Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

東方厳冬郷 -藍-

2007/12/02 04:48:29
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冬、楽しそうなレティ、うるさすぎるチルノ。あまりにも寒すぎる。
八雲藍は割烹着を着て今日も家事をこなしていたが、いつもとは違い大忙し。
年末の大掃除、年越し・お正月の準備に追われていた藍は猫の手(橙)も借りるほどの忙しさだった。
藍も家事は好きなほうなので本来は苦にならない、それどころか楽しいはずなのだが彼女がいないせいもあってか、その表情はどこか悲しげである。
「年末だってのに相変わらず忙しそうねぇ~」

スキマから突然現れる紫。忙しい藍とは正反対に実に楽しそうであった。
「紫様!どうして起きていられるんですか。うっ・・・」久しぶりに紫様の顔を見られて嬉しいはずなのに言葉につまる藍。それもそのはず、紫は朝っぱらから飲んだくれていたのである。
「何よぉ~別にいいじゃない~1日ぐらい朝から飲んでもぉ~」「そんなことしてる暇があるなら少しは手伝ってくださいよ」怒っていてもやはり嬉しそうな藍。
「何でよぉ~家事はあなたの担当でしょ~わたしはぁ娯楽を担当してるから別にいいのぉ~」(だめだこの妖怪・・・早く何とかしないと)
べろんべろんになった紫を放っておいて、居間の掃除を始める藍。

「そうそう」と紫。まるで表情を悟られまいとするような感じで扇子を広げを口に持ってくる。
「夜になったら博麗神社の裏にある一本木にお正月用の特別な薪を取に行ってもらえるかしら。ついでに巫女の大掃除でも手伝ってあげたら?忘れずにいくのよ」
「ちょ、うちのことでも精一杯なのにあの神社の手伝いをしてくださいなんて、紫様ひどすぎますよぉ~」今にも泣き出しそうな藍であったが、それはそれでかわいい。
いつも八雲一家の家庭的部分を担い、泣き言をあまり言わない藍がそのように頼りない表情をするとかわいく見えてしますのは当然である。
紫もその表情を楽しみにしていたかのようで「泣いたってダメよ、これは命令よ、メイレイ☆」といじわる。
藍は、何で私が、と言いつつも紫様が言ってたからしょうがないと半ば納得しつつ掃除を続ける。
一方紫はおせちの余り物と藍の泣きそうな顔を酒の肴にしながら酒を飲み続けていた。
藍の作ったおせちは実に家庭的で、どちらかと言えば豪華というより質素な感じである。
しかしそこは彼女、豪華な食材は使えなくとも紫様や橙に対する愛情がそれをカバーしてくれている。

しばらくすると、こんな寒い日には絶対に外に出たがらないだろう人物がやってきた。
「寒すぎるわ゛」とガタガタ震えながら玄関に現れたのは厚着しまくりの幽々子である。
幽々子を招き入れると彼女は微笑みながら「いつもご苦労様。紫にこき使われて大変ね。」
「いえ、毎度のことですし家事は私の仕事ですから。それに橙も手伝ってくれてますし。」そう言って橙の頭をポンと撫でる藍。照れる橙。こちらは今にも「うにゃ」と鳴き出しそうでやはりかわいい。
悲しげな表情で「どうせ私は姑ですよ。だからババァなんて言われるのよね・・・」とつぶやく紫。
悪酔いしてネガディブになりやがったか、とツッコミたい気持ちを抑えつつ紫を見つめる一同。
藍が「今日はどうなされたんですか?」と尋ねると幽々子も悲しげな表情でぼやいた。
「妖夢ったらおせちのつまみぐいさせてくれないんだもの、ここにくれば何かにありつけるかなっって思って」
「そのためにわざわざうちを訪れたのですか」と笑いながら答える藍「おせちを作っていた時の余り物でしたら少々ありますけど・・・」
「あら ありがとう。」うれしそうな表情を浮かべると幽々子は、台所にあった田作りやかまぼこ、里芋の煮物などを一口で平らげた。
多少腹を満足させることができた幽々子は「そういえば」と思い出したかのように言った。「今夜はあの神社にいくの?」
(・・・神社、紫様が言っていた手伝いのことかしら・・・)藍は特に気にもせず「そうですね。うちの仕事が一段落したら行くつもりです。」
「あらそう♪」そう言うと幽々子はやはりまだ満足できていなさそうな顔で帰っていった。

掃除が8割方済んだ矢先、今度はこんな寒い日にもかかわらず元気いっぱいの娘がやってきた。
「お掃除がんばってますかーっ」と玄関の戸をピシャと開け現れたのは魔理沙である。
魔理沙を招き入れると彼女はニッと笑いながら「いつも大変だなー。妖怪にこき使われて。」
「いつものことですから」と答える藍。
悲しげな表情で「やっぱり私は姑ですよ。だから・・・」とつぶやく紫。
またかと、ツッコミたい気持ちを抑えつつ紫を見つめる一同。
藍が「ところでこんな寒い日にどうしたんですか?」と尋ねると「実はさ・・・」魔理沙は回想を始めた。

彼女が言うには、アリスの家で大掃除を手伝っていたのだが、めんどくさくなってマスタースパークですっきり一掃したら怒られた、らしい。
魔理沙「そういうわけで自分に対する罰として・・・」それを聞いた藍は、即答「結構です」
しかし魔理沙もたっぷり怒られたせいで反省してるらしく、「今度は家を吹っ飛ばしたりするようなことしないから安心しとけ」
藍は、変なことをされて仕事を増やされるかもしれないと不安になりつつも、簡単な仕事だったら任せても大丈夫だろうと考え、またせっかく手伝いに来てくれたのにその好意を無駄にするのは心苦しいので
「わかりました。それでは橙の手伝いをしてもらえますか。」と半ばあきらめた様子で言った。

橙の手伝いは、はたきで埃を落とすだけなのだがその単純作業の繰り返しに魔理沙はだんだんいらつきはじめ、
マスタースパーク
これにはいつも温厚な藍も切れた。
追い出される魔理沙。泣き喚く橙。その状況を酒の肴にしている紫。

日も暮れかけ、魔理沙の後始末をどうにか終わらせた藍。「結局大掃除全然すすみませんでした。」
橙は「あ、あの藍さま。その・・・住居用洗剤がなくなったので香霖堂へ買い物にいってきます」と何かを隠しているような表情で出かけていき、紫様はいつの間にか消えていた。
「自分の判断力不足がこの事態を招いてしまったのですからしょうがないですね。」そう言ってとにかく掃除を終わらせようとする。
そうこうしているともうすでに夜である。
(そういえば、紫様が一本木に薪を拾いに行くように言ってましたね)藍は今日の分はもう明日にしましょうとため息をつきつつも、(・・・でも橙がまだ買い物から戻ってきてないし・・・)
そう思った藍は割烹着を脱ぎ、寒い中香霖堂へ寄ってみることにした。

しかし店主が言うには今日橙は買い物には来ていないらしい。
ますます心配になった藍であったが、彼女の言いつけもあり一本木へ向かうことにした。
雪が降り始める。
水気の少ないふんわりとした雪。
(・・・早く薪を拾って橙を探さないと)そう思った矢先、聞きなれているはずなのにいつもとは違うやさしげな声が聞こえた。
「お仕事ごくろうさま、藍」それはスキマから現れた紫だった。「紫様!どうしてこんなところに・・・」
「・・・藍さまごめんなさい」紫の後ろから顔を覗かせる橙。「何で橙まで」驚く藍を気にも留めず紫は、
「メリークリスマス」
そう言ってマフラーを藍の首にやさしく巻いてあげた。
「えっ・・・これは」
「今日はクリスマスイヴよ」
「藍さまのためにいっしょうけんめい作りましたッ」手編みのてぶくろを差し出す橙。
「まぁ私のほうは手編みじゃないけどね」
「二人とも・・・」抑えきれない感情。
「あっ・・・」
うつむいてしまう藍。何かを言いたかった。二人に感謝の気持ちを素直に伝えたかった。でも、それは胸の奥から込み上げてくるうれしさにかき消されてしまった。そして涙。
そこにはだた泣きじゃくる少女とやさしく抱きとめる二人の笑顔しかなかった。

「せっかくプレゼントあげたんだから私たちも何か欲しいわねぇ♪」ウフッと橙のほうを見ながら言う紫。
しばらく考えたあと藍は「・・・それでは」と言い、紫にキスをした。驚きながらもそれを受け止める紫。涙を流しながらも嬉しそうな藍。
藍の唇は寒さのために冷たくなっているはずなのにほんのり温かみのある甘い触感だった。
それを見て赤面していた橙にもキスをプレゼントしてあげた。
雪は静かに彼女たちの様子を眺めていた・・・
「さぁ行きましょう。もう宴は始まってるわよ」
そういって博麗神社へ向かう彼女たちであった。
はじめまして。HALと申します。
初めて作ったSSを評価してもらいたく投稿させていただきました。
自分は藍さまが大好きなので彼女を中心とした妄想話を書いてみたのですが、こういった長文は初めてなので会話の部分や時間の流れなどがうまく表現できませんでした。
読みづらいかもしれませんが評価お願いします。
HAL
コメント



1.ばけばけ削除
暖かいね・・・
2.名無し妖怪削除
なかなか良いんじゃないかと
3.名無し妖怪削除
甘すぎず丁度いいなぁ
GJ!
4.名無し妖怪削除
素晴らしき八雲一家
5.名無し妖怪削除
>楽しいはずなのだが彼女がいないせいもあってか
その以前には紫様に関して何も無い上、橙が出てきたばかりなので、『彼女』が橙だと思ってしまうんですが
6.HAL削除
コメントありがとうございます。
冒頭の『彼女』という部分ですが、名前を書くより彼女としたほうが紫が登場した時の印象が強くなると考え、このような表現をさせていただきました。指摘されたように、『』などを用いてもう少し強調するべきだったのかもしれません。
7.脇役削除
あったかい……幻想に行ってしまった家族と言う暖かさ…