Coolier - 新生・東方創想話

二人の出会い

2010/01/20 22:28:59
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初投稿です。こういった文章はは始めて書いたので、どこかおかしな点はいくつかあると思いますが、最後まで読んで貰えると幸いです。








 珍しく、昼過ぎに目が覚めた。自分でも不思議だと思いながら、布団からのそのそと起き上がる。庭のほうを見ると、橙がはしゃぎながら何かを追い掛けている。
「紫様、今日は随分と早いお目覚めですね」
エプロン姿の藍が挨拶をしにやってきた。
「本当に…自分でもびっくりだわ」
「お昼ご飯はどうしますか?、まだ私も橙も食べていませんが」
「……そうね、頂こうかしら」
そう言って、一度部屋の奥に行き、着替えを終わらせてから居間に向かう。
何故こんなに早く起きたのか、原因は分かっていた。

「藍さま、凄く美味しいです!」
「橙…もう少し落ち着いて食べられないのか…?」
藍と橙のやり取りに思わず笑みをこぼすしてしまう。
「紫様、いつもと様子が違いますが大丈夫ですか?」
さすがは私の式神ね、と言ってやりたかったが、その言葉を飲み込んでしまう。
「昔の夢を見たわ」
「………なるほど」
藍はこの一言で察したらしい。
「紫さま、夢を見たんですか?楽しい夢ですか?」
橙が興味津々で聞いてくる。
「そうね、あまり楽しい夢ではなかったわ」
橙はあの出来事の後に生まれたのだから、分かるはずはない。
「あたしも夢を見ました! 手下の猫達をしつけてるんですが、みんな言う事を聞かなくて…」
「それは夢だけじゃなくて、現実もだろ?」
「それは…その…」
そんなやり取りを見て、のんびり夕食を食べながら時間は過ぎていく。

「少し、出掛けて来るわ」
「白玉楼ですか?」
「えぇ」
「気をつけて行ってきて下さい」
藍はやはり私の見た夢の内容を分かっているらしい。
「行ってらっしゃい、紫さま!」
橙が笑顔で手を振って見送ってくれている。たまにはスキマじゃなく、飛んで行くのもいいか。橙に手を振って白玉楼に向かう。
「そういえば、あの日も飛んで行ったわね…」

白玉楼の階段を昇って行く途中、
「貴女がスキマを使わないで来るなんて珍しいですね」
白玉楼の庭師、魂魄妖夢が箒を片手に階段の掃除をしていた。
「たまには、正面から入ってもいいでしょう?」
「毎回、正面から入ってくれたほうが嬉しいのですが」
「……却下」
妖夢は溜め息を一つしてから
「幽々子様は中に居ますよ。」
「そう、ありがとう」
一歩一歩階段を私は昇る。西行寺幽々子との出会いを思い出しながら。



―――これは、そう遠くはない昔の話―――




「はぁ…暇ねぇ」
夕日を浴びながら縁側に座って溜め息を一つ。まだ幻想郷には妖怪が少なく、人間もほとんどいなかった。私は人間を襲ったりさらったりはしない。ましてや、他の妖怪とも余り関わりを持っていない。だからやることといえば、寝てるか人間界に行って人の話を盗み聞きするくらいしかない。
「藍~、なんか面白いことないの?」
夕食が終わった御膳を片付けている藍に話を振ってみる。
「私に言わないで下さいよ、私より紫様のほうが外の世界に行ってるんですから」
藍を作ってから、この家は全て藍に任せっきりになっていた、逆に言えば藍には全く暇がない。
「いいわ、出掛けて来る」
「人間界にですか?ほどほどにして下さいよ」

確かに藍の言う通り、人間界に行こうとした。そんなに私の行動は単純なのだろうか?そんなことを考えながら、自分の足元にスキマを作り、スキマに入る。

今は幻想郷も人間界も桜の花が咲き始める季節になっていた。人に見つからない適当な場所を選んでスキマから出る。行く場所は毎回不定、スキマでほとんどどこにでも移動できるのだから、自分の能力は便利だと毎回思ってしまう。とりあえず賑やかな所、これが行く場所を決める最低条件。いつもは活気ある人間達を見ながら歩いて終わりなのだが、今回の場所は違った。

 「町の奥にある屋敷の桜を知ってるか?」
「あぁ、凄く綺麗に桜が咲きそうだよな」
男二人が立ち話をしている内容が、偶然耳に入ってきた。
「あの家には近づくな、毎年あの桜を見に行った奴はあの家から帰って来ないんだ」
この町に来て、さっきから薄々感じてた妖気はその桜なのだろうか?
「ちょっといいかしら」
私は男達から桜のある家の場所を聞き出し、その家に向かった。

「結構広い屋敷じゃない…」
私の家も広いが、少し関心してしまう。スキマを使って屋敷の庭に侵入し、お目当ての桜を見つけた。
「この桜がねぇ……」
妖気は確かに出しているものの、普通に見ればとても立派な桜の木だ。正直、私も少し見とれてしまうくらいに。
ふと、屋敷の中から足音が庭に向かって近付いて来る。ばれても構わないのだが、一応スキマで身を隠して様子を見る。
スキマの中で待っていると、巫女服のような着物を着た娘が桜の木を見て溜め息を一つついた。
「ここの屋敷に住んでいるのかしら?」
まぁ、出ていって話を聞くのが1番早いのだが、ここは妖怪らしく出てみよう。これでも、私も一応妖怪なのだから。

 「こんにちは」
娘の目の前にスキマを出して、ひょっこりと顔を覗かせる。これが本当に妖怪らしい出方なのだろうかと少し考えてしまう。
「貴女……妖怪?」
特に驚いた様子もなく、私に話し掛けてくる。
「えぇ、しがないスキマ妖怪よ。貴女、一人でここに住んでいるの?」
「そうです、小さい頃からここに一人で住んで居ます」
単刀直入に、私が1番聞きたかったことを聞こう。
「貴女、面白い能力を持っているわね」
「なんで…その事を?」
やっぱりか、と私は確信する。この子は私なんかより桁外れの力を持っている。正直、桜よりこの子のほうが強い妖気じみたものを感じていた。
「どんな能力なのかしら?」
「……死を操る程度能力です」
「あら、単純明快な能力じゃない。その能力、人では辛くない?」
「とても辛いです。できれば人間じゃなく、妖怪になれたらと思う時もあります……」
何が原因でこの子がそんな能力を持ったかはわからないが俄然興味が沸いてくる。桜の事も知りたいし、この子の事も知りたい。しかし、さすがに今日はもう遅い。また明日にしよう。
「今日はもう遅いから帰るわ。人間は寝ないと身体が持たないわよ?」
「もう帰るんですか?」
「また明日来るわ。今度はもっと早い時間にね」
「おかしな妖怪さん」
笑われてしまった。そんなに私はおかしいだろうか?普通の妖怪からしたら、確かに私は妖怪らしい事をした試しは一度もない……。考えてもしょうがないので、一時保留にしよう。
「私は八雲紫。呼び捨てでいいわよ」
「私は西行寺幽々子、幽々子でいいですよ」
お互いの名前を教えあうと、凄く親近感が沸く。こんな感覚、私には始めての経験だった。
「じゃあまた明日ね、幽々子」
「また明日ね、紫」
お互い笑顔で見送って、私はスキマに入り、自分の家に帰る。人間の知り合いができたのはこれが始めてだった。

 次の日、昼過ぎに起きたのはいつ以来だろうか。激しい眠気を抑えながら着替えを始める。始めてできた人間の友人、約束を破るわけにはいかない。スキマを使って幽々子の屋敷に移動する。
屋敷の名前は白玉楼と言うらしい。
「本当に来たのね」
「約束したでしょ、明日は早い時間に来るって」
お互いにそんなことを言いながら、笑顔で挨拶を交わして、取り留めない会話を何時間もする。そんなことが何日も続いた。

 今日ももちろん幽々子の屋敷、白玉楼に行く。今回は幽々子の事をいろいろ聞きたい。藍も紹介したい……話したいが、話せない事が山積みになっていく。いや、今は目の前の桜から聞こう。
「あの桜、妖怪ね。どうして妖怪になったかわかる?」
話した途端に、幽々子は急に暗い顔になってしまった。
「あの桜はね、人を死に誘う桜なの。そして私もあの桜と同じ、人を死に誘ってしまう……」
何が原因なのかは私にはわからない。何か深い理由があるのだろうか?私が質問しようとしたら、先に幽々子から事情を話してくれた。

 幽々子の父親は有名な歌人だった。父親は桜をこよなく愛し、
「私が死ぬ時は立派な桜の側で死にたい」
と言うくらいだったそうだ。そして、この白玉楼にある桜の下で死を迎える。しかしその父親を慕っていた従者達も後を追うようにして次々とその桜の下で自害していった。その結果、桜は人間の精気を吸い上げ妖怪化してしまい、桜が毎年満開になると人を死に誘うようになった。幽々子は元々、霊を操る能力を持っていたが、この影響のせいで幽々子もまた、人を死に誘う能力を持ってしまったらしい。

「西行妖?」
「そう、この桜の名前よ。私はこの西行妖が満開になる前に、なんとしても封印したい……」
満開直前の西行妖を見て幽々子は私に話してくれた。大分前からこの西行妖と戦う事を決心していたのだろう。
「……私にも何かできないかしら?」
友人が困っているのだから、私も協力したい。幽々子の力に少しでもなりたい。始めてそんな思いが生まれ、一瞬で私の心を埋め尽くす。
「ありがとう、でも時間がないわ。開花まで、あと一週間もない…」
返答の言葉が出て来ない。封印結界、今から一週間で覚えられるのだろうか?可能性は正直に皆無だ。
「私も、方法を考えるわ。しばらく家に篭って調べてみる。」
頑張って絞り出した返答は、全然自信のない返答になってしまった。
「ありがとう、期待しているわ。私たちは親友だからね」
幽々子は笑顔で答えてくれた。私は心に誓った、必ず封印結界を覚えるてやると。
家に帰り、封印結界を藍にも手伝ってもらって練習した。最初は失敗といえればまだマシだった。幽々子が待っている、幽々子の力になりたい。その一心で寝る事も忘れて練習に明け暮れた。

 「出来たわ…完璧よね…」
一週間過ぎた明け方、ようやく封印結界が完成した。何とか間に合っただろうか。疲れたなんて言ってられない、早く幽々子のところに行かないと。
「藍、ありがとう」
疲れてきって倒れている藍に、藍を作って始めてお礼を言うが、聞こえてないだろう。スキマを使って早速幽々子のところに向かう。
「幽々子、封印結界を覚えて来たわ!これで一緒に……」
スキマから顔を覗かせた先には、幽々子がいた。満開の桜の下、血まみれになって倒れている幽々子が。
何が起きているか一瞬わからなかった。傍に駆け寄っり、呼んでも返事揺さ振ってもがない。両手には扇、辺りに血が飛び散り、蝶の羽ようになっている。
遅かったのか?それとも私には余り期待していなかった?それとも桜に殺された?それとも………
ふと、私の目から涙が零れる。これが涙なんだ。経験したことのない感覚が込み上げてくる。私は幽々子を抱きしめながら泣いた。思いっきり、時間を忘れるまでいつまでも、いつまでも…

西行寺幽々子、西行妖満開の時、幽明鏡を分かつ。
その魂、白玉楼中で安らぐ様、
その身体を西行妖の封印の鍵とし、封印の結界とする。
もう、あの子に二度と苦しみを味わうことの無い様、
永久に転生をすることのないように……

私は西行妖に封印結界を施した、これで幽々子は救われたのだろうか…?


またいつもの日常が戻ってくる。しかし、何もやる気が起きない。また縁側で溜め息をつくのが毎日の日課となってしまった。
「紫様、新しい家族を紹介したいんですが」
「新しい家族?」
「はい」
誰かを連れて来たのだろうか?それとも、妖怪?

「私の式神になった橙です。橙、私の主人の紫様だ、挨拶しなさい」
「橙です、よろしくお願いします。紫さま!」
子供のような元気な挨拶で私に挨拶してくる。
「よろしくね、橙。八雲紫よ」
「紫さま~、なんで淋しい顔をしてるんですか?笑わないと、いいこと来ませんよ」
そう言うと、橙は私の脇の下を擽りだす。
「ちょっ…!?」
さすがの私でも大笑いしてしまう。
「馬鹿!何をしてるんだ!!」
「いたっ」
藍が私から橙を引きはがし、思いっきり頭を叩く。私は少しボー然としてしまった。
「だって、紫さま淋しいそうな顔してたから、笑顔にしたくて…」
「違うやり方があるだろ!」
「すみません…」
私はそんなやり取りをみてつい笑みを零してしまう。
「あなたたち、親子みたいね」
「私たちは家族ですよ、紫様だから主である紫様に元気がなかったら私たちまで元気がなくなってしまいます。」
そこまで藍に心配をかけていたのか…少し今までの自分に反省してしまう。そして私は決心する。
「白玉楼に行ってくるわ」
「紫様、あなたなら取り戻せます。失ったものは大きいと思いますが、また始めからやり直せます」
「大きなお世話よ、藍」
式神に励まされるなんて、かなり恥ずかしい。ましてや橙もいるというのに。
「行ってくるわ」
「お気をつけて行ってきて下さい」
「いってらっしゃい、紫さま!」
橙に手を振って、白玉楼を目指す。今回はスキマを使わないで行こう。

 今の白玉楼は冥界に存在している。情報によると、専属の護衛がいるとか。
私は白玉楼に続くの長い階段を上り始める。この上に……
「待て、貴様何者だ。ここからは白玉楼初代御庭番の魂魄妖鬼が通さん!」
なるほど、この人が護衛の人か老人だが、気迫と闘気がひしひしと伝わってくる。
「………ふむ、悪かった通っていいぞ、主人をよろしく頼む。」
私と幽々子の事を知っているのだろうか?それとも感じ取ったのだろうか?
私はお辞儀を一つして階段の続きを上り始める。
「師匠!どうしてあんな妖怪を通したりしたんですか!?」
まだ幼い魂魄妖夢が妖鬼に勢いよく聞いてくる。
「妖夢、あの方は幽々子様の古い御友人らしい。」
「あんなやつがですか?」
妖鬼は笑顔で妖夢の頭を撫でながら私のほうを見ている。私は一度振り返り、階段の頂上を目指す。

 見えて来た、白玉楼。何も変わっているところはなかった。庭に入ると、着物を来た亡霊が桜を立っていた。

 また一から始まる。私と幽々子の二度目の出会いはもちろん、笑顔でこの言葉から。

「こんにちは。始めまして」
長々しい文でしたが、読んでいただき、ありがとうございました。
今回は始めてなので、紫と幽々子の話にしてみました。
資料を見ながらの作成だったので、オリジナルではないと思います、すみません。

もう一度、読んでいただき本当にありがとうございました。
ねこみこ【Y】
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コメント



0.410簡易評価
2.80名前が無い程度の能力削除
× 妖鬼
○ 妖忌

何様?と思うかもですが、個人的に悪くはないですね。
しかし、やはりオリジナルな話・発想のが受けると思いました。
ゆかりんとゆゆ様の出会い物語はよく見かけますし。

今後の伸びを期待して、この点数で。
4.80名無し削除
ようつべにこれと全く同じ動画が上がってたな。なかなか良かった。ありがとう。
6.80名前が無い程度の能力削除
誤字
×笑みをこぼすしてしまう。
○笑みをこぼしてしまう。

結構良かったです。
11.30名前が無い程度の能力削除
特にこれといって目新しいものが見受けられない。特別、描写を書き込んでいるわけでもない。
15.70名前が無い程度の能力削除
オリジナルな発想のお話が読んでみたい
今後の期待を込めての点数です。
17.60名前が無い程度の能力削除
タグのやんでれ軍て何ですか?
特にヤンデレだと思う描写はなかったと思うのですが
19.80ずわいがに削除
もっと深い友情を育むのはこれから、ですね。