聞こえてきた。
パチュリーが恐る恐る目を開くと、そこには見知らぬ少女が本棚から庇う形で自分の上に覆い被さっていた。

「早く下から出てくれないか?流石にこの体勢でずっと支えているのは少し辛いんでな・・・」

そう言われて、パチュリーは慌ててその少女の下から這い出た。
それを確認すると少女は体勢を変えて本棚を元の位置に戻した。

「あ、ありがとう・・・」

「なぁに、気にしなくていいよ」

「ところで・・・どちら様かしら?」

「私は藤原妹紅、今日は慧音が借りていた本を代わりに返しに来たんだ」

そう言って妹紅は風呂敷包みを渡した。確認すると確かに以前慧音に貸していたものである。

「そう・・・。そういえば以前宴会でも見かけたような・・・?」

「そういや私もそうだな、まぁ私はこの館の連中とはそんなに一緒に飲むわけでもないからお互いに知らなくてもしょうがないか」

妹紅はまわりを見渡した。本自体は魔法で保護されていて無事だが、本棚を含め、置いてあるものが所々破損している。

「しっかし、随分と派手にやったもんだな、こりゃ後片付け大変そうだ。手伝うかい?」

「いいえ、結構よ。咲夜がいるもの」

「そうかい?それじゃ用事も済んだし私はこれで失礼するよ」

そう言って妹紅は軽く手を振ると踵を返した。

「ちょっと待って、助けてもらったしお茶くらい・・・きゃっ!?」

呼び止めようと一歩踏み出した途端、パチュリーは体勢を崩してまた床に倒れてしまった。
それに気付いた妹紅が慌てて歩み寄った。

「大丈夫か?・・・ちょっと足を見せてみろ」

妹紅はパチュリーの足を触ってみた。

「痛っ・・・」

「折れてはいないけど・・・捻挫しているみたいだな」

妹紅は近くに落ちていた本棚の木片を拾った。そして自分の服の袖を破り、パチュリーの足に木片をあて、その布で強く縛った。

「これで少しは楽になるだろ・・・ほら」

「え・・・?」

妹紅はパチュリーに背を向けてしゃがんだ。

「布団まで連れてってやるよ。・・・いや、この家だとベッドか?」

しばらくどうしようかと悩んだが、結局素直に妹紅に背負ってもらうことにした。

「で、寝室はどこだい?」

「・・・あっちよ」

そう言ってパチュリーは寝室の方を指差すと、まるで借りてきた猫のように大人しく黙り込んでしまった。

「(・・・なんで私、背負われてるのかしら・・・)」

魔女である自分は魔法を使えばいくらだって移動手段がある。それなのに何故自分はこうして彼女に黙って背負われているのか・・・

恐らくそれは彼女の善意を無碍に断りたくなかったからなのかもしれない・・・

そんなことを考えていると、ふいに妹紅が足を止めた。どうやら目的地に着いたようだ。

寝室に着くと、妹紅は優しくパチュリーをベッドの上に座らせた。

「・・・悪いわね、こんなことまでさせて・・・」

「気にするな。あと、足のそれはあくまで応急手当だ、あとでちゃんとここのメイドか竹林の医者にでも見てもらうんだな」

「・・・えぇ、そうするわ」

「それじゃ今度こそ失礼するよ」

こうして妹紅は図書室を後にした。

「妹紅・・・か」

一人その場に残ったパチュリーはそう呟いた。心なしか頬が少し赤く染まっているように見えた。



別の日、魔法の森。

「もぅ・・・いきなり何なのよ魔理沙!」

「もうすぐだぜ」

魔理沙に誘われて半ば強引に連れて来られ、アリスは森の奥まで足を運んでいた。

「ほら、ここだぜ」

二人が着いた場所。そこは辺り一面キノコで覆われていた。

「な?すごいだろ?こんなにたくさんキノコが生えてるんだぜ!」

「まったく、あんなにはしゃいじゃって、お子様なんだから・・・」

嬉しそうにキノコを採取している魔理沙を見て、アリスは苦笑した。

「アーリスっ♪」

魔理沙がニヤニヤしてアリスに近づいてきた。

「どうしたの?魔理――」

「てぇゐ!!」

「むぐっ!?・・・ん・・・んぅ・・・ぷはっ!」

いきなり魔理沙が手に隠し持っていたキノコをアリスの口に突っ込んだ。

「いきなり何するのよ!」

「油断しているアリスが悪いんだぜ」

「このっ!!」

アリスが怒って魔理沙に向かって弾幕を放とうとした・・・が、何もでなかった。

「な!?・・・魔理沙、一体何をしたのよ!?」

「フフフ、さっきお前が食べたキノコは魔法のキノコでな、一時的に魔法が封印されるんだ。弾幕だって同じだぜ」

そう言って魔理沙がアリスに迫ってきた。

「な、何するのよ・・・」

「今のお前はただのか弱い女の子ってことだ・・・さぁて、どう可愛がってやろうかな?」

「卑怯よ!こんな・・・」

と、口では拒否しているが、全く抵抗していない。そしていよいよ二人の身体が重なる・・・と思いきや。

「しまった・・・今日は霊夢と約束があったんだ!悪いアリス、この続きはまた今度な!」

そう言うと箒に乗ってあっという間に飛んでいってしまった。

「魔理沙の・・・馬鹿ーっ!!」

森中にアリスの怒鳴り声が響いた。
叫んで少しは気が済んだようだ。アリスは家に戻ろうとし、ここで気付いた。

「ちょっと・・・今って魔法使えないじゃない!」

無論そうなると飛ぶこともできない。仕方がないのでアリスはとぼとぼと森の中を歩き出した。

「はぁ・・・なんで私こんなことしてるんだろ・・・」

飛べばそれほどの距離ではないが、徒歩だとかなりの距離となる。
アリスはすっかり歩き疲れてしまった。

ガサッ・・・

ふと、向こうの茂みが動いた。

「何・・・?」

アリスが茂みの方に視線を向けた。すると・・・

グルルルル・・・・

「なっ・・・妖怪!?」

茂みの中から獣の姿をした妖怪が現れた。喉を鳴らして、今にもアリスに飛びかかろうとしている。

「冗談じゃないわ・・・今襲われたら洒落にならない・・・」

アリスは少しずつ距離をとり、隙をみて逃げようとした・・・が、しびれを切らした妖怪はいきなりアリスに飛び掛ってきた。

「くっ・・・」

アリスは覚悟を決め、身構えた・・・と、次の瞬間だった

不死「火の鳥 -鳳翼天翔-」

ギャアアアアアア!!!

火の鳥が妖怪に直撃、耳を裂く様な悲鳴をあげ、妖怪は消し炭に変わっていった。

「この弾幕は・・・」

「最近の魔法使いは妖怪相手に素手で挑むのが流行っているのかい?」

そう言って妹紅が姿を見せた。

「ああいう類の妖怪はいくら雑魚でも接近戦で戦うのは間違っている。下手したら喉を喰いちぎられるよ」

「別に好きで素手で戦ってたわけじゃないわよ」

不思議そうに首を傾げる妹紅に、アリスはこれまでの経緯を話した。

「なるほど、そりゃ災難だったな」

と、面白そうに言った。

「何よ、人事だと思って。こっちはアイツの悪ふざけで酷い目にあってるのよ!」

「悪い悪い、そう怒るなよ」

そう言って妹紅はいきなりアリスを抱きかかえた。

「え、ちょ、ちょっと!?」

「お詫びに家まで送ってってやるよ。もうすぐ日が暮れるし、魔法が使えないのに森を歩いて帰るのは危ないだろ」



妹紅のおかげであっという間にアリスは家まで着いた。

「い、一応、御礼は言っておくわね。ありがとう・・・」

「なーに、礼なんかいいよ。・・・晩飯を食わせてくれるだけで」

「・・・ずいぶん図々しいのね・・・」

「おやおや、命の恩人にそれはないんじゃないか?」

「わ、わかったわよ!ほら、さっさと中に入りなさいよ!」

そんなわけで二人で晩御飯を食べることになった。

「うん、美味い♪こういう変わった料理はあまり食べたことがないけどやっぱり美味いな」

アリスの作った洋風の料理に妹紅は舌鼓を打った。

「そんなに褒めてもらえると作った甲斐があったわ。おかわりもあるわよ」

最初は仕方がない・・・と渋っていたアリスだが、こうして美味しそうに食べてもらうと素直に嬉しいらしい。
普段はほとんど一人で生活している彼女にとって、誰かと食事を共にするのは新鮮で楽しいものだったのだろう。

「どうでもいいけど・・・アンタ今日、泊まっていくつもり・・・?」

晩御飯を食べ終えても、一向に妹紅は帰るような素振りがない。
よく迷った人間を泊めてやることもあるので別に泊まってもらっても構わないが、そうなるといろいろと準備が必要なのだ。

「そうだな、泊めてもらうのも悪くないな・・・んっ?」

そう妹紅が言いかけた時だった。部屋の中の人形が動き出した。

「どうやら魔力が戻った様ね。・・・で、泊まっていくのね?」

「いや、やっぱり帰るよ」

そう言って妹紅は起き上がった。と、ここでアリスはふと気が付いた。

「・・・もしかして、待っててくれたの?私の魔力が戻るの・・・」

妹紅はフッと微笑んで「何のことかな?」と惚けてみせた。

「私が出たらちゃんと部屋には鍵をかけろよ、何かと物騒だしな」

「もう力も戻ったから平気よ。心配性ね」

「別に妖怪だけのことを言ってるわけじゃないさ。アンタ、人形みたいに可愛いからな、変な気起こす奴もいるだろうさ。あまり気を許すなよ」

妹紅はそう言って帰っていった。

「何よそれ・・・馬鹿・・・」

よほど妹紅の言葉が恥かしかったのだろう、アリスは顔を赤くして家のドアを閉めた。しっかりと鍵を閉めて・・・



さらに別の日、博麗神社。

「とうとう・・・最後なのね・・・」

霊夢が鬼気迫る表情でそう呟いた。
そんな彼女の目の前にあるのはご飯と味噌汁、小さな皿に乗せられた漬物と小さな魚の干物が数尾・・・

「これを食べてしまえば・・・もう備蓄してる食べ物はおしまいなのね・・・」

いつもの見慣れた光景といえば光景である。

「お茶・・・煎れてこよう・・・」

霊夢はお茶を煎れるために部屋を出て行った・・・

・・・・・・・

・・・・・

・・・

ガシャン。

霊夢が部屋に入ってきた瞬間、湯のみを落としてしまった。なぜなら・・・

「よぉ霊夢、お邪魔してるぜ」

部屋に魔理沙がいた。いや、そんなことなどどうでもいい、何より重要なのはちゃぶ台の上に置いてある食器が見事に空になっていることだ。

「魔理沙・・・それ・・・」

「ん?あぁ、お腹空いてて丁度よかったから御馳走になったぜ」

・・・ゴゴゴゴゴゴ

「ねぇ・・・魔理沙。魔女って美味しいのかしら?」

「い、いや。あまり美味しくないと思うぜ・・・?」

「魔理沙ぁあああああ!!!」

神霊「夢想封印 瞬」

「き、今日のところは失礼するぜ!!」

どうやら命の危機を察したようだ。魔理沙は慌てて逃げていった。

「えっぐ・・・ひっく・・・まりしゃの・・・ばかぁ・・・」

普段の霊夢からは考えられないような様子で泣いている。よほど最後のご飯が大切だったことがわかる。

「・・・一体何があったんだ・・・?」

そう声をかけてきたのは妹紅だった。近くを通りかかったところ、霊夢の弾幕に気付いて様子を見に来たのだ。

「ひっく・・・なんでも・・・ないわよぉ・・・」

と、グゥーっと霊夢のお腹が盛大に鳴った。

「・・・飯でも食べに来るか?」

霊夢はただこくんと首を縦に振った。


「・・・うぅ・・・おいひぃ・・・おいひぃよぉ!!」

霊夢は泣きながらひたすらご飯を口に運んでいた。きっと今の霊夢を見て、まさかこれが博麗の巫女だなどと誰も思うまい。

「ほらよ、魚も焼けたぞ」

「んぐっ、はぐっ・・・」

「やれやれ、お腹が空いて泣くなんて、お前は子供か」

すっかりお腹もふくれて、自分を取り戻した霊夢は恥かしそうに言った。

「・・・うるさいわね。食べ物のありがたみがわからない奴に私の気持ちなんか分からないわよ・・・」

「これでも食べ物にはいつも感謝している方なんだけどな」

そういうと妹紅は霊夢に大きな袋を渡した。

「ほら、米と味噌、あと野菜が少し入ってる。持って行きな」

「それはすごく助かるけど・・・いいの?後で返せって言っても返さないわよ」

「言わないって・・・まぁ、また腹が減って泣きそうになったら来いよ。こんな飯でいいならいくらでも食わせてやるよ」

「・・・ありがと・・・」

そう一言だけ礼を言うと、霊夢は飛んで帰っていった。



そして、それから少したったある日。紅魔舘。

「・・・なぁ咲夜」

「何かしら魔理沙」

「最近あいつ等、何だかおかしくないか?」

「一体誰の事かしらね」

魔理沙の質問にわざとらしく疑問で答えた。

「霊夢にアリス・・・あとパチュリーもだ」

「さぁ?私には分からないわね」

「最近妙につれないんだよなー。アリスは何か私に内緒でコソコソやってるし、パチュリーは話しかけても上の空だし、霊夢なんか私の顔見た途端、針投げて来るんだぜ」

最後のはどう考えても例の件で根に持っているとしか思えない。

「まぁ、大体想像はつくけどねぇ・・・」

「本当か!?」

咲夜は紅茶を一口飲むと、魔理沙に真剣な表情でこう話し始めた。

「貴女・・・愛想をつかされたんじゃない?」

「え・・・?」

「自分勝手でいたずら好き。おまけに子供っぽい。いくら可愛くてもずっと一緒にいると嫌気も差すでしょうね」

咲夜がそう言うと魔理沙はムッとなった。

「なんだよそれ・・・」

「求めるだけじゃダメってこと。尽くされるだけじゃなく尽くすことも大事なのよ。色恋沙汰の駆け引きはね」

「・・・よく意味がわからないぜ・・・」

「貴女にはまだこんな話は早かったかしらね」

「・・・咲夜もそう思ってるのか?・・・私のこと・・・」

「そうねぇ・・・私は、好きな人にはとことん尽くしたいタイプだから。いくら自分勝手でも嬉しいけれど・・・」

と、咲夜は残念そうな顔でこう言葉を続けた。

「あなたのお嬢様度は24点。もっと我侭で自分を中心に世界が回っているんだと思ってるくらいが丁度いいわ。あと一応言っておくけど96点満点ね」

などと、どこかで聞いたことのある台詞を皮肉っぽく言ってみせた。

「・・・そっか・・・皆、私のこと・・・嫌になったのか・・・」

魔理沙は今にも泣き出しそうな顔でそう呟いた。そんな魔理沙を見て「仕方ないわね」と苦笑して咲夜が頭を撫でた。

「そんな顔しないの。ただ貴女を嫌になったわけじゃないと思うわ。多分もっと大きな理由があるのよ」

「・・・どんな・・・?」

「貴女の他に好きな子ができた・・・とかね」

その言葉を聞いた瞬間、どこか寂しい気持ちが魔理沙を襲った。

「好きな・・・?」

「えぇ、何か気付かなかった?最近誰かと妙に仲がよくなったとか・・・」

その言葉に魔理沙はハッとした。

「そういえば・・・霊夢は最近よく妹紅のところに行くみたいだったけど・・・」

魔理沙がそう答えると咲夜も「あら?」とその言葉に反応した。

「パチュリー様も最近よく彼女のことを聞くのよねぇ。どんな人なのか?とか」

そんな話をしているうちに、二人はある結論にたどり着いたわけで・・・

「二人とも妹紅に・・・?」

「まさかねぇ・・・」

と、咲夜が何かに気付いて立ち上がった。

「さて、悪いけど構ってあげられるのはここまでよ。お嬢様がお昼寝から目覚める時間だわ」

魔理沙は紅魔舘を後にした。



「んー・・・まだ明るいしなぁ・・・アリスのところにでも寄って行こう」

そう言ってアリスの家へと向かった。そして、いざアリスの家に着くと、遠目にアリスが玄関先で誰かと話をしているように見えた。

そこで魔理沙は決定的な場面に直面してしまった。

「あれは・・・」

アリスと妹紅がなにやら楽しそうに話しこんでいるところだった。
それを目撃した魔理沙は、衝動的に二人の前に飛び出していた。

「魔理沙・・・?」

「まさか・・・本当に妹紅だったなんてな・・・」

「・・・?私がどうかしたのか?」

「・・・藤原妹紅!私と勝負しろっ!!」





そして現在に至る。

ちなみに観客がいるのは某烏天狗の新聞記者がその現場に偶然(?)居合わせた結果である。

「この決闘・・・もしお前が勝ったら私は何も言わない。お前が霊夢だろうがアリスだろうがパチュリーだろうが誰に手を出しても構わない。だがな!」

キッ!と妹紅を睨み付けて魔理沙はさらに言葉を続けた。

「もし私が勝ったら・・・必要以上にあいつらに手を出すのを止めてもらうぜ!」

「いや、手を出すも何も私は別にそんなつもりはないんだけど・・・」

魔理沙とは真逆でこちらはどうも気が進まないようである。

「それじゃ・・・いくぜ!!」

「仕方ないな・・・やるからにはこっちも全力でいかせてもらうよ!」

こうして、二人の弾幕勝負が幕を開けた。

「全く、魔理沙ったら何を考えているのかしら・・・」

「霊夢も何も聞かされてないの?」

「いきなりやってきて、絶対お前を取り戻すとかわけのわからないことを言ってきただけ。説明してもらいたいわよ」

「私のところに来たときも同じようなこと言ってたわね」

ある意味、今回の騒動の原因であろう三人が、何故このような決闘をするのか不思議そうに観戦していた。


光符「アースライトレイ」

不死「徐福時空」

「くっ・・・まだまだぁ!!」

魔符「スターダストレヴァリエ」

勝負は現在、魔理沙が勢いで少し押しているようだ。


「魔理沙、少し飛ばしすぎじゃないかしら?」

「そうね・・・あんなに序盤で攻めると後から厳しくなってくるでしょうね」

「弾幕が素直で真っ直ぐなのはいつもどおりなんだけどね。いつもみたいな憎たらしい小細工を一切使ってないわ」

「よほど焦っているみたいね。あの子」

三人が魔理沙と妹紅の弾幕勝負を見ていると、知らないうちにすぐ隣に紫が座っていた。

「・・・あなたもこの決闘に一枚噛んでいるのかしら?八雲紫」

「あら?私は何もしていませんわ。ただあの子が何故あんなに必死になっているか。それを知っているだけ」

「何よ、魔理沙があんな風になった原因知ってるの?だったら教えなさいよ」

「フフッ、鈍感なのは困るのよねぇ、鈍感なのは」

そう意味深な言葉だけを発し、結局その真相は一切話さずに紫は観戦に戻った。


星符「ドラゴンメテオ」

「・・・くっ、相変わらず馬鹿みたいな火力だな。直線的な軌跡だから避けるのはそう難しくないが・・・当ったら一溜りもない」

不滅「フェニックスの尾」

「うわぁあああ!」

先に被弾したのは魔理沙のようだ。しかし、すぐに体勢を立て直し、弾幕を放つ。

光符「ルミネスストライク」

「おい、大丈夫か?もうだいぶ息があがってるみたいだけど・・・」

「余計なお世話だぜ・・・まだまだ、勝負は始まったばかりだ!」


丁度霊夢達とは反対側の観戦席、こちらではレミリアが不思議そうに二人の勝負を見ていた。

「解せないわね」

レミリアがそう呟くと、隣で日傘を差している咲夜が即座に答えた。

「黒ですよ」

「何がよ?」

「今日の私の下着の色ですわ」

「咲夜の下着の色なんかどうでもいいわよ。私が解らないのはあいつ等よ」

「はて?」

惚けた口調で咲夜が尋ねると、不機嫌そうにレミリアが口を開いた。

「魔理沙は自分を見失って普段の力を発揮できていない。そしてあっちはどうも弾幕勝負自体、やる気があるようには見えない。こんな勝負、見ていてもつまらないわ」

「魔理沙は焦っているんですよ」

「焦り?」

「今まで自分のことだけを見てくれた皆が離れていってしまう。それを自分に引き戻そうと必死になっているんですよ」

「やけにあの子に肩入れするのね」

「私も同じようなものですから。もしお嬢様が私に見向きもしなくなったら、私もきっとみっともないくらい泣いて必死にお嬢様の気を引くと思いますわ」

「へぇ、それは面白そうね。今度試してみようかしら」

「もしお嬢様が私以外の人に夢中になったら・・・その人を殺して、お嬢様も殺して、私自身も自害しますわ♪」

思わずレミリアは背筋が震えた。

「・・・冗談よね?」

「えぇ、もちろん・・・・冗談ですわ?」

怖いくらいにいい笑顔で咲夜はそう答えた。

「あと、妹紅の方は・・・」

「本気になりにくいのよ・・・アイツは」

不意に二人の会話に誰かが割り込んできた。その声の主は蓬莱山輝夜である。

「長年、互いに殺しあってきた相手だからよくわかる。アイツは必要以上に人間を傷つけることを嫌っている。いいえ、怖がっていると言った方がいいかしら」

「怖がる?」

「私や貴女から見て、人間は脆く弱い存在でしょう?例えただの弾幕勝負だって怪我はするし下手をすると命にだって関わる。そういうのを恐れているのよ」

「変な話ね、あんた達は長く生きてきたんだから人間の死なんて慣れたもんでしょ?」

「いくら経験したってそう簡単に慣れるものじゃないわよ。まぁ、そんなわけでアイツは人間相手だと無意識に手を抜いてしまうクセがあるの」


外野がそんな話をしている頃。とうとう二人の勝負も終局を迎えていた。

「これで・・・終わりだっ!!」

魔砲「ファイナルマスタースパーク」

「悪いけど・・・終わりはそっちのようだ」

蓬莱「凱風快晴 -フジヤマヴォルケイノ-」

魔理沙の弾幕を潜り抜け、即座に妹紅がスペルカードを発動させた。
スペルカードを発動した直後で、魔理沙は妹紅の弾幕を避けることができず、直撃を受けた。

「そん・・・な」

魔理沙は地面に倒れこんだ。


「(負け・・・?私は負けたのか・・・?」

その時、魔理沙の脳裏に彼女達のことが浮かんだ。

「(霊夢・・・アリス・・・パチュリー・・・)」

彼女達の心が自分から離れていってしまう・・・

「そんなの・・・そんなの嫌だ!!」

「なっ!?」

魔理沙はゆっくりと立ち上がると、一枚のスペルカードを掲げた。

「うわぁああああああ!!!」

邪恋「実りやすいマスタースパーク」

「あぁあああああああ!!!」

魔理沙の放つ弾幕は、妹紅を狙うでもなく、まるで、限界まで口を塞いでたホースの水のように辺りに放たれた。
幸い、紫や霊夢が異変に気づき結界を張ったためとりあえず今のところは被害はでていない。

「ま、魔理沙・・・一体どうしたっていうのよ」

「さっきまでの弾幕勝負で心身共に限界だったのにこんな強力なスペルを使った・・・精神が耐えられず暴走した。そんな感じかしら」

「冷静に分析してる暇なんかないわよ・・・このままじゃあの子、精神が崩壊して命だって危ないわ」

そうは言ってもあんな凄まじい火力の弾幕が予測不能の動きを見せているのだ。近寄ることも難しい。

「・・・あの馬鹿」

そう言うが早いか、妹紅はなんのためらいもなく魔理沙に向かって飛び込んでいった。

無造作に撃ち出される弾幕に、何度も四肢を吹き飛ばされた。

そのたび、リザレクションをして一歩、また一歩と近づいていった。

そしてとうとう、魔理沙が手の届く距離まで近づくことができた。
すると妹紅は、ミニ八卦炉を手で叩き落とすと、強く魔理沙の体を抱きしめた。そして、

「いい加減に・・・目を覚ませ!!」

そう、魔理沙の耳元で怒鳴った。

「・・・あ・・・」

どうやら魔理沙も気がついたようだ。

「全く・・・面倒かけさせやがって・・・」

そう言うと妹紅は崩れるように倒れた。すでに体は再生する限界を迎えていたのだ。

「なんで・・・なんでこんな無茶・・・私なんかのために」

魔理沙が妹紅を抱きかかえる。

「お前を死なせたくなかった。・・・それだけだよ」

そう言って妹紅は魔理沙に笑ってみせた。

「うぅ・・・ごめん・・・なさい・・・」

魔理沙は大粒の涙を流して、消え入るような声でそう言った。





翌日。

妹紅の元へ魔理沙が尋ねてきた。

「あの・・・昨日は、ごめんな・・・」

申し訳なさそうに魔理沙が妹紅に謝罪した。

「そんなに気にするなって。私は不老不死だからな。もう怪我だって全部完治してる」

「これ・・・持ってきたんだ。よかったら・・・」

そう言って小さな袋を取り出した。中には薬草やキノコ、果物。あとは彼女が作ったであろう料理の容器が入っていた。

「なんか悪いな、気を遣わせて」

と、そういえばと妹紅は昨日の決闘について話し始めた。

「私は別にお前からアイツらを奪うつもりはないよ。そもそもなんでそんな話になってるのか未だにわからないんだ」

「そのことならもういいんだ・・・私もあれから色々考えたんだ。霊夢達が誰を好きになっても、私はそれを否定することなんてできないんだ・・・って」

「いや、だから、話についていけないんだけど・・・」

とことん鈍感である。

「それに・・・」

魔理沙がそっと妹紅の頬に唇で触れた。

「え・・・?」

妹紅がきょとんとしていると、魔理沙はすぐに身を離した。

「私も・・・妹紅のこと、好きになっちゃったみたいだから」

そう言って可愛らしい笑顔を見せるとさっさと行ってしまった。

「な・・なんだって――!?」

その場に残された妹紅は、頬に手をあて、真っ赤になってそう叫んだ。


END
○月×日

今日も妹紅のところに魔理沙が来たようだ。

この前の決闘の一件から、あの二人の関係に変化が見られる。

流石妹紅。と言うべきだろうか。

あいつには女を虜にする程度の能力が備わっているのかもしれない。

そういえば博麗の巫女や森の人形遣い、紅魔舘の魔女も妹紅に好意を抱いていたな。

やれやれ、また私の出番だ。

・・・彼女達の恋心をなかったことにしなくてはいけない。

さて、今日はこれから妹紅と会う約束があるから

今日はここまでにしておこう。

(とある教師の記録より抜粋)


というわけで、「妹紅をひたすらかっこよく書きたい」と思いこのような話を書いてみました。実際に書いてみると随分長くなってしまった気がします。次に書く時にはもう少し短く完結に書けるように努力します。
誤字脱字などありましたらご報告していただけると助かります。
それでは読んでくださった方、ありがとうございました。
ちょ~さ
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
妹紅は大変なものを盗んでいきました!
2.名前が無い程度の能力削除
でも何気に咲夜さんが一番良かったな♪
3.名前が無い程度の能力削除
ひそかに咲夜さんが瀟洒♪
4.名前が無い程度の能力削除
誤字報告です。
私自信も自害しますわ♪→私自身も自害しますわ♪
だと思います。

妹紅かっこいいよ妹紅
5.名前が無い程度の能力削除
妹紅イケメン過ぎるぅ
6.ちょ~さ削除
コメントありがとうございます。以下、簡単に返事をさせていただきます。
>1 それは皆の心です。
>2 咲夜さんは一番好きなので自分が書く咲夜さんを良いと言って貰えるとすごく嬉しいです。
>3 そう表現できていれば嬉しいです。最近は瀟洒の意味がよくわからなくなってます。誰か教えてください。
>4 誤字報告ありがとうございます。修正しました。妹紅かっこいいよ妹紅
>5 二次創作では男勝りな性格ですが公式(永夜抄)だと普通に女の子らしいんですよね。まぁどちらの妹紅も好きですが。
7.名前がない程度の能力削除
妹紅が余りにイケメン過ぎてちょっと私の妹紅観と合致しませんでした。
ていうかエロゲの主じ(ry

妹紅が魔理沙以上のジゴロという着想自体は面白かったので、そういう観点から見れば許容範囲内で面白かったです
8.名前が無い程度の能力削除
いやっほお!最高じゃない!最高じゃない!妹紅総攻め!