Coolier - 新生・東方創想話

依神姉妹が外食をするだけ

2018/01/17 02:24:41
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ある日の昼前。
私、紫苑は部屋で横になっていた。
朝ご飯は食べていない。
ヒビの入った空の茶碗だけが机の上に転がっている。

「……」

半ば夢の世界へ身を委ねようとしていると、突然、

「姉さん、ご飯食べに行くわよ!」

机をバンッと叩いて女苑が言う。
体を起こして女苑を見る。

「びっくりした……。どうしたの、急に……」

「だ!か!ら! ご飯食べに行くって言ったでしょ!」

「……いってらっしゃい」

私は再び横になった。
ゆさゆさゆさ。
女苑が体を揺すってきた。

「何言ってるの、一緒に行くのよ!」

「えぇ…?私はいいよ……」

「良いから早く!」

無理矢理起こされ、手を引かれて連れて行かれる。
ぐぅ、と鳴るのはお腹の虫。
……そういえば、お腹空いたなぁ。


* * *


「着いた着いた。ここよ」

女苑が立ち止まる。
ここは人里の中。
女苑の向いてる方を見ると、こじんまりとした料理屋があった。

「ここがね、美味しいって聞いたのよ」

「……女苑、1人でもっと良いお店へ行けばいいのに」

女苑の煌びやかな服装とはそぐわない、小さなお店。
普段もっと豪華なお店とか行ってそうなのに。

「姉さんまだ寝ぼけてんの。姉さんと一緒じゃなきゃ美味しくないわ」

「……」

手を引かれて一緒に店の中へ入る。

「いらっしゃいませ。何名様ですか」

受付の若い女性の店員が尋ねる。

「2人よ」

こちらへどうぞ、と店員が先導する。
私と女苑は後を付いて行く。
案内された窓際の席に私達は向かい合って座った。

「どう?こういう雰囲気のも悪くないと思わない?」

私はきょろきょろと周りを見渡す。
建物自体はやや古そうだが、掃除や手入れはきっちり行き届いているように見える。

「……うん」

「ほら、メニューよ。私がお金出すから好きなの選びなさい」

女苑がメニューをぽんと投げて渡す。
私は開いて一通り目を通した。

「んー……じゃあ……この銀シャリのおにぎりで」

「おばか。もっと良いの選びなさいよ」

「うー……」


* * *


「お待たせしました。こちら焼き鮭定食です」

姉さんが20分ほど悩んで選んだ定食。
もっと良いの頼めばいいのに。
……ま、私も同じの頼んじゃったけど。

「おおお……」

姉さんは目をキラキラさせて運ばれてきた定食を見つめる。
炊きたてで湯気が立ち上る、キラキラと輝く白米。
焼きたての鮭から出る香ばしい匂いは食欲をそそる。
他にもお味噌汁や、漬け物と牛蒡の金平の小鉢と、シンプルながら申し分無い品目。
姉さんほど大袈裟じゃあないけど、私も期待と食欲が高まる。

「ほら、食べよ。冷めちゃうわ」

「うん……いただきます」

「いただきます」

手を合わせ、箸を持って手を付ける。
まずは味噌汁から一口。

「ん、美味し」

白味噌の味噌汁。具はワカメのみだけどしっかり出汁も効いててとても飲みやすい。
続いてご飯に箸を伸ばす。

「……料理屋のご飯って、何で自分で炊くよりも美味しいのかしらねぇ……」

「何でだろうね……」

周りの小鉢も一通り味を堪能したところで、メインの鮭へと手を付ける。
箸を入れると身がほろりと取れた。
それでいて身自体はしっかりとしていて、塩加減もちょうど良い。

「どう?姉さん」

途中で箸を止めて尋ねる。

「ん……美味しい」

姉さんが微笑みながら答える。姉さんの箸は止まってなかった。
それは良かった、と小さく呟き、私も食事を堪能した。


* * *


「ふぅ……ご馳走様」

「ご馳走様でした」

全て食べ切った私達は少しの間一服していた。

「どうよ?来て良かったでしょ?」

女苑がにこにことしながら聞いてくる。

「うん……。美味しいご飯、久々に食べた」

「何よ、私の作るご飯は美味しくないって言うの?」

女苑がムッとした顔になる。

「ううん……女苑のご飯もとても美味しいよ」

当たり前よ、とぼやきながら女苑がぷいっと窓の方へ顔を向ける。

「女苑」

「何、姉さん」

顔は窓へ向けたまま目だけで私の方を見る。

「……ありがとう」

「……ん。良いわよ、別に」

再び目は窓の方へ。
ご飯の味と女苑の優しさを噛み締め、私達はお店を後にした。


* * *


「美味しかったわ、ご馳走様」

「ご馳走様」

お代を支払って私達はお店を後にした。

「ふーっ、たまにはこうして一緒に散歩するのも良いわねー」

腹ごなしがてら、私と姉さんは雑談に花を咲かせながら外をぶらついていた。

「そうそう。でさ、こないだ博麗の巫女がー……って、あれ、姉さん?」

横を歩いてたはずの姉さんの姿が見えない。
ふと後ろを振り返ると、

「…………」

甘味処の前でじっと立ち止まってる姉さんがいた。

「まったく……。姉さん、何が食べたい?私が奢るわ」

「ん。えっとね……」

世話の焼ける姉さん。
ま、たまにはこういうのも悪くないわ。
女苑ちゃんにご飯奢られたい
ずんだ餅
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コメント



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1.90名前が無い程度の能力削除
楽しめました
2.80名前が無い程度の能力削除
ほのぼの
3.90奇声を発する程度の能力削除
良いね
5.90名前が無い程度の能力削除
私はこの残念お姉ちゃんな紫苑ちゃんの世話を焼きたい
6.90非現実世界に棲む者削除
女苑の優しさが染みる…。素晴らしかったです。
9.100南条削除
面白かったです
紫苑にはおいしいものを食べさせたくなります
10.70名前が図書程度の能力削除
二人の関係性が垣間見える日常の一場面でした。
12.90大豆まめ削除
あまり見ない気がする、普通に仲のいい依神姉妹。ほっこり。
もっとたくさんお姉ちゃんに食べさせたい……。
13.80もなじろう削除
最後の紫苑ちゃんがかわいい