Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

眠り姫

2008/10/13 04:21:54
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1.

走る、走る、走る、走る、走る。
ああ、思考が体に着いていけない。
それでも私は走らなくてはいけない。
恐ろしいものから逃れる為に、だ。


但し、これは夢である。


「…………っ」


瞼が重い。溢れんばかりの爽やかな日光が窓辺から降り注ぐ。
寒い……、皮膚呼吸をしている、感触。
肺が空気を求める度、冬の冷気が、必然的に体内に取り込まれる。
私は目覚めたのだ。そう思って、軋む上体を起こした。

「はぁ……」

また嫌な夢を見てしまった。嫌な夢に限って何度も見てしまう事がよくある。
ここのところ、毎週のように見るのだ。

私は私に追い掛けられていた。
でも、後方を振り返ってはいけない。
何というか、これは自分でも説明出来ないのだけれど、夢の中では行動が制約されている。
だけど、私を追い掛けているのは紛れも無く私なのだ。
起きている時なら、上手く撒くなり応戦するなり出来るだろうが。
夢ではそう上手くいかない。


「どうしたものかしらね……」


ここで魔理沙なら、どうしたもこうしたも無いだろ、と言うだろう。
霊夢なら、気にすること無いわ、と言うだろう。
まあ、彼女らに相談したところで根本的な解決にはならない。
夢は私自身が見ているものだもの。

どうせなら、今度は思い切り良い夢が見られるようにしましょう。
どうせ暇なんだもの、どうせ友達も居ないもの。
私は再び瞼を下ろした。ああ、眠りに落ちていく感覚がはっきりと分か




2.仮説


私はアリス。今日もあおいドレスを着て、南の森へあそびに行くの。
トランプのへいたいさん、ごきげんよう。そう、私はお姫さま。
そうだ、この前のできごと、少し話してあげようか。

お母さんは、金かをくれました。私がいい子だからって。
金かには、アリスってほってあるの。
でも、私は、金かを池に落としてしまいました。
お母さんは、私のことを悪い子だって言って、もう一人の子をかわいがるの。

もう一人の子は、お母さんの本当の子供じゃないくせに。
その子の名前も、アリスっていうの。
ほんとの名前は、アリスじゃないんだって。
だから金かにほってある名前もアリスじゃない。
でも、私が悪い子だから、お母さんに、アリスって呼んでもらえない。
ゆるせない、アリスは私一人でいいのに。

だから、少しだけ悪いことしちゃった。

「ねえアリス、追いかけっこしましょ」

「いいよ、アリス。最初は私が鬼になるわ」

「ああそうだわ、アリス、金かをあずかってあげる。
 落としたらいけないでしょう?」

「……うーん、まあ、そうね。じゃあ、はい」

「うん、また返すからね。最初は目をつむってて。私はにげるから」

「うふふふ、分かったわ」


そして、池につきおとした。
ばかなアリス、目をつむっちゃうのがいけないわ。

これからはアリスを名乗らないことを約束するなら、助けてあげる。


これでアリスは私一人よ!




3.

「なあ、アリス。お前んとこの表札、つづり間違ってるんじゃないか?」

「え?そうなの?小さい頃から持ってたから気付かなかったわ」

「ほら……、見てくれよ。

a r i s になってる」

「ほんとだわ。正しくは a l i c e なのに」

「変だな。折角文字も消え掛けてるような古い金貨使ってさ、立派な彫刻なのに。
 まあ誰にでも間違いはあるって事だぜ」

「……そうね。誰にでも間違いはあるものよね、例えどんなに素敵なお姫様でも」




4.

「魔理沙と、離れたくないな」

アリスの手が虚空を切る。重力に引き寄せられるその手を魔理沙が受け止めた。

「離れるも何も、今はこうしてるじゃないか」

「私が言ってるのはそういう離れるじゃないわよ」

不貞腐れたようにアリスは魔理沙から顔を背ける。
慣れっこだ、というように、魔理沙はアリスの頬に軽く手を添える。

「例えば……?」

「姉妹だったらいいなあ……って、思わないかしら?」

「へえ……?
 でも、姉妹なら、こうして抱き合ってるのは……禁忌にならないか?」

アリスが、振り向く。淡い金髪を魔理沙の指に強か絡ませて。
その瞳は随分と妖しく細められていた。

「異母姉妹なら問題がないわよ……?」

「ま、それもそうだな。
 でもさ、考えたってそりゃ無理な話だろ?」

「無理な話かしら?
 こうして今抱き合ってるのも、前世に何か縁があったからでしょう?」

「アリスよ、お前結構そういうの信じるんだな」

「信じてるんじゃないわ。実際にあったことだもの」

「………はぁ?」

魔理沙は疑問符を隠し切れずにいる。
今日のアリスはおかしい、とさえ思っていた。
情愛に浸る乙女はどこか熱に浮かされたようになる、そういう原理だろうが。
アリスはそれ以上は語らなかった。
魔理沙も必要以上に問い詰めれば魔理沙自身おかしくなってしまいそうだったので、やめた。

アリスには十分なほどの甘い時間が与えられる事になっている。
それを示すかのように、アリスは薄い微笑を浮かべた。






1.

「…………っ」


瞼が重い。溢れんばかりの爽やかな日光が窓辺から降り注ぐ。
寒い……、皮膚呼吸をしている、感触。
肺が空気を求める度、冬の冷気が、必然的に体内に取り込まれる。
私は目覚めたのだ。そう思って、軋む上体を起こした。

「はぁ……」


良い夢だったのに、と私は溜息をついた。
もう一眠りする事にしよう……そう思ったとき。


「アリス、居るのか?魔理沙……だけど」


聞き覚えのある声……だけど、誰かは思い出せない。
この際どうでもいい、早く私を寝かせて。夢の続きを見させて。


「五月蠅いわね!!!どうでもいいから、帰ってくれる?
 折角の夢が台無しになっちゃう!!
 誰だか知らないけど、邪魔しないで!」








「困ったな。あいつ、もう、一ヶ月は寝てるぜ」




表札には a r i s の文字。

因みに、所々欠けていて、よく読めない。





おわり
じゃむと申します。二度目の投稿です。
分かりにくい点などありましたらご指摘願います。
じゃむ
コメント



1.ティファーリア削除
えーと…どこまでが夢の話で、どこが現実の話ですか?
ちょっと境界が曖昧に感じました。あとは、『アリス』のつづりが『aris』で、所々欠けてって…
すいません、欠けてる部分が補完できませんのでよくわかりません。
2.欠片の屑削除
胡蝶の夢かぁ… 怖い話ですね。
3.名前が無い程度の能力削除
欠けてるトコはMとaかなと。
スミマセン、私めでは話の根幹が分からずっ!
さとりさん読解力をぷりーず。
4.じゃむ削除
皆さんコメント有難うございます。

>>1さん
夢と現実の境界がはっきり分からなくなる程倒錯したものが書きたかったのですが、
やはり読み手からすれば読み辛かったのかもしれません。構成をもう少し工夫して出直してきたいと思います。
複雑な構成かつ読み手にあっと言わせられるような素敵な物語が書きたいです。

>>2さん
有難うございます。怖さ、というより、狂気でしょうかねえ。
胡蝶の夢の怖い所は、夢を見た本人が夢と現実の区別がつかないって所ですね。

>>3さん
仰る通りです。書き手が内容をあまり詳しく説明するものじゃないとは思うのですが、少しだけ。
アリスの見ている夢は、アリスの過去の記憶にアリス自身の理想や妄想が組み込まれたものです。
また、必ずしも2~4の時系列が同じとは限りません。
まあ、要するに現実のアリスと魔理沙は仲が悪いという事で。


これを機に精進していきたいと思います。ではまた。