Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

永遠亭の至宝と輝夜の薬

2008/09/15 14:18:40
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※キャラクターの設定を変えている部分があります。ご了承ください。


「永琳。研究室借りるわよ」

 永琳が研究室で足りなくなってきた薬を補充のために調合していると、輝夜が入ってきた。

「姫? かまいませんが、なにをするのですか?」
「薬を作るのよ」
「……久しぶりですね」
「まあね」

 じつに数百年ぶりのことだ。月にいた頃以来ではなかろうか。
 一緒に作業した頃のことを思い出し永琳は懐かしげな表情を浮かべる。

「手伝いましょうか?」
「一人でやらないと意味ないの。かわりに資料や材料は使わせてもらうわ」
「どうぞ」

 妹紅との決闘に使うのかしらと思いつつ永琳は薬を作る作業を続行する。話していても作業は止まっていなかった。何百何千と作ってきた薬だ、ほかのことに気をとられても失敗はない。
 なにを作るのか無事にできるのか気になる永琳は、ちらちらと輝夜の作業を盗み見る。だが輝夜は永琳に背を向けているため作業を見ることはできない。
 もっとも今は資料を見ているだけなので、盗み見ても意味はない。
 一時間以上かけて、必要な情報を集め終えた輝夜がパタンと本を閉じる。

「材料ってどこにあるの?」
「姫から見て左にあるタンス二つに入ってます。
 あいうえお順に引き戸に入れてありますから」
「こっち見ては駄目よ。材料からなにを作るかばれるから」
「わかりました」
 
 引き戸を開ける音が永琳の耳に入ってくる。さすがに音だけでなにを持ち出したのかわかりはしない。
 最近棚の整理を材料の勉強も兼ねて鈴仙に任せていたため、なにがどれくらい減ったのかわからないので、そこからも推測できない。
 それでも薬作りに恵まれた才能を持つ永琳は、輝夜が薬作りため材料をあぶったときにでた香りから二種類の材料をつきとめた。

(とはいっても、この二種類を材料とする薬って三百近くあるのよね。
 せめてもう一種類くらいわかればいいんだけど)

 輝夜は作業に集中していて、永琳は考えているため、静かに時間が過ぎていく。
 煎じたり、きざんだり、潰したり、作業音だけが部屋に響く。
 ほかのことに気をとられていてもよどみなく手を動かしているため、考えごとをしてるようには見えないのはさすがだ。
 そして三時間ほど過ぎた。

「これでよし」
「完成したのですか?」
「一応はね。一晩月明かりを浴びせて熟成させればできあがりのはずよ」

 完成品をテーブルのわきにおいて、作業で使ったものを片付けていく。丁寧に念入りに片付けられ、作業前よりも綺麗になっている。
 ここまで丁寧に片付けたのは、作業跡からでも永琳ならばなにを作ったかわかると考えたからだ。

「邪魔したわね」
「いえ、いつでも使ってかまいませんよ」

 完成した薬を持って輝夜は研究室を出ていった。
 結局、輝夜がなにを作ったのかわからない。月明かりを浴びせるという言葉で候補が五十以下に絞れたくらいだ。
 
 次の日、輝夜は完成品を持って永遠亭を出た。
 そのとき永琳は患者を診なければならなかったため、あとを追うことはできなかった。鈴仙に頼もうにもちょうど薬を売りにでている。てゐは用事で出ているのか姿をみかけない。ほかのイナバたちもどこか楽しげに忙しそうだ。

 永遠亭を出た輝夜は里に来ている。
 目的地は寺子屋だ。
 慧音の住居部分の庭に降り立った輝夜はそこから慧音を呼ぶ。

「白沢いるかしら?」
「珍しい客だな」

 呼ばれ出てきた慧音は縁側に立ち、わずかに驚きの表情を浮かべ輝夜を見ている。
 そんな慧音を気にせず、薬を差し出す。

「ちょっとこれ飲んでくれない?」
「なんだそれは? 飲んでもいいが、飲む前にどんなものか説明してくれ」
「これは肩こりをとる薬よ。たぶん」
「たぶんってなんだ?」
「薬作りなんて久しぶりだし、作りたい薬の作り方が載っている本がなかったから、勘で補っている部分があるのよ」

 薬で作るうえで言ってはいけないことをさらりと悪気なしに言った。

「勘って……できれば飲みたくないのだが?」
「飲んでくれたら三ヶ月くらいなら妹紅と殺し合いしないであげる」
「うーむ……。
 製作者から見て、成功していると思っているか、それ」
「そうね……半分くらいの確率で成功してると思うわ。
 それに失敗していても味が悪いだけじゃないかしら。そこまで酷いことにはならないわよきっと。毒とか使ってないし」

 二分の一で成功。裏返せば同じ確率で失敗。
 慧音は悩む。
 だが妹紅にしばらく健康ですごしてほしいという思いから、飲むことを決意する。
 輝夜に手を差し出し薬を受け取る。
 竹筒の水筒に入れられたそれをいっきにあおった。
 舌に薬が触れたとたん、脳が刺激を知覚する。

「苦っ!?」

 体が痺れたり、血を吐いたりはしないが、味覚に攻撃されたような苦さだ。
 台所へと走った慧音はポンプをこいで水を出し、がぶがぶと飲んで苦さを消す。
 少しだけ顔を青ざめた慧音が縁側に戻ってくる。

「失敗かしら?」
「最初に言うことがそれか」
「味が悪いかもしれないとは聞かれたときに答えたでしょ」
「想像以上だったがな」

 言いながら慧音は肩に触れる。五分ほど動かして、幾分か軽くなり柔軟になったと感じられた。

「成功じゃないか? 確実に楽になったぞ」
「……いえ失敗だわ。やっぱり勘でやっても駄目ね」

 慧音を見て輝夜は失敗だと判断する。

「肩こりはとれているぞ?」
「求めた効果がでていないのよ」
「いやだから」
「邪魔したわね」

 慧音の言葉を遮って輝夜は空中に浮かび永遠亭へと飛び去った。
 慧音はわけがわからないと首を傾げている。

 永遠亭に戻った輝夜は失敗点を直そうと資料を見る。
 昨日見た資料以外も見たのだが、輝夜の求めるものは載っていなかった。

「そんなに時間はないのよね。
 仕方ない、ほかを当たってみましょうか」

 以前、鈴仙に紅魔館にはたくさんの本があると聞いたことがある。目的地はそこだ。
 冷蔵庫からとあるものを持ち出し、それをお土産として紅魔館に向かった。
 湖を越え、紅魔館門前へと着地する。
 少し前まで眠そうにしていた美鈴だが、輝夜の気配を捕らえ今はそうとは見せないように臨戦態勢をとっている。
 対する輝夜には敵意はない。それは美鈴も感じ取っているが、敵意を隠しているという可能性もあるので臨戦態勢のまま問う。

「何か御用でしょうか?」
「ええ。ここに図書館があると聞いて、本を見せてもらえないかと思って」
「図書館ですか」
 
 じっと輝夜を見て、美鈴は臨戦体勢を解く。
 問題なしと判断したのだろう。

「少々お待ちください。許可もらえるか聞いてこさせますので」
「ありがとう」

 美鈴は門番隊の一人をパチュリーへと使いに出し、図書館利用の許可を聞いてきてもらう。
 数分も待たずに使いは了承の言付けを持って戻ってきた。
 輝夜は案内されて地下図書館へと入る。
 出迎えたのは小悪魔。客の対応は小悪魔になったのだろう。

「いらっしゃいませ」
「世話になるわ」
「はい。主は本を読むことに忙しいので対応は私になります。
 こちらへどうぞ」
「その前にこれお土産よ」

 桜色の薄布に包まれた重箱を差し出す。
 中身は人参の羊羹だ。人参好きのイナバたちが妥協せずにこりにこって作った一品。
 自家栽培した自信作の人参を柔らかく煮て、丁寧に時間をかけて潰し、目の粗い漉し器で数度漉す。それにどこからか調達してきた和三盆を混ぜ、さらりとした口どけとなめらかさと上品な甘さを追及したのだ。
 永遠亭内でも人気の一品だ。

「ありがとうございます」
「連絡なしにきたのだから、これくらいはね」
「黒白の魔法使いとは大違いですね。あの方はお土産を持ってくるどころか、本をお土産として持っていってしまいますから」
「うちも何度かやられたわ」
「困ったものですね。
 ところでどのような本をお求めで?」
「薬関連よ。体を変化させるようなもの」
「病気を治すとかではなく、背を大きくしたりとかですか?」
「ええ」
「わかりました。とってきますので、こちらに座ってお待ちください。
 あと静かに願います。主は騒々しいのは嫌いますので」

 そう言って小悪魔は本をとりに本棚の群に消えていく。
 輝夜は想像以上の本の多さに驚いていた。

(とってきてもらえて助かったわ。自分で探せなんて言われたらどれだけ時間がかかるか)

 二十分ほどで数冊の本を抱えた小悪魔が戻ってきた。
 
「こちらが求めた本だと。
 貸し出しは行っていませんので、持ち出しはしないでください」
「内容を書き写すのは?」
「それは大丈夫です。
 では御用がある場合は、こちらの鈴を鳴らし呼んでください」

 テーブルに小さな銀のベルを置いて小悪魔は仕事に戻る。
 輝夜はさっそく本を開いて読み出す。
 集中し読み続ける輝夜は時間の経過を忘れる。
 日が暮れても読み続ける輝夜に小悪魔が声をかける。

「よろしいですか」
「なに?」
「いえ、すでに日が暮れてますけど帰らなくて大丈夫なのかと」
「え? もうそんな時間?
 ……まあ大丈夫よ。妹紅との殺し合いで朝帰りなんて何度かあったし。
 それとも図書館閉める時間?」
「それはまだ大丈夫です」
「ならもう少しだけお願い。
 三時間ほどで終ると思うから」
「わかりました。
 軽食でもお持ちしましょうか?」
「そうね……お茶をお願いできるかしら?」
「少々お待ちください」

 小悪魔の入れたお茶で少しだけ休憩をとり、再び作業に戻る。
 それから三時間弱。必要なことを調べ書き終えた輝夜は紅魔館を出る。小悪魔に礼を言って、本を読ませてくれたパチュリーに礼の伝言を頼んで。
 
 永遠亭に戻ると、皆今日は勝ったのですねと言ってくる。
 妹紅と死合って帰りが遅れたのだろうと思っているからだ。死合ったにしては服に汚れがないのに。完勝したのだと考えてるのだろう。
 輝夜も訂正することなく、食堂に向かう。おにぎりを作って再び研究室へ。
 夜明けまで研究室に明かりがついていた。
 朝になって起きた永琳が研究室に入ると、器材を片付けたところで眠気に負けた輝夜がテーブルに突っ伏していた。久々の頭脳を使う活動で精神的に疲れたらしい。
 輝夜の顔の横に一晩かけて作った薬が置いてある。
 それの分析などしようとも思わずに、輝夜を横抱きにして寝室へと運ぶ。
 布団に寝かせた輝夜の枕元に持ってきた薬を置いて、永琳は静かに寝室をでる。
 永琳が薬を気にしないのは、もう少ししたらどんなものか知ることができるとわかったからだ。

 輝夜が薬を作って一週間と少し。この間に薬の効果を自分で試し、涙を流して成功を確信した。
 永遠亭内もそわそわとした雰囲気が漂っている。落ち着いているのは永琳くらいだ。
 忙しそうで楽しそうで、でもそれを表に出さないようにしている皆を、永琳は微笑みながら見ている。
 そして隠し事をばらすときがきた。
 鈴仙に連れられ永琳は食堂に向かう。扉を開けると輝夜とイナバたちがいっせいに、

「誕生日おめでとうございます!」

 と大きな声で祝う。

「ありがとう」

 永琳は満面の笑みで祝いの気持ちを受ける。
 食堂内は色紙で飾り付けられ、おめでとうございますという幕もかかっている。テーブルにはご馳走が並び、全員に行き渡る数のケーキも置かれている。
 永琳を上座に座らせて、皆も座る。

「もしかして永琳、このこと知ってた?」
「どうしてそう思うのです姫?」
「なんとなく?」

 付き合いの長さからくる直感みたいなものか、輝夜はちょっとした違和感みたいなものを感じ取っていた。

「知っていましたよ。
 ウドンゲの独り言を聞きましたから」

 全員の視線が鈴仙に集まった。

「えっと本当ですか師匠?」
「ええ。用事があって貴方に話しかけようとしたときに、考えごとしてたみたいでそれが声に出てたのよ」

 永琳を除いた全員の視線が剣呑なものに変わる。
 鈴仙はあわあわと慌てて謝る。
 
「ご、ごめんなさ~い!」
「前もって知っていても嬉しいことにはかわりないのですから、ウドンゲを責めないで」
「永琳に免じて許してあげるわ」
「ありがとうございますぅ」
「鈴仙のことはおいといてプレゼント渡そうよ」

 てゐが場をとりなす。
 皆が準備したものを取り出して永琳に渡していく。
 イナバたちは皆で協力して永琳の服を作り上げた。てゐと鈴仙は希少な薬の材料を集めてきた。
 そして輝夜はあの薬だ。

「はい。私からはこの薬よ」
「姫様? 師匠には薬は効かないのでは?」
「正確には効きづらいのよ。じゃないと蓬莱の薬も無力化したことになるわ。
 でも効果は現れてるでしょ?」
「そうだったんですか」

 永琳は手に取った薬を見て聞く。

「これは以前作っていた薬ですよね? でもあのときは飲み薬だったような?」
「あれは失敗したの。それで作り直したのよ。
 それに飲み薬だと効果が体中に分散して、永琳の抵抗力に負けると思ってね。
 塗り薬だと塗った場所にだけ効果がでるでしょ。一箇所にだけ強力な効果をだして抵抗をはねのけるように作ったの」
「効果は?」
「肩こり解消よ」
「では肩に塗ればいいのですね」
「違うわ。胸よ」
「胸?」
「効果は塗ればわかるわ」

 永琳から薬を渡してもらい、永琳の服に手を入れて薬を塗る。
 即効性の薬のようで効果はすぐに現れた。
 みるみるうちに永琳の胸が縮んでいった。最終的にてゐ以下のぺったんこ。貧乳はステータスだ、とかいえる膨らみすらもない。

「胸が重くて肩がこるっていってたでしょ?
 これで原因解消よ!」
「姫様!?」

 永琳が何か言う前に鈴仙が悲鳴のごとき大声を出す。てゐやイナバたちもショックを受けたような表情だ。

「永遠亭の至宝になんてことをっ!」
「「至宝!?」」

 鈴仙の言葉に主従で驚いている。

「そうですよ! 愛と夢と煩悩が詰まった永遠亭でもっとも価値のある宝物です!」

 てゐとイナバたちも異論はないのか頷いている。
 蓬莱の玉の枝とかじゃないんだ、と輝夜は少しだけショックを受けている。

「姫様だって覚えがあるでしょう?
 あの胸に抱かれて感じた。柔らかさ温かさ心地よさ安らぎを!」
「あ、うん」
「それを至宝と言わず、なにを至宝と言うのですかっ!」

 拳を握り締め鈴仙は力説している。背後に炎を背負っているようにも見える。
 無意味なまでに強烈な迫力と説得力がある。

「で、でも三日もすれば元に戻るしっ」
「三日も我慢しなければいけないのですか!?」

 鈴仙たちはふらりと倒れそうになる。

「な、なら私の胸で我慢してよ」
「ワンサイズ上げてから出直してきてください」

 即答だった。しかも鼻で嗤うというオマケつき。

「え、え~りん。イナバが苛める~」

 弱気な表情で、助けてと永琳に抱きつく。
 しかし真顔に戻り、

「あ、ほんとだ物足りないわ」

 呟いた感想が鈴仙の言葉を証明していた。
感想ありがとうございます

>さらっと!?
鈴仙たちが羨ましそうにしてたみたいです

>永遠亭の宝を……姫様ありえねえよwwwww
>姫さま賢いなwwwだがしかし同時に愚かでもあるwww
大きな胸に対するちょっとした僻み?もあったみたいです
トナ
http://blog.livedoor.jp/ee383/
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
>永琳から薬を渡してもらい、永琳の服に手を入れて薬を塗る。
さらっと!?こんの主従は~仲良しさんめ!!
2.名前が無い程度の能力削除
永遠亭の宝を……姫様ありえねえよwwwww
仲の良い永遠亭はよいですなGJ
3.喚く狂人削除
姫さま賢いなwwwだがしかし同時に愚かでもあるwww