Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

毎度お騒がせしております

2007/03/27 20:56:29
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魔法の森・・・普通の人間はまず足を踏み入れるこのないこの森の奥に、小さなお店がある・・・そこは店主も不在であることが多く、さらに店内には足の踏み場もないほど多くのもので溢れかえり(魔導書や大鍋やキノコや用途不明の怪しい道具とか色々)、ただでさえ周囲とは異質の空気を放つ魔法の森でも特に異質なな空気を漂わせているのだという・・・

「・・・って、そんな話を聞いてやってきました~、謎のお店『霧雨魔法店』に密着取材です!」
「お前も存外暇なやつだな。珍しく人が真面目に仕事をしているんだ、お客様はお断りだぜ。」
「これから仕事をする人とは思えないコメントですね。」
この黒いのが『霧雨 魔理沙』、このお店の店主をしている変わった人物で、自称普通の魔法使い。目撃証言のほとんどは博麗神社周辺で、人間の里に下りることは少ないらしい(情報提供・キノコ好きの大鴉さん)。紅霧異変や永夜異変解決に一役買ったらしいのだけど、まだ裏が取れていないからなんとも言いようがない。
強いて言えば、泥棒家業くらい・・・紅魔館の泥棒騒ぎの裏は取れてはいるのですが、どうも当事者たちの関係がいまいちで・・・
「まったく・・・それにしても幸運なやつだぜ。私は滅多に家に帰ってきたりはしないんだがな。」
「まさか四日間も張り込むことになろうとは思いませんでした。」
「・・・鴉天狗って暇なやつらの集まりなのか?」
「面白そうなネタのためならどのような労力も惜しまないのですよ。」
ちなみに、四日間の足取りもきちんとつかめている。我が相棒『文々丸』(鴉)によれば、博麗神社で紅白の巫女と飲み明かし、紅魔館で図書館の魔女と語り明かし、昨夜は人形遣いの家に泊まったのだという。その前は永遠亭に泊まったというし、いったいこの人間はどのような生活を送っているのだろう・・・(このような生活としか言いようがないのだけれど)。
・・・ん?あれ?よくよく考えてみれば、店主不在とわかっていて四日間も張り込んでいた私はいったい・・・
「で、結局お前は何しに来たんだ?」
「もちろん取材です。」
「鴉鍋って美味しいと思うか?」
「ノーコメントです・・・って、私の可愛い文々丸に何をしているのですか!」
いつの間にか文々丸が足を縛られて大鍋の上に宙吊りにされていた。鳴かせないためなのか、くちばしも紐のようなものでぐるぐる巻きにされている。大慌てで救出する。いったい何を考えているんだこの人間は。家ごと妖怪の山まで吹き飛ばしてやろうか。
「冗談だ。だいたい、四日間丹精に煮込んだ特製スープを台無しにするわけがないだろ。」
「冗談でもやっていいこと悪いことがあります。」

黒いのは私の話を聞いているのかいないのか、長い棒で大鍋の中の怪しげな液体をかき回す。とたんに凄まじい臭いが部屋中に立ち込めた。少し臭いを嗅いだだけなのに頭がくらくらする。ふと見ると黒いのはいつの間にかマスクで口元を隠していた。
「~っ・・・な、にゃにを煮込んでいるですかぁ~・・・」
「森で採れたキノコだ。ああ、直接臭いを嗅ぐと幻覚作用とかいろいろ面倒だぜ。」
はっと思って文々丸を見る。マスクをしていた。・・・マスク?
「・・・文々丸がマスクしてる・・・」
「鳥用マスクだ。残念だが天狗用マスクはもってなくてな。人間用ならそこの引き出しの上だ。使えるなら使っていいぜ。」
何で鳥用マスクなんてあるんだろう・・・絶対に売れないと思うんだけど。そんなことを考えつつ、置いてあったマスクを着ける。さすがに完全にとは言わないまでも、ある程度は臭いが和らいだ。

黒いのはそのまましばらく無言で大鍋をかき混ぜ――というか、こいつもこの臭いの中話す余裕がないんじゃないか?――、やがて「よし」といって火炉の火を止めた。そして鍋の中身を深めの皿に取り分ける。
「できたぜ。」
そういってこちらにその皿を差し出してくる。中には・・・なんというか、凄まじくよどんだというか、生理的に嫌悪してしまうというか・・・とにかく、眺めているだけで吐き気を催しそうな液体が満たされていた。
「この奇妙な液体はなんなんです?」
「普通の魔法使いの普通のスープだぜ。飲んでみるか?」
そう言うと黒いのは金属製のスプーンを手渡してきた。
「・・・飲めるんですか?」
こう言うのも悪いけど、もしこれを食用を目指して調理したというなら、素直に人間をやめたほうがよい。これがあれば並大抵の妖怪には負けないと思う。少なくとも、これを持っている人間を獲って食おうとは私は思わない。
恐る恐る手渡されたスプーンで謎の液体をすくってみる。
「ひぇええええ~!」
液体なのになぜか糸を引いていた。『ブスブス・・・』と普通のスープからは絶対に出ない音とともに金属性スプーンが熔ける。反射的にスプーンから手を離し、黒いのから距離を置いた。
「こ、このようなものを普通に飲んでいるんですか!?それ以前にこれは飲めるんですか!?」
「こんな危ないの飲むわけがないだろう。天狗じゃあるまいし。」
「天狗はこんなもの飲みません!そのまえに危ないとわかっているものを人に飲ませようとするな!」
「案外天にも昇る旨さかもしれないぜ。帰ってこれるかどうかまではわからんが。」
帰ってこれないだろう、きっと。

辺りを見回すと文々丸が消えていた。窓が開いているから、おそらく逃げたんだろう。よくよく目を凝らせば、窓の向こうの木の枝に、マスクをした奇妙な鴉が一羽こちらを見つめるようにしてとまっているのが見える。私も逃げたい、今すぐ逃げ出したい。
「よいしょ・・・っとぉ。」
黒いのは大鍋を持ち上げると、そのままそれを持って部屋の奥に消えていった。逃げるなら今だ!心の中で本能が叫ぶ。逃げるなら今しかないぞ文!もう十分だ、これ以上深入りしたその先にあるもの、それは・・・『死』だ!逃げろ、逃げるんだ文!
大急ぎで玄関から飛び出す。自分と文々丸のマスクを外し、先ほどから開きっぱなしになっている窓に投げ込む。そしてそのまま勢いをつけて一気に飛び立った。飛んでしまえばこちらのもの、黒いのもなかなか速いけど、私の足(翼)の敵ではない!


ところかわって人形の館――アリス・マーガトロイド邸。
「もう・・・魔理沙ってば、いつの間にかいなくなってるし・・・」
昨日、いつものように何の脈絡もなく魔理沙が私の家にやってきた。なんか『今私の家で眠れるのは死体くらいだぜ』とか訳の分からないことを言っていたけど、それでも魔理沙が私の家に来てくれるのは嬉しかった。魔法使いだって寂しさは感じる。魔理沙は私の数少ない友人の一人だから、一緒にいてくれる、それだけでなんというか――魔理沙にはあまりに不似合いな言葉だけど――癒されるのだ。
ただ、アレな性格だから神出鬼没が当たり前、結構ひどい目に合ったりもするのだけれど・・・
「でも、それも一興・・・っていえる規模じゃないのよね、あれは。」
『・・・・・・ー・・・・・・』
何か聞こえたかしら?なんだろう、これは・・・風を切るような・・・
「・・・近くを鴉天狗でも飛んでいるのかし・・・」
『ガシャーンッ!!』
突然窓が窓枠ごと吹き飛び、何かが突っ込んできた。
「っ!?」
とっさに人形を動かし窓枠を空中でキャッチ、突っ込んできた何かを棚にぶつかる前に捕まえさせた。残念なことに、製作途中だった新しい人形の服は見るも無残に破けてしまっていたが。せっかくメディスンのために毒を浴びても傷まない服を作っていたのに・・・窓もこれじゃあ何の役にも立たない。せいぜい換気口といった感じだ。
「それよりも・・・」
網の中を見ると、どこかで見覚えのある鴉天狗――さっきは適当に言ったのに、まさか本当に鴉天狗だったなんて・・・河童の川流れ、弘法も筆の誤り、猿も木から落ちる・・・天狗も地に落ちたわね――が目を回して伸びていた。口の端から泡を吹いている。頭を打ったというわけではなさそうだけど・・・
「二日続けての来客なんて珍しいわね・・・どうしましょう?」

「本当に申し訳ありません、このとおり深くお詫び申し上げます・・・」
「気にしなくていいわ。それにしても何であんな状態で飛んだの?」
窓をぶち破って突っ込んできた鴉天狗・・・もとい文さんは、なぜか強烈な幻覚剤を服用した状態で空を飛んでいたらしい。とりあえず解毒薬を打っておいたのでそれは問題ないだろうけど、幻覚剤を飲んで空を飛ぶ馬鹿な天狗は見たことがない。
「いえ・・・実は霧雨魔理沙さんのお宅でちょっと・・・」
魔理沙!?なんで文さんが魔理沙の家に・・・いえ、それは新聞を配達していただけかもしれないわ。いやいや、問題はそこじゃなくて魔理沙と幻覚剤に何か関係があるとでも・・・
「え、えーと・・・ま、魔理沙がどうかしたんですか?」
「ん~・・・なんといいますか、その・・・うう、お、思い出したくもないのですが・・・き、キノコが・・・いえ、なんでもないです。とにかく、とにかく逃げなくちゃって・・・思って・・・ううう・・・」
目から零れ落ちる一筋の涙・・・これが物語るものは・・・ま、まさか!?
幻覚剤を服用したんじゃなくて服用させられたのだとしたら・・・思い出したくもないほどひどい目にあわされたのだとしたら・・・

「こんにちはー、毎度購読ありがとうございます、文々。新聞ですー。」
「おお、待ってたぜ。ちょうどお茶してたところだ、上がっていかないか?」
「本当ですか?」
「私もたまには本当のことを言うぜ。」
「・・・ま、まあ、ではお言葉に甘えてさせていただきます。」
「おう、綺麗じゃないところだが適当にくつろいでくれ。」
「本当に汚いですね・・・ふぅ、このお茶不思議な味がしますね。」
「霧雨魔理沙特別ブレンドだぜ。どうだ?」
「ええ、不思議な甘みがあっておいしいです・・・あれ?」
「どうした?」
「魔理沙さんの後ろに変なにゃにか・・・にゃ?」
「おいおいしっかりしろよ、ろれつが回ってないぜ?」
「え?あ、あれっ?あたま、が、くら・・・くらぁ・・・」
「効いてきたみたいだな。」
「な、にゃに、を・・・いっらい、これはっ・・・」
「鴉天狗とはいえ天狗は天狗、暴れられちゃかなわないからな。ちょっとおとなしくしててもらうぜ。」
「や、やあっ・・・こないで、こないれえっ!!」
「ふふふ・・・あがいても無駄だぜ。」
「い、いやあああああああああっ!!」

・・・なんてことが・・・でもまさか魔理沙が・・・いえ、違うわ。魔理沙だからこそ・・・そうよ、きっとそうに違いないわ!!
「あの・・・あ、アリスさん?目の、目の色が怖・・・」
「文さん、何も言わなくて結構です。事情はわかりました・・・」
意識を集中させ、家の中にところせましと置かれた何百という人形一つ一つに魔法の糸を絡ませる。私が丹精込めて作り出した子供たちに、魔法という名の命を吹き込んでいく。
「魔理沙・・・絶対に・・・絶対に許さないんだから・・・私が、私がいながら・・・なんで私に・・・言ってくれれば、私だって、私だって・・・総員っ、進軍開始ーっ!!」
今、すべての人形の封印はとかれた。剣を手に取るもの、槍を掴むもの、魔道書を抱えるもの、その様子はまるで戦に赴く軍隊のような・・・
上海人形と蓬莱人形が天高く剣を突き出すと、それらは一糸乱れぬ隊列で霧雨魔法店を目指し侵攻を開始した。

「よし、後はこいつを乾かして・・・っと。」
とりあえずはこれで一段落だぜ。いつの間にかあの鴉、いなくなっていたが・・・スープの臭いにやられたか?幻覚やら幻聴やら、初めは私も苦労したからな。どこかに墜落してなきゃいいが。
とにかく、これで今夜は自宅で休めるな。四日分の洗濯物もたまってたところだし、今日明日はゆっくり休んで・・・ん?
「おお、お前が私の家に来るなんて珍しいな。雨でも降るんじゃないか?」
とか何とか言って本当に降られたら困るが。今回のスープは自信作だからな。これだけ強烈な幻覚作用があれば今までにない迫力の魔法ができるかもしれない。やはり魔法は派手でなくちゃ面白くないぜ。
「・・・そうね、雨が降るわ。」
「ん?何だ、わざわざそれを伝えに来てくれたのか?」
「・・・魔理沙、私に何か言うことはない?」
「言うこと?なんだっていきなり・・・ああ、昨日は泊めてくれてありがとう?」
・・・何か間違ったこと言ったか?なにか雰囲気が変わったような・・・
「そう、しらばっくれるのね・・・」
アリスが右手を上げる。次の瞬間、森の中から数え切れないほど大量の人形が飛び出してきた。全てが何かしらの武器を持ち、その矛先が全て自分を向いている。訳がわからんが、絶体絶命の大ピンチであることだけは間違いない。
「お、おい、何の冗談だ?」
気づかれないようにスカートの中に手を入れる。スペルカードは一枚、記憶が正しければオーレリーズソーラーシステムだ。さすがにこいつら全員と戦う・・・ことになるのかどうかはわからんが、そうなりそうな空気だぜ・・・ことになるとこれでは分が悪いぜ。せめてマスタースパークなら・・・いや、でも相手の出方次第で――正直なところ、これだけはやりたくなかったんだが――直接アリスに攻撃ができれば・・・
「蒼符『博愛の仏蘭西人形』、蒼符『博愛のオルレアン人形』、紅符『紅毛の和蘭人形』、白符『白亜の露西亜人形』、闇符『霧の倫敦人形』、廻符『輪廻の西蔵人形』、雅符『春の・・・」
「は?えっ!?ちょっとまっ・・・うわきゃあああああああああああああああああああああっ!!??」



「・・・で、その結果アリス率いる人形の軍隊が圧勝、霧雨魔法店は半壊、その店主である霧雨魔理沙は怪我以上に精神へのダメージが酷く、人形を見るだけで半狂乱になって泣き叫ぶほどである・・・だそうです。」
「世の中も物騒になったわね。結局魔理沙、今回は何も悪いことしてないじゃないの。」
「仕方ありませんよお嬢様。日ごろの行いが悪いからこうなるのです。」
「それをいうと、この新聞記者もいつかひどい目にあいそうね。それはそうと、咲夜、そろそろお茶の時間よ。」
「もう準備はできていますよ。」
「あら、相変わらず用意が早いわね。・・・ああ、それと咲夜、魔理沙のお見舞いに、確か倉庫にあった髪の伸びるあの人形、贈って上げなさい。」
「ふふふ・・・お嬢様の仰せのままに。」

それからしばらく紅魔館の泥棒騒ぎは収まり、魔法の森では夜な夜な女の子の悲鳴が響き渡っていたという・・・



そして後日、何百という人形の軍隊と謎の黒い超高速飛行物体にとある鴉天狗がぼこぼこにされ同じ運命をたどることになるのだけれど、なぜかそのことは記事にされなかったとか。




二作目ですが・・・落ちがないですね。どうしましょう?
誤字脱字などあるかもしれませんし、ところどころ変なところもありますが、
それに関してお気付きの点があったら教えてください。

乱文、まことに失礼いたしました。
Lie
コメント



1.名無し妖怪削除
文が、文がえろいことに。

「こんにちはー、毎度購読ありがとうございます、文文。新聞ですー。」
>>文文。新聞
誤字みっけー。
2.nama-hane削除
個人的に『魔理沙のお泊り4日間』と『人形の軍隊が霧雨邸に攻撃をしかけるところ』が気になりました。w

あと、読んでニヤニヤさせていただきました!w
3.名無し妖怪削除
アリスの妄想力は世界一イイイイ!!
4.Lie削除
ご指摘ありがとうございます。
今後誤字の修正と文章の調整を加える予定です。今日中には修正しますー。