以前こんな話を聞いたことがある。
何かに優れた者はその特化した才能の代わりに、何かを犠牲にしているらしいと。
私の師匠も天才と言える人。前述のことが本当なら、師匠も何かを犠牲にしていて不得手なものがあるはず。
……すごく気になる。
気になることは追求してみなさいと師匠も言っていたので、今日からしばらく師匠を観察してみることにした。
1日目
てゐが可愛かった。
2日目
駄目だ。1日目からさっそく脱線してしまった。
今日こそはと師匠を観察。
でも本当にてゐはとても可愛い。
悪戯もかまってほしくてしてくるんだし。やりすぎたときなんか、おずおずと謝ってくる。その普段見られない姿は涎ものだ。
思い出すだけでご飯五杯はいける!
3日目
また同じことを……。
気をとりなおして観察だ。3日目の正直って言うし頑張ろう。
今日の師匠は、妹紅さんとの殺し合いで破れた姫様の服を修復していた。
糸を通すのは苦手らしく近くにいた私に頼んだあとは、かろうじて目で追える速さで服を繕っていった。
あっというまに十着あった破れた服は修復された。
今日わかったことは、糸通しは苦手ということと裁縫は得意ということ。
糸通しの才能を削って薬作りの才能を特化させたとは考えにくいっていうか、ありえないと思うのでまだ観察は続ける。
4日目
今日は鳥肉パーティーだった。
永遠亭上空を群れて飛ぶ鳥を師匠が射落としたから。
矢をつがえて放つ、狙いを定める時間はほぼ0。これを淀みなく繰り返して、次々と当てていく。放った矢は全て外れることなく命中。
矢が鳥のいるところに飛ぶんじゃなくて、鳥が自ら矢に当たりにいくようだった。
それを当たり前にこなす師匠はすごくて綺麗だった。
今日わかったことは射撃が上手だということ。
うん、前から知ってたわ。
今日のことでちょっとした仮説ができた。
糸通しが苦手で、遠距離射撃は得意。近い距離は見づらくて、遠い距離はよく見える。
もしかして師匠、老眼ですか? 蓬莱の薬も年寄る波には勝てませんか?
知りたかったこととは違うので、追求はやめることにする。
5日目
薬作りの講義があった。
姫様が温泉に入りたいと言い出したので、庭の池を一時的に温泉にする薬を作ることに。
私が師匠から教えてもらいつつ薬を作っている間に、てゐとイナバたちが池の掃除をしていた。
てゐと一緒に露天風呂に入るため気合を入れて作った薬が完成した。
夕食を終えてから池に薬を投入。あっというまにホカホカと湯気が上がりだした。
タオルを体に巻いた姫様がいっちばーんと言いながら飛び込み、そして悲鳴を上げて飛び出た。涙目で駆けていく姫様ちょっと可愛かった。
ちょっとだけ触ってみると沸騰しているとわかった。温度調整が失敗してたらしい。
でも師匠は気持ちよさそうに入ってた。
熱さにとても耐性があるみたい。一瞬だけ蓬莱の薬の効果かなと思ったけど、姫様は駄目だったから違う。
6日目
特になし。
師匠が部屋に篭って薬を作っていたため。
7日目
姫様が朝帰り。そう言えば昨日の夕飯のときもいなかったような。師匠ばかり気にしてて、気づかなかった。
妹紅といちゃついて遅くなったのですかと聞いてみたら、違うと返事が返ってきた。
昨日は妹紅さんに負けて、リザレクションの前にルーミアちゃんが来て姫様を食べたらしい。すごくお腹がすいていたようで、一晩中食べてて
リザレクションが追いつかなくて、結局復活できたのは朝だったと。
そのあとご馳走様とお礼をルーミアちゃんに言われて、復活が遅れた理由を悟ったとのこと。
……姫様、「食べられ屋」をやってみたらどうです? 気絶してるときに食べられたら痛くもなんともないでしょう? 体をはった仕事ですよ?
8日目
昨日も師匠の観察ができなかった。
観察を始めて1週間がすぎた。始めの2日はてゐのことだけで終ってたけど。
このまま観察を続けても私の観察眼では目的達成は無理だと判断。
直接聞いてみることに。
今から行ってきます。
「師匠~」
「なにかしら?」
かくかくしかじかと用件を伝えます。
「なるほど。たしかに心当たりはあるわ」
「ありますか」
「ええ。私って弟子を育てるのが下手なのよ。
あなた以外にも弟子をとったことはあるのだけど、薬を上手く作れるようにならなくてね」
「そうだったんですか~。これで夜ぐっすりと眠ることができます!
ありがとうございました!」
どうりで温泉薬失敗したわけだ。思い返してみれば師匠から教えられた薬って成功したことなかったし、今まで成功したのって自分で本を見て
作った薬だけだったっけ、すごく納得できた。
それにしても師匠はすごい。自分の短所をきちんと把握していて、それを話すことに躊躇しないんだもの。
恥をさらすことを躊躇わないなんて、なんてできた人だろう。尊敬の念はさらに高まりました。
今後もついていきます師匠!
追伸
食べられ屋のことを姫様に提案。姫様以外の永遠亭の皆には賛成されたけど。妹紅さんと慧音さんが反対したため却下。
姫様にできる簡単なお仕事だと思ったんだけどなぁ。
ルーミアが不老不死にならない事を祈ります
でも後書き読む前にちゃんと思いましたよー、「じゃあ本読んでれば師匠要らないじゃん!」って。
まさか師匠が教え下手とは。これはまた面白い設定ですね。
でも!そんな事よりっ!るみゃ×姫さまにヤられましたぜ!是非構想があれば見てみたいです。るみゃ×姫さまばんじゃーい。
このままだと、うどんげが折れたマッチ棒にえいりんは亀の