Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

黒白と門番

2008/05/03 09:10:31
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 私は彼女のような  に愛されることを欲していた













 最初の出会いは紅霧異変のときだった。彼女は異変の原因であろう館の門番をしていた。
 巫女と共に彼女に会ったとき私はその容姿に驚いた。

 幻想郷でも珍しい特徴的な服装、長く美しい紅の髪、スリットから覗くしなやかな脚線美、
 細く引締まったクビレ、豊満な胸、そして私たちに向ける嫌味にならない気持ちのいい笑顔。

 同じ女性でも見惚れるほどだった。それは憧れと嫉妬の二つが混ざり合ったものだった。
 見た目だけでない。彼女の弾幕も綺麗だった。彼女の放つ虹色の弾幕。華や彩、
 虹という字が似合うそれはいつまでも見ていたいものだった。
 さすがに異変をさっさと解決したい巫女によってすぐに落とされてしまったが。





 ―――第一印象は女性らしい美しい人だった





 巫女に落とされた彼女は笑っていた。まるで『これでよかったんだ』と言いそうな顔で。
 普通、門番といったら主の敵は排除するべきはずなのだが……。
 巫女が言うには彼女はまるで『通るために私を倒してください』といった感じで手加減をしていたらしい。
 私はそのことに気付かなかったが。
 異変を解決したあと本人にそのことを聞いたらその通りだった。

 「門番っていうのはただ門を守るためだけにいるんじゃないんですよ。誰を通すべきか、排除するべきかを
  見定める役割をするものなのです。あの日お嬢様から『絶対に誰も通すな』って言われたけど、
  あなた達を通したのは私の門番としての意志ですよ。でも本気でやっても勝てなかったでしょうけど」

 この言葉に私は疑問を感じた。彼女は主の命令を守らず私たちを通したのだ。
 それなのに何故私たちの通したのか?理由を聞くと彼女は笑みを
 浮かべ『よくぞ聞いてくれました』と言い話し始めた。

 「お嬢様の我が侭を止めて欲しかったのと多くの誰かと交友を持って欲しかったからです。あえてあの事件を
  きっかけにして。お嬢様は吸血鬼だからそれなりに強くて種族分け隔てなく付き合ってくれる
  心の広さを持つ人じゃないとその役は務まらない。そんな人がいるのか不安に思ってるときに
  来てくれたのがあなた達です。あなた達の姿を見た瞬間、あぁこの人たちなら大丈夫だなと
  確信したんです。そしたら案の定、霧は晴れて、それ以来お嬢様は他人と交友を持つようになりました……
  紅白の巫女にべったりですけどね。でもさすがに妹様を連れ出して丸くしちゃうとは思いませんでしたけど。
  でも感謝していますよ?あの日あなた達が来てくれなかったら今の幸せそうに笑う
  お嬢様と妹様なんて見れませんでしたから」

 パチュリー様も外に興味を持ってくれるようになりましたねぇ、と最後に付け足してまた彼女は笑う。
 そう彼女は館に、自分の主にプラスになると思い私達を通したのだ。それだけでない一目見て私達なら
 平気だと判断したその肥えた目は長い年月で多くの人を見てきたものだろう。

 館を思う彼女の性格もそうだ。誰にたいしても優しく接しそしてすべてを受け入れる包容力。
 実際、話を聞くとそれにうなずける。
 メイド長は門番隊だけでなく内勤のメイド達の面倒見も良い彼女に相談をすることがあるほどだそうだ。
 またこっちに来た当初、右も左も分からない自分を育ててくれたのは彼女だという。
 悪魔の妹は昔から嫌な顔一つせず自分の能力にも恐れず遊んで貰っていたそうだ。
 例え狂気に魅入られ間違って彼女を(死なない程度に)壊してしまっても
 傷が癒えればまた彼女は気にすることなく会いに来てくれたという。
 大図書館の魔女は自分から魔法や薬の実験台になる彼女に便利な道具だと思ったが彼女は研究や実験で
 役に立つだけじゃなくそれで他人と魔女が傷つくことを嫌って彼女は志願していたことを
 使い魔に教えられた日、彼女に詫びたという。
 館の主も自分がまだ小さいころから彼女に守ってもらっていたそうだ。また様々なことを教えてもらっていた。
 そしてそれはこれからも変わらないという。
 これだとどこぞの閻魔に説教されるなら『あなたは少し優しすぎる』と言われそうなほどだ。





 ―――第二印象は人一倍他人のことを気にかける優しい人だった





 もちろん私も彼女の優しさを見たことがあるし触れたときもあった。
 異変の後、図書館にある本を借りようと(この場合は奪うといったほうが正しい)紅魔館に訪れるようになった。
 もちろん私は正式な客ではないので門番隊が迎撃に出てくる。だがその門番隊は彼女一人。
 最初は舐めてるのかと思ったがそのことをメイド長に聞くと自分のための鍛錬らしく、
 それを門番隊に見学させて弾幕の勉強させているそうだ。また私は紅魔館にとって
 害のある人物では無いという理由らしい。鍛錬は恐らく彼女が弾幕を苦手としているだからだろう。
 害は……本を持ってくことは大目に見てくれと彼女に土下座で頼み込まれたと図書館の魔女は言っていた。
 門は自分で直しているらしい。

 しかし私は彼女に対して何もしていない。やったことといったらマスタースパークで門ごと吹っ飛ばしたり
 中国という渾名をつけたりと彼女にとって散々なことしかしていない。だが彼女は嫌な顔一つせず笑いながら
 『門を壊すな』とか『中国と呼ぶな』とか『本を返せ』と言ってくるのだ。
 本心から言っているのだろうが特に気にしていないといった感じだ。
 まるでやんちゃな子供を叱る母のよう

 そう彼女はまるで母親だ



 女性的な憧れる豊かな体、美しく聞くものに安心感を与える鈴のような声、すべてを受け入れる優しい包容力



 彼女は子供を見守り育てる献身的な母親そのものだった

 私が感じたことが無い遠く夢見た温もりを彼女は持っていた




 ―――第三印象は………









 そうだ、彼女は………









 ―――第三印象は自分の求めていた『母親』というものを持っている人だった





 そうだ、彼女は『お母さん』みたいな人だ





 そう思った日から、気付いた日から


 自分が欲していたものが解った日から


 私は彼女に褒められるように彼女の前でなるべくいい子でいることを心掛けるようになった


 私は彼女のことを知りたくて、私のことを知って貰いたくて話すようになった


 私は彼女に寂しさをまぎらわしてもらおうと彼女に会いに行くようになった


 私は彼女に温もりを求めて子供のように甘えるようになった


 私は彼女を実の母親のように、私が彼女の子供だと思うようになっていった




















 「よう中国」

 門から少し離れた場所で私は箒から降り、そこから私は館を目指して歩く。
 そして紅い屋敷の門の前で昼食の残りだろうか?パンを千切っては地面に撒き鳥たちに
 餌を与えている彼女に近づき声をかける。

 「あぁ魔理沙さん。今日は何の用ですか?それと私は美鈴ですよ、何度言ったら解るんですか?」

 私に気づいた彼女は手に持っていたパンを少し乱暴に2、3回千切り地面に撒きながらこう返す。

 「この前借りた本を返しにきたぜ」

 私は本が入った鞄を見せる。私は気が付けば奪っていった本を返して普通に借りるようになった。
 理由は多分彼女に嫌われたくなかったからなのだろう……いや彼女が人を嫌うことなどないだろうが。
 それと彼女に会う理由にもなるし。もちろんマスタースパークで吹っ飛ばすことも門を壊すこともやめた。
 でもたまに弾幕ごっこはしている。彼女の鍛錬と門番隊の勉強のために。

 私が突然おとなしくここを訪れるようになって彼女が一番驚いていた。
 喜んでくれると思ったのだが……逆に残念がっていた。これでは弾幕の鍛錬ができない、と。彼女らしい理由だ。
 それを聞いた私はたまに彼女と弾幕ごっこをするようになった。だが前のように強行突破での弾幕ごっこの方が
 良かったそうだ。そっちの方がやる気が出るらしい。

 「あら、偉いわ魔理沙ちゃん。よくできましたねぇ」

 そう言いながら彼女は私に近づくと私の帽子を取り頭を優しくなでる。

 「よせよ。恥ずかしいぜ……」

 私は嬉しさ半分恥ずかしさ半分で顔を赤らめる。ついでにこれは私が本を返すようになって私がせっかく返しに
 きてるんだから何かしてくれと彼女に頼んだら何故かなでてくれるようになった。たまに彼女が淹れたお茶や
 作ったお菓子をご馳走してくれたりする。それはメイド長にも負けないとてもおいしいものだ。

 「………美鈴」

 「何ですか魔理沙……魔理沙さん?」

 私は頭をなで続ける彼女に抱きつきその豊かな胸に顔を埋める。彼女は驚いた表情をしただろうが
 すぐにいつもの笑顔に戻っただろう。

 「ふふっ、今度は誰とどんな喧嘩をしたんですか?」

 彼女は当然のように聞く。そう私は誰かと喧嘩したときは必ず彼女に抱きつき慰めてもらうのだ。
 他にも実験に失敗したときもそうしている。

 「……アリスが私のことをまた田舎者って言った」

 「またですか?それは突然言われたんですか?」

 彼女は聞き返しながら私をなで続ける。それは誰が見ても落ち込んでいる少女を
 あやしている母親のように見えるだろう。

 「いや……アリスのマジックアイテムをその……勝手に使っちゃって……」

 「また人のものを勝手に使ったのですか?」

 「だって……どんな効果か見てみたくて……」

 実はただ彼女に抱きついてなでて貰う理由が欲しくて勝手に使っただけだ。
 ついでに喧嘩相手が霊夢の場合はわざとバレるように賽銭泥をしている。

 「それなら魔理沙さんが悪いですよ。本を返したらちゃんと謝ってきたほうがいいですよ?」

 「でも……アリスがもう来るなって……」

 「大丈夫ですよ。あなたたちは親友ですから、ちゃんと謝れば許してくれますよ」

 彼女は帽子を持った方の腕で優しく抱きしめ私に言い聞かせる。

 「そう……か……?」

 私は不安そうな顔してで彼女を見上げる。そこには太陽のように明るく暖かい笑顔。

 「そうですよ。だから自信もってちゃんと謝りに行ったほうがいいですよ?」

 友達と喧嘩をして落ち込んでいる子供をあやす母親のように彼女は言う。
 恥ずかしくなって私はまた彼女の胸に顔をうずめる。

 「……………」

 「?どうしました?」

 「……もう少し……このままで……いたいぜ」

 「……まったく、甘えん坊ですね」

 そういいながらも彼女は恐らく笑みを浮かべながら私をなでてくれる。
 そんな彼女に私は母親の匂いと温もりを感じていた。















 私は彼女のような母親に愛されることを欲していた


 まったくの他人だけど


 種族は違うけど


 生きてきた年は違うけど


 彼女のこの温もりは


 彼女のこの優しさは


 本物の母親みたいだった





























 「本だけでなく彼女の心まで盗んでいくつもりなのかしらあの白黒は」

 「あの泥棒猫め」

 「こんな白昼から堂々と他の女と抱き合うなんて……この十六夜咲夜という立派な夫がいるのに」

 「美鈴は私のもの美鈴は私のもの紅美鈴は紅魔館の主である私レミリア・スカーレットのもの……(ぶつぶつ)」

 「いくら魔理沙でも私の美鈴と抱き合うなんて……壊しちゃおうかな?」

 二人の様子を僅かに開いた門の隙間から見ていた館の住民達はとても嫉妬していた。


 <終わり>
ただなんでもない一日のはずだった……そうはずだったのに授業中に創想話について
考え事をしていたら『母の愛に飢えた魔理沙と優しすぎるお母さんみたいな美鈴』
という謎の電波を強制受信。家に帰ったあと5時間でこれを書いていた。
今は後悔している。

どうも初めまして9948です。ここを知って早2ヶ月。
まさか自分が書いて投稿する立場に回るとは思ってもいませんでした。
しかも授業中に受信した有害電波で、授業そっちのけで脳内シュミレーションして、
作業時間5時間で。
ついでに電波を受信して下書きしたのが木曜、そして投稿するまで今まで一人で悶々してました。
腹をくくるの遅いよ自分チキンだよ自分。

母さんで愛されてるめーりんはマイジャスティスだから別にいい……よね?
9948
コメント



1.名無し妖怪削除
キャラに対する愛が垣間見えるいい作品だと思いました.
構成もまとまっており,魔理沙の感情の推移がすっきり見れて良かったです.
次回作も待ってます!

めーりん!めーりん!
2.名無し妖怪削除
俺の発した電波かもしれんw(嘘

次回作も期待してます!
3.名無し妖怪削除
魔理沙がかわいすぎる件

それにしても魔理沙の死亡フラグがヤバイな
めーりんにも立ってるが・・・
4.名無し妖怪削除
お嬢様が一番病んでて、こあさんが凄い姑っぽい。
このまままったりシリーズ化して欲しい位ツボな話でござました。
5.名無し妖怪削除
お嬢様が一番病んでて、こあさんが凄い姑っぽい。
このまままったりシリーズ化して欲しい位ツボな話でござました。
6.脇役削除
うん美鈴はみんなのお母さんです!これからの貴方の投稿楽しみにしてますよ
7.欠片の屑削除
こないにベッピンなオカンはものっすご憧れますなぁw
8.転寝削除
なんか幼稚園の男の子と保母さんみたいに思えた
そしてことごとく黒い紅魔館の園児たち……
9.名無し妖怪削除
母性愛溢れる美鈴は時々見ますが、ここまでお母さんしてる美鈴はレアだ!
魔理沙の思考が乙女過ぎますw思わず身悶えしてしまった。
プチなので点数は自前で90点入れておきます。

つぼりました、ぜひ紅魔館の面々の出番を増やし続きを!
10.名無し妖怪削除
めーりん万歳!
すごく考えて作られた作品で楽しかったです。

咲夜さんさらっと変なこと言ってなさるw
そしてレミリア様かえってこいw
11.名無し妖怪削除
魔理沙に死亡フラグが・・・逃げて魔理沙
別に面白くないけど書くなら次も読んであげなくも無いわよ。(ツンデレ乙
後、美鈴は俺のはh(マスパ、殺人ドール、不夜城レッド、賢者の石、レバ剣
12.名前が無い程度の能力削除
なんというだだ甘え魔理沙

魔女帽子のつばを両手で下に引っ張って、顔を隠して照れる魔理沙が浮かびました。

たまりません。



ちょっと気になったところなのですが、本のことでパチュリーに頭を下げたというところにやや違和感を感じました。美鈴それは魔理沙贔屓しすぎなのではww
13.名前が無い程度の能力削除
この電波俺も受信したかったなぁ
14.9948削除
どうも二日ぶりの9948です

あわわわわわわわわわわわ皆さんコメントありがとうございます。

何かもう嬉しすぎてあわあわ言ってます。出来ればみなさんに返信したいんですが

要点をピックアップして二つだけ



>次回作について

書いております。恐らくこのコメントを書き終わった数分後には挙がっていると思います。

とりあえず紅魔館組と美鈴の思い出話というわけで。でも全員分は今週中じゃぁキツイかな

と。でも待ってくれる人がいるかぎりは書きます。書き続けます。



>名前が無い程度の能力 ■2008/05/05 13:41:39 様

本のことで美鈴が頭を下げたのは『魔理沙を通して外の世界に興味を持って欲しいから

魔理沙を嫌わないでくれ』っていう美鈴の意思表示のつもりでしたが……

解りにくかったですね。もし他にも違和感を感じる人がいれば編集しようと思います。



最後にありがとうございました。
15.時空や空間を翔る程度の能力削除
しまった~、先に「図書館と門番」を読んでしまった・・・



母性愛あふれる作品です。

しかし・・・お嬢様と妹様の嫉妬が怖いwww