Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

あなたにひたすら叩かれたい私は禁忌の箱の中で

2006/11/18 13:17:53
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此処は暗い箱の中 ただただ闇に閉ざされて 私は何を見ることも 知ることだって出来やしない。
はたしてこれが…絶望なのか希望なのか。




『あなたにひたすら叩かれたい私は禁忌の箱の中で』




先日兎が来た様に思う。
紅屋敷の魔の蜜の中 したたか兎は無邪気を装い 館の主に遠慮のない笑みを向けてきた。

「レミリアさんレミリアさん 貴女と貴女の可愛い下僕に、幸せの玉は如何でしょう?
 わが永遠亭の誇りある薬師、八意印の夢見薬。 貴女の一番、メイドの長も、愛用していた様でした」

そう それならばそれも入れましょう。

四角い長い箱の中、その幸せを入れましょう。
あの娘に連なる全ての運命 片の端から入れましょう。

人を創想るは縦の繋がり 時の流れが運命ならば 容易に私が操れる。
人を創想るは横の繋がり 彼の魂に寄せる縁は広がる それらを全て収縮す。

彼女に纏わる あらゆる縁を 集めて箱に入れたなら 箱はもう既にあの娘自身。
最後に 最期に 仕舞うため 私の心とあの箱に 鍵をかけて仕舞うのです。

そうすれば、箱の外にはあの娘は既に 微塵たりとも残って居ない。
私はあの娘を閉じ込めて、そこに、居ると思い込み まま ずっと見ないで永遠に 生きていくことが出来るから。

絶望を知り得ない事が幸せならば。




さぁ 外に出かけよう♪
紅い館は殆どがカラ 四角い長い箱の中
いつの間にか 主以外 私以外の殆どが あの娘へ繋がる縁となって 私の周りに在ったから。
だから 紅魔館はとりあえず 全部箱の中に仕舞って置いた。

あらためてー。 さぁ 外に出かけよう♪



初めに寄ったは 永い月 兎通さぬと 門を閉め 私は焼いて打ち捨てた。
あぁ 視界が歪がって行くのは けしてあの兎のせいではなくて 私が心の在り様か。
薬師があの娘に寄せた想いを その流れた宿命をすくい取り 箱の中に仕舞うが運命。


冥界は 桜の季節に訪れた あの娘が集めた春を想って 桜の木全て集めて入れた。
呆けた姫が のび気て慌てず 口を隠した扇子ごと 箱に仕舞えば 庭師が伸びる
倒れて 起きて 激昂す あの娘とは違う 豊かな面映ゆ 一緒に入れて賑わせる。


贔屓にしていた 道具屋を潰し 捕り物演ずる 魔法使いも 魔が魂取り得て 箱に入る。
あの娘の名を知る あらゆる村で 私はその名を削って行った
あの娘の生きた歴史ごと箱に入なくては意味が無い。

やがて見かねた 博麗が巫女 私の前に立ちはだかった。
巫女とあの娘を比べ見て 己が業に私は迷う けれど もう 引き返せない処に居るなれば
想いを伝えて あの娘を奪う 
巫女を全て入れるのでなく あの娘に連なる縁の運命そのものを 取り得て箱に入れるのよ。

つまり、終いに外にてあの娘の存在、全てが無かった事となり 私が記憶の他には消えて
一つの箱に入り果てた

あとは、 最期に この箱に 鍵を掛ければ全てが終わる。

私は 自分が何をしているか問いかけた。
あの娘の居ない世界なら あの娘の無い世界になれば 絶望は無く 希望に泣くだろうと。

  ガチャリと箱に鍵をかける。
  とたん、視界が無くなった。 
  暗闇に驚き 手足を動かすも 狭く冷たい壁に阻まれ 私は身動きが取れない。
  気がついた。ここはあの箱の中。
  あの娘に連なる全ての運命を閉じ込めた、禁忌の箱の内側だった。
  何故と問う前に理解する。
  私が既にあの娘と囚われていたから?
  いいえ、違わ そうではなくて。
  私は希望通りに手に入れたのよ。


あの娘 咲夜が死に逝く運命を孕んだ世界を全て 私の知り得ない場所に追い込んだ。
箱に残された希望とは 未来も過去も知りえない事

つまり 初めから運命を知る私は箱の中。
わずかな時に覗いた外に 夢を見ていた だけだったのだ。
外に出ない事を望んだ私は 鍵を閉ざされればまた箱に残り
見える運命など無い希望。

終始 始終。









ガンガンガンと叩かれる。 冷たい箱の内側で暗闇に響く音に驚く。
手を伸ばす あれほどビクともしなかった蓋 軽く舞うように空いたのだった。
差し込む光がまぶしくて痛い
舞い込む吐息が暖かくて 頬に冷たい、いつの間に 流れた涙が乾き行く。

「咲夜……どうして……」
「お嬢様……」




「お嬢様、八意印の夢見薬はお嬢様にだって危険です。飲まないようにと言ったのに……。
 散々暴れたと思ったら突然棺おけに閉じ籠って……いったいどんな夢を見ていたのですか?」
「エー。」







「咲夜、パンドラの箱って知ってる? 箱に残ったのが唯一の希望じゃなくて 
 運命を知る悪魔が残されただけなんだって」
「あー……ナルホド。そんな夢を」
「ち、違うわよ。そう言う意味で言ったんじゃなくて」
「ご安心ください、お嬢様。私なら箱を閉めません。お嬢様をほっとけませんからね」
「……物分りが良すぎるのもたまには控えなさい。…………ずるいじゃない」






なんかもっともな理由をつけてお嬢様を棺おけに閉じ込めてみたかっただけでした。
コンペのために長編を考えていましたが力と時間が無かった……orz

らららくらら
コメント



1.名無し妖怪削除
韻の踏みっぷりが凄い…
2.名無し妖怪削除
流れるような文と狂気。 いい。
3.らららくらら削除
感想ありがとうございます。
まだまだぜんぜんはっちゃけたい。