Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

東方昔話 『貧乏神と福の神』

2005/12/30 11:51:26
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むかしむかし、あるところに、大変貧乏な若者がおりました。
この若者、働けど働けど、一向に暮らしが良くなりませんでした。

   レミリア「あ~、何で私が貧乏なのやら。霊夢じゃあるまいし。」

それもそのはず、若者の家には貧乏神が住んでいたのです。
貧乏神が居る家にはお金が貯まらず、その家に住む人は、ず~~っと貧乏なままなのです。

  パチュリー「………貧乏神って言うのも、あんまりな役よね。」
   レミリア「痩せこけてて、身体つきが貧相からじゃない?もっと身体鍛えなきゃ。」
  パチュリー「酷い言われ様だね。」

働けど働けど、お金が貯まらないので、若者はやる気を無くして働かなくなりました。
ところがある日、この若者の家に、大変な働き者なお嫁さんが来たのです。

     咲夜「不束者ですがよろしくお願いします。………ええと、どうお呼びしましょうか?」
   レミリア「う~ん、妥当な呼び方って言うのが思い浮かばないわねえ。」
  パチュリー「『お前様』、とかで良いんじゃないかしら?」
     咲夜「何だか、武家っぽいですねえ。」
   レミリア「まぁ、何でもいいわ。」

お嫁さんは、朝から夜まで、せっせと一生懸命働きました。
その働き様は、怠け者の若者を関心させるほどでした。

   レミリア「さくや~、あれとこれとそれと……全部やっといて。」
     咲夜「う~ん、もう少し、内容を明確にしていただけると有り難いのですが…。」

お嫁さんがやって来てから若者の暮らしは、少しずつ良くなって行ったのです。
若者は、それはもう大喜びでした。
しかし、その一方で、困ってしまった人が居ました。
それは、若者の家に住んでいる、貧乏神です。
貧乏神は、住んでいる家が貧乏であるほど力が出るのですが、
家が裕福になってゆくと、逆に力が出なくなってしまうのです。

  パチュリー「う~ん、最近調子が悪いわね……。ごほっ、ごほっ……。」

さて、年の暮れのある日のことです。
今年は、良い正月が過ごせると、若者は喜んでいました。

   レミリア「も~い~くつね~る~と~。」
     咲夜「嬉しそうですね。」
   レミリア「まぁ、どんな身になっても、人生楽しまなきゃ損ってもんよ。」

ついつい、歌も漏れてしまうというものです。
夫婦水入らずで、目出度いと感じていた、そのときです。

  ?????「しくしく……。」

天井から、誰かがすすり泣く声が聞こえました。

   レミリア「はて、何が悲しいのかしら?」
     咲夜「ええ。幸せすぎて恐くて泣いています。しくしく。」
   レミリア「あんたが泣くのは勝手だけどね。それより、天井よ、天井。」
     咲夜「もっと、こう、悲哀に満ちたのが聞こえてきますわねえ。」

何事かと思って若者は、天井裏を覗きました。
すると、

  パチュリー「よよよ……。」

そこには、貧乏神が居たのです。
若者は、何故泣いているのか、理由を尋ねてみることにしました。

   レミリア「泣いてたら、貴重な水分が無くなるわよ。」
  パチュリー「そこまで不摂生はしてないと思うんだけど。」
   レミリア「で、何が悲しくて、泣いてたの?」
  パチュリー「実は、貴方たちの生活が裕福になったから、私の力が衰えてきて……。」
     咲夜「ああ、貧乏神ですからね。」
  パチュリー「それだけなら良いんだけど、貧乏神とは言え、家を護る神の一つ。でも力が衰えたら、
        家を護ることが出来ない。だから、力が有る他の神と替わらなければいけないの。」
   レミリア「他の神って、何が来るの?ゼウス?オーディン?ラー?ヴィシュヌ?」
  パチュリー「そんな大仰なのじゃなくて、名も無い福の神よ。」
   レミリア「なぁんだ。つまんないわね。」   
  パチュリー「今度の正月が来たら、その福の神が来て、私はここを出て行かなければ
        ならないの。そうしたらこの貧乏の身。路頭に迷ってしまうわ。そう考えると……」

この貧乏神はずっと家を護ってきたのですが、家がちょっと裕福になり、
家を護るための力が衰えてきたので、福の神と入れ替わらなければいけなくなったのです。
しかしその後、この貧乏神は、一体どうなってしまうのでしょうか?
貧乏神が出て行き、福の神がやってくるのは、家にとって凄く良いことですが、
若者は、ずっと家を護ってきたと言うこの貧乏神が、とても可哀想に思えてきました。

   レミリア「可哀想に。ねえ、何とかならないかしら?」
     咲夜「何とか、と言われましても、相手は神様ですよ?何とか出来るものなのでしょうか?」
   レミリア「神なら、封じるのが王道ね。」
     咲夜「どうやって封じるのですか?」
   レミリア「……魔封波かなぁ。」
     咲夜「死にますから、それ。」

夫婦は話し合い、貧乏神を守ることに決めました。
そして大晦日の日がやって来ました。

     咲夜「いよいよ、決戦の時ですね。」
  パチュリー「まず、私が相手をするわ。それで駄目なら、あとはよろしく。」
   レミリア「ええ。後詰は任せて。」

目出度い日なのに、この家だけは戦でもするような雰囲気です。
そうこうしているうちに夜が来て、年越し蕎麦を食べて鋭気を養い、
ついに、年が明けました。

      咲夜「新年、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますわ。」
   パチュリー「あけましておめでとう。こちらこそ、よろしくね。」
    レミリア「おめでとう、と言いたい所だけど……来るわ。」

三人は、新年の挨拶を交わしました。
と、挨拶が終わった、そのときです。
コンコンと、誰かが戸を叩きました。
若者は、戸を開けます。

      霊夢「来てあげたわよ。あけましておめでとう。」

そこには、目出度い衣装を着た、福の神が居ました。

    レミリア「じ~……………。」
      咲夜「じ~……………。」

若者とお嫁さんは、その姿を凝視しました。

      霊夢「な、何よ?」
    レミリア「サンタはお呼びでない。」
      咲夜「クリスマスはもう終わったでしょう?ほら、帰った帰った。」
      霊夢「サンタじゃないわよ!福の神よ!福の神!」

風貌は如何わしいですが、正真正銘の、泣く子も黙る福の神です。

     霊夢「まあ、そんなことよりそこの貧乏神!」
  パチュリー「何?」
     霊夢「正月が来たら、ここを出て行くって約束でしょ。ほら、さっさと出た出た。」
  パチュリー「そうはいかないわ。ここを護るのは、私の役目よ。」
     霊夢「あんたねぇ。一応決まり何だから、逆らっちゃ駄目でしょ。」
   レミリア「説得力皆無ね。」
     霊夢「うっさい!黙ってなさい貧乏人!」
   レミリア「うわ~ん咲夜~!こんあ貧乏人に貧乏って言われた~!」
     咲夜「嗚呼、おいたわしや、お嬢様……。」
     霊夢「何で私が悪役みたいになってるのよ~?も~~。」

福の神は、若者を泣かせてしまいました。

     霊夢「と、とにかく!そこな貧乏神はさっさと出て行く。」
  パチュリー「……言ったはずよ。この家を護るのは私だって。」
     霊夢「ああもう。何て聞き分けの無い貧乏神なのよ。
        こうなったら、力ずくで追い出すしか無いじゃない!」
  パチュリー「本性を現したわね。」

福の神は、力ずくで貧乏神を追い出すことに決めました。
貧乏神は弱った力を振り絞り、追い出されまいと抵抗します。

  パチュリー「季節外れのサマーレッド……!」
     霊夢「甘いわ。」
  パチュリー「後ろ…?!」
     霊夢「ていっ。」
  パチュリー「あいたっ。」

奮戦空しく、貧乏神はあっさりやられてしまいました。

  パチュリー「むきゅ~……。」
     咲夜「あ、貧乏神様が貧乏神にやられてしまいました。」
   レミリア「酷いことするのね。貧乏神のくせに。」
     霊夢「何処が酷いことなのよ。出て行かないこいつが悪い………って、ちょっと。」
     咲夜「こんな暴力的な貧乏神は、うちには要りませんわ。」
   レミリア「そうね。貧乏神は、もっと慎ましやかにするものよ。」
     霊夢「私は貧乏神じゃないわよ!」
   レミリア「だって、どっからどう見ても貧乏神じゃない。でなきゃサンタクロース。」
     霊夢「どこが!」
   レミリア「うちの貧乏神様を守るのよ。あの貧乏神をやっつけなさい、咲夜!」
     咲夜「はい!久方ぶりのエターナルミーク!」

お嫁さんは、その辺にあった物を、自称福の神に向かって投げました。
それは弾幕となって、自称福の神に襲いかかります。
     
     霊夢「と、ととと!危ないっ!包丁!投げないで!それスペルカードじゃないでしょ! 
        って、自称って何よ~!ちゃんとした福の神……わっ!とっ!とっ!」

包丁、お皿、茶碗、鍋、器、柄杓、鋤、鍬、鎌、桶、薪、味噌、塩、醤油、大根、茄子……
とにかく色んなものが、自称福の神に向かって飛んできます。
とても、貧乏な家のものとは思えない武装です。
その攻撃に、自称福の神はたじたじです。

   レミリア「しゅっ!」
     霊夢「え?うわっ!」

自称福の神が怯んだ隙をつき、若者は前に駆け出し、福の神に体当たりしました。
自称福の神は後ろに転げて、家の外へ出てしまいました。

   レミリア「ほれ、貧乏神はさっさとは退散しなさい。」
     霊夢「もう頼まれてもこんな家二度と来ないわよ馬鹿~~!」

貧乏神は、怒って帰ってしまいました。

     霊夢「貧乏神じゃないってば~~~!!」

闘いは、終わりました。
入れ替わる予定だった貧乏神を追い返したので、
若者の家の貧乏神は追い出されることなく、そのまま留まることが出来るのです。

   レミリア「はい、これでもう大丈夫。」
  パチュリー「助かったわ。これで路頭に迷わなくて済むわね。」
     咲夜「さて、お雑煮を用意しましたよ。冷めないうちに、食べてくださいな。」
   レミリア「はーい。と、その前に。」

若者は姿勢を正して、二人の方を向きました。

   レミリア「改めて、新年あけましておめでとう。今年もよろしくね、二人とも。」
  パチュリー「ええ。あけましておめでとう。こちらこそ、よろしくね。」
     咲夜「はい。今年もよろしくお願いしますわ。」

若者とお嫁さんと貧乏神は、無事に、お正月を迎えることが出来ました。
三人は貧しいながらも、楽しい正月を過ごしました。
その後若者は、あまりお金持ちにはなれませんでしたが、心豊かに、幸せに暮らしたそうです。


 めでたし めでたし



 キャスト

若者   ・・・ レミリア・スカーレット
お嫁さん ・・・ 十六夜 咲夜
貧乏神  ・・・ パチュリー・ノーレッジ
福の神? ・・・ 博麗 霊夢
正月ネタ……なのかなぁ?

珍しくハッピーエンドっぽい終わり方をしました。約一名、えらく迫害されてしまってますが…。しかも最新の人気投票2位の偉い人。ああごめんなさいごめんなさい、お賽銭入れるから許して下さい…。

とりあえず、今年はこれで書き納めです。来年も何卒、よろしくお願いします。

追記:誤字修正しました。最近誤字が多い気がするので反省。
Piko
コメント



1.削除
誤字>レミリア「サンタはお呼び出ない。」

いやまぁ、見た目貧相なの(否・胸部)と、実際貧乏なの(含・胸部)と、
どっち取るって言ったら決まってるでしょう。パチェ萌え。