Coolier - 新生・東方創想話

あやや

2010/01/23 16:59:12
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「よろしくね、文」
「よろしくね、阿弥」

 そんなオウム返しから、二人の時計は動き出した。
 妖怪を恐れない人間と人間の情報を欲する妖怪の、歩幅の違う二人の時間が、この時からゆっくりと。






 風の噂に聞くまでもなく、人里に居る阿礼乙女のことは有名であった。

 転生を続け、一度見たものを忘れないという変わった人間。それに文が興味を持ったのは、本当になんとなくであった。
 いつか会ったら話でもしてみたいななどと、随分と長いこと思い続けた。それこそ、確か5~6代目の辺りから。
 けれど縁がなく、また会いに行こうというほどでもなく、遠くから見ることさえ文はしなかった。

 そんなある日、木の葉の舞う風が緑の匂いを乗せる頃、稗田も八代目になって少し経った日のこと。

 文が空を目的もなく飛び回っていると、身一つでお供も連れずに歩いていく一人の少女を発見した。
 その物怖じない歩みっぷりが面白くなり、つい文はその少女を脅かしてみたくなった。それなので、わざと翼の音を立て、少し羽などを撒いてみながら少女のすぐ目の前へと降り立ってみた。

 どんな反応をするだろうか。そうは思って少女の顔を見れば、少女は歩いていた時の笑顔のままであった。
 見た目だけで言えば、文とは歳の離れた妹とでもいうような幼さ。実際に歳はどこまでも離れているが、それはそれ。

「こんな所を一人で歩いて、なかなか不用心ですね。天狗に浚われますよ」

 少しキツ目の目線で、流すように睨んでみる。
 すると、文をジッと見つめていた少女は、やがてにはっと破顔した。

「そんな日もあります」

 良く判らない自信に満ちた良く判らない返答。つい文の方が面食らってしまった。
 それから、途端に文はこの変な少女がむずむずと面白く感じてきて、にぃっと頬で笑った。
 すると少女は文のことを頭から爪先まで眺め、ことさら微笑みながら問い掛ける。

「あなたは天狗ですね」
「あなたは人間ですね」

 少女の言葉を聞いた直後に、文は被せるように言葉を投げる。
 そしてまた、二人は笑い合う。

「初めまして。私は稗田阿弥と申します」

 名乗られて、文は一瞬真顔になる。
 そうか、この娘があの稗田か。
 これはようやく縁が重なったかと、面白くなった。

「初めまして。私は射命丸文と申します」

 少し遅れた山彦で挨拶を返す。

「あ、同じ名前。奇遇ですね」
「そうですね。字は違いますが」

 お互いの字を教え合う。そこで、文は阿弥の漢字を知っていたが、阿弥はそれで文で「あや」と読むのだとしきりに感心していた。
「なるほど。判りました。文」

 ビクリと文の背中の羽が震え上がった。
 文は初めて、会ったばかりの人間に呼び捨てにされた。
 一瞬だけ表情が抜け落ちたが、すぐにまた天狗特有の、優しげで、でも少しだけ相手を見下した笑顔を作る。
 一方の阿弥は、にこにこした顔のまま動かない。文が何か言うのだろうかと、ただぼうっと待っていた。
 恐ろしくはない。それは無知からか? それとも妖怪など恐くないという慢心か? それとも妖怪を知って尚恐れないのか?

 ゾクリと走る興味。軽い鳥肌。まだろくに生きていない少女の、この無邪気な強さに惹かれた。

「あなた、稗田の娘っていうと、見たものを忘れない程度の力を持っているって聞きますが」
「はい。見たものは忘れません」
「なるほど」

 胸を張るでなし、謙遜するでもなし、少女はなんともなく言葉を吐き出す。
 ただそのままに。

「ところで、妖怪は人を襲いますし食べることを知っていますか?」
「はい」
「そうですか。それで、私だって人は食べますよ?」
「はい、承知しています」
「そう。なら、あなたは私が恐くないの?」
「どうなんでしょう」

 笑顔のまま、何も変わらず、恐れも、怯えも、諦めも、何もない顔で告げてくる。

 頬が薄く撫でられる様な感じに、文は総毛立つ。
 驕っているのかしら? 幻想郷の妖怪は、幻想郷の人間を襲わないと。

 そう思うと、笑顔のまま、文の頭の中の何かが引きちぎれそうになった。

 今此処で爪だの牙だの剥いて見せようか。腕に噛み付いて見せようか。皮膚を裂いて見せようか。
 悪い気が起きる。
 苛立ちと興味がふつふつと沸騰して、頭の毛がざわざわと逆立ちそうになる。

 この子、面白い。

 文の好奇心が激しく少女に突き刺さる。

 その殺気に似た好奇の視線に、少女は怯まない。

「食べてあげましょうか? 指先の一つでも」

 文の珍しいほど剥き出しな殺気。それを受けて、阿弥は困った顔を浮かべた。

「痛いのは好きじゃないですが、命を助けて頂けるのなら指一つなら。あ、左手にしてくださいね」

 文は軽く眩暈を覚えた。

 袖を捲り、左手を突き出す少女。
 痛みに泣くなら、まだ人の子らしい。そう思うと、噛み付いてやりたい衝動に駆られた。
 しかし、天狗は吸血鬼じゃない。しくじれば本当に指を噛み千切りかねない。

 悩む。この少女は里でも名の知れる稗田の主。不用意に怪我をさせるわけにはいかない。
 それでも、それを判った上でのこの暴言ならと思うと、文には到底この少女を許せなかった。
 ここまで誰かが自分を苛立たせたのは久しぶりだ。
 そう思えば、胸が躍る。

 文がそんな思案をしていると、阿弥は突然剥き出しの文の牙に自分の指を押し当てて、キュッと引いた。
 文の口に、人の血の味が揺れた。

 その血の味が染みるように、急速に冷めていく熱。理解が及ばず、頭がオーバーヒートしたかのような感覚。
 ふと視線を上げれば、阿弥の顔は笑顔だが、少しだけ憂いを帯びた様に文には思えた。
 阿弥はゆっくりと口を開く。

「そんな顔をしないで下さい」

 それは先程と何ら変わらない笑顔の声。けれど何故か、とても胸を締める、悲鳴のようにも聞こえた。

「私は生きていたい。でも、あなたたちが私を殺すことは仕方のないことと判っています。転生を続け、個人を識別する記憶はほとんどありませんが、幻想郷の在り方も、妖怪の在り方も、憶えているつもりですから」

 その言葉がトドメだった。
 文は、この少女の正体がさっぱり判らなくなってしまった。

「……初めて見ました。こんな、わけのわからない人間は」
「そうですか?」

 問うて首を傾げる。
 相も変わらずころころとした笑み。一瞬見せた寂しそうな色はもうない。

「くっ、あはははは。変な人ですね。転生続けて、魂がいびつになってるんじゃないですか?」
「かもしれません。でも、きっと、いびつなのは記憶だけですよ」
「そっちはいびつなんだ」
「そりゃぁもう」

 あはは。

 少女らは笑い合う。
 といっても、見た目が若い妖の者と、転生を重ねている者。どちらも見た目のままというわけではない。
 そのくせ、その二人の笑い顔は、やはり見た目相応なものであった。

 ひとしきり笑うと、二人はお互いの目を見る。
 阿弥はこれからまた歩んでいく。文はこれからまた飛んでいく。それがお互いに判るから、別れの言葉を言う為に。

「よろしくね、文」

 阿弥は笑顔で、屈託なく口にした。
 やれやれ、以後はどうも呼び捨てらしい。そう思うと、何故か文は心地好い諦めを憶えた。

「よろしくね、阿弥」

 二人してまた笑う。
 これが、二人の始まりであった。






 縁は一度結ばれてしまえば、腐ってもなお朽ちないもの。
 あれから別れて、文は今まで会った人間のことを思い出す。だが、阿弥の様な人間はいなかった。
 だから、興味は継続した。
 まだあの娘と話をしたいと思えていた。
 阿弥もまた、自分に話し掛けてきたあの妖怪にもう一度会って、もっと詳しいことを聞きたいと思っていた。

 お互いにそう思っていれば、引き合うのも道理であった。

「……あら?」
「……おや?」

 何故か二人は、里の茶屋で再会した。
 ネタ探しに人に化けて散歩をしていた文と、お団子食べたくなって散歩をしていた阿弥が、丁度同じ茶屋の椅子に腰を下ろしたのであった。

「此の間ぶりですね、偶然て恐いです」
「何か縁あったみたいですね。吃驚ですよ。こんにちは、文」
「呼び捨てだし。ま、いいでしょう。こんにちは、阿弥」

 一日来の友人は、なかなか馴れ馴れしいものであった。

「ところで、妖怪がふらふらと里に来ていいんですか?」
「大声で言わない、馬鹿」

 低い声で嗜めるように文は言う。

「化けてるのよ。ばれない様に」
「どこが?」
「見なさい、翼ないでしょう。それに着物や履物だって人里に合わせたんです」
「おー」

 阿弥は上から下までをジッと見る。
 翼がないという以外は普段となんら変わらない姿の文は、実に、ただの人間にしか見えなかった。

「なんか結構地味なんですね」
「そりゃね」
「化けてるって言うから、もっと姿形変えちゃう様な変化でもするのかと思っていました」

 煙が立ち上ってあっと言う間に知らない誰か。
 そんな忍者的なイメージが阿弥の中であった。軽いあこがれでもある。

「そんなこと気軽にできたら、妖怪がお互いに認識し合えませんよ」
「そうなの?」

 はぁと文の溜め息。

「どんな姿にでもなれないから、私のこの姿が文なんじゃないですか」
「へぇ、愛着あるんだ」
「そりゃあ勿論ですよ。あなたより可愛いですから」

 胸をポンと叩き、自慢げに。
 すると、阿弥は顎に指を当てて、んーっと考え事。

「でも、翼がない天狗ってまんま人ですね。羽の取れた蝶々みたい……想像したら可哀想になってきた」

 なんだかほろり。
 馬鹿にされたのか、それとも阿弥が馬鹿なのか、計りかねて、文は阿弥の頬に手を伸ばす。

「最初から羽のない尺取り虫が何を偉そうに」

 そして人差し指を口に突っ込んで引っ張った。

「いらいいらい、やえれー」
「ふふふ、不細工」

 けらけら笑う文。
 どうしたものかと真剣に考え、阿弥は文の指を舐めた。

「べちょ」
「ひゃあ、舐めた!?」

 突っ込んだ指を両方とも舐められて、思わず両腕を引っ込めた。
 阿弥は自分の頬をさする。

「かふぁ、あー……ほっぺに跡がつくかと思いました」
「ばっちいなぁ」

 文は自分の持っている手拭いで指を拭いた。べろんと一回舐められたので、少し鳥肌も立っていた。

 阿弥に舐められた指の匂いを嗅ぐと、あんこの匂いがした。気にしていなかったが、あん団子を食べていた様である。

 そのまま二人は隣に座って、だらだらと話を続けた。
 気の抜けたラムネのような会話が続く。

「文は何してるの?」
「私はみたらし団子にしましたけど?」
「そうじゃなくて、普段何をしてるのかってこと」
「ああ。もぐもぐ。言いませんでしたっけ? 新聞書いてますよ」

 一回で伝わらないような不親切な会話もお手の物である。

「へぇ。意外」
「なんで?」
「ずっと飛び回ってそうだったから」
「ネタ探して飛び回ってますよ」

 すると、阿弥は眉をひそめる。

「そうじゃなくてさ、なんて言うかな、好きに飛んで、帰ったら寝ちゃう様な感じかと思ってた」
「もしかして馬鹿にしてます?」
「あは」
「こいつは……」

 だらだらとした会話は、だらだらとした雰囲気のまま続き、そしてその雰囲気を継続させたまま終わっていった。

 こんなぬるま湯の陽気が、この日も延々と続いていった。






 二人が知り合って、時は何事もないように進んでいく。
 些細な何かに興味がないように、ゆっくりと、確実に。

 二人は互いに気まぐれであったから、一日の内に数度会うこともあれば、逆に数ヶ月会わないという場合もあった。

 そして、今日は雨。

「今日は会う確率がなくなりましたか」

 雨が降ると、阿弥は外に出なかった。
 だから、文とは会えなかった。
 未だに、阿弥が天狗の里に往ったことがないように、文も稗田の敷地に足を踏み入れたことはない。

「なんか、しばらく会ってないなぁ」

 今は梅雨である。

 既に何度も超えた雨の季節。
 だから、いくつも雨の日を超えたし、数ヶ月会えない日々も超えてきた。
 しかし、そんな日の中でたまに湧き出す会いたいという気持ちに直面する度に、綿菓子が喉に貼り付いた様な気持ちを起こし、少し雑に筆を振るって、蜃気楼の向こうで揺れる飛脚の様に、揺れて動く曖昧な絵などを落書きしてみては気を晴らす。
 溜め息は出ない。無論涙も出ない。

 さて、阿弥は妖怪の友などは文くらいのものだが、人間の友が少ないわけではない。なので、別段雨の日が特別暇になるわけでもない。
 ただし、ふと誰かに会いたくなる時がある。そう言う場合、自分と同じように言葉の水を湧かせ文字の河を作る文が、どうしてもすぐに浮かんできた。
 こういう時に代用は利かない。食べたいのはカレーライスであってハヤシライスじゃない。似たものに意味はない。本物じゃなければ駄目なのだ。

「文は新聞書いてるのかなぁ」

 自分も書かなければ。そう思いながら、筆がさっぱり進まない。

 雨音に耳を向ければ、あっと言う間に眠くなる。だけど寝たいわけじゃない。寝ては勿体ない。

 色々な思考が、怠惰にのたりのたりと巡っていく。

 話がしたい。妖怪について訊きたい。

「……文の羽が一枚欲しいですね」

 ちょっと蒐集家精神。
 そんなことを考えてから、あれ自分は何を考えていたんだろうと思い直し、いつの間にやら会いたい気持ちは霧散した。
 存外軽い。



 阿弥がこのように考えるように、文もまた阿弥に会いたいと思うことがあった。
 それは阿弥と偶然同じ瞬間に、などということはなく、お互いにてんでばらばらな時に会いたいと思うのである。

 阿弥が文のことなど忘れて歩き回る天気の良い日のこと、文は椅子に腰を下ろしてどうしたものかと考えていた。

「さて、新聞のネタ……そうですね。阿弥さんに訊きたいことがあったんでした。どうしましょうかねぇ」

 思い立ったが吉日な文にして、どうするかを悩むのは少し珍しいことであった。
 何故かは判らない。ただなんとなく、同じ人間に会いに行くことは避けたいと思っていた。
 もしかするとそれは、誇り高い天狗が特定の人間を訪ねるなんてという、負けん気によるものだったのかもしれない。

 気になれば行動するというのが普段の文なら、少しくらいモヤっとしても飛び出さない文は少々珍しい。
 そんな様子を見た椛は、文についつい訊ねた。

「便秘ですか?」

 その時、拳が動いた。

「あうっ」
「何ですか開口一番」
「殴らないでくださいよー。でも、だって、そんな顔してたから」
「してません。それ以上言うとデコピンしますよ」
「それはもっと痛いから嫌です」

 椛は少しぽあっとしている目尻を鋭く引き締め、文のデコピンを拒絶した。酔った文に何度かじゃれられて食らったデコピンは、それはもう痛かった。
 それから椛は文の寝台に腰を下ろして、足を投げ出す。

「今日はこれからどうしようか悩んでたんです」
「あぁ、里に往くかどうかですか?」
「……別にそういうわけじゃなかったけど、なんで里だって思ったの?」
「そりゃ見てれば判りますよ」
「そんなに顔に出てましたか」
「往ってきたらどうです。里へ。逢い引きだか片思いだか知りませんけど」

 椛はデコをピンされた。

「痛いですーーー!」
「何よ逢い引きって」
「隠さなくてもいいじゃないですか!」
「別に隠す気はないけど、どうして逢い引きなのよ。単純に気になる人間がいるだけ」
「片思いの方でしたか」

 薬指と人差し指の二連発。

「あうあう!? だ、だから痛いですってば!」
「だから違うっていってるでしょう。私が興味あるのは稗田阿弥よ」
「え? 女じゃないですか」
「だから逢い引きだの片思いだのじゃないって言ってるでしょう」
「……え、そうだったんですか? 私はてっきりどこぞ草むらででもしっぽりと」

 文はその言葉ににこりと笑みを返すと、立ち上がって寝台に近づく。
 びくりとして椛が立ち上がろうとするが、直後に眉間を掌で押されて立ち上がれない。
 そして椛を制したまま、文はゆっくりと椛の背後に回り、両足で椛の腹を捕縛した。

「そんな獣じゃあるまいし。第一はしたないことを、私がするとでも?」
「痛い痛い痛い痛い! 耳引っ張らないでください! 今日の文さん乱暴ですよ!」
「うりうり」
「尻尾撫でないでください!」
「はも」
「耳噛んじゃ駄目ー!」

 悪い天狗は、真面目な天狗を弄んで憂さを晴らしていた。

 げにこの世は世知辛い。






 無性に会いたくなる日が互いに存在する。それでも自分から会おうとしないのは、互いに阿呆だからなのかもしれない。

 初めて興味を持った人間が気になる妖怪。
 初めて自分に興味を持った妖怪が気になる人間。
 噛み合ってるようでちぐはぐな二人。

 そんなちぐはぐな関係は続いていく。

 お互いの凹凸が、埋まることはないままに。






「天狗って排他的らしいですね」
「はい?」

 挨拶の直後に阿弥が口にした言葉がそれであった。

 道で出会い立ち話を始めた直後、相変わらず突然投げられる話題に文は面食らう。
 しかしそこは生きた歳月もあり、すぐに文は元の笑みに戻った。

 二人が出会って既にいくつもの年を越えた。急な話題も慣れたものである。

 いつの間にか、阿弥の背は文に追いついていた。

「確かに余所とはあまり付き合いませんね。付き合う必要もありませんし」
「どうして?」
「私たちより強いのは鬼くらい。それに、私たちより賢い者となればそういない。簡単な話ですよ」
「なるほど」

 うんうんと阿弥は頷く。
 多少挑発の意味も込めての言葉だったのだが、反応は相変わらず暖簾に腕押し。
 そんな阿弥を見て、『はて、この子はどうやったら怒るのかな』と文は考えていた。
 何度もしてきたからかいに挑発に脅し。半分は演技で半分は本気だったそれらを、目の前の娘は普段通りの笑みで『そうですか』と頷くだけであった。
 まるで空気。悪意を持って突けば突くほど、阿弥の実体は捉え難くなるように思えた。
 一度くらい噛まないと駄目かな、などとも考え始めていた。

 どこか不穏当なことを考えていると、不意に突然阿弥がそんなことを訊いてきたのは何故なのだろうと思う。
 いつも突然な話題転換には発端があった。書物の中に妖怪のことが書かれていたから質問をした、夕餉に鶏肉があったから烏天狗は美味しいのかと疑問に思った等々。
 これにも何らか、天狗についてを知る切っ掛けがあったのだろう。

「ちなみにそれは誰に聞いたの」
「紫に聞きました」

 ピシリと文が固まる。

「紫って……まさか、八雲紫?」
「はい」

 肯定されてから、少しだけ文の顔が引き攣った。
 それから大きく溜め息吐いて、元の顔に戻す。

「あなた、なんであんな胡散臭いのと顔見知りなのよ」
「多少紛らわしい言い方になりますが、寝込みを襲われました」
「え、夜這いですか?」

 文の目が不穏当に輝く。

「違います。食べられてません」
「稗田阿弥を八雲紫が食べる、と」

 突然ネタ帳を取り出して書き出した文に、ピシリピシリと弱いチョップが入った。
 阿弥的には結構真面目に叩いているが、さすがに非力なのでネコパンチと大差ない。

「文。話を聞いて」
「手刀はやめてくれませんか」

 ピシリピシリとまだ続く。

 まだ続く。

 まだ続く。

「ええい鬱陶しい!」
「きゃー」

 やる気のない悲鳴を上げててたてたと距離を置く阿弥。

「雲みたいな性格してますよね、あなたって」
「そうですか?」

 にこにこ笑いながら、とことこと歩いて文の近くに戻ってきた。

「もう少し水のようなら、せめて突き入れた手が濡れたりはするんですけどね」

 文の言葉を聞きながら、阿弥は空を見上げる。
 表情は、どこか不満そう。

「雲は自由じゃないから嫌ですねぇ」
「そうですか?」
「えぇ。だって。風に逆らえないんですもの」

 阿弥の顔に微かに浮かんだ色は、苦々しい諦めの色であった。
 初めて見たように、文には思えた。

「阿弥、そんな顔できるんだ」
「え? 何がですか?」

 振り返った阿弥は、普段通りの掴み所のない笑顔に戻っていた。
 やや文も面食らう。

 そこで、阿弥はポンと手を叩いた。

「あぁ、そうだ。それなら私は文を喩えるね。文は、なんか自由に空飛び回ってるから」
「え、あ、うん」
「まるで魚だよね」

 文の目が思いっ切り丸くなった。

「……鳥、じゃなくて?」
「魚」

 豪語されると、文は頭を掻く。
 空を飛ぶから、どうしても魚には繋がらなかったのである。

「……なんで? というか、どういうこと?」
「だって、鳥は風がなければ、翼をあんなに忙しそうにばたばたしてないといけないんですよ」
「うん、まぁ、知ってるけど」
「でも、魚は自由。すいすい自由自在に上下前後左右。素敵だよね。文は空を泳いでるんだよ」

 想像したら、文は何か自分が溺れている様な気分になった。

「……なんか、褒められてる気がしないなぁ。私一応翼で飛んでるし、烏天狗なんだし」
「魚天狗」
「なんか嫌」
「えー」

 不満を伝える阿弥の言葉は、けれど笑顔から発せられ、少しも不満を含んでいる様には見えないでいた。

「と云いますか、それ本当に褒めてます?」
「褒めてるつもり」
「……本当に?」
「あははは」

 文は不服そうである。
 突き詰められると、それの真意に関わらず笑って誤魔化すのは阿弥の癖。だから、掴みづらくて仕方がない。

「いいなぁ、文は空飛べて」
「なんですか藪から棒に。また抱きかかえて飛んであげましょうか?」
「あれ恐いから嫌。文は空で手を離すし」
「涙目にさえならなかった人が良く云います」

 二人が会話すると、不敵に笑う阿弥と、呆れながら肩を竦め笑う文の構図が良く見られる。
 お互いがお互いをどう思っているのかを計れないまま、二人の距離を保ちつつ会話をしているのだから、変化は乏しい。

「さて、そろそろ帰って日記でも書きましょうか。今日も文との会話ばっかりで色気がないですが」
「何を失礼な……日記なんてしたためているんですか」
「えぇ、それはもう壮大かつ雄大で浪漫に充ち満ちた」
「嘘はいりません」
「実に平々凡々とした読み物に向かない内容の日記です」

 文のツッコミが鋭くなると、阿弥の回答も正確になる。
 こういう判りやすい扱いやすさが、文が阿弥の扱いを面倒に思わない理由になるのだろう。

 これで会話は終わりという様に、阿弥はくるりと背を向ける。
 それでもまた前を向き、ぱたぱたと手を振った。

「それじゃあね文」
「それじゃあね阿弥」

 応じる文は小さく手を振る。

 文の身長は変わらない。
 阿弥の身長は随分と伸びた。
 過ぎた年月は、事細かに思い出せないほど過ぎていった。

 それでも二人は、出会った頃と変わらない位置にいた。







 だらだら続く関係は、本当にいつまでも変わらずに続いていた。

 そしてそれは、文にとって、とても長く、延々と続く時間に思えた。

 しかし、当然そうはならない。

 阿弥が屋敷に籠もった。転生の儀をおこなうのだという。
 この後、冥界へ閻魔に挨拶に行くとも言っていた。

 数ヶ月会えない。そしてその数ヶ月が終わったら、阿弥と会える最後の数ヶ月が始まる。
 今更になって限りがあることを改めて思い出すと、なんとなく文は物寂しかった。
 初めて興味を持った人間。観察したい。話題が欲しい。
 懐いた猫が別の誰かに懐いたような、そんなやるせない気持ち。

 だから、文はごろごろとしていた。
 腹の奥にあるもやもやが、どういうものだか良く判らず、発散できないでいたのである。

「……不快」

 文はまだ、ここまで興味を持ち続けた対象を失った経験がなかった。
 そのくせ長く生きているものだから、宙ぶらりんな感情が今ひとつ理解しきれない。

「未熟ですかぁ」

 人より遙か長く生きて尚、まだまだ知らぬ自分のことは多いようであった。






「暇である」

 阿弥は試しに尊大に呟いてみた。
 実に楽しい。

 ここに友人の一人でもいたら、もっと楽しかったに違いない。

 しかし、孤独な中の楽しさは持続しない。
 やはり一人では限界がある。

「……暇ー。気分が折れるー」

 転生の儀をおこなう為のおこもり。決して疎かには出来ないとても大事な儀式。
 それは判っているが、暇はどうしようもない。
 何かを書こうと思うが、どうにも気が乗らない。行動を制限されると、こうも物事に手が付かないとは、阿弥は新しいことを学んだ。しかし少しも嬉しくはなかった。

「日記に儀式の事を細かく書いてもあんまり意味ないし」

 読み返して面白くなさそうなので大幅に端折ることにした。
 閻魔や死神に会うのはとても有意義で楽しいのだが、現世での儀式は三日に一刻の周期で延々と続く。儀式中に穢れを混ぜないという事で、まるで座敷牢に軟禁されているかの様な生活。屋敷を自由にうろつく事はできるが、外には一切出てはならない。
 にこにこ顏に不満を一滴。姿勢を正して筆を手に取り、一分と経たずに寝転がる。
 暇という全生命体の大敵は、か弱い阿弥を容赦なく噛み殺した。やる気が死んでいた。

「あー……こういう時には紫もちゃんと現れなくなるんだからなぁ。儀式中に妖怪と話しても別に問題ないわよ、とか言いながら来るかと思ったのに」

 実際に紫が現れたら阿弥は困るし焦るのだろうが、来ないと判っているだけに好き勝手が言えた。

 幼馴染に会いたい、散歩がしたい、茶屋に行きたい、色々調べて回りたい。
 そんな渾々と湧き続ける欲求の中に、文と会いたいという気持ちは埋没していた。
 一番長く触れ合った妖怪。種族が違うからか、最も気の置けない友人。
 けれど相も変わらず、阿弥が文に会おうとする気持ちは弱い。
 これは阿弥の癖であった。特別な誰かを持つ事を、無意識に避け続けていた。これは自分が死んだ後に悲しまれない為か、それとも自分が悲しまない為なのか、あるいはそれ以外なのか。それは、阿弥にさえ判らない事である。

「ひーまーだー」

 ひまだの阿弥は、ごろごろと情けなく転がり続けていた。






 おこもりは続いている。
 今日で既に三ヶ月。

 阿弥は一念発起して日記をしたため中。
 実際には起こっていなかった出来事を、さも起こったように書いている。
 人はそれをフィクションという。日記とは呼ばない。
 阿弥も薄々気付いている。

「……これはないですね」

 いつの間にか巫女が各地の異変を収める話になっていた。鬼まで出演させてしまっていただけでなく、なんとなく外の世界から巫女や魔女やら登場させてしまった。
 龍やら九十九神やらと知りもしないものを登場させただけあり、壮大な展開になりすぎたことは否めない。
 何より、日記なのに自分の出番がない。

「創作って楽しいですねぇ。でも後の恥になりそうなので後で燃しましょう」

 随分と大作になってしまった。異変の数も十数。連作である。

 ふぅと一息吐くと、冷めた番茶を飲む。

 私、何してんだろうね。

 自問して答えはない。
 もう時間はあまりない。やれることはもう残り少ない。
 だと言うのに、なんでこうものんびりしているのか。

 その理由は、阿弥も気付いている。

 不安だった。

 この先にどれだけ頑張っても、何も遺せないのではないかという不安が、阿弥の足を止めてしまっていた。
 終わるから遺したいのに、終わることが恐くて遺せない。
 矛盾しているが、割り切れないものであった。

「日記書かないとー」

 無論さっきの娯楽小説のことではない。

 それは、今生きた自分を記すもの。
 そして、未来に過去を伝えるもの。

 そこで阿弥は考えた。日記によって、過去になる自分の気持ちを未来の自分に届けようと。
 過去を忘れていても、感じていたことを思い出せば、未来の自分は今の自分に近づくかも知れない。
 そんな期待が、阿弥の筆を進ませた。

 思い付いたのは、十代の中頃。
 その頃から、阿弥は日々の出来事を記し始めていた。

 感じた事を感じたままに書き連ねれば、それを読んだ次の私に私が繋がる。そう信じて、今日まで書き進めてきた。
 ただ、最近になって迷いが出てきた。
 伝わるのか。そして、伝わったその感情は、本当に自分の感情なのか。
 そういう、不安と疑問。

 まだ考える時間はある。
 だが、もし不要となったのなら、自分の大切な時間が無駄になる。

 暇という豊かな時間の中で、阿弥の心はぐらりぐらりと不安定に揺らいでいた。






 長かった転生の儀は終わった。

 長い儀式の始まった時から今に至るまで、阿弥は色々と考えた。
 昔のこと、今のこと、これからのこと。
 残されている時間はもはやほとんどない。砂時計の上の砂は、見る見る間に落ちきってしまいそうである。

 20台の後半。阿弥にとっては晩年。

 御阿礼の子は、どういうわけか皆短命であり、30迄生きることが出来ない。
 20がもうすぐ終わるという年齢は、もはや何時死んでもおかしくはない年齢であった。

 既に阿弥の容姿は、文よりも年上に見えた。
 最初に出会った時と比べれば、反転してしまっていた。

 転生の儀の終わりから、また阿弥は外をふらふらと彷徨くようになった。けれど、もう編纂には手を付けないようにした。
 やり残して死ぬと、後々でまとめる人が難儀をすると思ったのである。
 言い訳だった。
 本当は、少しばかり何もないという自由を味わいたかった。
 編纂を止めてしまえば、正直なところ、もう阿弥に残された役目はない。

 手を閉じて、開いてみて、そこには何もなかった。

 初めて阿弥は泣きそうになった。
 自分の歩いてきた道を振り返れば、そこには稗田の役割しか残っていない。

 稗田阿弥は、いったい何処にある?

 その問に、阿弥は答えることが出来なかった。

 でも、もう時間はない。
 何かを残したいという願いはもう叶えられそうにない。
 不可能ではないと思うが、良い案は少しも浮かばない。

 だから阿弥は決めた。
 希望は、次代に残そうと。

 だから今は、ただただ、空を仰ぎ。

「死ぬってなんだー」

 叫んでみた。

「あははは」

 楽しいのかそうでないのか自分でも判らないまま、阿弥は笑っていた。

 私が私。次の私は、私じゃない私を生きないといけない。
 そうしないと、また稗田で終わってしまう。
 稗田でいることが悪いわけじゃない。でも、それじゃまた後悔する。

 この気持ちが残ればいいなと願った。

「あれ?」

 そこで、ささやかな違和感。
 自分が死んでから生まれる新しい自分。
 それは自分とは違う自分。
 その自分に、私は希望を乗せる。

 阿弥は、自分の中の矛盾に気付いた。

「……あっ。この日記、駄目じゃない」

 手にした日記は、とても冷たかった。
 また一つ、遺せないものが増えた。

「あはははは、何やってるんだろうなぁ。もっと早く、気付けば良かった」

 阿弥は笑う。楽しげに。
 そして、抑えきれない慟哭をこぼすように。






 阿弥は、子供のように自由に里の中を彷徨い続けた。
 そして知り合いに会い、適当に話して別れていく。
 そんな時間を過ごしていた。

「どうしたの? なんか怠そうじゃない」
「いわゆる一つの、寿命というやつでしょうか」

 着実に体力が衰えてくるのを、阿弥は日々実感していた。
 その衰えが良く判らない文は、阿弥の衰退を不思議そうに見守ってきていた。
 老人のように皺のあるわけでもない。だが、身体の内側は少し動くだけで悲鳴を上げる。

 短命が稗田の宿命だというのなら、せめて病で苦しまずに死ねれば良いものを。
 などと、ろくに病にも掛かったことのない阿弥が思う。
 単に愚痴りたいだけだった。

「人間は、妖怪よりも死と親しいんですね」
「私は嫌いだけどなぁ」
「仲好しに見えるんですけどねぇ」

 にはっと笑う文に、阿弥も笑顔を返す。

「でもやっぱり、私は嫌いだなぁ。死にたくないし」
「それは贅沢な望みですね」
「でしょう」

 誇らしげに阿弥が胸を反らすと、文は一層楽しげに笑った。

「そういえば、大きくなりましたね。阿弥は」
「そうだねぇ。私の方が文より大きいなんて、なんだかとても偉くなった気分」
「身長一つでえらく強気ですねこいつめ」
「あはは」

 転生の儀が終わってから、また今までのように阿弥と文は会っていた。
 会うというよりは、遇うという方がいくらか近いかも知れない。
 彼女らは最初の頃から寸分変わらず、お互いに約束を取り決めて会おうとはしていなかったのである。

 そして、28が終わりに近づいた今日。

 阿弥はなんとなく、自分の終わりに感づいていた。
 もう長くない。29はきっと迎えられない。
 そんな諦観が、腹の中でずっと渦を巻いていて、吐きそうな、眠たいような気持ちを延々抱え続けていた。

「ねぇ文」
「なに?」

 だから、それを告げる。

「たぶん今日で最後です」
「……あぁ、そっか」

 何のことかと少し首を傾げた文だったが、すぐに意味を覚ってうんうんと頷いた。

「次会うのは百年後ですね」

 溜め息一つ吐くだけ。
 阿弥にはそれが心地好かった。

 だけど、文のその温かな言葉は、否定しなければいけないと思った。

「いいえ、これっきりです。次にもし文と会う私がいたとしても、それは九代目で、私じゃありません」
「あぁ、そうね」

 文は阿弥の顔を見る。
 冗談のつもりでそんなことを言ったのだろうと思っていた。
 けれど、阿弥のいつもと変わらない緩い笑顔は、どうしてか、とても真剣なものに見えた。

「え? でも、転生なんでしょ?」
「巡るのは私の能力と、言葉を記す力だけ。私の意識も記憶も、ほとんど残りません」
「何それ。それって転生っていうの?」
「あは、言っちゃうみたいです」

 文は少しだけ驚いた。
 てっきり、死んでも死にきらないから、今までこれほどまで死に対して畏れを持たないのだと思っていたからだ。
 だが、そうでないというと、文の考えてた阿弥の人として何か欠けた状態の説明が成り立たなくなってしまう。

「はて、それじゃあ阿弥は、死ぬのがどうして恐くないの?」
「ええ。さっき言ったじゃない。死ぬの嫌いだし恐いよ」
「嘘だー」
「本当だー」

 二人揃って両手を持ち上げ威嚇のポーズ。
 二人は馬鹿だった。

 そんなポーズを取り合いながら、文は真剣な顔で訊ねる。

「本当の本当に、死ぬの恐いの?」
「それはもう、生まれた時から恐怖に打ち震えていました」
「だって、いつだって平気そうだったじゃない」
「何を仰いますか。私は死んではならない身。何時だって心は、薄ら氷の上を歩くかの如くです」

 緩すぎて緊迫感が一切伝わらない。

 けれど、その普段となんら変わらない態度を見て、文は阿弥が真剣なのだと今になって初めて気付いた。

 そしてようやく、阿弥が死に恐怖を見せない理由に感付いた。

 阿弥が初めて自分と会った時に怯えなかったのは、怖くなかったわけでも、たかを括っていたわけでもなかった。ただ、そんなことよりも、死んでしまうことが毎日毎日恐くて堪らなくて、すっかり恐怖が表に出てこなくなっていただけ。表に出して溢れてしまうことを恐れ、内へ内へ仕舞い続けた結果が、あの態度だったのだと。

 阿弥は決して強い子だったわけじゃない。むしろ、どうしようもなく弱くて、どうしようもなく孤独で、それでも必死に背伸びを続けた姿が、今のどこまでも底を見せない阿弥になっていたのだ。

「そっか。阿弥は死ぬのが恐いのね」
「はい。それでも、役目を終えてなら、転生の儀をおこなった今ならば……やっぱり恐いですね。でも昔よりはマシです。憶えのない八人分の重みが、私には少し重かったので」

 弱々しい背中。小さくて儚い。
 そんな背中が見るに耐えなくて、文は潤んだ唇を弾いて開いた。

「阿弥。私が食べてあげましょうか?」

 色々な感情が混ざった言葉。涙を胸の奥に流し込む阿弥の胸を貫いて、大泣きさせてやりたいと思った。他にも色々考えた。でも、ぐるぐる回ったおかげで、何が何やら区別がつかなくなってしまっていた。
 文の真剣な、そして何処か自分を憐れむ瞳の奥に、ごちゃごちゃとした纏まらなかった感情を見て、阿弥はそれが嬉しかった。

「あなたは優しいよね」
「それ、脅かしてる妖怪に言う言葉?」
「ごめん」

 阿弥は笑う。くすくす。楽しげに。
 釣られて文も笑う。くすくす。仕方ないなという様に。

「文が羨ましいな。いつまでも生きていられて、強くて」
「ありがとう。でも、私だって少しは阿弥が羨ましいのよ。私の新聞は今の為に書いてるものだから、広く読まれても明日には残らない。だけど阿弥は辿り着くことのない未来の為に書いてる。だから、いつまで経っても消えることはない」
「確かに、新聞はかまどにくべてしまいますね」
「……もしかして本当に噛み付いて欲しい?」
「あはは、冗談ですよ」

 阿弥はけらけらと笑う。
 やれやれと思いながら、文もまたけらけらと笑う。

「あ、そうだ。ねぇ文。これあげる」

 思い出したように阿弥が懐から取り出したものは、小さな冊子であった。

「何ですか。ネタ帳?」
「残念。違います」

 なんだろうと、適当にぱらぱらとめくってみる。

「……日記?」

 阿弥の一人称で描かれて、日付の記されたもの。間違いなく日記であった。
 なお、阿弥の創作日記ではなく、普通の日記である。
 趣味で書き連ねた創作日記は既に灰となったはずだ。

「えぇ。なんか書いていると、文とのことが一番多くてなんだか味気ないですが」
「……相変わらず口悪いんだから」

 苦笑い。

 阿弥は、どこか懐かしむように、その日記を撫でた。

「その日記はね、私の感じたことや見聞きした記憶を、次の私に伝えようと思って書いてたの」
「なんでそんなものを」

 そこまで言ってから、阿弥は九代目に渡してくれと頼むつもりなのではないかと考えた。しかし、それは外れた。

「記念というか、処分するのも勿体ないので、文にあげます。やっぱり遺すの止めたので、もう私には必要ないですから」
「どうして」

 阿弥の考えてることが今ひとつ判らない。だから、文は問う。

「文と一緒に過ごした私は私だけです。九代目の私じゃない。私が七代目の私と違う様に、九代目の私は私と違う人。だから、今の私の思いをそのまま教えたって、それは私じゃない。そんな私の偽物はいらないんです。次に文が知り合う私は、九代目の私じゃないといけない。だから、この日記はもういらない」

 それが、考え続けて、阿弥の出した最後の答え。
 唯一胸を張って、誇って遺せる自分の思い。
 それを見つけられたことが、阿弥にはとても嬉しかった。

 そんな清々しい顔の阿弥を見ると、文の中の悪い虫が騒ぐ。

「こんなもの私に持たせると、九代目に見せちゃうかもしれませんよ?」
「大丈夫。文はきっと、そんなつまらないことしないから」

 変わらない笑み。

 図星なんだろうなぁと、言われてすぐに文は思った。もしいつか未来に阿弥に会いたいと思っても、それは偽物の阿弥擬きじゃない。そんな紛い物、もし見たら壊してしまうかもしれない。
 文がもしこの日記を見せるとすれば、それは九代目の自我が完成した後。かつてこういう先祖が居たと、笑い話の種にするくらい。
 
「……面白くないなぁ。まったく。阿弥の鋭さは憎たらしい。今まで結構長く一緒に居たけど、結局泣きも怒りもしない。それがもっと憎たらしい」

 思い返してみる。
 やっぱりない。
 このまま阿弥とお別れをしたら、後々になんか負けた気がする様な気がした。

「ねぇ阿弥。もう残り少ないんでしょ。だったら、好きなこと言いなさいよ」

 吐き出させてやる。
 そんな意地と、友達への気遣いが、どちらかといえば刃物のような鋭さで阿弥に向けられた。
 対する阿弥の表情は、普段と何も変わらない。

「それがですね、仕舞い込み過ぎちゃって、何が本心か判らないんですよ」
「呆れた」
「あはは」

 二人の話す内容が変わっても、時間が経っても、二人は最初となにも変わらずにここにいる。

 そしてそれを、文は望まなかった。

「じゃあ一杯言いなさい。空になるくらい。聞いててあげるからさ」
「あ、泣かせる気ですね。折角笑顔だけで生きてきたこの私を」
「そんなの不自然なのよ。気持ち悪いだけだわ」

 文の気持ちがなんとなく判り、阿弥は意地張っても何もないかなと思うと、頷いて見せた。

「なんとなく、止まんなくなりそうなので泣くのは嫌ですが、では努力してみましょうか」
「どうぞ」

 泣かせたいんだけどなぁと文は思いながら、構わない振りを装う。
 そこで阿弥ははっとして、一応注意をしておくことにした。

「嫌なこと言うよ」
「はいはい」
「本当にいいの?」
「構わないから早く言いなさい」

 文が急かす。その言葉に、どうにでもなれと、阿弥は大きく息を吸う。

「ねぇ、文」
「何?」

 文は優しい目で、それでもどこかニヤついた目で阿弥を見ている。
 阿弥は、どうせならこのお面のような表情を、金槌で叩き壊してやりたいなと悪戯心を持った。
 だから、漏れすぎないように抑えながら、ゆっくりと思いを吐き出していった。

「馬鹿。阿呆」

 阿弥の口から出たのは、ただの罵倒。
 文は想像していた幾通りの言葉とも噛み合わないそれに、思わず表情を落っことしてしまった。

「な、え?」

 しばらくして反応すると、苦笑いが浮かんできた。
 それが面白くて、阿弥はくすりと口の中で笑う。

「文。死んじゃえ。大っ嫌いだ」

 嬉しそうな笑顔を一層にこやかに輝かせ、そのまま文に言葉の矢を射る。
 ろくに他人を貶したことのない阿弥の、精一杯の罵倒。

「ちょ、ちょっと待って」
「嫌です。というかもう止まりません」
「最初から罵倒って酷いでしょう」
「あはは」
「む、ムカつく……」
「本当、心底大っ嫌い」

 少しだけ目頭が熱くなって、やばいかなと思ったが、本当にもう止まらなかった。

「強くて、我侭で、自分勝手で、自由で、格好良くて、長寿で、空飛ぶ姿が綺麗で」

 ただ溢れ続ける思い。

「すぐに私をいじめて、脅かして、知ってるわよ文が恐い天狗だって、妖怪だって。人を食べるんだって」

 しくじったかな。そう思っても、もう遅い。

「ああ、馬鹿馬鹿。馬鹿文。恐いに決まってるでしょ。恐いわよ。死にたくないもの。死ねないもの。痛いのだって嫌いだもの。文が気まぐれで私を噛んだら、私なんて弱いし、すぐ死んじゃうんじゃないかって、ずっとびくびくしてて。馬鹿。本当に馬鹿な文。大っ嫌い」

 笑顔が引き攣る。でも、表情は変えないように、必死に笑う。
 涙だって、流さない。

「阿弥」
「本当に憎らしくて、殺してやりたいくらいだった。大っ嫌い。大っ嫌い。大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い」

 物足りない。でも、これ以上言えば泣く。既に声は震えている。
 すっきりしない気持ちが身体の奥で暴れていたけれど、阿弥は強引に、そこで言葉を止めた。

「終わり?」
「終わり」
「そっか」

 文はふぅと溜め息。

「ねぇ阿弥」
「なに?」

 少し沈黙。

「大っ嫌い」

 文は笑顔でそう告げた。
 阿弥は一瞬だけ、呆気に取られて真顔になった。
 そしてそれが、仕返しなのだと気付いた。

「まったく。口が悪くて、弱くて、幼くて、我侭で、偉そうで、不器用で、でも綺麗な服着て、大事にされて、上品で、可愛くて」

 売り言葉に買い言葉。
 文は阿弥が自分に向けたように、嫌いな部分、羨ましかった部分を吐き出す。
 胸の中で気付きもせず寝かし続けていた思いを、撫でて起こす。

「私も、あなたが大っ嫌いでした」

 二人の言葉の真ん中で、思い出が蘇る。
 最初から、最後まで。まるで走馬燈。

「文……私」
「お? 泣く? 初めて泣きますか?」

 今の文の言葉が、阿弥の我慢に針を刺す。
 決壊寸前の堤防が崩れかけた。
 少しきつそうに笑顔を歪め、それでも堪える。

「やめやめ。泣いていいんですよ。阿弥。怯えても良い。怖がって逃げたって良い。どうせもう残り少ないなら、素直で良いの。さぁ、泣いちゃいなさい」

 涙が出る寸前。
 歯を食いしばり、阿弥は我慢する。
 必死に我慢して、我慢して、そして、堪えた。

「堪えました」
「堪えるな馬鹿」

 阿弥は笑顔。
 文は呆れ顔。
 文の呆れ顔を見て、文は笑い、不格好だった笑顔からようやく本来の笑顔に表情を戻せた。

 しくじったなぁ、泣かせ損ねた。と文は思う。

「これでいいんです。私は最後まで強がるんです。誰が文なんかに泣き顔見せますか」
「まったく。本当に可愛くない」
「あはは、文。大っ嫌い」
「噛みますよ阿呆娘」

 二人の娘は、楽しげに笑い合う。
 それを最後と知りながら、お互いに、何も出来ぬまま。

 やがて時間が訪れる。
 別れの時間。

「さて。冷えてきましたし、そろそろ帰りますね」
「そう? 惜しいわね」

 二人はそれ以上、何か言おうと思えなかった。
 もう残る言葉は、別れの挨拶だけ。

 少し黙ってから、阿弥がゆっくりと言葉を紡ぐ。

「文、大好きでしたよ」

 最後の言葉。
 受け止めて、飲み干して、そして投げ返す。

「阿弥、大好きですよ」

 そんな少しずれたオウム返しで、二人の時計は動きを止めた。
 阿弥も文も笑顔のままで、お互いに背中を向けて別れる。それが、今生の別れと知りながら。

 この後、一ヶ月と経たずに、阿弥の死が風の噂で伝えられた。






 文は日記を読んでいた、
 次代に伝える為に作り、遺すことを止めた日記。
 確かに、やたら感情重視で記されている。

「読み難っ」

 素直な感想であった。

 擬音語、擬態語、明喩、暗喩が過度なまで使われている。
 阿弥の頭の中は随分とふわふわしていて、そこら辺は外見同様であったことを思い知らされた。

 そんな日記の中で、行動の記録ではなく文についてを書いてあるところは、少しばかり期待しながら読み進める。

 日記には滅多に罵倒句は入っていなかったが、文に関する文章の中に自然と馴染んでいる無神経だの無遠慮だの思慮が浅いだのという言葉は、いちいち文の癪に障った。
 忍耐力が養えた。

 日記を読み進めると、所々に違和感があった。阿弥に書かれた様な気がしないという、半端な距離感。だが、肝心のそれが何なのかはしばらく気付かなかった。

「あっ」

 読み始めて1/3近く読んだ頃に、文はその違和感の正体にようやく気付いた。それは、気付いてしまえば一目瞭然なもの。

「阿弥、日記の中だと文さんって書いてあるんですね」

 苦笑い。違和感にもなるはずだと、しみじみ思う。

 何故日記ではさん付けなのか。もう答えは聞けない。それでも、文にはなんとなく判った。
 阿弥の無遠慮なまでの馴れ馴れしさは、阿弥なりの無理した背伸びだったんじゃないか、と。

 日記は淡々と続く。
 冊子一つに、物心ついてからのことをまとめた所為か、字が細かくてびっしりと記載され、読むのもなかなか大変であった。ページをめくるだけで気が滅入る。
 日付はもちろん飛び飛びで、一週間置きだったりいきなり数ヶ月置いたりと穴だらけ。更にはたまに日付が前後することがあり、読んでいると頭の中がごちゃごちゃとする。
 読みづらさばかり際だっていた。

「ふぅ。これなかなか疲れますね」

 どうにか残り数枚というところまで読み終えた。
 何かあるようで、何もなかった人生。
 何かを残そうとして、何一つ残せなかった後悔。

 なんだか、気が滅入ってきた。

 意外に必死だったんだなぁと思う。
 全然見えなかったなぁと思う。
 間が抜けてたしなぁと思う。
 泣かせたかったなぁと思う。

 はぁと溜め息。

 この日記を読んでしまえば、お終い。
 それがなんとなく手を重くした。
 でも読まずにいるほど浪漫チストでもなく、何よりそんな我慢も利かない。

 文は日記を読み進めた。

 そして日記は最後の日付、文と最後に会話をした前日まで書かれていて、そこで終わっていた。
 見事に何もなかった。

「おや?」

 しかし、最後のページがある。見れば、墨でくっついてしまっていたようだ。
 何か仕掛けでもあるのだろうか。そう思って、ぺりぺりと開いてみた。

 文はそのくっついたページを見て、思わず息を呑んだ。

「阿弥……これは反則でしょう」

 重なり合って紙面を埋め尽くす、狂ったように何度も何度も震える字で書かれた言葉。

『死にたくない』

 それは、阿弥が文に初めて見せた本心。誰にも言えずに仕舞い続けた、素直な悲鳴であった。

「……まったく。本当に馬鹿なんだから。遅すぎるわよ。馬鹿」

 阿弥が生きている内に聞きたかった言葉。
 阿弥の口から聞きたかった言葉。

 くそう。負けた気がする。

 なんだか感傷というわけでもなく、無性に悔しかった。

「でも、なんだ……あんたも、ちゃんと泣けてたんじゃない」

 書き綴られた激しい感情が、どうしてか文にはとても優しく見える。

 それに釣られる様に、文は久しぶりに、皮肉を混ぜないさっぱりとした笑みを浮かべた。






 阿弥が死んでから百年近くの年月が過ぎた。
 次代が生まれるのはそろそろだろうなぁと、文は日めくりを見ながら思い出したように考えたりもした。

 どうせなら忘れていたい。
 だが、そんな思いは裏切られる。

「文さん。稗田の九代目が生まれましたよ」
「……ふぅん」
「あれ? 反応鈍いですね」
「関係ないでしょう。それより椛、写真の現像手伝ってくれません?」
「いいですよ」

 ここのところ機嫌の良くなかった文の機嫌が直るかと思って好い情報を持ってきたつもりだったが、さしたる変化は見られず、椛は溜め息を吐いた。
 それもその筈、文は既にそんなことは知っていた。ただ、今自分が九代目と会ったとすれば、阿弥から貰った日記を渡してしまい、その後で後悔するような気がして、一生懸命自制していたのだ。
 そこで改めて情報を渡されても、不快しか残らない。

 九代目が自我をしっかりと持つようになるまで、文は会わないことに決めていた。
 短い時間が、酷く永いものに思えた。






 そして、十数年という時が流れた。
 そろそろ良いかと、焦れた文は人の里へ向かった。

 初めて文は、狙った人間に会おうとしている。それが何かおかしくて、くすりと笑い出してしまった。

 しばらく飛んで里に着くと、文は翼を隠し人里に混ざる。
 屋敷にいるか、外にいるか。探すのは難儀なことだと思った。
 しかし、それは杞憂になる。

 すごく見覚えのある派手な着物が、茶屋で腰を下ろしていたのである。

「……いた」

 喜びより先に呆れが浮かび、文はなんだかおかしくなってきた。
 歩み寄る。髪型も顔立ちも似ているようで似ていない。

 これが、転生。

「阿弥」

 そして、ついうっかり呼び違える。
 しまったと文が思ったのと同時に、耳敏く少女は顔を上げた。

「今、私の八代目の名を呼びましたか?」

 好奇心の強そうな目線が文を捉える。

「あ、あやや……」

 どうしたものだろうかと、少し困る。
 阿弥と面識があると言うことを、何故か文は避けなければいけない気がした。
 それなので、言い訳をする。

「すみません。これ私の口癖なんです」
「あ、そうでしたか。ごめんなさい」

 少女はどこか気落ちした顔。
 もしも過去を知っている人がいるのなら、話を聞いてみたいと思っていたのである。
 しかし、気を取り直す。

 自分に向かって歩いてきた相手に、また阿求は好奇心の宿った視線を向け直す。
 
 なんか少しだけ阿弥に似ているなと思いながら、文は言葉を投げかけた。

「あなた、稗田の九代目ですよね?」
「はい。稗田阿求と申します」
「私は天狗の射命丸文です」

 簡単な自己紹介。
 すると、阿求の目がぱぁっと輝いた。

「天狗だったのですか。初めて見ました。あと、八代目と同じ名前ですね。なんか嬉しいです」
「そうなんですか? 奇遇ですね」
「えへへ」

 阿求は楽しげに笑う。
 その笑顔は、似ているけれど、やはり阿弥のものではなかった。

 諦めとか、喜びとか、色々とごっちゃになりながら、文は笑った。
 その笑いがなんなのか判らず阿求は真顔になって首を傾げたが、すぐに笑顔に戻り、良く通る声で改めて挨拶をした。

「初めまして、文さん」

 聞き慣れているはずの、聞き慣れないさん付け。
 それが少しだけくすぐったくて、悲しくて、そしてなんだか嬉しかった。

「よろしくね、阿求さん」

 もうオウム返しにはならない。

 色褪せた過去の時間を塗り潰しながら、新しく彩られた風が吹き抜けていく。

 動かなくなった時計を胸にしまい、新しい時計を手に提げて、また一歩ずつ歩き出す。

 これから二人の時計には、また新しい風と音で時が刻まれていく。
冬が終わって春になる日は、なんだかもの悲しい。
そういうわけで、大崎屋平蔵でした。

まだまだ寒いですね。そろそろ温かくなって欲しいものです。

文が可愛い。あと阿弥が可愛い。
幻想郷って、強がりばかりで誰も泣かない場所なんじゃないかなぁって思いました。

それでは、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
お読みいただき、ありがとうございました♪
大崎屋平蔵
[email protected]
http://ozakiya.blog.shinobi.jp/
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コメント



0.11260簡易評価
6.100感想を綴る程度の能力削除
くっ、思わず涙が…。

綺麗なお話でした。
10.90名前が無い程度の能力削除
あの口癖の誕生がこんな話だったとしたら、たしかに素敵ですな。

とても面白かったです。
12.100名前が無い程度の能力削除
泣けるけど、素敵な話。
16.100名前が無い程度の能力削除
素敵やん…
19.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしいとしか言えない
20.100名前が無い程度の能力削除
雰囲気がすごく好みのものでした。
何とも言えない感じが良かったです。
21.100名前が無い程度の能力削除
「百年はもう来ていたんだな」とこの時初めて気が付いた。
23.100喉飴削除
いやぁ、素晴らしいの一言につきます。
読み易く、テンポも良いですし、出会いからお別れまでを描写しているのは凄いなぁ。
いろいろ感じたことはありますが、上手く言葉に出来ません。
とにかく、面白かったです。
26.100名前が無い程度の能力削除
長編にもかかわらず一気に読んでしまいました。
最初の部分で引き込まれて、その後はぐいぐいと物語に取り込まれました。
文と阿弥、名前が一緒の二人にこんな出会いと触れ合いと別れがあったのなら素敵ですね。
素晴らしかったです。
28.100名前が無い程度の能力削除
終わりのある日常があまりにも美しい。文句なし。
29.100名前が無い程度の能力削除
二人が再び笑いあえる関係になりますように・・・今度は本心で。
32.100名前が無い程度の能力削除
美しい……只々美しい……
37.100名前が無い程度の能力削除
素敵。言葉にならない…感動をありがとう
39.100名前が無い程度の能力削除
この友情は、たまりません……。二人の距離感が、器用じゃないいたわりが、心に響きます。
名も出せない書き手の一人としては、ギリギリのところで踏みとどまる大崎屋さんの「強がり」が作品の輪郭を際立たせているように思えました。
本当に素敵な物語です。
40.100名前が無い程度の能力削除
すばらしい
読みやすく引き込まれる
41.100名前が無い程度の能力削除
(´;ω;`)
42.100名前が無い程度の能力削除
読めてよかった。ありがとう。
44.100名前が無い程度の能力削除
この、なんとも泣き所を与えてくれない感じ…
でも阿弥の「死にたくない」の記述とか、もやもや感が…。

だがそれが良い。
51.100名前が無い程度の能力削除
なんて言うか…兎に角素晴らしい
百点以外はつける気にならないです。
53.100名前が無い程度の能力削除
うはあ、日だまり見てぇな雰囲気だ。いやこれは俺が眠いだけか?w
55.100名前が無い程度の能力削除
『死にたくない』で涙腺崩壊。
文と阿弥とはいいですね。面白い発想。
58.100名前が無い程度の能力削除
日記は反則だぁ…。
2人とも弱い様で、確かに強いと感じました。
良かったです。
60.100名前が無い程度の能力削除
泣いた
あの阿弥が『死にたくない』だなんて反則だよ~とか思った自分は、もうすっかりこのお話の虜でした。
62.100名前が無い程度の能力削除
私が
泣きますよ
64.100名前が無い程度の能力削除
ちょとまて、「死にたくない」は反則。
まさにあややなお話。
65.100名前が無い程度の能力削除
ちょっとこれは・・・よすぎる。やばい。
74.80名前が無い程度の能力削除
いいはなしだ
75.100名前が無い程度の能力削除
これはやばい
二人の距離が素敵でした
日記は反則…
78.100名前が無い程度の能力削除
なんて素敵な意地っ張りたち。
素晴らしい。
79.100名前が無い程度の能力削除
これ好きだ
80.90名前が無い程度の能力削除
これは良い二人
82.100名前が無い程度の能力削除
面白かったです。
85.100名前が無い程度の能力削除
なんというか・・・うまい!ただこの一言。
86.100名前が無い程度の能力削除
素敵です
本当に素敵
87.無評価名前が無い程度の能力削除
100点以外つけたくないから……ッ!
88.無評価七星削除
色々と崩壊しました。3リットルくらい泣いた。
89.100名前が無い程度の能力削除
うん、素敵。
92.100名前が無い程度の能力削除
文句なしと言わざるを得ません。いい。
93.100名前が無い程度の能力削除
素敵でした。
94.100名前が無い程度の能力削除
マジ泣きした
99.100名前が無い程度の能力削除
この二人が好きすぎて死にたくない。
100.100名前が無い程度の能力削除
ツーンと来た。
104.100ずわいがに削除
お前ら大っ嫌いじゃきに……っ!!
106.100名前が無い程度の能力削除
本当に反則すぎるでしょうこれは
素晴らしいお話をありがとうございました
109.100名前が無い程度の能力削除
おもしろい組み合わせだなあ。
奇抜なようでいて、でもすごくなじんでしまう。
二人の掛け合いが、かわいくてもう、ね。
「嘘だー」
「本当だー」
とか、想像してにやけた。

そして来たるべき別れ。
切ないなあ。
114.無評価名前が無い程度の能力削除
これはおもしろかったなw
うん

よかった
よかったよ
115.100名前が無い程度の能力削除
おや
動画が上がったんでまた来てみたら、先客がいましたか。

また楽しめたので。
119.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい
122.100名前が無い程度の能力削除
泣いた
127.100アガペ削除
今更だけど言わせて下さい。
最高でした。
133.100幻想削除
言葉遊びと雰囲気がマッチしすぎでやばいです。
阿弥の書き記した最後に言葉に涙腺崩壊余裕でした。
137.100削除
あー泣けるわー・・・
143.100名前が無い程度の能力削除
これはっ・・・凄い。
友人に勧められたので、読んでみましたが・・・涙が・・・。

最高です、最高以外の何物でもありません!
148.100名前が無い程度の能力削除
泣くことはなかったけど、すごく読んでよかったと思いました。
物語というよりは、日常を見ていた気分。だからもやっとしてるのかな?
157.100名前が無い程度の能力削除
これは反則だわ。
目頭が熱くなった。
159.100名前が無い程度の能力削除
馬鹿文のあたりで、阿弥は泣いてたんじゃないかな、と。
涙は出なくても泣けていたんじゃないかな、と。そうであってほしいな、と思いました。
161.100名前が無い程度の能力削除
おー、これは素晴らしいお話でした。
166.無評価名前が無い程度の能力削除
素晴らしいとしか言いようがないくらい良かった(;ω;)
167.100I・B削除
これは……。
二人の出逢い、紡がれていく日常、別離を孕んだ再会。
どれをとっても、素晴らしい展開ばかりでした。
素敵な時間をありがとうございました。面白かったです!
170.100名前が無い程度の能力削除
これはいい
181.100SAKURA削除
ひさびさにいい作品と出会えた、ありがとう
184.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい…
197.100名前が無い程度の能力削除
号泣しました。こんな素敵な作品をありがとうございました!
218.無評価名前が無い程度の能力削除
久々に泣きました・・・
日記は反則です!w
素晴らしい思い出をありがとう。
素晴らしいお話をありがとう。
223.100名前が無い程度の能力削除
原作の特徴を上手く活かしてて素晴らしかったです
この何とも言えない後味がかなり好みですね
本当は読み終わった後のどうしようもない感が半端なくて90点にしようか迷いましたが
そういう風に強く心に残らせる作品も素晴らしいと思ったので100点で
233.100名前が無い程度の能力削除
今までで一番の感動をありがとう…!
235.100洗濯機削除
素敵なはなしでした
249.100名前が無い程度の能力削除
最後まで強がってみせた阿弥に乾杯。
250.100名前が無い程度の能力削除
あやや。素敵なお話でした。
251.100名前が無い程度の能力削除
あやや。素敵なお話でした。
254.100Admiral削除
ダブルあやがかわいくてかわいくて。
とても素敵でした。
256.100削除
すばらしい
262.100名前が無い程度の能力削除
色々なSS読みましたが、これほど感動できたのは初めてです
264.100I LOVE 紫削除
思わず涙が

いい話でした。
284.100名前が無い程度の能力削除
綺麗です。
294.100名前が無い程度の能力削除
ある動画から来ました。凄く、泣けました。
いい話を有難うございました。
295.100名前が無い程度の能力削除
294>>と同じくとある動画から来ました。

いいね!
久々に素敵な作品に出会えた!有意義な時間をありがとう!!
300.100名前が無い程度の能力削除
東方Projectを一切知らない僕でもすごく引きこまれました。
とても心に響くお話
ありがとうございました。
301.100名前が無い程度の能力削除
東方Projectを一切知らない僕でもすごく引きこまれました。
とても心に響くお話
ありがとうございました。
302.100名前が無い程度の能力削除
東方Projectを一切知らない僕でもすごく引きこまれました。
とても心に響くお話
ありがとうございました。
303.100名前が無い程度の能力削除
東方Projectを一切知らない僕でもすごく引きこまれました。
とても心に響くお話
ありがとうございました。
304.100名前が無い程度の能力削除
東方Projectを一切知らない僕でもすごく引きこまれました。
とても心に響くお話
ありがとうございました。
305.100名前が無い程度の能力削除
東方Projectを一切知らない僕でもすごく引きこまれました。
とても心に響くお話
ありがとうございました。
306.100名前が無い程度の能力削除
東方Projectを一切知らない僕でもすごく引きこまれました。
とても心に響くお話
ありがとうございました。
307.100名前が無い程度の能力削除
東方Projectを一切知らない僕でもすごく引きこまれました。
とても心に響くお話
ありがとうございました。
308.100名前が無い程度の能力削除
東方Projectを一切知らない僕でもすごく引きこまれました。
とても心に響くお話
ありがとうございました。
313.100名前が無い程度の能力削除
ふらりと立ち寄って、最後まで一気読みでした。
初秋の夕暮れ時の風の様な、心地いいけど少し寂しい、
ある二人の「はじまり」から「おしまい」が胸に迫ります。

あと、「日記が読み辛い」ってのが何だか新鮮な発見でした。
人の心が一生分って考えたら、そりゃ簡単に読み進められる訳がないよなぁ
他の人より短かった分、彼女のそれはさぞや「分厚い小冊子」だったのでしょうね。

最後に、題名の絶妙さには脱帽。
「はじまり」から「おしまい」まで良きこの作品に感謝です。