こんな所に居た話作者: 無音旋律

（師匠は、今頃どうしているのだろうか……？）

　私は、自分が小さい頃に居なくなった祖父を思い出していた。
　少し、寂しい。

　だが、幽々子様の「お腹が減った」という声に現実に引き戻された。
　気付けば、もうこんな時間。
　いつもの夕飯の時間は、かなり前に過ぎている。
　準備も、何もしていない……。

「す、すみません幽々子様。
　今すぐに準備しますので」

　あわてて、謝罪し、準備を始めるために台所へ。

　手早く作れる料理を大急ぎで作る。

「出来ました！！」

　と、料理を持って行く頃には幽々子様はすっかりと待ちくたびれて居たようで……。
　私の作った料理を大急ぎで食べ始めた。

　ぱくぱくぱく……。
　見ているだけでお腹がいっぱいになりそうな食べっぷりである。

　幽々子様から目をそらしながら私も食事を取っていたら、頭に何か細い物があたった。
　見れば、幽々子様が私を箸で掴んでいる。

「ああ、おいしい、おいしい～。お腹が減っていると何でもおいしいわ～。」

　あれ、幽々子様、もしかして周りがよく見えていないので……

　気付くと、私は暗いところに寝ていた。
　辺りには、いろんな食べ物が散らばっている。
　幽々子様のお腹の中は、あのスキマと同じ構造だったようだ……。

「幽々子様～私を食べてしまわれるなんて……」

　涙が出た。
　ああ、どうせ誰も居ないのだし、声を出して泣いてしまおう。
　そう思った瞬間に、肩を掴まれる。
　
　振り返れば、そこには……

　

　こうして、私は師匠と再会することが出来たのです。
　こんな所に居たなんて、探しても見つからないはずですよね……。

　追伸――数日後に、幽々子様に頼まれて、私を捜していた紫様が私達を外に出してくれました。