Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

暗部の永琳

2008/06/11 23:16:10
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永遠亭某日

医師 八意永琳
患者 霧雨魔理沙



「あ痛たた…竹やぶの中を飛ぶのは危険だなぁ…」
霧雨魔理沙が竹林を行く。
箒に跨り高速で。
弾幕を掠りつつ高速で。
しかし弾幕は掠ったら点数になるけども、葉っぱを掠ると血が出ます。
スピードがあるからなおさらだ。
「あ、そーいや永遠亭が近くに在ったな、ちょっと寄って行こう」
こうしてまた、被害者が増えるのでありました。


永遠亭に到着した霧雨さん。
挨拶もそこそこに済まし、どんどん奥へ。
永琳の診察室の前までやってきました。
「おーっす、永琳居るか~?」
しかし返事は返ってきません。
「?おーい、魔理沙さんが傷の手当てを受けに来たぞ~」
……
「どうしたんだろ?」
がらがらと扉を開け中に入る。
すると永琳は中のベッドで新聞を顔に乗せて眠っていた。
「あ~…サボってら、どこぞの死神と変わらないなぁ」
つかつかと歩み寄る魔理沙。
「おーい永琳、ちょっとケガしたんだ」
新聞をとりあげた。
「ちょっと見て…」
ひゅんっ!
声を掛けると同時に首筋に当てられる矢。
永琳は体を起こし、魔理沙を威嚇した。
「う、うわっ!」
「うるさいっ」
一喝される魔理沙。
「あなた…ここに来るまでに誰かにつけられなかった?」
「ひ…一人だぜ?」
「……帰りなさい」
再び横になろうとする永琳。
それを必死に止めようとする魔理沙。
「ちょ!治療してくれよ!」
「悪いわね…もう店じまいよ」
「まだ日が高いぜ!?サボるにも程があるだろ!」
「うるさい…早く帰りなさい」
「うるさいじゃない!傷薬くらいくれよ!」
「……しつこい娘ね…」
永琳は面倒くさそうに体を起こし、ベッドに座る。
「じゃああなた聞くけど、幾ら持ってきたのよ?」
「幾らって…金とるのか!?知り合いだろ?」
ド厚かましいにも程がある気がする。
「ふふふ…いい度胸してるじゃない…気に入ったわ、座りなさい」
「幻想郷縁起の内容を無視するなよ…」
ぶつぶつと言いながら椅子に座る。
「いい?無料で治すのは今回限りよ?見せてみなさい」
「…いや、手とか足にちょっと傷が…」
葉で切った部分を差し出す魔理沙。
「うっ…これは厄介ね…」
「んな訳あるか!」
「ホント運が良かったわね…私じゃなきゃ今頃…」
「誰でも治せるだろ!?ただの切り傷だぜ!永琳…お前ホントに医者か?」
思ったことを聞いてみた。
「…まぁ医者と言っても、日の当たるトコじゃやってけない、不老不死の医者よ」
そう言って遠くを見る永琳。
「まぁそりゃそうだろうけど…」
「とりあえず、何でこんなコトになったのか…訳を聞かせてもらおうかしら?」
姿勢を正す永琳。
「まぁ私に依頼する位なんだから、相当切羽詰まってるんだろうケド」
「いや、近所にあったから寄っただけだぜ?」
「なるほど…訳アリって事ね」
「なんだよ、なるほどって…」
「言いなさい…その訳を」
「…この近所を飛んでたら、葉っぱが当たって手とかを切ったんだよ」
「…ふぅん……まぁ詰まるところ、やばいコトにクビ突っ込んで、組織に追われたからココまでトンズラして来たって訳ね」
「そんなコト言ってない!言ってないぜ!!」
「まぁ私もプロよ…一度診るって決めた以上、地獄の底まで面倒を診て上げるわ」
「いや、こんな傷で地獄まで行ったら閻魔怒らないか?」
膝を叩き、気合を入れる永琳。
そして魔理沙の目を見つめ、ゆっくりと口を開く。
「でも先に言っておくわ、私は蓬莱の薬は使わない!」
「当たり前だ!!切り傷治すのに不老不死にされてたまるか!」
「まず消毒よ…」
永琳は魔理沙にゆっくり近づき、傷口に顔を持っていく。
「ととと…な、何する気だよ!?」
「消毒よ!ケガ人がガタガタ言わないの!!」
「舐めて消毒しようとするなよ!!そこに消毒薬があるだろ!!」
机の上にある消毒薬の入ったビンを指差す魔理沙。
「アレを使えっての!?…ホント大した度胸してるわね…」
「度胸とかいいから…早くしてくれよ…」
ビンを掴み、蓋を開く永琳。
そしてそれをおもむろに自分の口元へと運ぶ。
「って待てーー!!」
「黙りなさい!ケガ人が医者のする事に口出しするんじゃないの!!」
「口の中を筆頭に、粘膜と言う粘膜がただれるぞ!!」
「…それを堪えるから医者なのよ…」
「違う!絶対違う!!」
「私の生き様を見てなさい!!」
「だから待てーー!!」

何だかんだで消毒も終わった。
「次は止血ね…でもここにあるものじゃ……」
「何でもいいから早くしてくれよ…」
止血する物を探す永琳。
もうすでにうんざりしている魔理沙。
正直、止めなきゃならない程の血も流れていない。
「あ、それでいいや、その軟膏塗ってくれよ」
「こ…これを使うの?」
「何だよ、ヤバイ物なのか?」
「い…いえ、別に…」
永琳は机の上にあった軟膏を手に取り、蓋を開けた。
(臭いは…大丈夫だな)
魔理沙は警戒していた。
ビンに詰まった半固体のモノを見る。
自分も薬を作る立場上、それがただの軟膏だと言う事は分かった。
しかし問題はそれを扱う永琳の動きである。
軟膏を指で掬おうとするが、明らかに手先が震えている。
「…大丈夫か?」
「ま、任せなさいっ、私は…医者よ!!」
何とか軟膏を指に乗せた。
「じゃ、じゃあいくわよ…」
「……」
片手で魔理沙の手を持ち、もう片方の手の指先を傷口に近づける。
永琳の手はまだ震えている。
指先は傷口に近づいていく。
3cm…2cm…1cm
「駄目!!出来ない!!」
叫ぶ永琳。
「何でだよ!!」
指をぬぐい、頭を抱える永琳。
「…私は昔…軟膏を塗り間違えたことがあってね……」
「塗りなおせばいいじゃないか!」
「それ以来…軟膏を塗ろうとすると、手が震えるようになってしまったのよ…」
「大丈夫かよ…って言うか、お前が医者に行けよ!!」
「姫…本当にごめんなさい…」
遠くを見つめ、涙を浮かべる永琳。
「輝夜はさっきドグダミの様子を見てたぞ!?って言うかいいのか、姫に薬草の世話させてて…」
「姫……姫……!!」
泣き出す永琳。
なんだか泣きたくなる魔理沙。

何とか落ち着いた永琳。
「もういいぜ、霊夢と遊ぶ約束をしてるんだ」
「…霊夢? あの博麗霊夢ね?」
「他にどの霊夢が居るんだ?」
「あの娘は気をつけなさい…昔、弾が当たったハズなのに被弾しなかった娘よ…蓬莱の薬無しで不死身なのよ!」
「ただ単に当たり判定が小さいだけだろ!?」
永琳がゆっくりと立ち上がった。
「…あなたはここで休んでなさい…」
「な、何だよ!?」
「かつては私も6ボスを務めた身…博麗霊夢に目にモノ見せてやるわ」
足を引き摺りながら部屋から出ようとする永琳。
「ちょ、ちょっと待てよ!」
「いいから…任せなさい!!」
がらがらっ…
戸を開き、部屋から出て行く永琳。
「ああ、それと…説教する気は無いけど…」
後ろを振り向く永琳。
「私みたいな医者になっちゃ駄目よ…」
「絶対にならない!あんたの様な人間にもなりたくない!」
がらがらっ、ぴしゃん!
「……どうしたと言うのだ?」
魔理沙はぼそりと呟いた。
がらがらっ…
そして再び開く戸。
永琳が戻ってきたのだ。
「えっ?どうしたんだ?」
「姫が外に居るのよ!!」
「さっきそう言っただろうが!!」

(終)
インパルス、原点回帰。最近作家さんが増えて創想話の回転が速くなりましたね。
楽しいですね。刺激されますね。

さぁ作品集28へと参りましょう!!
欠片の屑
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
どこかで見たことがあると思ったらインパルスのネタじゃないですかww
2.名前が無い程度の能力削除
>インパルスのネタじゃないですか
言われてみればたしかにインパルス。
問題は、このコメ見た瞬間、脳内変換されてしまって2度目は魔理沙とえーりんで読めないことだな。
3.名前が無い程度の能力削除
インパルスと聞いても元ネタを知りませんが、こんな医者嫌だww
永琳がこの調子で輝夜は普段どうしているんだろう。

>葉っぱを掠ると血が出ます
日本語としては正しいけど、むしろそれは被弾してる…
4.名前が無い程度の能力削除
永琳はどんなキャラでも違和感がないのです、すごいですー
5.名前が無い程度の能力削除
つーか、なんでいつも姫様は死んだことにされるんだwww