Coolier - 新生・東方創想話

迷い火と正邪

2014/06/05 23:42:15
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 ガサガサッ、ガサガサッ。
 と、竹の葉同士が擦れ、豪快な音を奏でている。

「はあ……はあ……」

 一人の少女が、竹林の中を疾走していた――いや、この場合、敗走といった方が適切かもしれない。とにかく、走って走って、走りまくっていた。どこに行くともなく。どこにも行く当てもなく。

「ぐうぅ……くそ……!」

 ギリリ、と息切れをしながらも、歯軋りをする。

「うがあああああ!!!」

 咆哮した。
 憎たらしい、欠けてもすぐ満ちる、完璧な円を描く満月に向かって。その拍子に全身の力が抜け、夥しいほどの竹がそびえ立つ地面に、膝をついてからうつ伏せで倒れ込んでしまう。
 が、すぐにくるりと体を転がし、仰向けになった。服はボロボロで、ところどころに穴が空き、白い素肌が顔を見せている。
 頭には、二つの小さな角。黒と白とで四対一くらいの割合で彩られた髪に、舌のように真っ赤な前髪。

「なぜだ……なぜ……!」

 仰向けのまま、誰かに答えを求めるかのように、彼女は力強く呟いた。

 その少女は、少女の姿を取りながらも、ただの少女ではなかった――天邪鬼、鬼人正邪だった。


 ◆


 第百二十八季に起こった一つの異変――それは、幻想郷では前例のない異変だった。
 ありえない異変だった。異例の異変だったのだ。
 何が異例なのかと言えば、それは、異変の首謀者が『弱い』ということだった。
 その異変の目的は、『ヒエラルキーの逆転』、つまり下剋上――『幻想郷をひっくり返す』ことだった。
 『弱い』というのは――彼女らを蔑んでいるわけでも、まして見下しているわけでもない。誇張でも偽りでも何でもなく、『弱い』のだ。それならば何故、彼女たちはこの異変を為すことが出来たのか?
 それこそ、鬼の秘宝である、打ち出の小槌の力だった。
 打ち出の小槌は、伝承曰く「何でも願いを叶える」。しかし何の犠牲も支払わずに願いを叶えられる物など無いわけで……その代償として、主に道具たちが力を得てしまった。幻想郷中の道具たちはその力を手にしたことで、不完全ながらも、付喪神と化してしまったのだ。
 これは首謀者が元々は想定していなかった事故だったが――結果的には、それすらも異変の一部として利用した。
 そうして、気づかぬうちに人間たちは、使っている道具に使われているなど夢にも思わず、下剋上は完遂される。
 はずだった。

 ――詰まる所、異変は所詮、異変だったということだ。

 そんな異変の、天邪鬼な黒幕はいま、迷いの竹林の竹の一本にもたれかかっていた。

「あーあ、くそ、これからどうしような……」

 ほんの小一時間前に失敗が確定してしまった異変。首謀者たる正邪にとって、それは一大決心だった。
 挫折は生きた分より多く味わってきたつもりだが、今回の挫折はひと味もふた味も違っていた。
 周りを見れば、竹林の草や、ところどころ剥き出しなっている地肌が、月明かりによって照らされている。そのおかげで、今宵は視界明瞭とまではいかないものの、完全な暗闇ではなかった。なんとなく、正邪は辺りを見回してみる。

「ちっ」

 何も居ない。何も、ない。
 つまり八つ当たりによる憂さ晴らしが出来ないということだ。
 行き場のない苛立ちはただいたずらに体力を摩耗させるのみ――もともと疲弊していたところに更に疲労が溜まり、やがて倦怠感が正邪の体に渦巻き始めた。
 やる気が出ない。脱力感が身体を支配している。このまま餓死して死んでしまおうか、なんて考えが頭に浮かんだが、果たして妖怪にそんな真似ができるのか、とすぐに思い直す。天邪鬼は人を喰う妖怪ではない。
 まあどうせ、と正邪は考える。多分自分は、これでも懲りないのだろう、と。まだこれからいつでも、虎視眈々とチャンスを狙い続けるのだろう、と。
 一本の固い竹に体重を任せながら、そんなことを推し量る。これでも、割と長く生きてきた。自分のことくらいは、分かっていた。分かっているつもりだった。

「ねえ、ちょっと」

 ちょうど右斜め上。降ってきた声に、正邪は当然ひどく驚いた。さきほどまで、気配など全く感じなかったのだから。
 倦怠感もそれで覚め、咄嗟にそちらを向いて立ち上がる。

「まあまあ、待ってよ。別に取って喰おうってわけじゃないんだから」

 見れば、話しかけてきたらしいその少女は、正邪より少し背が高い程度。足まで届く長い綺麗な白髪を、御札でリボンのように結んでおり、そして、赤い脚衣を履いていた。
 人間か。そう思った。ただの人間の少女。どのみち被支配者でしかない、弱者の人間。
 少し気を緩める。

「……何の用だ?」
「何の用……って訊かれても困るんだけどね。いや、さっきここいらから叫び声が聞こえたから、てっきり人間が迷い込んで、妖怪に襲われたものと思って来たんだけど……」

 白髪の少女が右手を示し、手のひらを上へ向けると、そこから煌々と燃え盛る火球が現れた。周囲の風景がぼうっと浮かび上がる。
 正邪は早くも自分の認識に訂正をしなければならなくなった。
 そもそも、ただの人間が迷いの竹林で生きていられるわけがなかったのだ、と正邪は遅ればせながら気付いた。

「でもどうやら貴方、人間ではなさそうね」
「…………」

 そのセリフ、そっくりそのままお返ししたい正邪だったが、少女が右腕を振りかぶる動作をしたので控えた。今にも火球を投げつけて正邪を灰に帰そうというポーズだ。

「ま、待て!」

 後ずさりしながらも、思わず正邪は制止に掛かる。
 いくら天邪鬼といえども、灰になることはないだろうが、天邪鬼だからこそ、このボロボロの状態で攻撃を受けたらたまったものではない。だからと言って今から逃げても、距離的に火球の餌食になるだけなのは目に見えていた。
 が、白髪少女の行動を制止したのは、なんと正邪だけではなかった。

「待て、妹紅」
「……どうしてよ、慧音」

 正邪は重ねて驚いた。妹紅と呼ばれた少女の背後――竹林の暗闇から、またしても少女が現れたのだ。
 萌黄色の服に、若草色の髪。妹紅ほどではないが、長髪の部類だ。そしてその頭には、大きな角が二本、生えていた。こちらは人間ではありえないだろう、と正邪は勘繰る。ということは、妖怪とつるんでいるこの白髪は人間ではないのだろうか、とも。
 自分の感覚も捨てたもんだな、と正邪は内心自虐した。

「ダメだ。いつも言っているだろう。どうしてそう、お前は喧嘩っ早いんだ」
「しょうがないねー、こればっかりは。経験上、こうして解決したことのほうが多かったもんだからね」
「だからと言って……」
「そう言っても慧音、危険な奴だったら、先手必勝に限るじゃない」
「めっ!」
「ちぇ」

 慧音に強く言われると、妹紅は観念して拗ねたように火球をしまい、慧音より後方に下がった。
 竹林が再び薄暗さを取り戻し――正邪は一旦、一息つく。
 慧音はちらりと正邪を見遣ってから、会話を続ける。

「しかしまあ、竹林では見かけない顔なのは、確かだ」
「でしょ? だから、一発とっちめて――」
「ダメだっての」
「何でよ、慧音のケチ」
「襲いかかられたわけでもないのに襲うなんて、おかしいだろう。相手に明確な敵意があるならともかく……。そこらへんの加減は弁えているとは思うが、一応だ」
「へいへい」

「…………チッ」

 正邪は、そのやり取りを見聞きしていると、なんだかだんだん腹が立ってきた。
 表面上は普通の会話だが、天邪鬼たる正邪にはわかる。この二人は信頼し合っている。言葉の節々から、動作から、それがわかる。
 そして正邪は、『見せつけられる信頼』も『見せつけられない信頼』も総じて大嫌いだった。

「すまなかったな、こいつがいきなりで」

 慧音が手を差し伸べながら、正邪に近づいてくる。見た目ほど凶暴な性格ではなさそうだ、と正邪は判断した。良い奴そうだ、とも。良い奴は、正邪が嫌いなタイプである。

「何よー」

 妹紅はブスっとして夜空を仰いだ。
 その視線の先にはちょうど、満月があった。

「私がそいつにちょっかい掛けたのは…………」

 慧音が妹紅の方へ、つまり自身の背後に少し黒目を動かす。

「だって――今夜は、あの夜と似ている。とっても。そいつが新しい刺客でない証拠なんてないもん」
「刺客だっていう証拠もないだろう」
「……そいつ、角があったのよ」

 慧音はそれを聞いて、目を見開く。ようやく正邪の角に気がついたようだ。それほどに、正邪の事はどうでも良かったということだろう――取るに足らない妖精か弱小妖怪か何かだと思っていたのだろう。しかし今、そうではなくなった。
 正邪は――馬鹿ではない。間抜けで天然だが、馬鹿ではない。自分がいま、どのような状況かくらいは、把握している。せっかくのチャンスである。だから、為すべきことはただ一つ。たった一つだけ策はある。とっておきのヤツだ。息が止まるまでとことんやる気概すらあった。

「おい、お前――まさかとは思うが」
「……に」
「鬼――なのか?」

 「鬼」を引き金に、「なのか」を聞くか聞かないかのうちに。
 正邪は二人に背を向け、全速力でダッシュした。

「逃げるんだよォォォーーーーーッ!」

「あ、おい待て!」
「だから言わんこっちゃない!」

 裸足なので地面に落ちている竹の枝やら破片やらが痛いが、そんなことは構わない。不規則に生えている竹が肩にぶつかったり、倒れた竹に躓きそうになったりするが、全く厭わない。今は何よりも、その場から離脱するということだけが正邪の頭を支配していた。ちなみに、正邪自身は知らない事だが、この時のスピードは先ほどより速かった。

「妹紅――」
「ああ、もうっ! ……――」

 一瞬、太ももが少し熱くなったように感じた。攻撃が掠ったか。しかしそんなことに構う暇は絶対的になかった。とにかく走って、走って、走りまくる。
 二人の声は次第に、正邪の耳からはフェイドアウトしていった。


 ◆ 


「はあ……はあ……何だったんだ、あいつら」

 かなり走った。さっきぶりである。
 さっきと違うのは、その必要性があるかどうか、であった。
 正邪が二人の人妖とエンカウントした地点から、かなり離れた場所。
 これでもう追いつける筈がない、と正邪は見なし、その竹林の土に寝転がっていた。
 体が熱かった。ほてっていた。特に、足が焼けるように熱かった。天邪鬼は特に顕著だが、いくら妖怪であろうと、激しい運動をすれば疲れるし、息切れする者もいる。体の熱をうまく冷めさせるためにも、そうしていた。効率が良いとは、とても言えないだろうが。
 このまま冷ましているのも面倒なので、もう熱くてもいいのではないかな、と正邪は天邪鬼な発想をする。
 とは言っても――本当のところ、今、正邪がこんなところで寝転がっている理由は、他にあった。その所為で、逆さ城から竹林に落ちた後からずっと、走っていたようなものなのだから。そうでなければ、今頃すでに竹林自体から離脱している。
 目蓋が重くなり、目を閉じた。正邪の視界が黒に染まる。
 何はともあれ、一難は去って。

「まあ、これで一休みできるだろう――」
「と思っていたのか?」
「!?」

 また一難。
 目蓋をこじ開けると――いつの間にか周囲が明るくなっており、傍らには先ほどの白髪少女、妹紅が立っていた。火球を左手に浮かばせている。
 正邪は動けない。
 正邪には、天邪鬼としては不自然なほど自然に、ただ疑問を垂れ流すことしかできなかった。

「な、なんで――」
「なんでここが分かったか、かな?」

 露骨に狼狽える正邪に対して、妹紅は意地悪そうな顔をする。

「それよ」

 妹紅はそう言って、正邪のスカートの裾を指し示す。正邪が即座に見ると、そこはぶすぶすという音と細く薄い白煙を出しながら、炎が燻っていた。
 既に後の祭りだが、正邪は手で払ってそれを消した。そして妹紅を睨む。

「いつの間に……! 確かにさっきからちょっと熱いなとは思っていたが――」
「さっき、あんたが走って逃げ出した直後だよ――簡単には逃したくなかったものでね」

 妹紅が目を細めて正邪の姿をはっきりと捉える。炎のように――或いは夕暮れのように紅い瞳。見ているだけで、見られているだけで、正邪は言い知れぬ焦燥感と共に精神を焼かれるような感覚を受けた。
 このままでは取って食われる――即座に正邪は周りを、目を動かすだけで確認する。もちろん妹紅以外の存在を確認するためだ。
 さきほど一緒にいた慧音の姿は、しかし意外なことに無かった。妹紅の背後にもいない。
 加えて、この近辺は他の場所に比べて竹が少なく、開けているように見えた。妹紅の火球により暗闇が照らされていたので、先ほどまでは判らなかった地理がよく把握できた。
 結果的には、不運だ、と思うと同時に、幸運だ、とも思った。
 二人同時はさすがに無理があるにしても、竹が密集し狭い場所では分が悪いにしても――少なくとも、この開けたエリアで一人を相手取るのに、能力に不足はないと判断した。
 覚悟を決めた。

「さあ、話を――」

 妹紅が言うが早いか――正邪は行動を起こした。

「とりゃ!」

 両足を上に思いっきり振り上げ――妹紅は当然これを素早く身を引いて避ける――反動を付ける。頭の横の地面にそれぞれ両手を突き、押し返した。体を地面とはほぼ垂直にし、反動の力も借りて、まるで天を蹴る様にして跳び上がった。そして綺麗な放物線を描き、妹紅とは少し距離を取った場所に着地した。
 ぐきり。
 と右足首を少し挫いたのは内緒だ。

「痛てっ……」
「……ふん、やる気なのね。悪いけど慧音、相手がやる気じゃあ、しょうがないよね」

 正邪の小さな苦痛には気付かなかったようで、妹紅はまるで自分に言い聞かせるかのようにして独りごちた。
 そして火球を握りつぶすようにして消した。

「だから、」

 次に妹紅はその腕に、とても人間のそれとは呼べない、鋭い鉤爪のような炎を纏わせる。紅くて熱い。その熱さが、少し離れた正邪にも伝わってくるようだった。

「遠慮しないよ」
「しょうがないな、くそ……」

 風は吹かなかった。だから、竹が騒ぐ事は無かった。
 竹林の動物や幽霊、妖精たちも、静寂の圧力に気圧されたか、その場からは姿を消していた。
 聞こえる音は、遥か遠くで聞こえるオオカミの遠吠えと、炎が燻ぶる音のみ。
 特に何が起こるでもなく、何を起こすでもなく、自然に、ごくごく自然に――小手調べは始まった。

「はああああっ!」

 最初に仕掛けたのは、妹紅だった。右の鉤爪を振り上げ、正邪の方へと走る。雄叫びが竹林中に響き渡る。その速さは、おおよそ正邪の中での『人間』についての常識の外にあった。常人を上回るスピードで妹紅は正邪に接近する。
 が、しかし、そんなことは正邪の想定内だった。
 かかった! とばかりに正邪はしたり顔をする。

「…………――――」

 正邪が妹紅の方へ手をかざし、小声で何かを呟く。
 すると、次の瞬間。

「はああああっ――……んん?」

 妹紅はいつの間にか、正邪のいる方向とは反対方向に――つまりは、正邪に背を向けて走っていた。それに気付き、立ち止まる。妹紅は自分の体に何か異変が起きたのかと、あちこちをまさぐる。
 何が起こったのか、ちんぷんかんぷんの顔。

「? ? ?」
「あれれ? どうしたのだ? まさか、自分から喧嘩を売っておいて逃げるのか?」

 正邪はそんな妹紅の姿を見て、嘲笑する。まだ自分が満身創痍からちょこっと回復した程度であるというのに、構わず挑発していく。これも天邪鬼の性と言えば、そうなのかもしれなかった。
 妹紅は少し歯軋りをして鋭い刃物のような視線で正邪を睨む。

「お前……何をした!」
「べっつに~。貴様の気が狂っただけではないのか?」
「お前……!」

 妹紅の瞳に激しい炎が宿る。“こんな夜”だということもあって、彼女は冷静さを欠いていた。
 その証拠に――妹紅は、またも鉤爪を腕に纏わせ、正邪に向かってくる。

「うおおおおっ!」
「何度やっても同じことだ!」
「…………!」

 正邪が再び手をかざす。そうすると妹紅が気付いた時には、正邪に背を向けて走っているのだ。

「くそ……妙な術を使いやがって」

 妹紅はダメ押しにと、もう一度正邪に突っ込む。

「ダメダメだ、それじゃあ」

 手をかざす。妹紅はまたしても反転する。

「何なんだ、あいつは……! 一体何をしている……!」
「へへーん、早く殴りに来るんだ。退屈であくびが出るぞ」

 本当にあくびをしてみせる正邪。その行動がまたも妹紅を正邪へと突っ込ませる。
 余裕の態度を見せている正邪だが、別に本当に余裕なわけではない。その内心は、いまどうやってここから抜け出そうかということに専念していた。
 相手は人間のくせに、明らかに格上だ。正邪の感覚がそう告げている。ならば、挑発し、冷静さを奪えばいい。そうすれば、相手はこれ以上、正邪に『近づけない』。
 たびたび妹紅に背を向けさせている、この術。これは、正邪の『何でもひっくり返す程度の能力』(自称)によるものだった。これを用い、妹紅の進行方向を、『ひっくり返す』、つまり真逆にしているのだ。
 元々はこれほど多用できたり、これほど強い作用を行使できたりする能力ではないが、今宵はいまだに正邪にも打ち出の小槌のチカラが残っており、そのお陰で妹紅に何回も使う事が可能となっている。そのようにして、隙を作っていた。
 そしてその隙に、正邪は少しずつ、妹紅から遠ざかっていた。一歩、二歩、三歩、と。妹紅は一定の場所を堂々巡りしているようなものなので、まだそれに気付かない。
 正邪の立てる計画は、悪くない。それは異変にせよ、今の離脱作戦にせよ同じだった。
 しかしその計画を破綻させるのは、自身の自覚の無さだった。








「くっ……」

 妹紅はまたも自分が百八十度反転したことに気付いた。

「あいつ、本当に鬼なの……?」

 そうではないだろう、と妹紅はなんとなく思い始めていた。
 鬼ならば、もっと力のごり押しとか、単純に強い力で掛かって来るものである。だが、あの鬼はそうはしない。
 どうにかして、妹紅をグルグル回しているだけだ。
 この感覚は、前にもどこかであった――そう、遠い昔か、はたまたつい最近か。
 昔、この竹林よりも広く複雑なものに迷っていた時のような。
 最近では、自分の心からすっぽりと抜け落ちていたような、そんな心情。
 再び正邪の方に向かう。

「――……そうか」

 妹紅はまた逆走させられた。そしてようやく、思い至った。
 馬鹿だ。妹紅はそう思った。自分も、相手も。

「こんなのあいつに見られたら、また嗤われるな……」

 こんな手を使う敵とは、千年を越える長い人生の中で、幾度とはいかないものの、何度か闘ったことがあった。それも決して、忘れるほど小さい話ではない――では、なぜ忘れていたのか。
 それはきっと、この幻想郷の日常が、能天気だからだ。いい意味でも、悪い意味でも。別に妹紅は、能天気が悪いとは思わない。むしろ殺伐とした環境の中で半生を過ごした妹紅にとっては、能天気でいられることがどれだけ素晴らしいことか、と思っているくらいだ。だがそんな能天気な空気が、妹紅の闘いの記憶と感覚を確実に鈍らせた。
 だって、こんな狡猾な手段で戦うほど中途半端に弱い者など、この幻想郷にはありはしなかったのだから。幻想郷の者は、攻撃が直球だ。多少不規則で婉曲な攻撃や理念を用いようとも、その本質は、妹紅自身を狙っている。そういう、闘っていて気持ちの良い奴らばかりだ。
 冷静さを欠かせる闘い方。相手にすると、回りくどくてイライラする――それが妹紅にとっては懐かしかった。自分も昔は回りくどかったなぁ、とそんな風に妹紅は回想する。苛々するけれど、腹が立つけれど、思い出したくもないけれど――単純に懐かしい。
 気に食わない奴だが、気に入ってしまった。根源的な、闘争本能を駆り立ててくれる。『生きている』を感じさせてくれる。あの永遠のお姫様のように。
 憎らしいけれど、憎めない。『人間』の感情は、理屈では片を付けられない。

「さぁーて」

 妹紅は鉤爪を仕舞い、そして背から翼を生やす。
 黒く蒼い空に映える、紅蓮の炎の翼。

「! バレたか……?」

 正邪が小さく呟く。妹紅が猪突猛進をやめた事を警戒し、ひとまず挑発モードを取りやめた。ここらへん、正邪も戦局を少しは判断できる。
 不死鳥のような翼を生やした妹紅は、空に少しずつ上がっていっている。
 その背後には、完全に満つ月。

「――遊ぼうか」


 ◆


「妹紅ー! 妹紅ー!」

 慧音は妹紅を探して竹林を歩いていた。
 とは言っても、ただ闇雲に歩いたわけではない。そんなことをしたら、即刻迷ってしまう。『迷いの竹林』という名前は伊達ではない。

「……全く、どこまで行ったんだか」

 慧音は先ほどのやり取りを思い出す。

『慧音、悪いけど、私はあいつを追いかけるから』
『……まあ、尾行用の火種を付けていたから、そうじゃないかとは思ったよ』
『ありがとう。でもさ、私は慧音を置いてけぼりに出来るほど冷たくない。かと言って一緒に追ってケンカに水を差されてあげるほどお人よしじゃない』
『やっぱり、闘うつもりなんだな』
『ま、そりゃね――暇つぶしの相手をそう易々と逃がすほど、私は忙しくない。まあだからさ、後から追って来て欲しいのよ』
『だがそれじゃあ、あまり大きな声では言えないが、私は迷子になるぞ。ここには数えきれないほど来ているが、まだ迷いそうになるからな』
『そこでね、私、通った跡に炎を付けておくから、それを辿ってきてよ。それなら問題ないでしょう? 差し詰め、炎版ヘンゼルとグレーテルかな。パンくずを落とすのは私、辿るのは慧音、辿った先は私、でバラバラだけれど』
『それならば妹紅、その炎は消えてしまいそうなものだな』
『ん……ん、そうだね、消えちゃうこともあるかもね。でも、炎は消えても、残るものがあるでしょ? パンくずとは違って、さ』

 そう言う妹紅の顔は、暗がりでよく見えなかったけれど、何となく、その時の声はいつもよりトーンが低かったように慧音は感じた。
 炎が消えても、残るもの――それは焼け跡だ。焦げ跡と言ってもいい。見えやすいとは言い難いが、今宵は満月、明かりは十分だった。そういうわけで、慧音は時に炎を、時には黒く焼け焦げた跡を辿って、竹林を歩いて来ていた。

「全く……」

 妹紅は必死だったのだ。死なないけれど――死なないからこそ、彼女は必死になれる。
 必死に――あの鬼を、輝夜の刺客だと思い込もうとしている。さっきの鬼の反応を見れば、刺客ではないと、誰にも一目瞭然のはずなのだ。しかし、それでもなお、妹紅はあの鬼にこだわっていた。
 ここ数ヶ月、輝夜の奴が『遊び』に来ていないことも大きいのだろうが……。ただ単に遊び相手が欲しいだけなのだろうか……。
 そう、そこまで含めて、今宵は似ていた。あの肝試しの夜に。

「あの夜みたいに、無茶しなきゃいいが……ん?」

 その時、慧音は何かの音に気付いて振り返る。

「これは……遠吠えか?」


 ◆


 なぜ、と思わない日は無かった。
 なぜ、こんなにも自分は弱いのか、と。
 『鬼』という名を冠していながら、なぜ天邪鬼はこうも弱いのか、と。
 他の魑魅魍魎は、人間を易々と蹂躙する。それを見様見真似で正邪がやろうとしても、ダメなのだ。
 昔の光景が、脳裏に浮かび上がっては消えていく。
 魑魅魍魎。百鬼夜行。迫害。人間。欺瞞。偽り。嘘。裏切り。逃走。鬼。幻想郷。小槌、小人、計画、決行、逆さ城、魔法使い、メイド、巫女、失敗、敗走――――人妖、白髪の人間、火球、紅い眼、鉤爪、四方八方から迫る火の鳥――――――――
 途中で正邪は気付いた。これは走馬灯だ。そうだ――まだ、死ぬわけにはいかない。まだ懲りたくない。
 死にたく――ない。

「――ッ!」
「や、お目覚めかい。おそようさん」

 正邪が目を覚ますと、目の前には揺らめく赤い塊があった。一瞬妹紅の炎かと勘違いしてビビるが、すぐに違うと分かった。
 正邪の目の前でパチパチと音を立てて燃えているのは、焚き火だった。その傍らには、妹紅が竹を背に胡坐をかいていた。
 またも正邪は立ち上がり臨戦態勢になろうとした――が、体が動かなかった。いや、動かせるのだが、僅かに動く程度で、鈍重なものだった。
 ふと衣服を見てみれば、原型はあるものの、なかなかグレイトに焼け焦げていた。皮膚もところどころ黒くなっている。満身創痍に満身創痍を重ねて、もう死ぬのではないか私、と正邪は愚考した。ただ、不思議と痛みはあまり感じなかった。麻痺までしてしまっているのか、と半ば自嘲するような気持ちにすらなった。

「動かない方がいいよ、結構痛めつけたから」
「……どうするつもりだ」

 言う間に、何とかして体を起こした。逃げることは出来なさそうだ。

「どうする、って……さっきから言ってるじゃない。話がしたいのよ、話が」
「は、話……?」

 正邪はまず自分の耳を疑った。次に頭を疑った。遂には正気を疑った。
 そして。

「嘘つけ!」

 心からのセリフだった。天邪鬼が放つセリフとしては希少である。

「嘘じゃないよ……さっきから言ってるじゃない」
「初見で襲ってきた奴が吐くセリフではないぞ!」

 思わず立ち上がり、正邪は嘘偽りなく本心で叫んだ。正邪にしては、これまた珍しい。

「だって逃げそうだったんだもん」
「襲ったら余計逃げそうだとは思わないのか!?」
「…………。うーん……どうだろうね」

 そこまでは考えていなかったという顔。
 そしてその拗ねたような表情の妹紅に、正邪は軽く錯覚を起こした。
 あれ? こんなにこいつのことツッコんでいていいのか? 流暢にしている間に再びこいつは襲ってくるのではないか? 一刻も早く逃げるべきではないのか?
 正邪がああだこうだと頭の中で問題提起していると、じゃあ、と妹紅が言った。

「あんた、輝夜から言われてここに来たの?」
「……カグヤ?」

 いったん問題を措き、はて何のことかと、正邪は首を傾げる。カグヤ……どこかで聞いたことのある名だ。どこで聞いたか。
 少し考えを巡らし、そして思いつく。そう、確か『竹取なんたら』とかそんな話の登場人物に『かぐや姫』がいたような。しかし、すぐにそうではないとその着想を切り捨てる。
 口調こそ軽いが、訊いてくる妹紅の目はどこまでも真剣だ。冗談で言っているとは正邪には思えない。いつもの正邪なら、ここで「そうだ」と肯定して鎌を掛け、何なのかを聞き出すのだが、この状況でそんな危険な行為ができるほどの愚かさを、正邪は持ち合わせていなかった。よって、普通に聞き出すしかない。

「違う。今宵ここには、私自身の意志で来たのだ」
「……そうかい。まあ、薄々そうじゃないかって思ってたけどね」
「さっきから何を言っているのか全く分からん。支離滅裂だぞ、お前」

 笑ってみせる妹紅に、正邪は「ころころ表情の変わる奴だ」と容赦なく、ある種軽蔑したような目で見る。

「もっと具体的に言え。仄めかす程度の言葉じゃ、私と話など到底できないぞ」
「あ……そう。そうかい。分かったよ」

 右の手のひらをヒラヒラさせて、妹紅は了解した。巻き込んでおいて、この扱いはないと正邪は思う。別に慣れているが。

「そう――先ごろあんたを襲ったのは、蓬莱山輝夜という気に食わない奴の刺客だと思ったからよ」
「ホウライ……サン、カグヤ?」
「そう、蓬莱山、輝夜。本当は、口にも出したくない名前なんだけどね」
「ああ、そう」

 正邪は興味なさげに相槌を打つ。当然だ、本当に興味がないのだから。

「で、なぜ私をその某の手先だと思ったのだ?」
「それは……もちろん、理由がある。それは」

 妹紅はそこで言葉を切り、正邪の頭の方を顎で示した。

「それよ。その角」
「角……」

 そう言われて、正邪は自分の頭にある角に触れてみる。

「さっき慧音が訊いてたけど、あんたさ……鬼なのか?」
「…………」

 妹紅が訊いてくるが、正邪は黙っている。

「……まあ、訊くまでもないんだけどね。さっき闘っていて判った。あんたは鬼じゃない」
「…………」
「おっと、怒らないで。別に挑発してるわけじゃない」

 正邪はまだ黙っていた。挑発でないことは十分わかっていた。しかし、癪に障られずにはいられなかった。
 俯いて、両手で頬に平手をやる――体はもう、ある程度動かせるようになっていた。
 ぱちん! という気持ちのいい音が、静かな竹林に響く。
 これで、少しは冷静になれたと錯覚しようとした。
 顔を上げる。

「……そう、私は鬼ではない。私は、天邪鬼だ」
「やっぱり……そうか」

 妹紅が頷く。

「天邪鬼は、ひねくれ者――だからこそ、鬼の真逆。『強い』の逆。『弱い』だ――その分、天邪鬼は妙な術を使う。物事を反転させる、ひねくれさせる術。私も焼きが回ったもんね。あれほど強力なのが初めてだったってこともあるけど」
「そりゃどうも。しかし普段の私なら、こうして貴様と相対していることもないのだろうな」

 正邪は夜空を仰ぐ。
 まだ満月はそこにある。ただ、次第に傾いてきていた。

「どういうこと?」
「失敗したが、我々は“こと”を起こしたのだ」
「我々? “こと”? 何よ、それは?」
「それは……」

 正邪はここで少し迷う。
 相手は恐らく人間だ。妖術を使い、竹林で迷っていないが、人間だろう。そんな感じがした。正邪の頭の中にはない概念だったが、言うなれば「人間であるという想い」を、無自覚に感じていたのだ。無自覚だから、その重さも深さも、当然正邪にはわからない。
 ただここで問題なのは、彼女が人間であるのにも関わらず『強者側』であるだろうと容易に想像できることだ。というかそもそも――そういう枠組みからは、この少女は外れているような気さえする。
 言ってしまっていいのか?
 本当は、もう答えは出ていた。

「異変を起こしたのだ、今しがたな」
「なっ……!」
「まあ今しがたと言っても、準備と開始自体は随分前からしていたのだが……」

 これは本当だった。正邪が小人族を見つけて今回の計画を企てたのも、もう随分前のことだったし、彼らを籠絡するための期間も当然必要だった。壮大な野望を抱えた異変だということもあり、準備期間が必然的に長くなったのだ。

「あんたが、か?」
「ああ。意外か?」
「ああ、そりゃあ、そうだよ」

 妹紅は焚き火に目を遣る。弱いながらも風が吹いてきており、それに靡いているが、いまだ消え去るには至っていない。確固として存在している。

「“異変”ってのはさ――強い奴の道楽って相場が決まってるから」
「……はっ、そうだな」

 自嘲気味に嗤う正邪。もちろんそんなことは承知していた。
 今まで幻想郷で起こったいずれの異変も、個人的目的があったり、興味本位だったり、寂しかったり、暇だったり……どんな要因であろうと、『強者』が起こしたものだった。
 いわゆる『弱者』には、そんなこと及びもつかない考えだろう。目的や興味があろうが、寂しかろうが、暇だろうが――そういったものを、『異変』レベルにまで引き上げられる『弱者』は殆どいない。

「そういった意味で、私が起こした異変は従来のものとは性質を異にする。何といっても、下剋上だからな」

 そして正邪は、ニヤリと妹紅に笑って見せる。

「……なるほど。弱いからこそ、か――」
「ああ。貴様が言っていた、私の能力の強化も異変によるものだ」
「んん? どういうこと?」
「聞きたいか?」
「まあ」
「ならば、一つ約束をしてくれないか。『何を聞いても私にもう危害を加えない』と」
「別にいいよ。あんたのことは気に入ったし、私はそんなに了見が狭くない」
「…………」

 どの口が言うのか、と正邪はまたも先ほどの出来事を想起した。そして想起してわかったのは、目の前のこの少女には何を言っても無駄だということだった。

「ささ、早く! 勿体振らないでよ」
「……簡単に言えば、小人族の秘宝『打出の小槌』に願った。「幻想郷をひっくり返したい」と――これだけだ。私の力が小槌から与えられたのは、本来はその代償に過ぎない」
「へえ、なるほどね。ん……打出の小槌、と言ったら、あの『一寸法師』とかいうやつの?」
「うむ。その小人族というのが、どうやら本当に一寸法師の子孫らしい」
「ふうん……実在したんだ。……いや、人のことは言えないか」

 適当な相槌を打ち、再び焚き火を見遣る妹紅。ここらへんの話題にはあまり興味がないらしい。他のことを思案しているようだ。

「あれ、あんたと小人とはどういう関係なんだ?」
「いや、私にもよく判らんのだが、ほっつき歩いているときに見つけた」
「なんだそりゃ……」
「で、どうやら利用できそうだと思ったので、ちょいと騙して嗾けて、異変を起こしたってわけだ」
「騙すってどんな?」
「小人は人間どもに虐げられているー、とか、今の苦しい現状は人間どもの所為だー、とか」
「ふうん、ゲスいね」
「まあな」

 ゲスいとか汚いとか、その手の罵倒語は正邪にとっては褒め言葉であった。

「まあ、それで少し前――里やらで宗教連中が人気の取り合いを始めた頃か――に、『下剋上』を開始した」
「分かってるけど、結果は?」
「分かっているのに訊くのか。性格が悪いぞ」
「いいじゃない、何とでも言いなよ。天邪鬼に言われる筋合いはない」
「ごもっとも。……お察しの通り、惨敗した。つい先ほどのことだ」
「……なるほどね、だから私に会ったとき、あんなに怯えてたのか」
「あんな脅してますよアピール全開で来られたら、誰でも怯える。というか貴様、話し合いとか微塵も言っていなかったよな?」
「ひどい言い草ね。そうだったっけ?」

 とぼける妹紅。ああ、と正邪は確信した。自分が何を言っても、やっぱり無駄だ、と。
 正邪のそうした諦観を意にも介さず、妹紅は話を戻す。

「しかし惨敗したとなると……巫女?」
「白黒魔法使いとメイドの前払いつきだ。巫女が最後に来た」
「主役は遅れてやってくる、か……私も巫女とか魔法使いとかと遊んだときは、手痛い目に遭ったもんよ」
「何だ、知り合いなのか?」
「まあね。あいつらは、輝夜の刺客として来たの。実際はただの肝試しだったらしいけど。輝夜に良い様に使われたってこと。そう……あの夜も、こんな風に満月が出ていた。これも、あんたを刺客だと思った理由の一つよ」
「そりゃ迷惑なとばっちりだな」
「改めて悪かったね。そして、一度やられた身として同情するよ。ドンマイ」
「よしてくれ。反吐が出る」
「悪い悪い」

 見ると、妹紅には全く悪びれた様子はなかった。
 ここで正邪は気付いた。
 こいつ、ワザとか……! 天邪鬼の扱い方を心得てやがる……!
 戦慄する正邪をよそに、妹紅は両手を後ろに突き、体重を背後にかけてぼんやりと月を見つめた。そして、でもねぇ、と言った。

「あんな反応されると、傷ついちゃうよ。いくら不死身とはいえ、こればっかりは慣れないもんだ。いや、慣れたは慣れた、か。ただ単に慣れても傷ついてるだけか……」

 大きな独り言というわけでもなかったが、正邪は『不死身』という単語を聞き逃さなかった。

「不死身……? 貴様、不死身なのか?」
「あ? あー……うん、まあ」

 曖昧な返答をする妹紅。正邪は堪らず喰い付く。

「貴様、人間ではなかったのか!? 私はてっきり人間かと思って慄いていたところもあったというのに……」
「え、私のこと、人間だと思ってたの? いや合ってるんだけどさ」
「は?」

 正邪は混乱する。
 人間なのに、不死身? 不死身なのに、人間?
 その二つが、正邪の頭をぐるぐると低回し、錯綜する。
 妹紅はそれを見かねて、説明を追加しにかかる。

「ごめん、分かんないよね。私は厳密に言うと、“元”人間だ。みょんなことがあって、私は今現在、不老不死の蓬莱人なんだ。これで分かった?」
「なるほど――わからん。しかして、今現在、人間で合っていると……」
「ああ、それはさ――意識的な問題? っていうの? 体はもう到底人間とは言えないけど、私自身、人間をやめたつもりはないんだ」

 誰かさんは許さないかもしれないけど、と妹紅は言う。
 みょんなこと、という言葉遣いが二重の意味で正邪には気になったが、気にしないことにした。
 それよりも、気になったことがあった。

「蓬莱……さっきの蓬莱山某とは何か関係があるのか?」
「まあ……あるんじゃないかな。その某も蓬莱人なんだ。人間じゃないけど。私はただ単にあいつがそう名乗っていたから、それを拝借しただけだよ」
「ふむ……」
「しかし……あんたは不思議な奴だね」
「うん?」
「私を初見で人間だと思う奴なんて、幻想郷に来てからは両手の指で数えるくらいしかいない。慧音は割とその口だったりする――ああ、慧音ってのは、さっきの角生やした緑の娘のこと。まあとにかく、それが今聞いて気になった。どうしてそう思った?」
「どうして、って言われてもな……なんとなくなんだよな、これが」

 正邪にとっては本当にそのような感覚だった。『人間だと思った』、これに尽きる。それ以上でもそれ以下でもない。

「ふうん……なるほどね」

 妹紅は何か考えているようなポーズを取る。

「やっぱりあんたは、天邪鬼だよ」
「……? そうだと言っているだろう、何を今更」
「いやぁ、ね。天邪鬼は似てるよ――」

 妹紅はそこで言葉を止めてしまう。
 何に? と正邪は訊こうとしたが、それは残念ながら叶わなかった。
 なぜなら。

「――妹紅!」

 妹紅と正邪の目の前の焚き火の奥の、竹林の暗闇。
 そこから、慧音が突如飛び出してきたからだ。

「あれ、慧音。意外と遅かったね。しかもそんな剣幕でどうしたの?」
「すぐにここを離れろ! そこの鬼もだ! ……ぐっ」

 見れば慧音は、さきほどの姿からはかけ離れた、それこそ満身創痍の姿であった。息を切らし、服もボロボロ。
 そして、遂には膝をがくんと地面に突き、四つん這いになってしまう。

「慧音!」

 妹紅が立ち上がって、慧音のもとに駆け寄ってしゃがみこむ。正邪はただそれを焚き火越しに見ている。

「慧音、どうしたの!」
「オオカミだ」
「オオカミ? それってもしかして――」
「そう――影狼だ」


 ◆


 それは慧音が飛び込んできた時よりも、唐突だった。

「危ない!」

 妹紅がそう叫んだ。
 しかし、遅かった。
 正邪の眼前には、気づいたときには巨大な――“頭だけの”黒いオオカミが鎮座していた。否、たった今、そこに鎮座したのだった。目が血のように赤い。これがただの充血だとしたら、冗談として流せるのだろうか。
 オオカミが、口を開く。
 大きな口。鋭い牙。広い口内――

「う、うあ」

 いきなり過ぎた。正邪は、何度も言うように、強くない。弱い。ただの単純な、純粋な身体能力は、人間並みか、それ以下だった。妹紅とは比べるべくもない。
 いきなり過ぎて、反応できない。

「んの――馬鹿!」

 オオカミの頭――と言っても頭しかないのだが――に妹紅の一蹴りが炸裂する。背中に炎の羽を生やしている。

「――――ッ!」

 オオカミが声にならない唸り声を上げて、ドサッと地面へ堕ちた。
 しかしそれも一瞬で、すぐにオオカミは起き上がった。

「影狼! 私だ、分かるか!?」

 妹紅がそのオオカミ――影狼を、鋭い剣幕で問い質す。
 しかし。

「グルルルルル」

 影狼は、ただ白髪の少女を睨むのみ――獣の目つき、理性を失った獣の目つきだ。

「どうしたんだ……いつもなら普通に変身しているだけなのに」
「ガウッバウッ」

 またも影狼が大きな口を大きく開いて、飛びかかってきた。明らかにおかしい。
 まるで何かに取り憑かれているかのように、妹紅の声を全く意に介さない。
 妹紅は即座に、正邪を抱きかかえ、竹林の暗闇へ飛んだ。そして、正邪を中に包むようにして地面に転がる。
 ガチン! という歯と歯とがぶつかる音が響く。

「お前!」
「……うぇ」
「お前だよお前、天邪鬼!」

 妹紅が惚けている正邪の頭を叩きまくる。ペシペシペシペシ。
 ペシペシペシペシ――とようやく正邪がハッとした顔をする。

「痛い! 人様の頭をそんなに殴るな!」
「そこは天邪鬼様と言いなよ! じゃなくて!」
「天邪鬼様の頭をそんなに殴るな!」
「訂正しなくていいから! ――で、見ての通り一大事なわけだよ。そこでいきなりで悪いけど、あんたのさっきの力を使って欲しい、是非」
「…………っはあ」
「なぜここでため息」
「いやね、貴様は天邪鬼のことを判っているようでいて、実は判ってはいなかったのだなぁ、と思って」
「はあ?」

 本気の「はあ?」だった。つまり、『一大事だと言っているのに、何を語っているのだコイツは』という意味である。

「いやいや、重要なことだぞ、これは。そんな風に頼まれたら、やりたくなくなってしまうだろう……が」
「じゃあ、いいや。あんたみたいなのに頼ったのが悪かったよ」
「ぐっ……! そんなことを言われるとやりたくなってしまう……!」
「…………はは」

 ちょろかった。正邪を煽てるのは、豚を煽てるよりはるかに簡単だった。妹紅には豚を煽てた経験なんてもちろんないが。

「よし、じゃあ行け!」
「おう!」

 そうしてようやく、二人は立ち上がった。若干乗せられている感を感じなかった正邪でもないが、ここで反旗を翻すほど乗りが悪くもなかった。そもそも、正邪も一大事なのだから、助力協力は当たり前だった。いや、このまま本当に逃げだす手もあったのだが、どうせそんなことをしても仕方なかった。
 そして今現在、影狼は慧音と交戦していた。戦局は、影狼優勢といったところ。だが慧音も、負けじと戦いに力を尽くしている。はっきり言って慧音は正邪の嫌いなタイプだったが、結構どうでも良くなっていた。

「あいつは――今泉影狼という、人狼だ」
「人狼? だったらなんで――」
「そう、どうして自我がないんだろう。いや、変身すると自我を失うタイプもいるそうだけど、影狼はそういったタイプの人狼じゃない――はず」
「……まあ、何でもいい。差し当たっては、あいつを抑えれば良いのだろう?」
「ああ。下手に傷つけられない」

 妹紅が首肯する。
 実を言うと、正邪の体はまだ本調子ではなかったが、それなりには回復していたので、正邪は叫んだ。叫んでもいいだろうと判断した。

「おい! ポンコツオオカミ! 頓珍漢の珍竹林! お前のかーちゃん、ハクビシンー! 悔しかったら私にお前の歯型を刻んでみやがれー! わっはっはっはっは!」
「「…………」」

 妹紅はまだしも、慧音の空気までもが凍りついた。白熱の戦いの最中、空気を凍りつかせられた人の気持ちは一体どんなものなのだろう――台無しである。
 そのくらい、やっすい挑発だった。そこらへんの雑草と等価といっても差し支えないくらいの安物だった。いや、雑草は健気に生きている分、まだ価値があったかもしれない。
 しかし、二人の反応とは裏腹に、影狼には十分に効果があったようで、慧音とのバトルをやめて、正邪の方を向いた。

「グルルルルルルルッ」
「わ、わお」

 影狼さんは怒り心頭のご様子。ここで注釈しておかなければならないのは、普段の彼女はこんな底辺に安い挑発を受けるような知能の低い娘ではないということだ。
 当然そのまま――影狼は正邪に向かって飛びかかる。

「ふっはっ、甘い、甘いぜ!」

 謎のセリフを放ち、正邪は手をかざした――というより、渾身の力で持ち上げた。
 「ふっはっ」とは、力を込めた時に出た声である。
 そして――

「―――――!?」

 影狼は声にならない、おそらくは悲鳴を上げて――前後が反転した。影狼の鼻が慧音の方を向く。
 次に、上下が反転した。これで影狼は逆さまになって、地面にグシャリと落ちる。
 本来はこの二つで十分だったのだろうが、正邪の性格の悪さが災いして――いや、功を奏して、最後のおまけに――

「とりゃあー!」

 蹴りを入れた。その綺麗な飛び蹴りは、影狼に直撃して。
 そして、ケリがついた。


 ◇


「いやいや、その節は大変申し訳ございませんでした」
「いやいや、その節って言っても、ついさっきの事なんだけどね」
「い、いやいや、先日はお世話になりまして」
「い、いやいや、先日じゃなくてたった今さっきよ。お世話は確かにしたけども」
「い、いあいあ」
「……くとぅるふ?」
「……うわあああああん!!!」
「ちょ」

 結局――オオカミ体の今泉影狼は、拘束したあとすぐに、変身が解けた。
 満月がおやすみし、太陽がおはようした。つまり夜明けが到来したからだった。
 オオカミ体の影狼からは想像もつかない人間体の姿に、正邪は驚愕した。
 あのむさくるしく理性のトんだ獣の正体が、実際は可憐で理性に富んだ少女だったのだから。……とは言っても、少し天然なところもあるようだった。文字通り、二重の意味で、天然記念物である。
 そして今、影狼は妹紅に泣かされていた。

「あー、いーけないんだ、いけないんだ! せーんせーに、いっちゃーお!」

 正邪が懲りずに安い挑発を妹紅に仕掛ける。手馴れたものである。

「おいこら天邪鬼、お前が言うな! ……ああ、影狼、泣かないでよ。私が悪かったよ」
「違うわ、私が悪いのよ。でも私は悪くない……つまりどういうこと? ねえ、どういうことなの?」
「い、いや、誰も悪くない。そういう類の話じゃあないんだよ――ねえ慧音、助けてよぅ」

 泣きじゃくる影狼に困り果て、妹紅は慧音にSOSを出すが。

「悪い妹紅、私は今迂闊に動けないものだから」
「あ……そうだったね」

 慧音はハクタク体で満身創痍だったことが仇となり、人間体へ戻った時の反動が多少なりともあった。言ってしまえば、竹に凭れかかり、動けない状態だ。
 ちなみに正邪は、慧音の姿が人間になったことにも驚愕していた。

「慧音をやったのも、私なんでしょう? ねえ、そうなんでしょう?」
「それはその……そうだけど」
「やっぱり……! 私、悪い狼娘だったのね! うわああああん!」
「ああ、もう……」

 もうどうしようもない、と妹紅には判っていた。こうなってしまっては、あと一週間はこの状態だろう。しかしそれは裏を返せば、一週間も経てば影狼は元の通りに戻るということである。

「まあ、たまにはいいかな――ところで影狼」
「な、何かしら?」
「どうしてそうなったか、覚えてない? なんでもいい。あんなの……妖力の塊だったよ。影狼、貴方には悪いけど、貴方はそんなに妖力のある妖怪じゃない。あんな状態、普通はあり得ないのよ」
「はっきり言うのね……んーと」

 影狼は頑張って、思い出そうとした。具体的には、脇を閉めて両手で頭を抱え、上下にゆすった。その動きはとてもちんまりとしていた。

「んーと、ね……あ、そうだ。私、昨日はなんだか最高にハイになって、誰かを襲いたい衝動に駆られてたんだ……って引かないで、引かないで!」

 妹紅と慧音が影狼に心から一定の距離をとっていた。気持ちの上で、影狼はそれを感じ取った。正邪は特にジェスチャーを使って引いていることを示していて、逆に演技じみていた。実際ただの挑発なのだが。
 その空気感は、「うわーまじか、影狼ってそんなにアブナイ娘だったのかー」というものだった。

「いやいや冗談だけど」
「…………ぐすっ」

 また影狼は泣き出しそうだった。

「ごめんごめん。悪乗りが過ぎた。それで?」
「うう……ひどいよぉ、いじめだよぉ……。うん、それで、なんでか全能感に浸っていたんだけど、そこに魔法使いが来て……私、なぜか宣戦布告しちゃって」
「魔法使いって、白黒の?」
「うん……まあコテンパンにされたんだけど。でもまだ酔いから醒めてなくって、次にメイド、次に巫女が来て、私は同じ工程を経たわ」
「なんと」

 ここで驚いたのは正邪だ――なぜなら、妹紅に話した通り、その三人とは正邪も相見え、闘っていたからだ。そして、同じように、負けた。惨敗した。
 そこで正邪は、ああそうかそういうことか、と納得した。
 だから、正邪は逃げる体制を整え始めた。

「なんだあんた、何か分かったの?」
「えっ」

 なんだこいつ、察し良すぎだろ……と正邪は口から漏らしそうになったが、何とか堪えた。
 まあ、何の問題もなかった。もう少しだけ、準備をできれば良かった。

「う、うむ。分かった」
「本当? テキトーに言ったんだけど」

 お前はサトリか、と正邪は内心でツッコんだ。

「さっきの話、だよ」
「さっき、と言うと」
「異変について、だ――そう、我々が昨日敗れるまで、打出の小槌により幻想郷を転覆させようとしたことは言ったな?」
「何だと!?」

 慧音の発言。正邪は知らないことだが、彼女は人里で寺子屋の先生をしている。そしてその科目は歴史だ。ハクタク時には幻想郷の歴史も編纂している。しかし、そんな異変、彼女の知る歴史のどこにもなかったのである。
 当たり前だ、歴史上の出来事とは、すべて終結したもの、過去を指す物なのだから。昨日の、今月の編纂時点では、まだ異変は現在進行形であった。だから、慧音は正邪の起こした異変を知ることがなかった。

「まあまあ慧音。それ以上動くと、職務に支障が出るよ」
「む……まあ、いいが」
「はい、すまんね。続きどうぞ」
「……私もそうであったように、小槌の代償というのは、どうやら小槌が幻想郷中の弱者に力を与えることだったらしいのだ」
「はん……つまり?」

 妹紅が先ほどとは打って変わって、鋭い目つきで正邪を睨んだ。いや、これでは最初の方に戻って、と言った方が適切か。とは言っても、最初の方の『鋭い目つき』とはだいぶ様相が違う。

「つまり……そのお嬢さんが凶暴化したのは、小槌によるもの――もっとつめれば」

 ここでようやく、正邪は後悔した。
 ああ、あんなことやっぱり、人間に言うべきではなかった、と。
 もう、どうにでもなれ!

「我々の所為、というわけだ」
「ご名答。じゃあ――」

 妹紅が火球を左手から出す。最初と同じだ。

「分かってるよね?」
「ああ――」

 「分かってる」を引き金に、「よね」を聞くか聞かないかのうちに。
 正邪は、走り出した。

「逃げるんだよォォォーーーーーッ!」

 しかし妹紅は、すぐに正邪について飛んでいく。そうすることが予め分かっていたかのように。
 飛びながら、影狼と慧音からそう離れていない地点で叫んだ。

「ちょっとだけ待ってて! すぐに戻るから!」

 鬼は逃走、不死鳥はそれを追って飛び去り、ワーハクタクとワーウルフが二人きりで取り残されたのだった。
 はあ、と慧音がため息を吐く。

「全く、妹紅の奴は……しょうがないな」
「? どういうこと?」

 影狼が首を傾げて尋ねる。

「妹紅は、優しい奴だってことさ」


 ◇


 走る。
 走る。
 走る。
 跳ぶ。
 走る。
 跳ぶ。
 その繰り返し――そんな単純な繰り返しで、いとも簡単に体力は底を尽く。

「はあ……はあ……」
「なんだなんだ、鬼ごっこはもう終わり?」
「う、うる……はあ……さいな……げほっ」
「そんな恰好で言われても、何も怖くないね」

 正邪は――仰向けで倒れていた。
 完全に無防備な状態である。

「今私がここで、あんたを丸焼きにすることも出来るんだけどね」
「……どうとでも、しろ」

 本音だった。詐欺師は追いつめられれば追いつめられるほど、嘘に嘘を、詭弁に詭弁を重ねるというが、天邪鬼はそこまで強かではなかった。
 だからこそ、下剋上なんて無茶な真似、したのである。

「ああ、そうだ。あんたに言おうとして、忘れていたことが一つあったね」
「……何だ?」
「――天邪鬼は似てるよ」

 そう妹紅に言われて、正邪はようやく思い出した。
 何に? と問おうとした時に、妨害が入ったのだった。別に正邪としては、特別知りたいとも知りたくないとも思っていなかったから、放置していた。そして忘れた。
 しかし今となると、冥土の土産には丁度、そんな他愛のない物がお似合いかもな、と思い、尋ねた。

「何に、だ?」
「人間に、よ」

 一瞬正邪は、爆発したかと思った。
 もちろん爆発と言うのは比喩で、本当に爆発したわけではない。
 比喩的に、正邪は爆発した。

「な、なな、なんでよりにもよって――」
「あんた、ずっと迷っているんでしょう。あっち行ったりこっち行ったり……竹林で迷子になってる人間そっくり」
「…………!」

 図星と顔に書く正邪。
 それを見つめながら、妹紅はしゃがみ込んだ。

「だから、さ」

 突然、ずい、と妹紅が正邪に顔を近づけた。少し動けば鼻先が当たってしまうのではないかというほどの近距離。

「なんなら私が、導いてあげよう。迷わないように、さ」
「なぜお前なぞに……」
「だって私……」

 妹紅は立ち上がって正邪に手を差し伸べた。

「竹林の案内人だからね」
「…………」

 正邪は。

「はん……」

 ここで初めて、『笑み』を零した。

「じゃあお願いしたいね、是非とも」
「なあに、お安い御用よ」

 そう会話を交わして、正邪は手を上げた。妹紅はそれを手に取り、正邪を引き上げて背負った。

「道に迷うのも、嘘を吐くのも、道具に頼って強くなるのもそれでダメになるのも――心と行動が一致しないことがあるのも、人間だからさ」
 どうも、神社音です。九作目です。
 お読みいただき、ありがとうございます。

 迷って困っている正邪のお話でした。
 素直に道が訊けないのです。かわいい。

 お分かりとは思いますが、弾幕アマノジャクの件は今回想定されていません。
 弾幕アマノジャクが発表される前に書き始めたためです。
 まさかあんなことになるとは……。あんな風になるとは予想できませんでした……。

 まあ何はともあれ、楽しんでいただけたら何よりです。では。
神社音
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そして影狼がみょんに可愛かった。まさしく残念びZ(ピチューン
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アマノジャクじゃ、どう考えても、もこたん手抜きだしね…
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