Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

髪を切る妖夢

2006/12/05 00:01:12
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 白玉楼。
 その延々と続く庭で、妖夢は黙々と箒をかけていた。
 「妖夢~、そろそろお茶にしましょう」
 遠くから幽々子の声が聞こえた。
 「あ、はい」
 そう答えておいて、妖夢はいそいで集めたチリを捨てる。
 それから幽々子の声が聞こえたところへ急ぐ。いつものことだ。
 幽々子は縁側ですでにお茶の用意を済ませていた。
 「あぁ、すみません幽々子様…お待たせしました」
 「ん?あぁ、別にいいわよ。もう私は食べてるし…」
 「…」
 妖夢は幽々子の隣に腰掛け、お茶を頂く。…少しぬるくなっているが、まぁ呑みやすいと思って我慢。
 ふと、幽々子を伺うと、なにやら妖夢のことをじっと見つめていた。
 「…?なんですか?」
 幽々子はにこりと笑う。
 「髪、伸びたわね」
 「え?」
 言われて気付いた。そういえば随分切っていないように思う。
 つまるところ、そんなことに構ってられないほどここのところ忙しかったのだ。
 「そうですね…そろそろ切らないと…」
 妖夢は髪を撫でる。
 「あら、切っちゃうの…伸ばさないのかしら?」
 「?えぇ…切りますけど…?」
 「ふぅん…折角そこまで伸ばしたんだから、もう少し伸ばしてみれば?」
 ふいに幽々子が身をのりだし、ゆるりと細い指を妖夢の髪に絡ませた。
 「ひゃあっ」
 「さらさらしているわ、妖夢の髪」
 妖夢は飛びのく。
 「び…びっくりしますよ!びっくりしますよ!」
 「ふふ、どうして二回言うの?」
 「い…いえ…それぐらい驚いたんです」
 幽々子はまた少し笑い、のりだした体勢のままで二人の間にあった団子を取る。
 「ねぇ、どうしても切る?」
 「…」
 妖夢は早まった鼓動を押さえながら、きっぱり言う。
 「切ります」
 「私が切らないでって言っても?」
 「それは…」
 さすがに言葉に詰まる。
 「幽々子様の指示でしたら…」
 「指示じゃないわ」
 「え?」
 「お願い」
 「え?えぇ?」
 「駄目?」
 「あ…えぇと…」
 妖夢は意味も解らず、とにかく慌てる。その様子を見て、幽々子は声に出して笑った。
 「あはは、冗談冗談」
 「じょ…冗談?」
 よく解らないが、からかわれたことだけは確かなことだと解り、妖夢はみるみる真っ赤になった。
 「もう!幽々子様!からかわないでください!」
 「ごめんねぇ、でも髪を伸ばせば良いのにと思うのは本当よ」
 「え?…ま…またからかう気ですか?二回連続はさすがに…」
 幽々子が優しく言う。
 「違うってば。これは本心。妖夢、きっと似合うと思うけど?」
 「うぅ…」
 妖夢は更に紅くなる。冗談ならばいくらでも怒って誤魔化せるが…本気だと言われると照れるしかない。
 「わ…私には似合わないですよ…」
 「あら、妖夢は私の見立てに間違いがあるとでも言いたいの?」
 「うぅ…その言い方は…卑怯です…」
 「そう?…まぁあんまり口出しするのも可哀想だし…聞くのも最後にするけど…やっぱり切る?」
 「…」
 妖夢は俯く。迷っているというよりも…自分が迷いそうになっているという事実に、ただただ狼狽している風である。
 「わ…私は剣士です…髪が長かったら剣を振るとき邪魔になりますし…掃除の時も…私未熟ですから…きっと今以上に駄目になって…えぇと…」
 何故か妖夢は泣きそうになってくる。自分でも理由は解らない。
 あまりにも妖夢がうろたえるものだから、幽々子は妖夢の肩をぽんぽんと叩いて止める。
 「解ったわ。迷わせるようなこと言ってごめんね」
 「……はい…」
 妖夢は真っ赤になりながら、結局顔は上げられなかった。


 数日後。
 妖夢は相変わらず白玉楼の掃除をしている。
 心地よい風が妖夢の髪をふわりと揺らす。
 少し、髪を撫でる。
 幽々子も、誰も気付かない。
 妖夢の髪が、少しだけ、本当に少しだけ、普段より長く残されていることに…。

                              《終わり》
 パソコンが死にそうです。前回咲夜の話を投稿してから急にやばくなりました…ネットつなぐのもやっとの状態…つながらなくなるのもそう遠くない未来か…
 と、言うわけで今のうちに投稿します。…ちゃんと投稿出来ることを祈るばかりです。

 また妖夢話。しかし一番好きなのはうどんげだ。のはずだ。
 やたら乙女な内容ですが、きっと最近マリみてを読んだからだと思います。中古で別の本買ったら中身がマリみてだった…あらゆる意味で衝撃ですね。全部読んでしまったから文句も言えない。

 幽々子様には悪いが、個人的には妖夢に長い髪が似合うとは思えないのだが…。それはもう妖夢やない!
aba
コメント



1.名無し妖怪削除
これはいいほのぼのですな
2.狩人A削除
妖夢が髪短くしたら、男の子みたくなっちゃいますね。

……。

それはそれで良いかもしれない。
3.変身D削除
ほのぼのとしてつつも、とても暖かい物語でした。
妖夢の心遣いが良いなあ……
4.oblivion削除
ほのぼのしますよ! ほのぼのしますよ!
5.卯月由羽削除
ゆゆさまにいじられる妖夢はやっぱりかわいいな