Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

彼女は、ずっと其処に居る

2005/05/29 11:47:04
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 初めて見た、その動く人間は、羽も無いのに空を飛んでいて、紅と白で彩られていた。

 面白いなと思った。興味深いと思った。良い玩具になるって思った。

 でもどうせ、スグに  コワレル  ト オモッテタ。

 

 けれど、どんなに弾を放っても彼女は壊れなかった。神の国を火の海にしたというレーヴァテインでさえ、彼女の身に煤一つ付けられやしなかった。

 遊びだったはずなのに。

 私は翼を持っていて、空を飛んでいるはずなのに。

 人間など、地べたを這いずり回り、我等に捕食される為だけに生きているはずなのに。

 その人間は、私よりも遙か高くに居た。

「どう、これが神に仕える者の力よ」

 声色は高く、澄んで。吸血鬼の闇など軽く拭い去る。

 

 ようやく見つけた。壊れない遊び相手。でも、その人はとっても遠くて、高くて、届かないなぁって思った。

 我侭な私の相手なんて、してくれることなんて無いんだろうな、遊び「道具」だ何て言ったから、きっと怒ってるだろうし、私はいきなり殺そうと襲い掛かったようなものだ、だから今は、逆に私を殺そうとしているだろうって、そう思った。

 でも、そんなの嫌で。

 死ぬの何て怖くない。十字架も怖くない。闇夜に光る銀光だって耐えられる。

 この人は、そんなものよりもずっと怖くて、魅力的だった。

 だから、私は気が付いたとき、数え切れぬほどの弾と珠を撃ち込まれ、ぼろぼろになった体で、弱々しかっただろうけれど、必死になって手を伸ばしていた。

 欲しいと思った。初めて、心から欲しいと思った。

「まだまだ、これからよ」

 声など、ただの強がりで、力も満足に入らない身体で精一杯の痩せ我慢をして。

「もう、そんな余裕も無いクセに」

 嘲るでもなく、見下すでもなく、神に仕えるその巫女は、ただ微笑した。

 

 もしかしたら、本当は怒っていたのかも知れない。私が、表情からそれを読み取れなかっただけなのかも知れない。

 でも私にとって、それは初めて知り得た感情だった。

 優しさ。

 馬鹿だ。何の役にも立たない。人間は、そんな要らない感情を未だに後生大事に抱えて生きている。だから、私達に捕食されるんだ。

 でも、その人間が馬鹿だって言うのなら、

「もう、ムリ。煙も出ない…」

 そんな言葉と一緒に、瞳から雫を零した私は大馬鹿だ。

「貴女が来てくれるのなら 私はいつだって此処に居る」

 けれど同時に、絶対に届くことなどないのだろうという確信もあった。

 期待はしていなかった。意図せず発した言葉だ、それが届くなんて、世間知らずの私だって思ってはいない。

 人間は弱くて、愚かで、ずるくて、でも狡猾だ。その点に置いてだけ、私達吸血鬼と似通っている。

 だから、私の言葉なんて、蛆虫でも潰すかのように、軽く踏み潰されるか、蹴飛ばされると思った。吸血鬼でなく、人間だってそうするのが当然だと、本を読んで知っていた。優しさなんてのは、上辺だけだ。人は本心なんて語らない。

 強きに媚びへつらい、弱きを挫き、その身を肥やしとして生きていく。強き者には、身を守る為の嘘をいい、弱者には力で持って言葉を捻じ曲げる。本当の事を言うのは、強きものが弱きものに接した時だけ。そこに優しさなんて無い。

 傲慢で、醜くて、滅ぶべきだと思っていた。捕食されて当然どころか、されてしかるべきだと思っていた。

 なのに、彼女は、博麗霊夢は、泣きじゃくる私に、弱者に対し、優しく微笑んで言った―

 

「いつでも 遊びに来てあげるから」

 

 壊れたのは、ワタシの  何かヲ キメツケテ イ   タ           チッポケナ    コ コ   ロ

                                    ダッタ―

 

 

貴女が来てくれるのなら 私はいつだって此処に居る―

 

 

 

だから

 

また 遊んでくれる?

フランドール・スカーレット

 

 

 

She is in there for a long long time...
 紅魔郷exのイメージ。
 もし、こうであれば、彼女は何を想っているのだろう。

 そんな、短いエピソード。
ラクド=シャンス
コメント



1.シゲル削除
出会う前は心が弱かったでも今は霊夢(達)に出会って少しずつ強くなって行くんでしょうね。
分かりずらい感想ですいません。
2.紅狂削除
「彼女はあなた(プレイヤー)が訪れるのを何時までも待ち続けている・・・」
へぼシューターの私にはご尊顔を拝する事も出来ませんがw