Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

一筆入滅

2005/05/20 10:49:36
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 とある森の分かれ道。
 立て板の横で小僧が昼寝していると、旅人がやって来た。
「あー、何だこれ?」
 旅人が立て板を見てそう言うのを聴き、小僧が片目を開けて「道標」とぼそり。
 旅人、顎に手を当てふむふむ頷くと、手にした箒で立て板を横殴り。
 矢印がぐるぐる回って、反対の向きで止まった。
「よし」
 満足げに息を吐き、矢印の向きに去っていく。
 変な奴だと思いつつ、片目を閉じる小僧。
 欠伸一つしてからすやすや。

 とある森の分かれ道。
 立て板の横で小僧が昼寝していると、旅人がやって来た。
「・・・道標ね?」
 姿勢良く立ち止まって言う旅人に、小僧は寝言で「だと思う」。
 旅人は何も言わずに標の通りに歩いていった。
 足音で目の覚めた小僧、ふと横目に道を見ると、どちらの道へも続く足跡。
 さて面妖と思いつつ、肘を枕に眠り小僧。
 ちょうちん浮かべてすやすや。

 とある森の分かれ道。
 立て板の横で小僧が昼寝していると、旅人がやって来た。
「や、これは」
 旅人が板に気付いてはたと首を向け、小僧は「八卦八卦」等とぼやく。
 暫し立ちんぼうにて思案の旅人、その内に座り込む。
 やがて名案来たりと顔輝かせ、気合一閃真っ二つ。
「決断力!」
 勘違い様に嬉々と旅人、棒だけになった標を見ずとことこ。
 あれはどっちの道かしらんと小僧、標を直して夜も更けて。
 今夜の月より静かにすやすや。

 とある森の分かれ道。
 立て板の横で小僧が昼寝していると、旅人がやって来た。
「何してんのよ、ここで」
 不思議げに目だけで言う旅人が、自分を呼んでると気付いて「ほう」と小僧。
 なんだ巫女かぁ、けらと笑んで旅人を見る。
 笑われれば当然怒る旅人、喚かず小僧を打ち払い。
「親切の押し売りはくーりんぐおふよ。意味判らないけど」
 怒鳴って、板を蹴倒しざくざくと押し通る。
 いたた道を通れよ、涙目に小僧呟く。
 眠気も飛んで少し思い。
(ああいう手合いは親心知らずで、大層気分が良い)
 



 とある森の、獣道からしか至れない一本道には、悪戯好きの道祖神が居るという。
 森の出口を指す道標を造って、ただそこに置くだけ。
 人がその真偽に思い悩むのを見て喜ぶのが好きなのだそうだ。
 結局、どちらの道を選んでも、真っ直ぐな一本道だから、外には出れるのだが――
 道標と逆の向きを選ぶと、後ろから笑い声が聞こえるのだ。
 振り返ると看板は無くなっていて、
 自分がこの道をどれだけ歩いてきたのか、見当が付かなくなってしまうのだという。
 この一本道を、人はこう呼んで怖れるのだと。
 その名も、『人生の曲がり角』。
でも、赤字で修正されるぐらいが丁度いいとも思う。
失敗は大失敗以前のブレークポイントですし。
綺麗すぎるのも、ちょっと考えもの?
shinsokku
[email protected]
コメント



1.名無し妖怪削除
やべえ超面白い。決断力!
2.名無し妖怪削除
霊夢は『人生の曲がり角』ですら曲がらず真っ直ぐ歩むのか。
というか神さまぶん殴って足蹴にしてまで進むのか。
相変らずすげぇ巫女だ。
3.七死削除