Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

守矢さん家の特別なクリスマス

2008/12/24 12:14:46
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「ねー、今年のクリスマスはどーするのー?」

1年も残すところ僅かとなった師走の日、3人で朝食をとっていると諏訪子様が突然切り出してきた。

「どうするって、んなもんやるわけないでしょ。向こうとは違うんだから」

「えー? 毎年やってたんだからいいじゃんいいじゃんー。こっちでもやろうよー。
向こうみたいにツリーに飾り付けしてホールケーキ一人ひとつ、とまではいかなくても何か美味しいものでも食べようよー!」

「だぁーめ。そもそも今はこっちに来たばっかであまり信仰がなくて結構ギリギリなの。んなもんにお金かけてらんないわ」

「あーうー! 早苗も何か言ってやってよ!」

「え? えっと、私も、ちょっとくらいは贅沢したいなぁ、なぁんて……」

「よし、じゃあ美味しいものでも食べようか。何がいいかねぇ、ローレライ亭の八目鰻、藤原屋の焼き鳥、お稲荷八雲のいなり寿司とかかねぇ」

「ちょっと! なんで早苗が言うとあっさりOKなのさ!」

「早苗だし? あんたと違って可愛いからね。1年頑張ったご褒美だよ」

「納得いかーん!」

神奈子様と諏訪子様の言い合いを横目で見ながらその日の事を思い浮かべる。
やっぱりクリスマスといったらケーキは必須だろう。
しかし、今の家にはそんなに多数のご馳走を買う余裕はない。となると

「やっぱり自作ですよね……」

「ん、何がだい早苗?」

「いえ、何でもありません。楽しみですね、クリスマス」





「で、私のところに来た、と」

「はい。アリスさんならきっと釜戸とか持ってると思ったんですけど…… ダメですか?」

クリスマスを間近に控えた今日、私はアリスさんのお家にお邪魔していた。
ケーキを作るにあたって必須なのがスポンジを焼き上げる為の釜戸なのだがあいにく家にはない。
なので持っていそうなアリスさんに釜戸を貸してもらえるよう頼みにきたのだ。

「そんなことないわよ。只、一つだけ条件があるのだけど」

「え、なんでしょうか? やっぱりお金ですか? 今あんまり持ち合わせがないので来年まで待ってもらえると……」

「そんなんじゃないわ。あの、その、わ、私と…… と、友達に……」

「アリスさん」

「な、何?」

「そんなこと言わないでくださいよ。私たち、もう友達ですよね?」

「さ、早苗……」

「さて、それじゃあ台所借りてもいいですか?」

「え、ええ」

「あ、後アリスさん」

「な、何かしら?」

「後で編み物も教えてもらっていいですか? 神奈子様たちにプレゼント贈りたいので」

「わかったわ、と、友達の為ですもの、何でも教えるわよ!」

「ありがとうございます、アリスさん」




「こんにちはー」

「あ、早苗、いらっしゃい」

クリスマス当日、私はアリスさんの家に再度お邪魔していた。
以前お邪魔した際、スポンジは完成したのだが、そのまま持って帰ると神奈子様たちにバレる為、無理をいって預かってもらっていたのだった。
それを受け取りに来たのと、もう一つ……

「無理いって預かってもらってありがとうございました」

「いいのよ、丁度保存室も開いていたしね。それで、ケーキね。……上海! 蓬莱! お願い!」

「シャンハーイ」

「ホウラーイ」

「ありがとうございます。それで、お礼と言っては何なんですけど……」

「え? ……こ、これ……」

「アリスさんの教え方がすっごく上手だったので思いのほか早く出来上がりまして。それでアリスさんにお礼を兼ねてプレゼントです」

そう言って私は手編みのマフラーと手袋を渡す。

「アリスさんから見たらまだまだの出来かもしれませんが……」

「そんなことないわ! ……ありがとう、一生大事にするわね……」

「あとこれは上海ちゃんと蓬莱ちゃんに」

そう言って2体にもマフラーを巻いてあげる。

「流石にこのサイズの手袋は作れませんでした。マフラーだけでごめんね?」

「シャ、シャンハーイ!」

「ホウラーイ! ホウラーイ!」

「ふふ、そんな事はない、とっても嬉しいですって。この子たちの分まで作ってくれたのね。本当に、ありがとう」

「いえ、お礼を言うのはこちらですから。っと、私そろそろ行きますね。また今度、ゆっくり時間作ってお邪魔しに来ますね」

「ええ、待ってるわ。……その前に私が初詣に行こうかしら?」

「どうぞ、振袖姿のアリスさん、期待してますね」

「ええ、びっくりするぐらいなのを着て行ってあげるわ」

「それじゃあ、本当にありがとうございました!」

「よいお年を! 早苗!」

「シャンハーイ!」

「ホウラーイ!」

「よいお年をー!」





「ふぅ、ちょっと遅くなっちゃったな」

あの後、全速力で戻ってはきたがやっぱり話し込んでしまった分、予定の時間より少々遅れてしまった。
二人ともそのぐらいでは怒らないとは思うが、日が日だ。オンバシラや鉄の輪を振り回してるかもしれない。

「只今戻りましたー!」

「あ、お帰り早苗ー」

「準備は出来てるから早くおいでー」

「あ、はい。着替えてからすぐ行きます」

ふぅ、機嫌はいいようだ。損なわないうちにさっさと着替えてしまおう。
とと、プレゼントとケーキを忘れないように、っと。

「すみません、遅くなりま……した……」

「遅いぞ早苗ー! 私らすっごく待ったんだかんねー!」

「まぁいいじゃないか。遅れた分はこれから十分に楽しめばいい」

なんだろう。夢でも見ているのだろうか。
目の前にはサンタコスの神奈子様と諏訪子様。
諏訪子様、幼児体型にそれは反則的に似合ってます。( ゚∀゚)o彡゜幼女! 幼女!
神奈子様、服がちょっと小さくて胸とかがぱっつぱつです。ぶっちゃけ、エロいです。

「お、お二方とも何処でそれを……?」

「んー? ちょっと訳アリであの古道具屋、なんつったけ、神奈子?」

「香霖堂じゃなかったかね? まぁ、そこに行ってね、物々交換で貰ってきたんだよ」

「そ、そうなんですか……」

「じゃあ早苗も帰ってきたことだし、始めようか! メリィーッ、クリッスマァースッ!」

「んなにはしゃぐな、子供でもあるまいし。あ、でも体は子供か」

「んなにぃー!? あ、んな事いったら神奈子はおばちゃんか。知ってるぜぇ? 最近お腹周りが……」

「んなっ!? ど、どうしてその事を……!」

「風呂場でいつまでも体重計とにらめっこしてる方が悪いのさ」

「ま、まぁまぁお二方とも。そのぐらいにして食べましょうよ。ほら、クリスマスですから、こんなの用意しちゃいました」

そう言ってアリスさんの所で作ったケーキを取り出す。
シンプルな苺のホールケーキ。生クリームもふんだんに使ったし、お決まりのお菓子の家と砂糖で出来たサンタも忘れちゃいない。

「わー! 早苗っ、早苗っ! お菓子の家貰っていい? 答えは聞いてない! いっただきー!」

「こら諏訪子がっつくな! ああもう、口の周りがクリームだらけじゃないか。まったくもう……」

そうして騒がしくも穏やかで、幸せな時間が過ぎてゆく。
やっぱり、準備してよかったなぁ。
さて、最後の締めといきますか。

「神奈子様、諏訪子様」

「ん、なんだい早苗」

「どしたの早苗」

「えっと、これ。プレゼントです」

「私たちにかい?」

「わぁ…… ねぇねぇ、開けていい!?」

「はい、どうぞ」

「おお、マフラーと手袋、あとは……ニット帽だね」

「こっちはマフラーとセーターだ! ありがとー早苗ー!」

「ありがとう、でも大変だったろう? 二人分も手編みで作るのは」

「いえ、大変腕のいい先生に教わりましたから、そんなに苦でもなかったです。
それに、お二方の為なら苦労も苦労じゃなくなりますよ」

「そんな早苗に」

「私たちからもプレゼントだよ」

「え?」

そう言って手渡されたのは少し大きめの箱。向こうだと丁度、ネックレスやペンダントが入るぐらいだろうか。

「これ…… 私にですか?」

「ああ。開けてみるといい」

「わぁ……」

中にはいつも着けている蛙の髪飾りと同じようなデザインのカエルのイヤリングと蛇を象った指輪が入っていた。

「こ、これ、どうしたんですか? こんな高そうなもの……」

「ん? ああさっき言った香霖堂ってとこでね、これ、元は外から流れついてきた奴なんだけど」

「そのまま渡すのも味気ない、って事でね。町の細工屋に行ってちょちょっと手直ししてきたのさ」

「もちろん蛇は私、蛙は諏訪子が手直ししたのさ」

「って早苗!? どうして泣いてるの!? もしかして嫌だった!?」

「いえ…… 私、嬉しくて。去年の今頃は、もうこうしてお二方と一緒に過ごせるとは思ってませんでしたから……」

「そう、だね」

「うん」

「だから嬉しいんです。またこうして3人で過ごせて。それだけで十分だったのに、こうしてプレゼントまでいただいて。
私は、今、この幻想郷で一番幸せです」

「嬉しい事言ってくれるねぇ早苗。……よし、今夜は久々に3人で寝ようか!」

「諏訪子にしちゃいい考えだね。そうと決まったらさっさと片付けるよ。手伝いな」

「はいはい、まったくおばちゃんは神使いが荒いなぁ」

「黙れ幼女。さっさと片付けろ」

「何で私だけが当番みたいになってるのさ!」

「みたい、じゃなくて当番だ。ほれさっさと持ってけ」

「うがー!!」

「クスクス…… あ、雪……」

こっちに来てから初めてのクリスマス。
今年1年、目まぐるしく過ぎていったけど、終わりよければ全て良し。
今年一年の感謝をこの言葉に乗せて――

「お二方とも――」

「「ん?」」












「メリークリスマス」
とりあえず、季節ネタは外せない、ということで。
どうしてケロちゃんにはカリスマを持たせられないのだろうか……

後、早アリを書きたくなってしまって困る。
ノイン
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
ホッコリしました。
彼女たちのクリスマスに幸あれ。
2.名前が無い程度の能力削除
>お菓子の家貰っていい? 答えは聞いてない! いっただきー!
俺の幼少時代の行動と全く同じで吹いたwそのあと兄貴にボコボコにされたのもいい思い出。
3.名前が無い程度の能力削除
早アリ、あれはいいものだ。
4.名前が無い程度の能力削除
これこれ、家族はやはりこうあるべきですね。羨ましくもあり、懐かしくもあり・・・
とても温かい良い作品でした。あと、後書きの最後に期待。
5.ノイン削除
>>1様
ホッコリしていただけてなによりです。
きっと幸せですよ。彼女たちは。

>>2様
私自身はお菓子の家に興味なかったり。
そん代わり量を食って気持ち悪くなりましたがね。

>>3様
これを書くまではそうでもなかったのですが書きあげたあとに書きたくなってしまって困った。
これは書けというお告げに違いない。

>>4様
ですよねー。紅魔組然り、永遠亭組然り、八雲家然り。
家族愛は世界を救うのです。

コメントありがとうございました!