Coolier - 新生・東方創想話

お嬢様の16ビート

2010/02/27 01:59:50
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週間文々。コラム 
~突如出現!?彗星の如く現われた、謎のバンドの正体に迫る~



「レミリア☆ウー☆スターズ」と言えば、今や、幻想郷で知らない者はいないと言われる程の、超人気バンドである。
うら若き少女のピュアな気持ちを歌った「私の恋は納豆飯」で鮮烈なデビューを果たした同バンドは、その後立て続けにヒットを連発。
最近ではシングル「血みどろララバイ」が100万枚の売上を達成した事も記憶に新しい。
幻想郷で名高い音楽評論家である八雲紫氏も、同シングルに対し「バンド名に星が3つも入っているだけあって流石のクオリティね。星3つだけに!」という絶賛のコメントを残したほどだ。
また、作詞担当の十六夜咲夜氏には、他音楽ユニットからも詩の依頼が舞い込んでいる。
ボーカルの小悪魔氏にも、バンドとは別にソロデビューの話が持ち上がっているらしい。
押しも押されもしない文字通りの「スター」となった彼女たちは、今日もライブ活動へ向け、忙しく西へ東へと飛び回っている。
そして、来月にはニューアルバム「KANNOKE―魔性の寝心地―」も発売予定だ。
こちらのアルバムも既に予約が殺到しているとのこと。
当分、レコードの売上上位を彼女たちが占める日は続きそうである。

一体、彼女たちの人気の秘密は何処にあるのか。本誌記者が迫った。


―――今日は、ご多忙の中取材に時間を割いていただき、ありがとうございます。

レミリア(以下:レ):私たちのことをもっと知ってもらえるいい機会だもの。拒否する理由なんてないわ。

―――なるほど。それを聞いて私もほっとしました。ではまず「レミリア☆ウー☆スターズ」を結成したきっかけを教えていただいてもよろしいでしょうか?

レ:そうね。全てのきっかけは、貴女もよくご存知の巫女だったわ。

―――というと、紅い方でしょうか。それとも緑の?

レ:紅い方に決まっているでしょう。神の目盗んでまで、緑の方と会わなきゃならない義理も理由もないわ。

―――失礼しました。それで、巫女がバンド結成のきっかけとは、どのような意味でしょうか?

レ:貴女もご存知の通り、霊夢はとても魅力的な少女よね。

―――たしかに、霊夢さんには何か言葉にし難い魅力がありますね。

レ:私も、そんな彼女の魅力に取り付かれた一人なのよ。バンド結成を決めた日も、私は彼女に会うために神社へ赴いていたの。

―――ふむふむ。

レ:でも、知っての通り、彼女はあらゆる人や妖怪から愛される、超人気っ子だわ。つまり、私に限らず狙っている者はとても多いの。だから、私は出来る限り早めに手を打とうと思って、あの日こんなことを聞いてみたのよ。

―――何を聞かれたんですか?

レ:「私のことどう思ってる?」って。それも、今までこれを見て落ちなかった者がいないほどの、特上の笑みまで浮かべて。でも、霊夢は流石ね。普通なら顔を赤らめたりするものなのに、別段慌てるでもなく、落ち着き払った様子で言ったの。私たちの運命を変える一言を。

―――おお!核心部分ですね!それで、霊夢さんは何と仰ったんですか?

レ:「幻想郷中を飛び回りなさい。そしてドラムスを叩くのよ」……この言葉がきっかけで、私は紅魔館に住む者たちと、バンドを組む事にしたの。

―――何と!霊夢さんは、レミリアさんたちに音楽の才能があることを見抜いていたわけですね!?

レ:ええ。今思えば、そうだったのでしょうね。

―――なるほど。それがきっかけとなり、バンド結成に至ると。

レ:最初は本当に出来るのか半信半疑だったけど、やってみるとこんなに楽しい事はないと思えたわ。ミュージシャンは、私たちにとってまさに天職だったのね。

―――それは、今のご活躍ぶりを見ていれば良く分かります。

レ:ふふっ。ありがとう。とにかく、霊夢がいなければ、私たちはバンド活動をしようなんて、未来永劫考えなかったでしょうね。

―――分かりました。ですが、何故レミリアさんがドラムだったのでしょう?

レ:どういう意味かしら?

―――バンドの花形と言えば、ボーカルやギターと言ったイメージが強いので。勿論ドラムも重要なポジションなのですが、ステージの奥にいることもあって、普段のレミリアさんのド派手なイメージとはちょっと違うような気がしていたんです。

レ:ふむ。貴女の言いたいことはよく分かったわ。たしかに、私は自らカリスマを自負するだけあって、今まで色々と派手な事にこだわってきたもの。傍から見れば、ドラムというのは意外なポジションかもしれないわね。

―――では、何故今回はあっさりと巫女の言う事を聞いたのですか?

レ:自分の担当がどうしてドラムなのか。私も貴女と同じ疑問を持って、色々考えてみたの。そうしたら、答はすぐ出たわ。……それは、私が紅魔館という場所における主だからよ。

―――主だから、ですか?

レ:ええ。主というものは、一見すると目立つし、権限のある者。でも実際は館内のことを全て把握し、管理しなければならないし、館の者が外で何かしでかした際には、その責任だって取らなければならない。派手な顔の裏側で、主は主なりに苦労しているものなのよ。

―――主は、名実共にその場を支えなければならない立場にいる、というわけですね?

レ:ええ。だからこそ、霊夢はドラムを勧めてきたのだと思うわ……ドラムは、一見するとそこまで目立つポジションではないけれど、その実曲のリズムを刻んだり、場面によって曲に緩急をつけたりと、役割が多いの。当然、責任も大きいわよ?周りがどれだけ頑張ってくれても、肝心のリズムがガタガタになるようじゃ、良い演奏にはならないもの。

―――役割の多さと責任の重みいう意味で、主という自らのポジションと被る、と。

レ:そういうことね。人間のくせに、そんなのをあっさり見抜いちゃうんだから、あの子には恐れ入るわ。

―――ふむ、深いですねえ。では……



そこまで読んで、魔理沙は「ほお」と感心したように呟いた。
彼女が来ているのは、毎度おなじみ博麗神社。
今、魔理沙のバックでは「血みどろララバイ」のカップリング曲である「ナイフでチャチャチャ!」が控えめな音量で流れている。
ちなみに、霊夢のレコードプレーヤーは、レミリアからもらったものだ。
「こんなものよりお賽銭くれればいいのに」と言いながら、霊夢も新しい機械を貰ってまんざらではないようで、毎日のように曲を聴いているのだった。

縁側に座って新聞を読んでいた魔理沙は、くるりと居間へ向かって振り向くと、お茶を淹れていた霊夢に向かって声をかける。

「すごいじゃないか、霊夢。レミリアに音楽やるように勧めたの、お前なんだって?」
「別に。そんなんじゃないわよ」

ニヤニヤとした表情を浮かべながら聞く魔理沙に対し、霊夢はそうそっけなく返す。
魔理沙はあくまで笑いを浮かべながら、読んでいた記事を指差して言った。
「いやでも、お前、ここに書いてあるだろ」
「どれ?……あいつ、どうやったらあの台詞がこう聞こえるのよ」
魔理沙から新聞を受け取り、記事に目を通した霊夢は、心底呆れたというような表情で言った。

「前からおかしいと思ってたのよ。バンド始めたのは私のおかげとか……。私、何にも身に覚えがないのに」
「だけどお前、レミリアの音楽才能とか見抜いてたんだろ?」
「見抜けるわけないでしょうが。いくら何でも、私の勘はそこまで鋭いものじゃないわよ」
頭痛を堪えるかのように、頭を抑えてそんなことを言う霊夢。魔理沙は、訝しげな顔で霊夢に訊ねた。

「? 何やら訳がありそうだな」
「訳も何も、ねえ」
霊夢は、げんなりとした声を出しながら、そんな風に言った。
徐々に表情を興味深げなものへと変えつつ、魔理沙は霊夢へ問いかける。

「何だよ。人気バンド結成の本当のところ、詳しく聞かせてくれ」
「……いいけど。期待するほど面白い話じゃないわよ?」
「もったいぶられると、余計に期待しちゃうぜ?」
「勝手にしなさい。まったく」
わくわくとした顔を浮かべる魔理沙に、霊夢は『仕方ないなあ』という表情を浮かべる。
そして、お茶を一口啜ると、事の真相を語りだした。

「あの日は、レミリアだけじゃなくて、やたらと色んなやつが遊びに来たのよ。萃香とか、天子とか。もっとも、そういう連中は暗くなる前には帰っちゃって、最後まで残ってたのはレミリアだけだったんだけど」
「ふむ」
「で、私は、あんたももう暗いから帰れっていうつもりで、レミリアに声をかけに言ったの」
「なるほどな。それから?」
「そしたらレミリアのやつ、にぱーっとした無邪気にも程がある笑みを浮かべながら聞いてきたわけ。『私のことどう思う?』って」
「ちょっと待て。この記事だと『落ちない者がいないほどの笑み』ってなってるんだが」
ここまで静かに聴いていた魔理沙だったが、その霊夢の言葉に思わずツッコミを入れてしまう。
それはそうだろう。まるっきりとは言わないが、かなり記事に書かれている事とは違うのだから。
しかし、霊夢は別段魔理沙の言葉を気にする風もなく言った。
「そりゃ、ある意味そうよ。あの笑顔で『霊夢、このおもちゃ買って~』とか言われたら、私だって断りきれるかどうか」
「『落ちる』って、そっち!?……まあ、あいつにそんな妖艶な笑みは浮かべられないだろうと思ってたが」
「良いかしら?続けるわよ」
「あ、ああ」
こりゃ、この記事はかなり信用ならんぞ、と魔理沙はしっかり霊夢の話を聞く体勢を取る。
霊夢はこほん、と空咳を一つ打つと、再び話し出した。

「とにかく、どう思うって聞かれたからには、別段嘘ついたりするのも変だし、素直に答えるものでしょ?」
「ああ、まあ普通はそうだなあ」
人によってはおべっか使ったりするだろう、と魔理沙は思ったが、敢えて口には出さなかった。
相手が悪魔だろうが神だろうが、思った事を思ったように言うのが霊夢だと知っているからである。それに、今はとにかく真相を聞くのが先だ。

霊夢は、そんな魔理沙の心中を察することなく続けた。
「うん、やっぱりそうよね。だから私は、レミリアに向かってこう言ってやったの」
「『言ってやったの』って時点で、既に嫌な予感しかしないんだが。『幻想郷を飛び回りなさい。そしてドラムスを叩くのよ』じゃないのか?」
「そんなこと言うわけないでしょうが。あいつ、私の言った事を180度間違って受け取ってるの。私はただ、こう言っただけなんだから」
いよいよ核心だ、と思わず身を乗り出す魔理沙。
霊夢は一つ息をつくと、魔理沙に向かって、あの日レミリアに放った言葉を、そっくりそのままの形で言った。





「『あんたはとんだドラ娘ね』って」





魔理沙は、思わず固まりながらも、何とか一言だけこう呟いた。
「……まさかそれが……」
「そのまさかよ……」
霊夢は、後ろで鳴っていたレコードプレーヤーを止めると、お茶を一口啜るのだった。

その後、「レミリア☆ウー☆スターズ」は伝説のバンドとなり、永く語り継がれることになるが、それはまた別の話である。
続きません。



音楽詳しくないので、実情とは合ってないかも。
というか、本当色々とすみませんでした。



※前回コメで指摘を頂いた「小悪魔の日記にお茶漬けのことがない」という件ですが、あれは「粗食」という表現で表されています。
粗食=質素な食事=三食お茶漬けということで。
ワレモノ中尉
http://yonnkoma.blog50.fc2.com/
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コメント



0.910簡易評価
3.60名前が無い程度の能力削除
相手の気持ちを聞いてるのに音楽と結び付けるとは……
やや強引な展開な気がしますが、レミリアのバンドは聞きたい!!
15.100名前が無い程度の能力削除
普通にわろたwwwなんだそりゃwww
18.70ずわいがに削除
レミさんwww
まぁ紅魔館の面々ならまずビジュアルだけで十分売れるかな