Coolier - 新生・東方創想話

幻想に至る

2014/09/16 00:21:27
最終更新
サイズ
14.34KB
ページ数
1
閲覧数
1886
評価数
2/17
POINT
730
Rate
8.39

分類タグ

『なつやすみのにっき 一年一くみ   しちばね かなた』

 7がつ27にち
 きょうわたしは、れいむちゃんとであいました。
 きょうからわたしはしんせきのおばちゃんの家に五日とまります。おばちゃんがお母さんになんどもおねがいをしてきまったそうです。
 あさの七じに車で出発して、おばちゃんのいえについたのは十二じ。おばちゃんのいえはすごい山おくにあります。ちょっとだけつかれました。
 おばちゃんは45さい、わたしのいえの十ばいぐらいありそうないえにたくさんのおてつだいさんといっしょにくらしています。けっこんはしていません。さびしくないのでしょうか? わたしはなんだかおばちゃんがさびしそうにみえます。
 じゅうにじにわたしがついてすぐ、おばちゃんはわたしをつれていえのいちばんおくにいきました。
 そこにはわたしより一つだけ年が下の、わたしとおなじ女の子がいました。
 とてもとてもきれいな女の子でした。テレビにでてくるひとよりもきれいでした。かみの毛はさらさらで、おはだにはシミ一つありません。
「この子はれいむというの」
 おばちゃんはひとことそう言うと、へやからでていきました。おばちゃんのこえはなんだかとてもこわくおもいました。
 れいむちゃんはせいざをしたまま、ぜんぜんうごきません。まるでおにんぎょうみたいです。
 わたしは「こんにちは」といいましたが、れいむちゃんはへんじをしてくれません。
 いちじかんぐらいそのへやにいました。そのあと、おてつだいさんがわたしをよんで、へやをでます。れいむちゃんはやっぱりうごきませんでした。
 一じにおひるごはんをたべました。
 おひるはずっとテレビをみました。
 七じにゆうごはんをたべました。
 八じにおふろにはいりました。
 八じ四十ぷん、にっきをかきました。
 れいむちゃんはふしぎな子だとおもいます。なんにもしゃべりません。
 それに、ふくをなにもきないで、すっぱだかでした。












『選出覚え書』

・山岸良子
 [全てから浮き上がる能力](以下、能力)が圧倒的に不足。霊力の成長性には一定の伸び代が存在するが、幻想郷は霊力よりも〔能力〕を重視している。

・梨畑九
 彼女の場合、〔能力〕がありすぎる。感情をほとんど持たず、こちらからの刺激にも全く反応しない。あれでは単なる人形だ。また、霊力がゼロである。

・七羽彼方と『霊夢』
 現在、一時間の接触試験中。












 7がつ28にち
 きょうは、はだかのれいむちゃんにふくをきせたいとおもって、がんばりました。
 きょうもいちじかんだけれいむちゃんとあいました。ほかのじかんにはあえません。けっかいというものをつかって、へやにはいったり出たりできないようにしているらしいのです。
 わたしはじぶんのいえからもってきた、わたしのおようふくを、れいむちゃんにきせようとしました。
 けれどれいむちゃんはすぐにそのふくをぬいでしまいます。
 なんどやってもおなじです。
 わたしはおこってしまいました。
「どうしておようふくをぬいじゃうの! ちゃんときてよ!」
 れいむちゃんはじっとこっちをみてきます。ちょっとしてから。
「じゆうじゃないから」
 といいました。
 わたしはどういうことだろうと、うんうんかんがえました。
 そして、一つのことをおもいつきました。
 はさみをもってきて、ふくのそでをきりました。
 れいむちゃんはふくがおはだにひっついているのがイヤなんだとおもいます。だからすこしだけぬのをなくしてしまえばいいのです。
 これはぐっどあいであでした。れいむちゃんはふくをぬぎません。わきがまる見えですが、はだかよりはいいとおもいます。
 おばちゃんはれいむちゃんがふくをきているのにすごくおどろいているようでした。わたしはえっへんというきぶんです。
 きょうはさんすうのドリルを2ページしました。












・フィーナ=ドレスデン
 アメリカ人。血は混ざっている。霊力も〔能力〕も充分だが、残念なことに熱心なキリスト教徒である。神道の力は発動しないだろう。彼女の次世代が日本に帰化するよう工作を開始している。

・田中フネ
 霊力も〔能力〕も充分。しかし九十七歳の老婆を過酷な任に就けるわけにはいかない。本人はやる気に満ちていたが。

・七羽彼方と『霊夢』
 本日、『霊夢』が人間的な反応を示した。七羽彼方に促され、衣服を着用したのだ。この出来事の意味を熟考する必要がある。少なくとも、『霊夢』の行き過ぎた〔能力〕を抑制できる可能性が示されたのだ。












 7がつ29にち
 きょうはれいむちゃんといっぱいおはなしをしました。
 さいしょにあったとき、れいむちゃんはひとこともしゃべりませんでした。でも、きょうわたしがれいむちゃんに
「こんにちは!」
 といったら
「こんにちは」
 といってくれました。ふくもきてくれています。
 わたしはうれしくなって、どんどんれいむちゃんにしつもんをしました。
 れいむちゃんは生まれてからいちども、このいえを出たことがないそうです。ずっとこのいえで、けっかいのぎじゅつとか、れいりょくのこうりつてきなつかいかただとかを、おばちゃんにいっぱいおしえてもらっているそうです。そのときだけことばをしゃべっていたみたいです。ようちえんにもいっていません。
「いえのなかにずっといてつらくないの?」
 わたしはききました。
「つらいってなに?」
 れいむちゃんはこういいました。
 わたしはすごくびっくりしました。れいむちゃんはいやというきもちをしらないのです。わたしはいままでせかいじゅうのひとがいやというきもちをしっているものだとかんがえていました。でも、れいむちゃんのようにそれをしらないひともいたのです。
 おしえてあげたいな、とおもいました。れいむちゃんはほかにもいろんなことをしりません。だったらわたしがれいむちゃんにいろんなことをおしえてあげればいいのです。
 でも、一じかんはあっというまにきてしまいます。
 おばちゃんがへやにやってきたとき、わたしは
「もっとれいむちゃんといたい」
 といいました。
 するとおばちゃんはものすごくおこりだしました。目が赤くなるほどおこりだしました。
「しちばねかなた! あんたがいていいのは一じかんだけなのよ! そういうやくもさまのごめいれいなのよ! めいれいがなかったらあんたなんか!」
 わたしはれいむちゃんのへやからおいだされました。どうしておばちゃんはあんなにおこったのでしょうか。おばちゃんにとってれいむちゃんはとても大切なものなのでしょうか。
 きょうはこくごのドリルを2ページやりました。












・東風谷早苗
 彼女に血は入っていない。だが、博麗の力と組ませることで、こちらの想定以上のなにかを生み出す可能性がある。かの神々は幻想郷への移住をする意思を仄めかせたことがあり、もしそれが実現した場合、なかなかおもしろいことが起こるかもしれない。

・鍛冶屋美々
 霊力、〔能力〕ともに充分。しかし人格面において破綻。齢六歳で妖怪を嬲り殺しにすることを好いており、三十六体の同胞が拷問の末に死んだ。彼女を選出した場合、確実に幻想郷における人妖のバランスは崩壊する。当然不選出であり、現在、外の世界の妖怪を守るため、時期を見ての抹殺を検討中。

・七羽彼方と『霊夢』
 〔全てから浮き上がる能力〕は博麗の血に脈々と受け継がれる、万物の干渉を否定する力である。重力も敵の攻撃も、この力の前では無力であり、博麗は簡単に全てから逃れることが出来る。
 だがその力が行き過ぎると、自らの感情からも浮き上がってしまい、最悪の場合まるで人形のような人間になってしまう。
 今までの博麗の巫女も、その大多数において感情が希薄であり、彼女達は周囲との齟齬に苦しんだ。
 だが、『霊夢』は多大な〔能力〕を保有しながら他の人間とのコミュニケーションに積極的な姿勢を見せつつある。技術を習得する以外はほぼ無機物的に生きてきたと言ってもよかった彼女が、僅か数日の内に大きな成長を開始したのだ。〔能力〕を保持しながら、人間的な感情を育てることができるということなのだろうか。
 幻想郷における人妖間の融和には、巫女の人格も大きく関わってくる。単なる人形ではなく、魅力的な心が必要なのだ。成長性が豊かな『霊夢』は魅力ある巫女に育つ可能性がある。
 『霊夢』の人格育成には七羽彼方の存在があった。彼女も一緒に連れて行くべきだろうか? たまには巫女が二人居てもいいかもしれない。












 7がつ30にち
 きょうわたしは、れいむちゃんといっしょに、てんぐにあいました。
 きのうといっしょで、わたしはれいむちゃんとおはなしをしていました。するといきなりへやのしょうじがパン! とひらきました。そこにはしらない女の人がたっていました。
「どーもはじめまして! きよくただしいしゃめいまるです!」
 しゃめいまるという名まえの女の人は、じぶんはてんぐだといいました。
 わたしはてんぐのことをしらなかったので、しゃめいまるさんにききました。
「てんぐってなんですか?」
「うーん、そうですね、みんぞくがくてきにいうのならばてんぐはたしゅたようなようそがからみあったそんざいだといえるのですが、まあごくかんたんにいってしまえば、オバケのなかまでしょうか?」
 なんとオバケだというのです。おなじクラスのこいずみくんはオバケがこわくてよるにトイレにいけず、おしっこをもらしてしまったそうですが、わたしはぜんぜんこわくありません。
 なんだかわからないのですが、わたしにとって、オバケはとってもみじかなきがするのです。オバケにあうのはしゃめいまるさんがはじめてなのに、ふしぎです。
「なるほどなるほど、あなたたちがさいしゅうせんこうにのこった二人ですか」
 しゃめいまるさんはいきなりこういいました。
「ようかいのわたしがあらわれた、さあどうする? っていうテストなんですねぇ」
 しゃめいまるさんはいったいなにをいっているのでしょうか。わたしにはさっぱりわかりません。
 でもなんだか、とてもいやなよかんがしました。
「おやおや! じつにみこらしいこうどう!」
 わたしのかおのよこを、とつぜんひかりのたまがとおりました。ひかりのたまはなないろのにじのようでした。
 しゃめいまるさんはそのひかりのたまを、せなかをうしろにまげることでよけました。そのときしゃめいまるさんのほっぺたに、あせがながれていました。
 ひかりのたまはしょうじをふきとばして、もやして、しょうじをあっというまにはいにしてしまいました。
 わたしはうしろをふりかえります。
 そこにはれいむちゃんがみぎうでをまえにつきだしたまま、とてもこわいめでしゃめいまるさんをにらんでいました。
「れいむちゃんがやったの?」
 わたしはれいむちゃんにききます。
「そうよ」
 れいむちゃんはいいました。
「だめだよれいむちゃん!」
 わたしはれいむちゃんにとびかかりました。れいむちゃんにだきついて、そのままふたりでころびます。
 だめだとおもったのです。だれかにひどいことをしてはいけないとおもったのです。こころのなかがばくはつしてしまいそうなくらい、れいむちゃんをとめなくちゃとわたしはおもったのです。
 れいむちゃんは
「どいて! ようかいはたおさないと!」
 と、さけびました。けれどわたしはどきません。ひっしにれいむちゃんにだきついてはなしませんでした。
「かなたさん、れいむさん。どうやらじかんのようです」
 しゃめいまるさんがいいました。
「けっかは、もうきまったみたいですね」
 おてつだいさんたちがかおをまっさおにしてたくさんやってきました。けれど、だれもしゃめいまるさんのことにきがついていないようです。しゃめいまるさんはすたすたとへやをはなれていきます。
「かなたさん、そのただしさをつらぬいてください。そのただしさはすべてのひとのちからになるのですから」
 しゃめいまるさんはやがていなくなりました。
 おばちゃんがすごいスピードでやってきました。そのままわたしはおばちゃんにけとばされ、ふっとびました。おばちゃんはれいむちゃんにききました。
「どうなったの! てんぐさまはなんといっていたの!」
 わたしはれいむちゃんがなんというのかきこうとしました。だけど、おてつだいさんにつかまれて、あっというまにへやのそとにいってしまったので、わかりませんでした。
 きょうはいろんなことがありました。きになるのはやっぱりれいむちゃんとけんかをしてしまったことです。けんかをしたままはいやです。
 わたしとれいむちゃんはともだちなのですから。
 きょうはさんすうのドリルを2ページやりました。












・記憶操作に関して
 選出において何名かの候補と直接会話をする必要があった。その場合、適宜候補者及びその周辺の人物に記憶操作を施し、今回の事に関する記憶を消し去らなければいけなかった。

・『霊夢』の母親について
 彼女が博麗の巫女を生み出すためにまず最初に行ったこと、それは自分の娘に名字を与えないことだった。霊夢はたんなる『霊夢』である。名字という家族の縛りを失った霊夢は〔能力〕を加速度的に成長させたのだ。
 『霊夢』の母は財産も時間も、惜しげもなく『霊夢』にそそぎこんだ。
 彼女は自らの全てを費やして、博麗の巫女を生み出さんとした。
 その執念にはなんらかの形で報いたい。
 だが、彼女はもうすぐ死ぬ。その魂のエネルギーすらも『霊夢』にそそぎこんだのだ。
 彼女はなぜそこまでしたのか。現在、調査中。

・七羽彼方と『霊夢』
 明日、結果を二人に伝える。












 7がつ31にち
 れいむちゃんとおわかれしました。
 よる、おふとんでねているわたしのよこにれいむちゃんがきました。わたしはおどろきました。れいむちゃんはけっかいというものでへやをでれないのだときいていたからです。
「どうしたの?」
 わたしはれいむちゃんにききました。
「わたし、げんそうきょうにいくの」
「げんそうきょう? どこなのそこ?」
「とてもとおくて、とてもちかいところ」
 れいむちゃんのはなしはたまにとってもむずかしいときがあります。わたしはいくらかんがえてもわかりませんでした。
「あなたもあといっぽだった。あなたはとてもそうめいで、きおくりょくもすばらしかった。けれど、すこしだけやさしすぎた」
 これでれいむちゃんとはおわかれなのでしょうか。そんなの、つらい、です。
「わたしもつらい。ああ、つらいというかんじょうとはこのようなものだったのね」
 またあえる? とわたしはききました。
「もうあえない。それにおもいだすこともない、おたがいに」
 またわからないはなしです。わたしがれいむちゃんをわすれるわけがありません。
「さようなら。そして、ありがとう」
 れいむちゃんのそのことばをきいたとたん、わたしはきゅうにねむくなってしまいました。まだまだれいむちゃんとおはなしがしたいのに。わたしはあっというまにねてしまいました。
 おひるの十二じ、おきました。こんなにおそくまでねていたのははじめてです。
「はははははははっはははははははっはは!」
 おばさんのおおごえがきこえてきました。なにがあったのだろうとおばさんのいるところへいきました。
 おばさんはまるでこどもみたいにとびはねていました。
「やった! やった! わたしはやった! ついにかった! はくれいのみこをうみだした! ざまあみろ、ざまあみろ! ひゃはは! ざまあみろ!」
 よだれをたらし、めをまっかにしながらないて、おばちゃんはさけんでいました。
 なんだかまるでかいじゅうみたいだな、とわたしはおもいました。
 3じにくるまにのってじぶんのいえにかえりました。いえについたのはよるです。
 この五日はとてもふしぎで、とてもへんてこりんでした。でも、れいむちゃんにあえてほんとうにたのしかったです。
 げんそうきょうとはどこにあるのでしょうか。あしたとしょかんにあるちずちょうをつかってしらべてみようとおもいます。げんそうきょうのばしょがわかったら、いつかれいむちゃんのところにあそびにいきたいです。
 きょうはこくごのドリルを2ページやりました。












・さいごに
 今回の博麗の巫女は今までのなかで最高クラスの逸材だろう。幻想郷、及び外の世界に散らばっている博麗の血筋を総ざらいすることは毎度大変なことだが、たまにこんな傑作が見つかるからこそ、その苦労にも意味がある。
 霊夢は博麗神社に到着、もうまもなく外の世界の記憶を消去する。結界技術等を残し、跡形も残さない。かわいそうだが、外の世界にたいする執着の種は欠片も残してはいけないのだ。

 七羽彼方は優しすぎた。霊力は伸び代があったし、〔能力〕もあった。霊夢の助手役として幻想郷に呼び寄せるプランもあった。だが射命丸文を使ったテストにおいて彼女はほとんど警戒感を持てなかった。これは致命的である。幻想郷に来てもすぐにやられてしまうだろう。
 七羽彼方にも記憶操作を行う。
 彼女が書いていた日記も回収する。

 彼方は霊夢のよき友人になるかもしれなかった。
 人間的感情を教え、幻想郷においても霊夢によき友が生まれるよう、我々もなにかをしなくてはいけない。

 妖怪の賢者記す
























・補足
 記憶操作をおこなったはずなのに、どうも変な癖が残ってしまった。
 どうして霊夢は腋が出る服を好むのだ?
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.570簡易評価
4.100名前が無い程度の能力削除
まさか腋巫女の裏にはそんな設定が・・・
6.60金細工師削除
くそぅ…補足で笑ってしまった…