Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

楽しい夏休み……の予定

2005/08/29 09:32:43
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 ここはメリーの通う学び舎のそばにある喫茶店。
 和風か洋風か、はたまた中華風なのかと誰もが一度は首を傾げる。そんな喫茶店。

 居心地のよさ抜群のそこで、メリーは程よい開放感に浸っていた。
 辺りを見回すと、どこか緩んだ表情を見せている同年代がちらほらと。

 試験の最終日。
 
 何の興味も無い知識を頭に詰め込む苦行は終了。
 拘束時間が皆無の気楽で幽雅な休日のはじまり――気も緩むというもの。
 無論メリーも例外でなく、いつものように待ち合わせに遅れてきた相棒を笑って
 見逃したぐらいだ。
 
 とはいえ、例外もいるもので。
 秘封倶楽部の部長はふわふわした空気も他所に、喫茶店に入ってからマイペースに
 持ってきたノートに何やら書き付けている。
 その作業を黙って見ていたメリーも、2杯目の紅茶を飲み終えたところで声をかけた。
 
「蓮子、なにを書いているの?」
「ん、これ?」

 書き込んでいた紙をこちらに振ってみせる。
 最小が1、最大が31の数字の羅列と枠に書き込まれた文字。
 そして何より目立つその名前。

『たのしい夏休みの予定表』

 タイトルにはそう書かれていた。

「……あなたいくつよ」
「たぶん、メリーと同じよ」
「私、小学生に戻った覚えは無いけど」
「私もよ」
「………」
「………」

 見詰め合う2人。
 愛でも芽生えそうだが、メリー的にはお断り。
 いつもの掛け合いはさておいて、疑問の答えを求める。

「それで、どうしてそんなもの書いてるの?」
「これはね……」

 もう一度目を通しているのか、目が上下左右に忙しく振動。
 不備は無かったらしく、一度小さく頷いた。

「はい、メリー」

 なぜか、差し出してくる。
 
「いらない」
「だめよ。スケジュールは把握しておかないと」
「蓮子の予定を覚える必要なんてあるの?」
「ないわ」
「そうでしょ」
「でも――」

 『結界の境目』にも似た、楽しいことを見つけた蓮子が浮かべる魅力的な笑顔。
 それはすなわち、メリーに厄介ごとが舞い込む知らせ。
 秘封倶楽部における嬉しくない因果関係だった。

「――自分の予定は覚えておくべきでしょ」
「はぁ?」
「日付に丸がつけてあるとこ、確認して」
「あ、うん……えっと、ほとんど毎日ね。前半は」

 言われるままに、確認。
 それを聞いて頷くと、

「そこバイトの日だから」

 あっさり初耳なことを。

「……待ちなさい」
「もう面接も終わってあるから……サボっちゃ駄目よ」
「蓮子」
「場所は……説明しにくいところだから後で案内するね」
「蓮子っ」
「写真みせるだけで一発採用だもの、美人は得ねぇ」
「れ! ん! こ!」

 わざわざ強調してやると、肩をすくめた。
 似合いすぎて、腹が立つとメリーはいつも思う。
 同時にそれを見るのが気に入っている自分もいるが。

「合宿の資金よ」
「へ?」
「せっかくの夏だし、わがサークルも遠征の1つでもと思ってね」
「あ、あのねぇ~」
「部長としてはこのぐらいのサービス精神が必要だと思わない?」
「部員としては事前の説明ぐらい要求するわ」

 反論を切り捨てても、蓮子は動じない。
 案外、夏休みに一番浮かれているのはこの相棒なのかもしれない。

「いいじゃない、夏だし」
「……こっちにも都合というものがあるのよ」
「大丈夫、メリーの予定って里帰りだけでしょ。しかも後半」
「私の予定は、把握済みってわけ?」
「もちろんよ……さて、文句は?」
「くぅ……ほ、ほら突然のデートのお誘いとかっ」
「それ、言ってて虚しくない?」
「むぅ」
「……まぁ、その辺の誘いは私が潰したんだけど」
「何か言った?」
「いや、別に。とにかく、バイトは決定」
「はぁ~もう好きにしなさいよ……」
「うん。じゃあ、次は旅行先よ」

 蓮子を説得しようなどというのが間違いだ。
 それが出来ているのなら、寝不足がお肌に与える影響を調べる必要など無いのだから。

 ならば、楽しむ方に切り替えるべきだ。
 いつものように、蓮子と一緒に。

「そうねぇ、どこがいいかしら?」
「一応色々調べてきたのよ」

 鞄から、ノートを取り出す。
 見慣れた蓮子の文字と切抜きらしき文章。写真もいくつかある。

「へぇ……見せて」

 怪しげな洋館。
 いかにも自殺の名所っぽい崖。
 女神より、幽霊が出るのが似合いそうな泉。

 『いかにも』なスポットが満載の写真群。
 煽り文句も怪奇や恐怖の文字が血染めで躍っている。

「………」
「あ、私のおすすめはここよ。神隠しにあった屋敷の跡地なんだけど――」
「やっぱり、こういうのが絡んでくるんだ……」
「そりゃそうよ。だって、これは秘封倶楽部の合宿だもの」
「はぁ……」
「で、メリーは何処がいい?」

 心底楽しげな相棒の顔を見ながら。
 最後は、いつものように流されてしまうんだろうなぁと思いながらも。

「温泉、合成でもいいから」

 ただの慰安旅行にするにはどう説得すべきか、頭を悩ませることにした。
  

 


 
終わりかけに始まってない話を書くのってどうなんでしょう?
とりあえず、秘封倶楽部を練習中です。
den
コメント



1.床間たろひ削除
GOOD! 秘封倶楽部は大好きです。
蓮子ってばかわいいなぁもう! (お約束?)
2.nofix削除
そういえば相対性精神学の試験はどんなのなんでしょうね。
3.名乗らない削除
バイトの内容がものすんごく気になるw