Coolier - 新生・東方創想話

メイドな貴女を見てみたい

2010/09/27 21:50:18
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言わずと知れたことだが、レミリア・スカーレットはメイドフェチである。

自分の従者に特注メイド服を着せるのは当たり前。
時に適当な理由を付けて霊夢やアリスをメイドとして雇い、
時に本を盗んで追いかけられてる魔理沙を匿ってはメイド服を着せ、
時に霊夢のメイド服写真の一枚を交換条件に八雲 紫とその従者にメイド服を着せ、
時に姉同士という縁で知り合ったさとりに強引に迫ってメイド服を着せ、
時にその写真を交換でこいしとペット達にメイド服を着せ、
etc.etc.
レミリア・スカーレットは幻想郷のほぼ全ての少女のメイド姿をコンプリートしていた。
だが、そんなレミリアにもまだメイド服を着せたことがない相手がいた。
自分の妹、フランドール・スカーレットである。



言わずと知れたことだが、フランドール・スカーレットはレミリアストーカーである。

本人に曰く、お姉様が生まれた時からお姉様は私の物、らしい。
当たり前のことだが、レミリアが生まれたときフランドールは影も形もない。
そんなフランドールの宝物に、レミリアの様々な姿をまとめた写真集がある。
時に姉の後ろをつけ回して撮影し、
時に寝室にカメラを仕込んでは撮影し、
時に配下に命じて撮影させ、
etc.etc.
今やフランドールは、レミリアのほぼ全ての姿をコンプリートしていた。
そんなフランドールにも見たことがないレミリアの姿があった。
メイド姿のレミリアである。



「どうやってフランにメイド服を着せようか」
「どうやったらお姉様にメイドの姿をしてもらえるかしら」

それぞれの部屋で、申し合わせた訳でもないのに、同時につぶやく二人。
ある意味お似合いの姉妹であった。





図書館の隅っこ、パチュリー・ノーレッジの私室。

「と言うわけでどうしたらいいかしら」
「ロイヤルフレア」

妹にメイド服を着せたい、という相談にきたレミリアに、パチュリーはスペルカードを放つ。

「なにするのよ!」
「バカなこと言うからよ」

レミリアの抗議を、冷たくあしらうパチュリー。
しかしその後でレミリアに聞こえない声で、私がこんな服着てあげてるのに、と呟く。
今のパチュリーはいつものローブ姿ではない。
メイド服、それもちょっとでも動けばドロチラのマイクロミニに、
腹部を引っ込める皮のコルセット、これでもかと胸を強調したジャパニーズスタイルである。
効果音をつけると『ぼんっ!きゅっ!ぼんっ!』
あまりの恥ずかしさに、誰も入ってこれないよう部屋全体に二重の結界を張っているぐらいだ。
なんのためにそんな恥ずかしい格好をしているかと言えば無論レミリアの気を引くためである。
だが、出てきた言葉は自分の妹にメイド服を着せたい。
ロイヤルフレアは実に寛大な処置といえるだろう。

「いや、だって見てみたいのよ。フランのメイド姿を」

煤を払いながら胸を張るレミリア。

「はぁ・・・・・・しょうがないわね」

普通ならもう一発スペルカードを放っても良い場面だが、パチュリーは深いため息をついて作戦を立て始めた。

言わずと知れたことだが、パチュリー・ノーレッジはレミリア・スカーレットに恋をしていた。







「う~ん」

同じ頃地下室では、フランドールが頭を悩ませていた。
なにせ紅魔館の主である姉にメイド服を着せようと言うのだ。
難しいことこの上ないように思える。


こんこん

ドアをたたく音がした。

「誰?」
「私です。紅 美鈴です」
「入っていいよ」

フランドールの声に応じて部屋に入ってきたのは紅魔館の門番である紅 美鈴。
ちなみに彼女も今はメイド姿である。
美鈴は門の前に立っているときにはいつもの格好を認められているが、屋敷内ではメイド服の着用を義務づけられていた。
しかしそのデザインはメイド長やその他のメイドとは異なり、ロングスカートに控えめなフリルが入ったビィクトリアンスタイルである。
彼女はフランドールの前まで来ると片膝をつき頭を垂れた。

「妹様、本日は策を献上いたしたく参りました」
「策?」
「はい、この策が成功すればお嬢様のメイド姿が見られるだけでなく、妹様への好感度も上昇するでしょう」
「ホント!」
「お任せください」

目を輝かせ、嬉しそうに声を上げるフランドール。
その声に満足そうに頷きながら美鈴は説明を始めた。



「ふむふむ、なるほど」

同刻、図書館の片隅
小悪魔は魔導書に耳を当てていた。
魔導書からは地下室に仕掛けた盗聴機を介して、フランドールと美鈴の様子が鮮明に聞こえていた。
その内容を慣れた手つきでメモ帳に纏めてゆく。

「ふふふ、さすがは美鈴さん、油断なりません」

小悪魔は小声で呟きながら、怪しい笑顔を浮かべる。

言わずと知れたことだが、小悪魔は特A級工作員である。

フランドールや魔界神の依頼を受けてレミリアや人形遣いの部屋に色々仕掛けたりしているが、その本当の姿はパチュリーの使い魔であった。
彼女は黒を基調としたジャケットにロングのタイトスカートという、メイドというよりは執事に近い格好を常時していた。
メイド服に袖を通したのはパチュリーに請われてレミリアの前で着替えた際の一度きり。
この姿はあくまでパチュリーの従者であるという自負と誇りの具現なのだ。

そんな小悪魔がなぜ地下室の盗聴などしているのかといえば、単純に敵情監視だ。
小悪魔はパチュリーに忠誠を誓っている。
故にその行動原理はパチュリーの幸福追求であり恋愛成就である。
まあ、要するにパチュリーをレミリアとくっつけることだ。
となると邪魔になるのがフランドールと咲夜。
しかし咲夜は現状瀟洒なメイドに徹しているので、目下敵はフランドール一派であった。
そのため小悪魔は敵情に探りを入れることに余念がない。

「さてさて、こちらはこちらで策に乗らせていただきますか」

小悪魔はイスから立ち上がると、配下の司書メイド達に指示を下す。
全ては主のため。
パチュリーがウエディングドレスに袖を通すその日まで小悪魔の戦いは続く。



言わずと知れたことだが、十六夜 咲夜はパーフェクトメイドである。

なんせ幻想郷一のメイドフェチ、レミリア・スカーレットが丹誠込めて育て上げた、
まさに理想のメイド像の具現なのだ。
故に彼女は睡眠中ですらパーフェクトである。
主に関わることなら、針が落ちた気配ですら逃さない。

「お嬢様の衣装室ね」

紅魔館が寝静まる日差しが強い昼下がり
直線距離にして500m離れた衣装室の異変を感じた咲夜は、勢いよく部屋を飛び出した。



「ずいぶん量がありますね」

レミリアの衣装室に忍び込んだ美鈴は、その服の多さにうんざりしていた。
なぜにこんなに同じ服があるのか、と。
美鈴はあらかじめ部屋の大きさから衣類の量を想定していたが、咲夜の収納力は予想を遙かに上回っていた。

「お嬢様が起きてる前に終わらせないと」
「いいえ、もう終わりよ美鈴」

美鈴は後ろから飛んできたナイフをとっさにしゃがんでかわす。
ナイフは数ある衣装をかいくぐって壁に突き刺さった。

「咲夜さん」

振り向いて相手を確認するまでもない。
この紅魔館でここまで瀟洒な投擲を行えるメイドは一人しかいない。

「どういうつもりかしら。
 妹様に持っていくというのなら一着ぐらい見逃すけれど、さすがに全部は見逃せないわ」
「いや~、ところが全部持っていく必要があるんですよ」

構えもとらずにゆっくりと振り向く美鈴。

言わずと知れた話だが、紅 美鈴は門番長である。

防衛戦や限定戦ならいざ知らず、素の戦闘力でメイド長に勝てる道理はない。
なんせ相手は時間と空間を操る、メイドでもなければどこぞの組織のボスをやっていてもおかしくないような化け物である。
気を使う程度で敵うわけがない。

さてどうするか、美鈴は笑みを浮かべながら次の手を思案していた。








突然衣装室が爆発した。
炎に包まれる部屋、焼き払われる衣類、火達磨になる美鈴。

「はぁ・・・・・・」

時を止め、傷一つ無く廊下に出た咲夜は、ため息を付いた後、消火活動の指揮を取り始めた。



「要はお嬢様の服を全て処分してしまえばいいんです。美鈴さんも思いきりが足りませんね」

図書館の片隅で小悪魔が一人ごちる。
説明するまでもないが、衣装室の爆発は小悪魔の仕業である。
美鈴の策を聞いていた彼女は、あらかじめ遠隔爆破術式を衣装室に仕掛けておいたのだ。

「美鈴さんさえ脱落すれば、妹様は身動きできない」

小悪魔は美鈴がこれぐらいでどうにかなるなんて思っていない。
だが明日の昼まで動きを封じれば今回は良かった。
ちなみに咲夜に傷を負わせられるとは思っていない。

「それでは、ゆっくり休んでくださいね。美鈴さん」

小悪魔はそう言うと不敵に笑った。



次の日
フランドールがタンスを開けると、中が全てメイド服になっていた。
彼女は瞬時に察した。これは姉の仕業だと。そしてすぐにとるべき手を思いつく。
フランドールはレミリアの最大の理解者である。
美鈴が用意した策から外れるが、フランドールは自分の直感を優先した。




「小悪魔、今日はこれを着るわ」

パチュリーが取り出したのは、布の面積より肌の面積が多そうなメイド服モドキだった。

「やめてくださいパチュリー様。それはもう痴女です」
「でも、こうでもしないとレミィが取られちゃう!」

涙目になっている主に、内心ため息をつく小悪魔
いったいあれのどこが良いのだろうと本気で考えたこともあったが、
どうこういう気は昔、何処がよいのかとストレートに聞いて、
レミィはレミィだから良いの、と答えられた時に失せていた。

「そんなものよりこれを着てください」

一着のメイド服を手渡す。

「これって普通の・・・・・・」
「はい、これを着て私の言うとおりにしてください」

昨日から仕込んでいた作戦を説明する。無論陰の部分は隠して。
本人にとってははなはだ不本意であろうが、小悪魔はフランドールに次いでレミリア・スカーレットを理解していた。



レミリアの寝室

「・・・・・・以上で報告を終わります」

咲夜はレミリアに昼間の衣装室での顛末を説明していた。

「なるほどね。で、美鈴は?」
「医務室からは午後には復帰できると」
「あいかわらず頑丈ね」

レミリアには美鈴が服を持ち出そうとしていた事は伝えていない。
ただ居合わせたとだけ伝えていた。
主に余計な心配をかけないのもメイドの嗜みである。

「犯人はわからないの?」
「申し訳ありません」

とは言うものの咲夜は犯人が小悪魔であることを確信している。
だがボロを出すほどバカでもあるまいと、無駄な追求は控えていた。

「それで、私が着るものは?」
「大急ぎで仕立てさせています」

レミリアの今寝間着しか身につけていない。
こんな姿で出歩くわけにもいかないので、今日はずっと寝たきりか。
レミリアがそんな事を考えていると、コンコンと扉が叩かれた。

「入りなさい」

レミリアの寝室の入ることが許されているのはメイド長の咲夜、後パチュリーとフランドールぐらいである。
しかし入ってきたのは一人のメイド、紅魔館フォーマルスタイルのメイド服に身を包んだ少女だった。
出ていけ、と口を開きかけたレミリアだったが、顔を確認すると大きく目を見開く。
そこに立っていたのは紛れもなく夢にまで見たメイド姿のフランドールだったのだ。
手にはもう一着同じメイド服を持っている。

「お嬢様、お召し物をお持ちしました」

彼女は持っていたメイド服をレミリアに差し出した。

あまり知られていないことだが、レミリアはメイドフェチである。
けしてメイド服フェチではない。周りが勝手に勘違いしているだけである。
故にその格好だけではなく、口調や立ち振る舞い、仕事ぶりにも拘りを持っていた。
そのレミリアの目から見ても今のフランドールの立ち振る舞いは完璧であった。若干贔屓が含まれているが。
差し出された普通のメイド服が玉寿の一品に見えたほどである。
故にレミリアは何も言わずにそれを受け取ると、袖に手を通した。



フランドールは必死に欲望を抑えていた。
最愛の姉がメイド服を着ている。しかも生着替えである。布が擦れる音が欲情を誘う。
このまま襲ってしまおうか、と考えたがそれをしてしまっては今までの積み上げてきた苦労が水の泡。
後に待ち受けるのは、永遠に姉から疎んじられて生活するという生き地獄だ。
フランドールは歯を食いしばって沸き上がる衝動を我慢していた。




コンコンと扉が叩かれる。

次に入ってきたのは、普通のメイド服を纏ったパチュリーだった。

「おおおお嬢様、おっお茶をお持ちしました」

そういってテーブルの上にカップとポットを置く。

レミリアはその姿に見とれた。

いままでパチュリーの様々なメイド姿を見てきたが、今一つ魂に響かなかった。
ところが今のパチュリーはどうだろう。
顔を赤らめてうつむいた仕草、なれない言葉遣い、完璧とはほど遠い。
だが必死にメイドをこなそうとするその姿は、それはそれで一つの形ではないか、レミリアはそう思った。



レミリアに聞こえないようにフランドールが舌打ちする。
パチュリーさえ出てこなければ、今日の姉は自分が独り占めできるはずだった。
姉はメイド服姿で出歩こうなどと思わなかっただろうし、なにより自分のメイド姿にメロメロだ。
一日完璧なメイドをこなせば、あるいは咲夜を押し退けて姉の側に置いてもらえるかもしれない。
そんな目論見というより妄想はパチュリーの登場で根底から覆された。
服をきゅっとして大恥かかせてやろうか。フランドールは悪意ある視線をパチュリーに向けた。

咲夜は舌打ちこそしなかったが、内心怒りで煮えくり返っていた。
彼女にとってレミリアのメイドであること、それはアイデンティティであり、生き甲斐であり、尊厳である。
彼女はレミリアの側で誰かがメイド姿になり、あまつさえお世話をすることが我慢なら無かった。
それは相手がフランドールであれ、パチュリーであれ変わらない。
レミリアの前でなければナイフを抜いていたところだ。
一種の独占欲にも似た忠誠心、それが十六夜 咲夜の奥に潜む心の内である。

パチュリーも二人からの視線に気づき睨み返す。
敵意と悪意と殺意が渦を巻いて轟く中、レミリアだけが楽しそうにお茶を始めていた。



紅魔館の医務室

「いや~美鈴さんが動けなければ、妹様は何もできないと思ってたんですけど」

小悪魔が小さな魔導書を見ながら暢気な声を上げる。
魔導書には寝室の様子が克明に映し出されていた。
小悪魔が得ていた情報では、美鈴の策はレミリアの服をすべて隠し、
フランドールがメイド風衣装を持っていくだけの物だった。
しかもフランドールが持っていく衣装は朝、美鈴が用意することになっていた。
夜の内に美鈴を止めてしまえば、後はパチュリーの独壇場になるはずだったのだ。

「それは妹様を侮っていますよ。私などただの補佐役にすぎません」

ベットに寝転がった美鈴が笑いながら応じる。
とは言いつつも、美鈴もまさかフランドールがあそこまでやるとは思ってなかった。
さすがは妹様、と心の中で感嘆の声を上げる。

小悪魔は美鈴の見舞いに来ていた。自分が怪我させた相手に見舞いとはふてぶてしいにもほどがあるが、
二人は影で何度も争い合った仲である。いつの間にやらお互いをライバルと思う関係になっていた。

「次は勝たせてもらいますよ。お嬢様は妹様のモノです」
「それはこっちの台詞ですよ。全てはパチュリー様のため、お嬢様は頂きます」

互いの決意を視線に乗せてぶつけ合う。そしてどちらからでもなくにやりと笑った。
その様子は主たちの様子と比べれば、いくらかまともであった。









「うふふ、楽しいわね~この状況。」

様々な想いが渦巻く中、館の主が茶を啜る。
言わずと知れたことだが、紅魔館の当主は全てを知って楽しんでいた。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。

プロット段階では普通にメイド服を着せ合うレミフラな話だったんです。
ところが書いているうちにどんどん歪んできて、迷走と暴走の果てにこうなりました。

誤字脱字等あれば教えていただけると嬉しいです。
それではお粗末様でした。
clo0001
http://twitter.com/clo0001
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コメント



0.2690簡易評価
2.80名前が無い程度の能力削除
とりあえず作者がメイドフェチなのはわかった
3.100名前が無い程度の能力削除
相変わらずお嬢様は人が悪い……吸血鬼だけど
4.100名前が無い程度の能力削除
えっと……神?あなたが神ですか?
5.80名無し削除
相変わらずプレイボーイだなこのお嬢様は
11.100名前が無い程度の能力削除
つまり……どういうことだってばよ?、なーんて。
いやはや全てはおぜうさまの掌の上のコロコロユ-ビィでしたか。見事な構成ですた。
12.90名前が無い程度の能力削除
このおぜう……いや、お嬢様と呼ぶべきか……がカリスマすぎるww
18.100名前が無い程度の能力削除
この愛されお嬢様…
19.90名前が無い程度の能力削除
なんというメイド神
21.100名前が無い程度の能力削除
メイド服フェチじゃなく、メイドフェチ。
このお嬢様と私は親友になれる気がしました。
22.100名前が無い程度の能力削除
あなたが神か…
39.100奇声を発する程度の能力削除
流石お嬢様ww
40.100名前が無い程度の能力削除
この美鈴と小悪魔いいなあw
43.60名前が無い程度の能力削除
このお嬢様最悪だw
53.90名前が無い程度の能力削除
ある紅魔館の完成系ですね。
54.90名前が無い程度の能力削除
突っ込みどころが多すぎるww
65.80名前が無い程度の能力削除
皆狂ってやがる…w