Coolier - 新生・東方創想話

はじめてのげんそういり

2010/04/27 23:51:47
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暗い暗い森の中、気が付けば私はその真っ只中に居た。

辺りを見回せど人影一つ無く、有ったとしてもこの暗さでは判別も出来ないだろう。

大きな声を出しても何物にも届かず、声が途切れれば耳鳴りが聴覚を支配していく。

少し……いや、かなり心細い。

私以外に誰も居ないというのは、存外心を弱めるものだと、改めて気付かされた。

この状況から一刻も早く抜け出そうと、何か役に立ちそうな物は無いかと、身の回りを探る。

しかし、役に立ちそうな物は何一つ無い。着の身着のままで森の中に放り出されたかのようだ。

そもそも、何故私がこんな所に居るのか、それすらも分からなかった。


ここは、確かに幻想郷だ。 

しかし、私が夢に見ていた幻想郷とは、大分違う様だ。

もちろん今の状況――夜の森の中だからというのも有るのかもしれないが、静か過ぎる暗闇は不気味ささえ湛えている様に思える。

幻想郷へと足を踏み入れられれた喜びよりも、未知の世界へ一人足を踏み入れる恐怖が勝りそうだ。


少し前、この森の中で気が付いた時より前の記憶が、朧気にしか残っていない。

しかしいくら記憶が曖昧でも、この場所に留まっている事が危険である事は確かだと確信出来る。

この状況を打破すべく、先も見え難い暗闇の中を、勘を頼りに私は進み始めた。



少し歩いて行くと、何か人影の様なものが視界の片隅から現れた。

見方……とは考え難い、そもそも私に見方が居るのかどうかも怪しいし、居たとしても顔も名前もよく分からない。

となれば、あの人影は通りすがりか、もしくは敵か。

その影は少しずつ私の方に近寄ってきている、少しずつ、その姿がよく見える様になってくる。

その姿が大分視認出来る様になって、その人影が人でない事に気が付いた。


背中の羽は、人間には付いていないものだ。


ならばあれは何者か、と考える前に、その人影は何かを私の方に向かって撃ち出した。

野球ボール大の丸くて光るものが、何も無い人影の掌から現れて。

幸いにも速度は遅く、何とか避ける事は成功したが、それで状況は変わるはずも無く。

それと同じ人影が、あちこちから現れては同じ様に私に向かって撃って来る。

なるほど、ここでは人間は攻撃される存在らしい。

非現実的な状況を楽しむ余裕も無く、私は飛んで来る物を避ける為に、必死になって逃げ回った。

精一杯の抵抗もした。 手近なものを投げつけて、反撃もした。

何とかしてこの森から出なければいけない。 あの何かに当たってしまったら、きっととても危険だ。

必死で逃げ回りつつも、助けになりそうなものを掻き集めて、時々抵抗する。

長く続く緊張で汗が滲むが、そんな事を気にかけている余裕は無い。

何度も逃げ回って、何度も抵抗して、何度も危険な目に会って、それでも私は逃げ続ける。


幻想郷は、ただの人間には厳しく在るものらしい。

長い緊張の中で、思考が鋭利に磨がれるかの様に、感覚が高まっていく。




やがて、敵の攻撃が少し治まってきた所で、私の目の前に小さな女の子が現れた。

子供の様に小さな体躯に幼さの残る顔立ち、白黒の少女趣味な服、森の中で出会うにはあまりにも不自然だ。

そうして疑い始めた頃、その少女はこちらに向かってルーミアと名乗り、2枚と宣言する。

二言三言会話を交わした直後、その幼い見た目に反し、さっきまでの人影とは大違いの激しい攻撃を繰り出してきた。

そのルーミアの向こう側には、微かに森の終わりが見える。 つまりどうにかしてこの少女を倒さなければ、森から出る事は出来ない

新たな幻想の世界をこの目で見たいが為、私に出来る精一杯の攻撃を仕掛けた。


しかし、ルーミアもそう簡単にはやられてはくれない。

所詮二十代半ば程度の力では、攻撃を中てた所で大した効果は出なかった。

その上決闘そのものに慣れているのだろうか、ルーミアは綺麗に避ける先を狙って来る。

攻撃を貰った回数はここまでで2回、意味も無く力の篭る掌を握り締めて、ルーミアを注視する。

不思議な交差を繰り返す攻撃を必死に避けて攻撃、そんな無様な戦い。

更に弱まった力で出来る事といえば、ただ攻撃を受けない様人事を尽くし、天命に祈る他無い。

だが、負けたくはない。

この森の向こうには、まだ見ぬ美しい幻想が待っているに違いないと、そう確信して。



やがて、不意にルーミアの攻撃が止んだかと思えば、それきり攻撃を仕掛けて来る事は無かった。

恐る恐る近付いてみるが、不意打ちという訳でもなさそうだ。

理由は分からないが、通してくれるという事らしい。 ならば理由を問う必用は無い。



何かを忘れている気がしたまま、意気揚々とルーミアの隣を進み、森の終点へと向かう。

そんな私の背中に、ルーミアは一言残してくれた。


「おめでとう、次はステージ2だよ」
異変解決の初心者さんのおはなし



貴方の初めての幻想入りは、どうでしたか?
ライア
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コメント



0.330簡易評価
8.90名前が無い程度の能力削除
これは、読者自身の視点として読ませる作品なのだろうか?
幻想入りでは、多少の主人公設定は不可欠なはずなのに、それが無い。
思い出話って所にに引っ掛かりを感じるが……
なんにせよ、『主人公=自分』として読んだら面白かった。
13.50コチドリ削除
東方紅魔郷初プレイ後の感想を物語風に書いてみました、的な感じですかね。
一発ネタとしては、アリなのかなと。
16.80名前が無い程度の能力削除
2面か3面あたりでゲームオーバーなりそうだなこの人ww
17.無評価名前が無い程度の能力削除
8でコメントしたのですが。

他の方のコメを見て、とんでもない勘違いをしてた事に気付きました。
読解力の無さが恥ずかしい。
大変失礼しました。
穴があったら蹴り落として下さい!
19.70ずわいがに削除
なるほど、確かに良い思い出……と言いたいとこですが俺の初プレイは永夜抄でしたからねぇ;ww
紅魔郷のノーマルは結構あっさりクリア出来ちゃいましたね。
ハード?無理ゲーwww