Coolier - 新生・東方創想話

組長はクールでカッコいい

2019/09/08 18:54:31
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太陽の光も差さない暗い畜生界で一際煌めく摩天楼のネオン。
日々開発が進められる畜生界において、ビルの高さは力の強さである。畜生界に慎ましい考えなど要らない。力は見せつけるものである。
圧倒的力の象徴であるこのビルの最上階に、畜生界最高勢力の一つ、鬼傑組の組長である私 吉弔八千慧が鎮座するのは当然のことだ。

しかし、今日はそんな神聖高尚な場にそぐわないヤツが目の前にいて、私はとても不愉快だった。

「ご、ごめんなさい!! 吉弔様!! どうか、どうか、お許しを!!」

土下座をしながら、私に許しを請う動物霊。態度だけは平身低頭。謝れば済むと思っていて、その実が伴わない。醜い。腹立たしい。

「よいですか? あなたはこの誇り高き鬼傑組幹部として、あるまじき失態を犯しました。天敵である勁牙組に奇襲を仕掛けるため、我々がどれだけ綿密に諜報活動を繰り返し、準備に準備を重ねたと思っているのですか? それが、あなたの情報漏洩により一瞬でパーです」
「し、しかし……まさか力しか取り柄のないあいつらが、我々からハッキングするなど夢にも思わず……」
「それが甘さだと言うのだ。詰めが肝心だと常々言っているでしょう?」

明日、決行予定だった勁牙組奇襲作戦が、こいつのずさんなセキュリティ管理のせいですべて台無しとなった。全てあちらに情報が漏れ出してしまったのだ。
確かに、パワー・スピードだけで畜生界を蹂躙するノータリンの勁牙組が、我々の情報を盗むような頭脳的行動に単独で出たのは初めてのことである。
が、甘い。甘すぎるのだ。
常に高度な経済成長が進む弱肉強食の競争社会である畜生界において、鬼傑組の情報を狙い、奇襲を仕掛け失墜させようとする零細組織は少なくない。
それらから情報を守ろうとしていたならば、そもそも勁牙組に漏れ出すことなどないのだから。

「そ、そうだ! そうですよ! 勁牙組に別の組織が情報を売ったんです! それなら辻褄が合います!」

なるほど、その可能性もある。
しかし……

「だとして、なんだというのです? 失態には変わりありませんが」
「う……あ、ああああとそれと、今回の失態は私だけの責任ではございません! 私はただ指示を与えていただけであり……」

典型的な無能の台詞。心底呆れる。仁義のじの字もない、生半可者。
こういうヤツが組織の幹部にいると碌なことにならない。

「とにかく、あなたは鬼傑組の幹部失格です。畜生界の中でも最も過酷な環境とされる地獄の暴風地帯と隣り合わせの土地に、薄汚れた鬼傑組のビルが一棟あります。あなたも今までそこに部下を散々左遷してきたのですから、知っているでしょう? 明日からそこで100年働きなさい。ああ、業務内容は各階の厠掃除ですので、よろしくお願いします」
「そ、そんな……」
「心配しなくても大丈夫です。暴風にも耐えられるように設計してありますので折れたりはしませんよ。まあ、場所が場所なのでいつ鬼との抗争に巻き込まれるかは分かりませんがね」
「吉弔様……どうか、どうか、お許しを……」
「……この待遇が不満か? なら、またどこの組にも所属しない、いやできない下位層の存在として、高層ビルの薄暗い谷間で上からビンやカンを投げつけられるだけの蔑まれるべき存在に逆戻りしたいか? 覚えてます? あなた、畜生界ですらはみ出し者だったのですよ。汚く、力もなく、ノロマでグズでどうしようもない……」
「あ、ああぁぁ……」

目の前にいる動物霊は、何十年も前に私自ら拾ってきたヤツだ。
畜生界に堕ちてまだ間もなく、優柔不断な性格も相まってどこの組にも所属することもできず、陰惨な毎日を送っていた。過酷な状況下に置かれてもただオロオロするだけで、自分で打開しようとしないどうしようもないヤツ……ただ、頭だけはキレるようで、利用価値を見出した私はそいつを救ってやったのだ。
それがこのザマ。救いようのないとはまさにこのことだ。

「いつまで狼狽えている。

……破門されたいか、また鬼傑組の底辺からやり直すか、早く選べッ!!!!」

「は、はい!!! 働かせて……働かせていただきますうううぅうううう!」

「……よろしいでしょう。では早くこの部屋から出ていきなさい。目障りなので」
「はいィッ!!!」

金切り声を上げると、すぐさま踵を返し去っていった。

くく、くくく……無意識に笑いが出る。
まったく、どうしようもない無能ばかり。結局私が尻を拭うことになるのだから。

勁牙組に明日の奇襲のことがバレたということは、スピードだけは速いヤツらは確実に何らかのアクションをすぐさま返してくる。当然、真正面からそれを受け止めはしない。バレたことによる相手の行動の変化を読み切り、搦手で落とす。ヤツらが身体的なスピードで勝負するなら、“私”は頭のスピードで勝負をする。
なんだ、シンプルなことじゃないか。
計画する時間はほとんどないが、無能な幹部どもに委ねるより、私が一夜で練ってしまう方がよっぽど効率が良い……くくく。


思えば、私は龍の出来損ないなどと卑下されることもある吉弔として生を享けた。
誇り高き龍から産まれてくるのに特別強い力を有さず、人間に薬の材料として追われるだけの種族、それが吉弔。死ぬときも、あっけなく人間に殺されたものだ。
それがどうだろう、今や弱肉強食 圧倒的競争社会の畜生界でトップの一角を占めている。私を散々な目に遭わせてきた人間霊を霊長園に閉じ込め、格式高い元幻獣の動物霊をも従えている……実に愉快だ。
今や吉弔の名は、名前を出しただけで皆が震え上がる、そんな力の象徴なのである。

そうさ、私はもともと逆境からのスタート、追い詰められることには慣れている。
今の状況は圧倒的ピンチ。しかし、それがどうした。智慧を振り絞り、計略を練れ。大丈夫、私にはできる。
今に見てろ、勁牙組をトップの座から引き下ろしてやる。



……と、その前に、休憩を入れるとしよう。
先ほどは余りの腹立たしさで、私としたことがつい語勢を荒げてしまい、少々疲れた。風呂にでも入り、休憩してから作戦を練ろう。
なに、朝まで時間はまだたっぷりとある。焦ることはない。
さて、上着とスカートを脱いで……ああ、そうだ。どうせ時間があるのだからアレでも見よう。

脱いだスカートのポケットから小さなカギを取り出す。そして、部屋の端っこにポツンと置かれた、黒く光沢のある目立たない箱にそれを差し、中を開けると、勿論 無くなるはずがなくお目当てのものが入っている。
そう、そうそう、これこれ。疲れた時に最適のヤツ。
5匹の動物霊の鹿による畜生界のアイドルグループ「DEER☆BOYS」の写真集。
表紙を見るだけで口角が上がり、組員の前では決して見せることのない表情になってしまう。

どうやら外の世界では吉弔の伝説の一つとして、鹿に興奮してアレコレしたなどといった低俗なものが残っているようである。
(ちなみに畜生界のネットワークにおいてもそういう伝説は伝わっているようである。別にそのことを流布されたからといって何とも思わないのだが、一応検閲はして記事の削除要請などをしている。いや別に何とも思っていないが、一応)
確かに、雄の吉弔にはそういうことをするどうしようもないヤツがいたのも事実である。そして私も吉弔という種である以上、鹿は好きだ。種的に仕方がない。
しかし、私がそのような下劣な行為をするはずがない。
私はただ写真集やグッズ、組員からの目もあるので行けもしないが握手会参加券付きのCDを買うだけである。ただ鹿を遠目から見て、ただ鹿のためにお金を落としてあげる。それ以上は何も要らないのだ。本当にただそれだけで、私の吉弔としての心は満たされる。
……豊富な資金を活かして、彼らのスポンサーになってあげたい気持ちもなくはないが。

ソファに深く腰掛けながら、手にした写真集をパラパラとめくる。
やはり、グループのセンターメンバーである鹿男の角は良い。劣情をそそる、控え目で少し女性的な丸びを帯びた角。そして官能的な枝ぶり。人気なのも頷ける。しかしそれは、隣にいる鹿太郎がイケイケなギュンとした角をしているからこそ映えるということを、巷のファンはまったく分かっていない!
なぜ人気投票で鹿太郎が毎回低順位なのか理解ができない!
この前も畜生ネットワークでファンサイトの公式掲示板を覗いていたら、鹿太郎のアンチが連投して鹿太郎スレを荒らしていやがった!
私が本気になれば、鬼傑組の総力を上げてそいつを特定して、一瞬で消すことができるのに!!
今度適当な口実をつけて組員にやらせようかな。超機密活動として。鉄砲玉にやらせて、やらせた後はソイツを消してもいいかもしれないな。
まあ特定なんぞしなくとも、どうせ人気投票万年最下位の鹿光のファンが荒らしているんだろうけど。アイツら、人気がない鹿光を応援している私たちカッコいいなんて勘違いしたスタンスでいやがるんだ。そんなヤツらよりは私の方がよっぽど鹿光のことを分かっている!!
あああ、腹立たしい!
腹立たしい!!
本当にはらだた



ガチャ



「あ、吉弔さ……」



組員であるカワウソ霊が、部屋に入ってきた。そして固まった。お互いに。
私は、下着姿で、「DEER☆BOYS」の少し過激な表紙が印刷された写真集を手に持っている。
しかも何やら興奮した姿で。

……あ。これは、もしかしてまずい状況なのでは。

というか、ここは鬼傑組本部最上階で厳重なロックがされていて私の許可がなければだれも入ってこられないはずあそうださっきのやつがでていったときロックがかいじょされてそのままだったんだあーそうかそうか。



「……カワウソ。常識として、たとえロックがかかっていなかったとしても、他人の部屋に入るときはノックをするものです」
「いや、ノックしましたが……」
「なら返事があるまでノックし続けなさい。口答えするな」
「ご、ごめんなさい。割と長い時間ノックしていたんですがね……」

さりげなく、手に持っていた写真集をカワウソから死角となる位置に置く。
大丈夫、平静を保てている。心は落ち着いている。バクバクなんて鳴っていない。鳴ってないから本当に落ち着ついて八千慧。心の中で深呼吸。

しかし、これからどうするか、「DEER☆BOYS」関連の何かを手にしたり見ていたりするところを組員に見られたのは初めてだ。
……消すか? 消しちゃうか?
いやでも、こいつ最近幹部にしたばかりだしな……それにもしかしたら何を持っていたかまでは見られてないかもしれないし……どうしよ……

「き、吉弔様……ご用件の方をお伝えさせていただいてもよろしいですか?」
「え、ああ、はい。なんです? 今日のことなら心配要りませんよ。あなたたちは私の言うことに従いさえすれば良いのです」
「いえそのことではなく、このようなお荷物が届いていたのですが」
「荷物か……どこの組の者からです?」
「あ、いえ、どこの組からとかではなく、畜生出版からです」
「あっ!」

思わず声を出してしまった!
畜生出版から最近頼んだものといえば、来週配達予定だったはずの『DEER☆BOYS 19th写真集 ~色んな動物にコスプレチェンジ編!~』しかない! 
明日からのことがあるからどうせ受け取れないだろうと思い、配達予定日を発売日から泣く泣くずらしていたのに、出版社側のミスか!?
畜生出版め、畜生界で唯一顧客情報を死守する出版社として目をかけてやっていたのに! こんな形で裏切られるとは!!

……まあいい。
勝手に荷物の中を空けるようなマネはしていないだろうし、問題なく誤魔化せる。

「それで、吉弔様、中身についてですが……」
「あ、いえいえいえ! あれですね、あれです。私が頼んでおいた某有名策略家の本のやつというか、まあそれですねこれは。あのー、あれですよ。最近出たじゃないですか。ああ、まあ私のような情報収集に長けた動物霊しか知らないでしょうけどね、なんせ出版部数が絞られた本でね。レア本なんですよ。まあ、本当はまだ届かない予定だったんですがね、まああれです、あ、なんなら少しだけ中身を見せてあげましょうか。いやでもあなたにはまだ早いというかなんというか」

よしよし、とりあえず上手く誤魔化せているような気がする。


「あ、いやその、吉弔様、その本が届いたのではないようです」

「……はい?」

「な、なんというか。なぜかその……鹿のアイドルの写真集が入っていまして……」




あ、ダメだ。




「消してやる」
「え?」
「消してやる。消してやる消してやる消してやる。お前を消してやる」
「あ、あの、吉弔様?」

「ふざけるのも大概にしなさい!!ノックもせずノコノコと入ってきやがって、挙句の果てには勝手に人の荷物を見やがって礼節も知らない阿呆!!!変態!!!!いいですか!?私が本気を出せばあなたなんて霊体も残らなくすことなんて簡単なんですよ!!!!!はっきり言って指一本で消滅です!!!!本気を出せばですがね!!いや霊体を消滅させるなんてそんな生半可なことを私はしません!!!あなたの霊体に毎日苦痛を与えてあげます!!!!あなたを暗闇の部屋に閉じ込めて昆虫霊を大量に入れてやりましょうか!?怖いですよ気持ち悪いですよ!!ゴキブリ霊を特に多めに入れてあげますから!!!ムカデ霊もいいかもしれませんね!!!それか毎日三途の川に沈めて意識が飛ぶ寸前で戻してまた沈めるを繰り返してあげましょうかね!!!!辛いですよ!!!なんせあなたはカワウソですから溺れる経験なんてないでしょうからね!!!!最高最恐の恐怖体験をあげます!!!いーーーやこれでも足りない!!生前どんな死に方をしたか分からんが死んだことを一生後悔するくらいの苦痛を与え続けてやる!!!!!お前だけには特別にね!!!!!!!!!」

「お、落ち着いてください吉弔様!!!  降り上げた尻尾を下ろしてください! これには訳が……」

「言い訳の余地があると思っているのか!? マジのマジでぶちのめしますよ!?」

「違うんです、違うんです!! これ、下っ端どもから、明日に備えて同じフロアに集まっていた私たち幹部たちに渡されて、それでタイミングがタイミングだから危険物なんじゃないかと思って、吉弔様に届ける前に幹部全員で中身を確認しようとなったんです! そしたらそれが……」

「え、ちょっと待って。もしかしてこの中身、幹部全員が見たということですか?」

「そうですが……」



あ、心が折れた音がした。
生前、いろんな幻獣からバカにされたときも、殺される直前でさえも折れなかった心が、折れちゃった。
どうしよう。



「あのー、吉弔様ってもしかしてこういうのが好きなんですかね……私は凄く良いと思いますよ! ほら! ほかの幹部も良い趣味してるな吉弔様って言ってましたよ!!」



あ、心が追加で折れた。それもボッキボキに。
優しくされた方が辛いってやつだこれ。
普段優しくされる経験がないからわからなかったけど、こういうことなのね。なるほど。



「……カワウソ、下がりなさい。届けてくれてありがとうございます。とりあえず、この本は発送ミスです。私とは一切関係ありません。あとで私が処分しておきますので、他の幹部にもそう伝えておいてください」
「あ、ええと……」
「いいから下がりなさい。早く、急いで」
「は、はい!! 失礼いたしました!!!」



扉が閉まり、部屋には髪を乱した下着姿で鹿の写真集を持った私が一人取り残された。

……これは現実なのだろうか。目の前がぼやけて見える。足取りもおぼつかない。
なんとか仮眠用のソファベッドまで辿り着き、体から倒れ込んだ。
そして大きく息を吸い込んでから、クッションに思いっきり顔を埋める。


「あああああああああああああ!!!!!!
あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

喉の中と外がひっくり返るくらい叫んだ。
喉が潰れてしまってもいい。
むしろ潰れてしまいたい。
意思表示できなくなってしまって、ただ沈黙をし続けるだけの存在になり果てたい。
何を問われても、喋られないのだからしょうがないじゃないなんて言いたい。言えないが。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」

このまま叫び続けて叫ぶことしかできなくなりたい。
何を問われても、叫ぶことしかできないのだからしょうがないじゃないなんて言いたい。
私の有り余る理性が、そうはさせてくれないが。

どうしよう、マジで心が張り裂けそう。
どうしよう、明日から幹部にどのような面で命令すればいいのだろう。
どうしよう、幹部以外の下っ端にも言い触らされたら。
いや絶対言い触らされる。こんなもの、噂にするには最高の素材じゃないか。
たぶん、他の組のやつらにも言い触らされる。天狗の霊とかにも言い触らされる。そして畜生出版のゴシップ誌にも載る。
あーあ、マジで終わった。組長人生終わった。こっそり人間界にでも行こうかなほんと。
頭の中で黒く混沌としたとした何かが高速で回り続けている。頭いたいし気分わるい。



完全に自暴自棄になりかけたその時、そういえば明日からのことをどうしようとふと思った。
そうだそうだ、奇襲のことを知った勁牙組がどう動くか考えないといけないんだった。

……あーうん。いいや、知らん。もうどうにでもなれ。明日のことは明日の自分が解決してくれる。
大丈夫さ、さっきはああなっちゃったけど、私は強いから。なんせ、何もないところから全て跳ね除けてのし上がってきた吉弔八千慧だから。今はなんかもうどうしようもない感じだけど、明日になればまたクールでカッコよくて畜生界を裏で操る鬼傑組組長の吉弔八千慧に戻っているから。
組員のやつらも、どうせ明日には忘れてる。意外とこういうのって、本人が気にしているだけのパターンのことって結構あるし。
そうそう、大丈夫、大丈夫……今日はもう寝てしまおう。もしかしたらこれ夢の可能性もあるし。1パーセントくらいは。
まあ驪駒も明日の朝すぐには直接的なアクションは起こすまい。そこまで脳筋じゃないし、うんきっとそう。
だから今日はもう寝た方がいいんだ……グンナイ畜生界……




-------




「ふはは! どうだくろこまーまいったかー」
「ぐええやられたあ」

私の目の前で情けなく這い蹲る驪駒。
驪駒のトレードマークである翼の付け根を片足で踏みつけ、勝ち誇った表情で鬼傑組の動物霊たちの方を向く。
瞬間、ドッと大歓声が私に向かって湧いた。

とうとう驪駒に勝利した。
苦節1000年とちょっと。常に畜生界の2番手、3番手で辛酸をなめ続けてきた鬼傑組が、ついに牛耳る時代が到来したのだ。
ははは、この世界は私のもの。
勁牙組のクズどもが、ほれほれ、私の足を舐めるがよい……って本当に舐めるやつがいるか!
気持ち悪い……ってあなたは「DEER☆BOYS」の鹿太郎くん!?
ひああ、ごめんなさい! 気持ち悪いなんて言ってごめんなさい。
きもちわるくないですとてもかっこい



「吉弔様――――!!」
「んんん……鹿太郎くん、様付けなんてやめてくださいよ……」
「吉弔様!!! 起きてください!! 大変なことになっています!!」
「……えっ!?」

人の安眠を邪魔しやがって……うるさいなあと思ったら、目の前にカワウソ霊がいた。
あれから部屋に結局ロックをかけていなかったのだ。
とはいえ、ノコノコと入ってきやがってコイツ……やはり処遇は考えなければいけない。

「……こほん。まったく、私の部屋に勝手に入ってきて騒がしいですね。何事です」
「そ、それが、勁牙組の驪駒様が吉弔様に決闘を申し出ているのです!」


……え?


「しかも、もうすでにこのビルの目の前に来られています! 大量の組員を率いて!」

嘘でしょ。

「吉弔様が1対1の決闘の申し出に応えるなら、鬼傑組の組員に手を出すことはしないと仰っているのですが……吉弔様ぁ……」

クソ! あの脳筋野郎め!! 本当に翌日に来るヤツがあるもんか!!
しかも、1対1の決闘だと!?
時間さえあればいくらでもタネを仕込むことができたが、今回はない。となると、正真正銘の力勝負だ。
悔しいが、純粋な力なら驪駒は畜生界最強である。計略を巡らせ、搦手で戦う私には、圧倒的不利な状況……普通にやれば、まず勝ち目はない。

「き、吉弔様ぁ……ご決断を……!」

カワウソは今にも泣きそうな形相でこちらを見つめている。私に頼るしかない、縋るしかないという面持ちで……

豊富な選択肢から最良のものを選択し続け、最短で勝利を掴むのが鬼傑組である。
しかし今、目の前に、選択肢は、一つしか……ない!

「わかりました。その勝負引き受けましょう。今から準備をするので、勁牙組にその旨を伝えてきなさい」

カワウソの表情がパァッと明るくなった。

「は、はい! 早急にお伝えいたします!」

足早に立ち去るカワウソ。
一方私といえば、得も言われぬ高揚感と万能感、そして少しの絶望感が心の中で渦巻いていて、それでいて妙に冷静な自分がいた。
腹を括るということはこういうことだろうか。早く、身支度をしなければ。そういえば下着のままだった。うわあ。




---------




鬼傑組本部超高層ビル1階の自動ドアが開く。
目の前に広がっていたのは異様な光景、そして熱気だった。
ビルの周囲を勁牙組の組員らが完全に包囲し、熱狂したヤツらが私に対して暴力的な言葉を豪速で投じる。

「出てきたぞ!! 鬼傑組の吉弔だ!!」
「覚悟しろコラァ!!!」
「驪駒様、やってしまってください!!!」
「勁牙組サイキョー!!!!!」
「変態鹿ヤロー!!」
「組長! あの余裕ぶったヤツに一発お願いします!!!」

その他、聞くに堪えない罵詈雑言の嵐。弱いヤツほど吠えるとはまさにこのこと。所詮は驪駒がいなければ何もできない暴力だけの輩どもめ。
……あれ、私の勘違いじゃなければ暴言の中に変なのが混ざっていたような気がする。
気のせいかな。気のせいだよね。

「吉弔様!」

カワウソが不安そうな表情で駆け寄ってきた。
その方向を見れば、このビルの中にいた鬼傑組の幹部や一部組員が、霊ということを抜きにしても青ざめた表情をして立ち尽くしている。

「や、やっちゃってください……吉弔様」
「いつもの搦手でお願いします……」
「……ぷっ」
「信じています吉弔様」
「全力で応援させていただきます! 吉弔様!」
「……ぷぷっ」
「くみちょぉ……がんばってください」

人員の差もあるが、明らかに勢いやトーンが勁牙組と比べて物足りない。情けないと思うが、状況が状況だから仕方がない。
……というか、私の顔を見て幹部の内の何人か笑いをこらえたような表情をしていないか?

……昨日のことか!? 昨日のことかァ!?!?
あああああああああああ!!!
最悪のタイミングで恥ずかしさがぶり返してきた!
そんな状況じゃないのに!
というかアイツら、こんな状況でよく昨日のことを思い出せるな!!
どうせ戦うのは私だからって、あとは成り行きまかせだという感じで意外と余裕なのか!?
クッソ、笑いをこらえていたヤツの顔は覚えたぞ……この勝負に勝った暁には絶対に消してやる!!!!!


「おいおい吉弔、珍しく殺気が隠せていないじゃないか」

頭の中で黒いものをぐるぐると渦巻かせていた私の思考を遮る者の出現。
目の前にはあの忌々しき馬、勁牙組組長 驪駒早鬼がいた。
コイツの顔を見ると、否が応でもスイッチが切り替わる。

「いやいや、あなたのことを見ると少々イライラしましてね」
「おっと、イライラしているのはこっちの方さ。また性懲りもなく奇襲作戦でうちのことを潰そうとしてさ。小手先で潰せるような勁牙組じゃあないのに……戦いは頭じゃなくて力、そうだろう?」
「あなたの方こそ、まさか鬼傑組の情報をハッキングするなんてね。やはり力だけでは勝てないということが分かったのですか? 霊長園の騒動のとき、私に頼るしかできなかったことを思い出したのでしょうかね」
「いいや、違う違う。私は吉弔のしているような、汚い手を使って汚く勝利するなんてことはしないからな。私は“汚い手を使ってでも正々堂々と”、お前のような実力者と真正面からぶつかりたいだけなんだよ。特にお前は、こうでもしないと1対1で戦おうとはしないからなあ」

この戦闘狂いめ。
組長同志が殺気を隠そうともせず、こうして対峙することは滅多にないことだ。目の前にすると、凶悪なほどの力をひしひしと感じる。この私でさえ、油断すれば足が竦みそうになる。
怖くない訳がない。しかし、私の中で勝負はすでに始まっている。いざ弾幕の撃ち合いになる前に、いかに精神的優位を保っていられるかが重要なのだ。
無論、私の能力である逆らう気力を失わせる力はコイツには効かないし、皮肉や脅しが効く相手でもない。
だが、少なくとも一歩でも後ろに引き下がれば、対等の条件は勝負前から崩れる。

「まあ、口喧嘩はもういいよ。それよりも体を全力で動かしたい気分だ!」
「それじゃあさっさと始めましょうか。私も暇じゃないんでね」
「本当に一言多いヤツだな! そういうところが気に食わん!」

そう言い放ち、驪駒は私から距離を取る。その距離を取る行為一つにしても俊敏で隙がない。
今から私はこんな化け物と、力と力の勝負をするのだ。

驪駒と1対1で戦うのは実に何百年ぶりか……基本的に奇襲や複数人対1の状況を作り出し、優位な状況で戦いを挑むのが鬼傑組の常だった。
そんな状況でも驪駒は力と速度だけで戦況をひっくり返してきた。そして鬼傑組といえば、甚大な被害を被る前に早期撤退を決定し、また次の作戦を数年単位で練る……そんなことを繰り返してきた。
そんなヤツに、どう立ち回る。
下手に先手を撃つのは致命傷、攻撃には必ず隙が伴う。負けない戦いをしなければならない。

「どうしたボーッと突っ立って……そっちが動かないならこっちからいくぞ! 『スリリングショット』!」

驪駒がスペルカードの詠唱を終えた瞬間、なんてことのない密度の弾幕が私の周囲にばら撒かれる。
あの脳筋め、いきなりスペルカードをぶっ放すとは、作戦も何も無いんだなほんと。
肝心の弾幕は問題なく避けられるレベルで、内心安堵した。
アイツが畜生界のトップに鎮座している間、こちらも黙って指を咥えていた訳ではない。
私は、あの時より遥かに強くなったのだ。

そう思っていた時、驪駒がニヤッと笑ったのを私は見逃さなかった。
何かがくる。

「そぉれ!!」

アッという間もなく、目に前に超高密度の弾幕が展開された。
これは、当たる――と思った刹那、私の数センチ両横を一糸乱れぬ弾幕が、駿馬の如く駆け抜けていった。なんという、なんという暴力的な速度。
驪駒のもとから私に弾幕が辿り着くまで、コンマ何秒しかなかった?
どんな戦闘狂なら、あれが敢えて自分から狙いを外した弾幕だと瞬時に見抜ける?
額から、冷や汗がタラーっと垂れた。

「さすが吉弔。すぐさま弾幕の特性に気が付き、動かないという選択を取れるなんて。こけおどしの弾幕は通用しない訳だな! それでこそだ!」

いや、違う。動けなかったのだ。スペルカードで跳ね返すという判断すらする余地もなく、為す術もなく立ち尽くしていたのだ、私は。
これが驪駒にとって、様子見として放つ弾幕のレベルだ。
一瞬で勝気な心を壊された。真正面からぶつかり合うなんて、以ての外。やはり、搦手で戦うしかない。

とりあえず通常弾幕を展開しているが、私の弾幕は密度こそあるがスピードはなく、じっくりと相手を追いつめていくものである。
驪駒は化け物じみた動体視力だけで前進しながらそれを避けてしまい、簡単に懐に潜り込んでくる。
そして至近距離は、驪駒が最も得意とする距離である。そこから速い弾幕を放たれて、まともに避けられるとは思わない。
そうなる前に、戦況を動かす。

「普通の弾幕でつまらないな。お前のスペルカードが見たい!」
「言われなくとも今使うところでした。『亀甲地獄』」

何もない空中を弾幕が分断する。
弾幕によって六角形に囲まれた空間が現れては消え、現れては消え、驪駒の動きを制限する。
不可視の使い魔に弾幕展開の演算を組み込んだ、まさに鬼傑組らしい頭脳派の弾幕。
初見であればその独特な軌道に戸惑い、被弾してしまうヤツも多いが、勿論 皆が皆馬鹿ではない。頭のいいヤツや戦闘経験の豊富なヤツは弾幕展開の法則を一目で判断し、安全地帯を割り出す。目の前の驪駒も例外ではないだろう(無論後者)。
しかしそこに追尾弾を混ぜてやると、大抵のヤツは頭を混乱させそのまま被弾してしまう。

「吉弔らしい、ジメジメとした弾幕だな。どんな手でも相手を被弾させさえすればそれで勝ち、という思考が手を取るように分かる。しかし私にかかれば余裕だがな!」

驪駒は追尾弾ももろともせず、簡単に避けてしまう。
……そうそう、そうやって余裕ぶっていれば良い。驪駒がこれを簡単に避けてしまうなんて計算の範囲内なのだ。

「スペルカード展開終了!」
「なっ、このタイミングでだと?」
「少しは周囲を見たらどうです?」

最初から目的はこのスペルカードで被弾させることではない。あくまで、驪駒を無意識に不利な環境下へ誘導することが目的だ。
驪駒は今、前方と上方以外を高い高い崖に取り囲まれている。これでは、得意の身体能力によるゴリ押しで弾幕を避けることもできない。スペルカードで跳ね返すにも、下手に弾幕を放てば周囲の崖が崩れ、押し潰されることになる。

まったく、これだから馬鹿の相手は楽だ。私にかかれば、スペルカードさえ撒き餌だというのに。
やはり搦手こそ勝利への最短経路なのだ。最初からこうすれば良かった。

「喰らえ!」

為す術ない驪駒に向かって、私の出しうる最速かつ最高密度の弾幕を放つ。
滅多に出すことのない全力の通常弾幕……通常弾幕でやられるのは惨めだろう。
そのまま、くたばれ。

私の放った弾幕は、驪駒の周囲の崖諸共破壊し尽くし、凄まじい轟音を鳴り響かせた。辺りには周りが見えなくなるほどの粉塵が舞っている。
なんとあっけない……しかし勝った。
生前、あの聖徳太子の名馬として華やかな数々の伝説を残した驪駒を、生前、龍のおまけだとして蔑まれてきた私が、1対1の勝負で倒したのだ。
畜生界の歴史が変わった瞬間だ。私が驪駒をも上回る吉弔八千慧なのだ。
二度と誰も逆らえない、最強の組長だ。



「吉弔!」

背後から、聞き慣れた声が聞こえた――驪駒!?

「中々楽しいことしてくれるじゃないか! 面白い、面白いぞ!!」

背後を振り返ると、確かに驪駒だ。
無傷で、ピンピンとしている。

「そ、そんな……先ほどの一撃を避けられるはずが……」
「どんなヤバい弾幕が飛んできたって頑張れば何とかなるもんだよ。とりあえず反射的に上にピョーンって跳ねてみたら、避けられたさ!」
「でも! あの状況、どんなに速く反応しても高度が足りないはず……!」
「知らん。避けられたもんは避けられたんだから、ただそれだけだろ?」

嘘だ……上に逃げられることも想定して、それでも避けられないような弾幕を放ったはずなのに……コイツ、どこまでイカれた身体能力を……!
努力とか、そんなんじゃどうしようもならない差を、ヒシヒシと感じて絶望的な気分になる。
目の前の驪駒が、いつも以上に大きく見える。完全に、気圧されている。

「そら、仕切り直しだ! 『ブラックペガサス流星群』!」

目の前に、速度・密度・大きさ全てが申し分ない水準の星弾が瞬く。
眼が追い付かないが、息を切らしながら髪を乱してギリギリのところで必死に回避する。

……どうして、鬼傑組の組長であり、私に逆らう者などほとんどいないような、恐れられるべき存在の私が、こんな苦しい思いをしなければいけないのだろう。
惨めだ。
私は、惨めな存在が大嫌いなのだ。
生前の自分も大嫌いだった。だから、畜生界でのし上がり、強く、畏怖される存在となった。事実、組員は私のことを恐れ、口出しも一切してこない。
なのに……

「『龍紋弾』!」

本来、最後の切り札である龍紋弾をここで切る。
トリッキーな軌道を描く弾幕が拡散と収束を繰り返しながら相手に向かっていく、それでいて密度やスピードにも優れている、私の全てを注ぎ込んだスペルカードだ。
耐久性にも非常に優れ、スペルカードの一つや二つでは跳ね返すはできない。
地上から来た巫女らにも力を抑えたものを放ったのだが、それでも非常に苦戦して、そのままだと倒してしまいそうだったから途中で切り上げたくらいだ。

「ほほう。これは流石の私でもまともに避けるのは厳しそうだな……真正面からゴリ押させてもらう! 『マッスルエクスプロージョン』!」

スペルカードを詠唱後、驪駒が気を集中させ、力を溜め込む。
そうだ、無駄に体力を消費しろ。それが一番の目的だ。これは相手の弾を相殺する力に長けた弾幕なのだ。精々息を切らして抵抗して、お前も惨めな表情を私に見せてみろ、驪駒。弱り切ったところに、今度こそとどめを刺してやる……

「はぁぁぁあああああああああ!!!」

驪駒が大きく叫び、溜め込んだ力が爆ぜる。その瞬間、凶悪な速度・密度の弾幕が、地鳴りのような音を鳴り響かせながら、爆風とともに弾け飛ぶ。
強固な耐久力を誇る龍紋弾を簡単に貫通しながら、私のすぐ近くまで飛来してくる。
そんな……とっておきの弾幕がこんなに簡単に……
気付けば必死に抵抗しているのは私の方だった。
相手のスペルカードをなんとか相殺まで持ち込む。

はぁはぁと息を切らす私の目の前に、驪駒が立った。

「いい弾幕だった! しかし、お前の本気はまだまだこんなものではないよな?」
「……当然です」

嘘だ。本当は万策尽きた。
いや正確に言えば、これからどんなに頭を回して搦手を使っても、コイツは簡単に想像を凌駕し、打開してしまう。そんな未来がはっきりと見えたのだ。
これはどうしようもない。

「その割には威勢が無いように見えるがどうだ?」
「能ある鷹は爪を隠しますから。どこかのプライドだけの主と違ってね」

本当にプライドが強いのは私なのだ。こんなに追い込まれても、どうしようもなくボロボロでも、弱い姿は見せたくない。それが吉弔八千慧なのだから、仕方がない。

「どこかの主ねえ、それは同感だが……まあいい! それじゃあ遠慮なくいかせてもらおうかな!」

至近距離でスペル詠唱の構えに入った驪駒を前に、身構える。
負け戦と分かっていてなお戦いを続けることほど、残酷なことはない。

「吉弔様――!!」
「負けないでください! 吉弔様!」
「鬼傑組がんばれえええええええ!!!」

ここにきて、勁牙組の声にかき消されっぱなしだった、鬼傑組の声援が聞こえてきた。ヤツらもきっと、無意識に負けの臭いを嗅ぎとり、加勢しているのだろう。
が、今更遅い。
それに、味方の声援でパワーアップできるほど畜生界は甘くない。
それは私が一番知っている。

「いくぞ! 『ライトニングネイ』!」
「……『搦手の鬼畜生』!」

必死の思いで放った私の炎弾は瞬く間にかき消され、眼が潰れる程眩いレーザーが、私の眼前に迫る。
これは、避け切れない。被弾する――




「こらー! あなたたち、また好き勝手暴れてー! 磨弓、やっちゃって!!」
「はい! 袿姫様!」



……え?
なんだ、何が起こった?
私は、被弾したはずでは?
それが事実ではないということを、私の目の前にいる土の塊の後ろ姿が物語っていた。
コイツ、あの鉄をも貫通するであろうレーザーを体で跳ね返したのか。


「おい! またコイツかよーーー!!」
「あとちょっとで勁牙組の勝ちだったのに、勝負の邪魔してんじゃねーぞー!!」
「帰れ帰れーー!!!」
「太いぞ!」
「驪駒様! コイツごとやってしまってくださーい!」
「失せろーーー!!」


勁牙組からの罵声が飛び交う。
緊張の糸が解れた私は膝から崩れ、へたり込む。
……もしかしてこの混乱に乗じれば、驪駒にタイマンで負けるという事態を避けられるのでは?

「おいおい袿姫! こいつは本当に興醒めだ! 水入らずの真剣勝負に割り込んでくるなんて、何にも分かってないんだなあ、お前!」
「何にも分かってないのはあなたの方でしょ? ちょっと私が畜生界を離れてたらこれなんだから……どうせ人間霊の処遇を巡って争ってたんでしょ?」
「い、いやいや、違うってば! 私はただ真剣勝負がしたかっただけでさあ」
「言い訳無用! この造形神の前ではすべてお見通しなんですからね!」

驪駒が押される姿なんて、本当に袿姫と埴輪の前でしか見られない。
袿姫のことは嫌いだが、驪駒のことは大嫌いだし、いいザマだ。もっとやれ。

「だ、だからさあ、話を聞けってばー! ほんとムカつくヤツだなあ」
「袿姫様、もうやっちゃっていいですかコイツ」
「しかたがない、しかたがないねぇ……やっちゃって、磨弓!」
「了解です! そこの馬、覚悟はできたかしら?」
「待って待って待ってよお! おい、吉弔! 助けてくれ!! コイツを倒せるのはお前しかいないんだって! 何ニヤニヤした顔してんだ! ここは前みたいに力を合わせようじゃないか……おい、聞いてるのか!!」

聞いてない。

「あ、あ、あ、あ、ああああああああああ!! やめてええええええええええ!!!!!」
「おりゃあ!」
「ぐはァッ!!!!」


埴輪の一殴りで、あの強靭な肉体(霊体)を持つ驪駒が、鬼が水子の霊をぶん投げたがごとく簡単にぶっ飛んでいく。
……あれは、霊体といえど全治6か月だな。

「くみちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「クッソ、覚えてろおおお!!」
「はにわばーか!! ばーか!!!」
「次がお前の最後だからなー!!!!」

驪駒を失った勁牙組の組員は、残念なほどに典型的な捨て台詞と共に、一部腰を抜かした組員を除いて逃げ帰っていった。
一方、鬼傑組の組員といえば、目まぐるしく変わる状況についていけず、全員棒立ちである。


……さて、良い頃合いだし、鬼傑組もここらで撤退するとするかな。


「おい待てそこの亀」
「ひゃっ」

埴輪が後ろから私の右肩を掴む。
その手は信じられないほど冷め切っていて、霊体の冷たさとはまた違う、血の通っていない人工物の冷たさだった。

「……なんです?」
「『なんです?』じゃないでしょ。自分だけ逃げられると思っているのかしら?」
「キャー! 磨弓ちゃんカッコいい! さすが私の作った磨弓ちゃん! やっぱり私って造形の才能あるわー」
「袿姫様のお力があっての私ですから」

そう言いながら、右肩をグルグルと回す埴輪。
あ、これさっきよりヤバいのがくるぞ。

「待ちなさい。私はあなたたちと敵対するつもりはありません。今回は正真正銘、人間霊の話は関係ないのですから。しかしながら、これは良い機会だ。私はあなたと畜生界の未来について議論がしたい。殴り合いで解決させるよりも、そちらの方がよっぽど建設的だとは思いませんか? 賢明なあなたたちなら分かってくれるはずです」

さあ、私の本領の見せ所だ。
私の逆らう気力を失わせる能力は、私の全身から発せられる恐ろしき気で相手の勝気を削ぐという力だけではなく、話術や計略によって優位なフィールドを作り、相手を言い包める力でもあるのだ。
目の前の埴輪と埴輪メイカーは、すでに私の掌の上……

「うーん、どう思う? 磨弓」
「とりあえず一発殴りましょう!」
「やっぱりあなたは私の創造物ね、私もそう思ってたところなの! 磨弓ちゃんやっちゃえー!」

そういえば話聞かない系のヤツだったコイツら。ほんと嫌いだわこういうヤツら。

「どりゃッ!!」
「ぎゃはッ!!!!」

埴輪の渾身のパンチが私の腹を直撃。もはや痛いという感覚すら湧く余地もない。体が激しく回転しているのか、目の前の景色が面白いくらい変わる変わる。
畜生界の赤黒い空、薄汚い路地裏、主人の前でドヤ顔をしている埴輪、その姿に狂喜乱舞するイドラデウス、鬼傑組本部ビル屋上のガーデニング、必死に逃げる勁牙組の組員ら、そして最期に見えたのは、ポカーンとした表情でぶっ飛んでいく私を見つめる鬼傑組の組員だった……




---------




頭にのしかかった重い塊がふと消えた気がした。
眠っていた前後不覚の意識が急に現実世界に呼び戻された。もやっとした視界が目の前に広がる。
薄汚れた白い天井、付いたり消えたりを繰り返す電灯、微かに聞こえてくる寝息。ここはどこだろうと思って、立ち上がろうとしたとき、自分の体の重さに気付いた。体を動かそうとしても、ろくに動かせない。血の池地獄に投げられて溺れそうになった時を思い出した。
意識が確かになっていくに連れ、その他の不調も感じられるようになってくる。
喉が首の後ろに張り付いたような感じがする。息苦しい……

「水……水を誰か持ってこい……!」
「はっ! 吉弔様!?」

聞き慣れたカワウソ霊の声だった。

「おーい!! みんな、吉弔様のお目覚めだぞー! 起きろーー!!」
「いいから、水を……」
「は、はい! すぐにお持ちいたしますので!」

そう言ってカワウソが他の幹部に水を持ってくるように促した。
ものの数秒も経たぬうちに、透明のコップに入った一杯の水が届けられた。

「吉弔様、ご自分でお持ちになりますか?」

カワウソがそう言い終わるよりも先に水を奪い口に流し込む。なみなみ注がれた水を一気に飲み干すと、意図せず「はぁー」と声が漏れた。
まだ喉に何かが詰まったような違和感が残るが、一息つけた気分だ。
周囲に目をやると、鬼傑組の幹部がカワウソの呼びかけに応じてゾロゾロとやや狭い部屋の中に入ってくる。

「カワウソ、ここはどこです?」
「鬼傑組の直営病院です。すぐにでも運びたかったので、基幹病院にお連れすることはできなかったのですが……」

病院と言われ自分の体の方に目をやると、確かにベッドの上で仰向けになっている。
体の上に布団がかけられていることさえ気付いていなかった。

鬼傑組はいくつかの直営病院を持っている。
畜生界では治療の相手が霊体なので、精神に直接干渉するような治療が主である。霊体にとっては体の痛みも精神を治療すれば治るものだ。

「吉弔様、体の具合はいかがですか?」
「何かお持ちいたしましょうか?」
「お水のおかわりはいかがですか?」

集まってきた幹部たちから矢継ぎ早に声を掛けられる。
全員が全員、心配そうにソワソワしながら私を見つめている。このような視線を向けられるのは、どこか苦手だ。

「いや、結構です……それよりも自分の仕事の方は大丈夫ですか?」
「こんな事態なのに組長のお傍を離れることなんてできませんよ!」
「そうですよ! 吉弔様があっての我々ですから!」

普段なら、「いいから働きなさい。こんなことでボーッと立ち止まっている間にも畜生界は経済戦争を繰り広げています。働くことこそ鬼傑組に貢献できる一番のことです」なんて言って突き放すのだろうが、なぜだかそう言う気になれなかった。

「なるほど。しかしもう体の調子は大丈夫です。とりあえず鬼傑組本部に戻りま……いたっ!」
「ああ! 安静にしてください!」

立ち上がろうと体を動かした瞬間、体に激痛が走った。思った以上に深刻なダメージを受けているようだ。これはしばらくまともに動けそうもない。
うう、やりたい仕事がわんさか残っているというのに……

「しばらく安静にするようにと、医師からの伝達です。お休みください」
「普段の疲れも溜まっていますでしょうし……」
「そうですよ、365日働いているんですから、たまには休むべきです」

今回のせいで予定が狂った進行プロジェクトが幾つもある。本当は今すぐにでも起き上がって仕事に向かいたいのだが、確かに体が言うことを聞いてくれなさそうだ。
行き場のないもどかしさに、はぁとため息を吐く。

「……では少しだけ、少しだけ休みましょうか」
「それが良いです!」

それにしても、決まった一日のルーティーン以外で、ベッドの上でゆっくりと横になるのはいつ以来だろうか。
思えば私は働いて働いて、また働いてきた。働くことこそ畜生界において生き残る唯一の術である。一日単位で畜生界の情勢は移り変わる。絶対に体を休めることはできない、そう考えて今までやってきたし、現にそれで私は成功を収めている。体に不調が現れても、働く間に回復を待った。

しかし、それも少しだけ疲れた気がした。

私はこんなに頑張っているのに、たったこの数日で組員に私の隠していた趣味のことが広まってしまうし、驪駒には実力差を見せつけられるし、埴輪に殴られ再度組員に醜態を晒してしまったし……
しかも何より今、直近で醜態を晒した組員に、私は優しくされている。無能だと見下し、道具としてしか見てこなかった組員に。
情けない。布団の端をぎゅっと握る。たったそれだけのことですら、少し体が痛んだ。

病室の中が落ち着き始めたとき、ドタドタとうるさい足音が聞こえてきた。
そしてドアが開き、周りの幹部がギョッとする中、私の目の前に駆け寄ってきたそいつは私にこう言った。

「吉弔様! 体調はいかがですか!」
「お前は、暴風地域に送ったはずでは」
「はい! 遠くて来るのが大変でした! しかしそれよりも心配が勝りましたので!」

息を切らしながらそう言うコイツは、(寝ていた時間がどれくらいか分からないのでおそらく)昨日、仕事で重大なミスを犯して地獄と隣接する鬼傑組暴風地帯支部に左遷した、元幹部である。

「あんな仕打ちを受けた翌日に見舞いに来られるなんて、随分図太い神経を持っていますね」
「ええ、吉弔様には恩義を感じているので。当然です」

悪びれもなくそう答える。本当に図太く、そして無能らしい行動である。
本当にお前は、いやお前らは、無能のくせに私に優しさを見せるな。
優しくされればされるほど、偉大なはずの自分が矮小に感じて、どんどん昔の弱い自分に戻っていく気がして、惨めで辛くなる。


「あ、あれ……吉弔様、なぜ涙を……」
「ほらー、あんなミスしたお前がおいそれと戻ってきたからだろー?」
「ほんとほんと。組長、そうですよね?」
「バカ! 言い過ぎだってそれは! そんなことないですよね、吉弔様!」


私の前で馬鹿な小競り合いを始める組員たち。
涙の理由も察せぬまま、なんとか場を明るくしようと努めているのだろう。そういう気遣いが本当に要らないというのに、それにそんなことされると余計に。


「うっ、ぐっ……お前たち、なぜ私に優しくする……私はお前たちに優しくしたことなんてないのに。私はお前たちを扱き使うことしか考えていないのに……」

漏らしたくもない嗚咽を漏らしながらそう話し始めると、ザワついていた部屋がシンと静かになった。

「はっきり言いますが、私はそんなに従われるような存在じゃありません……驪駒と戦うときはいつも内心ドキドキしているし、埴輪と直接交えるのが嫌でいつも組員に行かせるか、袿姫が単独行動をしているときを狙ってけしかけることしかしないし……こんな私がトップだから鬼傑組は一番手にはなれないんでしょうね」

喋れば喋るほど、今まで作り上げてきた吉弔八千慧という完全なる像が音をたてて崩れていっている気がする。
しかし、一度ヒビが入った心のダムから言葉は溢れて止まらない。自分が一番嫌いな惨めな存在に自らなっていく。

「……今聞いたことは忘れなさい。とにかく、今日はそっとしておいてください。大丈夫です、また明日からいつもの吉弔八千慧に戻ります。ああ、もし失望した者がいれば、勁牙組でも剛欲同盟でも好きなところに行けばいい。その代わり、私を敵に回すとはどういうことか教えてあげますから」

涙で腫れた目で睨みをきかせながら、震えた声でそう宣言するのが、粉々になったなけなしのプライドで発すことのできる最大の言葉だった。
……我ながら滑稽だ。自分に自分で失望する。

「失望なんて、するはずがありませんよ」

カワウソがぼそっと呟く。
それを皮切りに、周囲の組員も次々と叫び始める。

「そうですよ! 吉弔様は畜生界一の組長です!」
「私は吉弔様に憧れてこの組に入ったんです! そんな吉弔様に扱き使われるなら本望です!」
「バカな勁牙組や実力のない剛欲同盟がこの先やっていけるとは思えません。信じられるのは吉弔様だけです!」
「また人間霊を道具のように使って畜生界でのし上がりましょう!」
「私も『DEER☆BOYS』大好きです! 写真集買いました!」
「アイラブ鬼傑組!」

ギャーギャーと騒ぐ組員のヤツら。
弱みを見せたはずの組員に、“それでも”ついていくと言われる。

そうか。
私はなんて、なんて惨めで、でもなんて幸福なんだろう。

この幸福を素直に噛み締めることはまだ今の自分にはできない。
しかし私は鬼傑組のため、全力を尽く……って、あれ。やっぱり一人、変なことを言ってるヤツがいなかったか。
いや、確実にいた。だって私がその名前を聞き間違えるはずが……


「あ、私も『DEER☆BOYS』の写真集買いましたー!」
「わ、私も私も!」
「あー、きぐうだな~私も買いました!」
「い、意外と見てみると、アイドルっていいなっていうか、鹿っていいなっていうか……」
「鹿男くん超カッコいいッすね! 推しです!」
「く、組長! 今度一緒にコンサートに行きましょうよ!」
「握手会も行きましょう!」
「アイラブ『DEER☆BOYS』!」



あ、これ皆で口裏合わせて組長が恥ずかしくないようにって気を使って買ったやつのアレだ。
あ、あ、あ、あ、どうしよう、たぶん顔真っ赤。
動物霊人生史上、今の状況が一番恥ずかしい。
死にたい。死んでるけど。



「あ、あぁのそのぉ……」
「ほ、ほら組長! 鬼傑組ってやっぱり息ピッタリなんですねえ! みんな偶然同じタイミングで組長が好きなアイドルグループの写真集を買うなんて!」
「あ、あああのですね……昨日も言ったように、私のもとにあのよくわからない写真集が届いたのは発注ミスかなにかで、私は特に興味はなくてですね」
「そ、そうなんですか……? 本当に、興味ないんですか……?」


皆が、「DEER☆BOYS」の写真集を両手に、私の方をじっと見つめてくる。なにこの異様な光景……皆が私の次の一言を待っている。
ど、どうすれば……さっき私の心情を皆に正直に吐露したときでさえ、「DEER☆BOYS」のことには触れなかったのに……そこだけは私の心の最後の防波堤なのに……


「いやその! 本当に興味はなくてですね……」
「えっ!」
「えっえっ」
「組長……?」
「あ、でも、今ので興味を持ったというか、そのー……」
「やっぱり!」
「好きなんですね!?」
「ああでもでもでも別に私は鹿のアイドルなんて興味ないし、初めて知りましたし! 別にこれからも応援する気はないですし!!」


あああああああああああああ!!!
私はどうしたらいいの!!!!!
好きと認めた方がもう楽になれる!
でもプライドが!!
どっちを優先すればいいの!!!!!!!


「まぁ、その……ほんっとうに興味はないんですけど……皆が好きというのなら……私も、好きになっても……いいかな、なんて……」
「!!」
「吉弔様!」
「好きになりましょう! なりましょう!!」
「どうせベッドの上で暇でしょうし、今日は夜通し語り合いましょう!」


なぜか今日一熱狂する組員たち。いや他にタイミングがあっただろう。なぜに。

それにしても、結局認めてしまった……かくして最後の砦は簡単に崩れ去った。
昨日今日だけで色々なものを失った。失いすぎた。
なのに、少しだけ心が軽い自分がいる。物凄い恥ずかしさと引き換えに。

怪しげな表紙の写真集を手に引き攣った笑みで私にあーだこーだと語りかけてくる組員。
こいつらのことは本当にバカなヤツらだと思うし、心底見下しているが、私はこいつらを束ねる鬼傑組の組長 吉弔八千慧である。今まで意識してやったことはなかったが、組の士気を高めるのも組長の仕事だろう。今日だけは、今日だけはこいつらのレベルに私が堕ちてきてやろう。

「と、ところであなたたちはし、しし鹿太郎くんのことは……どう思いますか? ああ、別に私も今日知ったものなのでよくわからないのですが、端麗な顔付きをしているように見えますが……」




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鬼傑組本部ビル最上階。
とてつもないビルの高さと畜生界自体の視界の悪さが相まって、ビルの底は全く見えない。
きっと、畜生界ですら落ちこぼれているゴミが陰惨な今日一日を送っているのだろう。一番上にいる私の知ったことではない。弱肉強食が畜生界の永久不滅の原理である。強いものが上に立つ、いたってシンプルでイージーな世界。惨めな生活が嫌なら、強くなるか鬼傑組や勁牙組に入ればいいだけの話である。


さて、あの悪夢の数日から幾ばくか月日が経った。
宣言通り、あの後からはいつもの吉弔八千慧である。
鬼傑組を畜生界一の存在にすべく、本部ビル最上階から合理的で冷酷な判断を下し、相変わらず無能な組員どもを働かせ、終わりの見えない競争を繰り返す毎日。
ただ一つだけ、変わったことがある。

「吉弔様、畜生出版からお荷物です」
「ああ、どうも……ときにカワウソ、この中には何が入っていると思います?」
「え? あー、畜生出版からなので、やはり『DEER☆BOYS』の写真集……?」
「あら、惜しいですがハズレです。正解は鹿太郎くんの個人写真集です」
「あ、あー! そ、そういえば吉弔様、鹿太郎くんのこと好きですもんね」
「別に好きという訳ではありません。ただ尊さといいますか、彼から光を感じるというだけです。仕方がない、あなたに特別に鹿太郎くんのことについて語ってあげましょう。まずは畜生界に落ちた経歴から話さなければなりませんね。彼は生前……」

このように、組員に気兼ねなく私の趣味話を話せるようになったことである。
今度の鬼傑組幹部慰安旅行では「DEER☆BOYS」霊長園コンサートに行くことも決まった。
私が毎日語る影響で幹部のほとんどが彼らのファンに(おそらく)なったこともあるし、我ながら良い選択をした。

「あ、あの……吉弔様、お話を遮って恐縮ですが私もう行かなければいけないので……」
「ああ、それではまたの機会に話し合いましょう」
「ははは……それは良いですね……それでは失礼します」

さて、私も働くとしよう。
畜生界一の勢力になるために、“私たち”は止まることはできないのである。
今日は例の技術者から正当な手段でハイテクノロジーについて聞き出すとしよう。ならず者に与える技術はないとか言うあのふざけた口をどうしてやろう。なんにせよ二度と逆らえないようにしてやろう、そうしよう。
八千慧組長がどうやってベッドで寝るのか気になります。
それはさておき、お読みいただきありがとうございます。

本編ではクールでカッコよくて残忍な八千慧組長ですが、EDを見てみると意外と表情豊かに感じます。
実は八千慧組長って心の内ではユニークな感情が渦巻いている人(亀)なんじゃないかなと妄想した結果、こうなりました。
ギャップ萌えって良いですよね。

2019/09/19 ネタバレ防止のための表記を消し、タグを追加しました。
おすろのこ
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コメント



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3.100サク_ウマ削除
下らないの好きですね。面白かったです。
4.90奇声を発する程度の能力削除
面白く良かったです
6.50小説嫌いのOさん削除
まだ半分くらいしか読めてないですが、時間あったらもう半分読みます
11.100こしょ削除
非常に素晴らしく良かったです
12.80箱庭療法削除
鹿ネタを下品な部分には極力触れずに作品内に落とし込んでいるのが素晴らしい
個人的にはもっと冷徹な感じの八千慧の方が好きだけどこういうのもいいね
13.90封筒おとした削除
勢い大好きです
18.100名前が無い程度の能力削除
楽しませていただきました。
23.100名前が無い程度の能力削除
面白かったです。
26.90名前が無い程度の能力削除
笑いあり涙あり(?)のコメディがとてもよかった
吉弔にさっそくこんなキャラ付けできてしまうのがすごいけど、それでいて話も面白いのでいいですね
28.100終身削除
感情豊かで俗っぽくて人間味のある内面をひた隠しにして組織をまとめている姿が少しおかしくもあり可愛らしくて愛嬌があったと思います この騒動をきっかけにして鬼傑組の絆が一層深まって組長も少し自分の内面に向き合って一歩前に進めたのかなとおもいます 終始鹿男くんが気になりました
30.100クソザコナメクジ削除
みんなから慕われる有能なダメ組長かわいい。今日も平和な地獄ダナー
31.100Actadust削除
あぁ~かわいい! 年頃の乙女か!
吉弔さんが自分の弱さ、弱点、情けなさを認識しながら、それでも頂点を目指し戦う姿が魅力的でした。面白かったです。
32.100名前が無い程度の能力削除
良い幻覚で面白かったです。
可愛い組長よいですねー……。
33.100水十九石削除
序盤の一見ギャグの様な窮地が驪駒との決闘時に内心の苦悶との対比が生まれていてとても楽しく読ませて戴きました。
八千慧さんのアイドル評や組員の染まり様にも力が入っていて素敵な雰囲気のある作品だったと思います。
一喜一憂がクールでカッコよくてそれでいてかわいい!
35.90東方好きな誰かさん削除
ファーストインパクト:かっこいい…のか?

シリアスとギャグの緩急が本当に上手いですね!
ただ文句でも何でもないのですがやっちぇの誤魔化し方が見たことあるというか「おすのこ令嬢」的というか…w
DEER☆BOYS はギャグ要員w でも組員に心を開くところ好きです!
弾幕のシーンもすごく良く描かれていて、とても面白かったです!
ありがとうございました!!!