Coolier - 新生・東方創想話

心を溶かす姫君

2012/07/08 22:34:22
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日は落ちかけ、夕闇に染まりつつある幻想郷の空の下。
薄暗いオレンジ色の光に照らされた人里は、どこか哀愁を感じさせる雰囲気をその景色の中に漂わせる。
後は夜を待つだけと言わんばかりに、路上からは人の姿も消え始めていた。
それと同じくして、寺子屋での授業も終わり、する事のなくなった上白沢慧音は自室で一人、本を読んで過ごしていた。

「………………」

誰もいない、一人だけの時間。しかしそんな静寂の時は、唐突に終わりを告げる事となる。


「────ごめんくださーい!」


遠く聞こえたその声に、慧音は本を閉じて、俯けていた顔を上げた。
こんな時間に来客とは珍しい。
そう思いながら、慧音は玄関へと向かって足を運んだ。

「はーい、今行きまーす」

トントンと軽い音を響かせて、足早に廊下を進む。
こんな時間にここを訪れるのは妹紅くらいのものだが、妹紅ならもっと砕けた呼びかけをするし、こうしてわざわざ自分が来るのを待ったりはしない。
一体誰が、と慧音は思考を巡らせながら、そろそろと玄関口に下りる。そして、硝子越しに黒い影が映る中、ゆっくりと戸を開けた。

「……………………」

直後、慧音は静かに固まった。
目の前に、それはそれは珍しい人物が立っていたからだ。


「こんばんは、慧音」


そう言って彼女────蓬莱山輝夜は、慧音に向かってはにかんだ笑顔を見せた。


          *


永遠亭では先日、密かに小さなパーティーが行われた。
輝夜が考案したそのパーティーには、ひょんな事から慧音と、そして妹紅の二人だけがひっそりと参加していた。
しかしそこで妹紅が見ていない間に、ちょっとしたハプニングが起きた。
その結果として、慧音と輝夜は、お互い親密と呼べるほどの仲にまで発展したのだが────


「────それで、一体どうしたんだ?」


ややあってから、慧音はそう訊ねた。
あれから輝夜を玄関から客間まで案内した慧音は、とりあえず彼女をテーブルの前に座らせて一旦席を外すと、今度はお茶菓子と二人分のお茶を載せたお盆を持って、再びこの場に戻って来ていた。
そうして自分も輝夜の前に座りながら、ようやく話を切り出したのだった。

「……あのね、永琳に聞いたら、慧音がここに住んでるって教えてくれたの。だから、今度は私の方から遊びに来ちゃった」

少しだけ俯き気味に、輝夜は答えた。

「あぁ、なんだそうだったのか。輝夜の方からこっちに来るなんてまったく予想していなかったからな……さすがに驚いたよ」

輝夜の答えに、慧音はほっと安堵の息をついた。
そもそも、輝夜が永遠亭を出るという事自体が、本来珍しい事なのだ。
もしかしたらあの夜の事で、何か良からぬ知らせを持って来たのではないかと、慧音は内心ひやひやしていた。
しかし蓋を開けてみれば、単に遊びに来たと言うだけなのだ。何も心配することなどない。
少なくとも、慧音はこの時まで、そう思っていた。


「…………だって、我慢出来なかったんだもん…………」


不穏な輝夜の声が聞こえたのは、その時だった。

「え?」

それがうまく聞き取れず、慧音は呆けた声を上げる。
構わず輝夜は、すっ、と立ちあがると、向かい側に座る慧音へと近づき始めた。

「……か、輝夜?」

何だか嫌な予感がして、慧音は輝夜に声をかける。
輝夜は、正座する慧音の傍らまで来ると、そこで足を止めた。
そして、


「慧音!」


慧音に向かって勢いよく、輝夜は飛びついた。

「うわ!?」

不意の衝撃に、慧音は為す術もなく押し倒される。

「な、なな……なぁ……!?」

あまりに突然の出来事に軽いパニック状態になりながらも、慧音は残った冷静さで今の状況を確認する。
お腹の上に、輝夜が乗っかっていた。両手を顔の横に突いて、何故か少し潤んだ瞳で自分の事を見下ろしている。
まったく、訳が分からなかった。

「慧音……私変なの。慧音の事を考えるとね、胸が苦しくなるの。でも、痛いとかそういうんじゃなくて、胸の奥がキュッとなって、とっても切ないの」
「え……」

至近距離で慧音の顔を見つめながら、独白の様に輝夜が言った。
思わず慧音は、そんな彼女の顔を見つめ返してしまう。

「……っ」

ドクンと、胸の鼓動が高鳴った。
幼さを含んだ輝夜の端整な顔立ちは、同性の慧音から見ても可愛らしく、また美しかった。
分かってはいたが、さすがにこの距離でそれを知覚してしまうと、耐え難いほどの気恥ずかしさが慧音を襲う。

「……私、きっと慧音の事が好きなんだと思う。あの夜、慧音と二人で話をして……それで慧音の事、いつの間にか好きになって…………」
「…………」
「ねぇ……慧音は、私の事どう思ってる?」
「…………!」

その問いに、慧音の心が激しく揺れ動いた。

「……分かってる。慧音は、妹紅の事が好きなんだよね?」
「…………っ」
「いいの……それは分かってる。でも……それでも……妹紅を好きなままでいいから……慧音には、私の事も見て欲しいの……」
「……!」

輝夜が言って、そっと、輝夜の両手が慧音の顔に添えられた。
そして輝夜の、綺麗で明るい無垢な瞳が、慧音の顔を覗き込んでくる。

「あ……あぁ……」

その瞳に見つめられるだけで、慧音の理性は緩やかに溶かされていく。
逃げられない。
本能的に、慧音はそう直感した。

「…………」

輝夜の顔が、徐々に慧音の顔に近づいてくる。
視線を逸らそうとしても、輝夜に顔を掴まれているためそれも出来ない。
最早慧音に、逃れる術はなかった。
そして、ついに輝夜の唇が、慧音の顔に触れようとして────


「……れろっ」


唇から覗いた輝夜の舌が、慧音の頬を舐めた。

「ひゃあ!?」

慧音は、自分でも驚くくらいに可愛い叫びを上げていた。

「な……えぇ……?」

輝夜の行為を図りかねて、慧音は吐息のような疑問の声を漏らす。

「ふむ……これは嘘を……ううん、とても戸惑ってる味ね」
「……?」

輝夜の呟きに、慧音は無言で視線を送る。
「どうして?」と言わんばかりの慧音の瞳に、輝夜は笑って言った。

「あれ、もしかして唇にした方が良かった?」
「…………っ!」
「んーでもね、やっぱりキスはどうかなーって。抜け駆けしてるみたいで、妹紅に悪いしね」

あっけらかんと、輝夜は言う。

「ほっぺとか、後はそうね……耳とかならセーフだよね」
「か、輝夜……?」

独り言のように言う輝夜に、慧音は再び不穏な気配を感じた。

「……はむっ」
「うひゃああああ!?」

輝夜が今度は、慧音の耳を甘噛みした。それから耳の奥に、舌を這わせる。

「れろー……」
「んああああああああああ!?」

たまらず、慧音は叫んだ。
ある意味キス以上に執拗な輝夜の責めに、慧音は体を震わせて耐えるしかなかった。
と、その時。


「何やってるのさ二人ともー!?」


突然、襖ががらりと開いたかと思うと、そこに藤原妹紅が立っていた。

「あ、妹紅」
「……ふぇ?」

妹紅と聞いて、慧音の瞳に僅かに理性が戻る。
「助かった」と、半ば放心した頭の中で、慧音は思った。

「ちょうど良かった。妹紅も一緒にやらない? ……舐め舐め遊び」
「「……え?」」

慧音と妹紅が、同時に輝夜を見る。

「慧音も喜んでくれてるみたいだから、今ならやりたい放題だよ?」
「…………!?」

その言葉に、慧音は耳を疑った。
「違う、決して喜んでる訳じゃない」と言いたかったが、輝夜の瞳に見つめられると、慧音は何も言えなくなってしまう。
今の慧音は、完全に輝夜に心を掌握されてしまっていた。

「………………」

顎に手を当て、妹紅が考えるそぶりをする。
こうなったら、妹紅だけが頼みの綱だった。
妹紅が止めてさえくれれば、自分はこの状況から抜け出せる。
そう思って、希望に縋る目で、慧音は妹紅の事を見た。


「…………輝夜にばっかり良い思いはさせない……私もやる!」


しかし、そんな慧音の望みは、すぐに叶わぬ夢と消えた。


二人のとても楽しそうな笑顔が、動けない慧音の視界に映り込んで─────


…………………………


その後、すっかり骨抜きになってしまった慧音を介抱するため、輝夜と妹紅は夜遅くまで寺子屋に残る事になったのだった。
(∪^ω^)わんわんお!(挨拶)


抑えきれない欲望が、ついに解き放たれてしまいました。
三人の〇〇〇な日常を想像するだけで……ふるえるぞハート! 燃え尽きるほどヒート!
俺の※以下自主規制


────────


一応前々回のお話の続きとして考えたものですが、そちらを見てなくても問題ない仕様になっています。

それではっノシ



※今作から、感謝と補足の意を込めて、出来るだけコメ返していこうと思います。


>>1さん
ぺろぺろするシーンを書いてる時にふと頭に思い浮かんだので、たまにはいいかなと、遊び心のつもりで入れてしまいました。


>>11さん
的確な返しありがとうございますw そしてごめんなさい。タイトルは深く考えずに思いついものを使ったので、内容に反映するつもりとかはまったく考えていませんでした。コメントを見て自分の配慮の薄さを痛感しました…。


>>13さん
そうなんです! なかなかこの三人がメインのお話ってないんですよね~…。同じ趣向が好きな方に満足していただけたようで、嬉しい限りです。
ヤクミンFBB
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コメント



0.440簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
ジョジョネタがww
11.80名前が無い程度の能力削除
こいつらには…やるといったらやる…「スゴ味があるッ!」 …でもタイトルの元ネタの方も入れて頂きたかった…。
13.100名前が無い程度の能力削除
てるけねもこ好きの俺得…!
三人でいちゃいちゃきゃっきゃってすごく良いと思います。
てるけね自体なかなか見ないので、本当にごちそうさまでした。