Coolier - 新生・東方創想話

ある人間の物語

2009/12/14 05:10:35
最終更新
サイズ
7.82KB
ページ数
1
閲覧数
866
評価数
3/15
POINT
490
Rate
6.44

分類タグ

こんにちは

のっけからで申し訳ないのだけれど、この手紙は一人でいる時に読んでほしいの。
もしあなたがいま、周りに人がいる状態でこれを読んでいるのなら、とりあえず閉じて欲しい。

てか、読むな。
部屋で、一人で、読むこと、いいわね?
こちらとしても都合があるのよ……え? お前は誰だって?
それはすぐにでも名乗るわ、でもとりあえずこの手紙を読む前に指示に従って欲しい。
でなければ、あなたの身体の保障はできない……
あ、手紙自体を読まなかったらそれはそれで保障しないから、必ず読んでね。

がいい……あら? 外囲、害意、あ、出た出た。
まったく、自動書記はこれが不便なのよねえ……あぁ、ごめんなさい。
恥ずかしいところを見せたわね。 書き直すのもめんどくさいからこのまま書くことにするわ。
自動書記ってのは精霊魔法の一種で……って、言ってもわからないかしらね。

みなかったことにして頂戴。

ようするに、害意……OKね、害意はないのよ。 だから安心して読んで欲しい。
もう一回書いておくわよ?
この手紙は一人で読むこと、そして必ず読むこと。
以上二つを守らない場合、私としてはあなたに何が起きても保障しないわ。

みてもわかる通り、私は魔法使いよ。
まぁそんなことはこの際どうでもいいわ。
みんな人外からの手紙ってだけで読むのをやめるから、こっちとしても大変なのよね。
それじゃあ間違ってこの下を読まないように、少し間をあけておくから、準備が出来たら読んで頂戴。




─────────




お喋りはこれくらいに、いまここを読んでいるということは一人で、部屋で読んでいてくれているのね。
まずはお礼を言うわ、ありがとう。

わたしの名前はパチュリー・ノーレッジ。れっきとした魔法使いよ
ちなみにこの手紙はあなたのもとに、自動的に送られているから私も何処の誰に送られているかは知らない。
今回あなたに手紙を送ったのは他でもない、ある理由があるわ。
そうね、順をおって説明していきましょう。
私はある、友人の館に住んでいる。
その友人ももちろん人間じゃないわ、人間の言葉でいうところの吸血鬼ね。
吸血鬼を知らない人はいるかしら?
んー……でも、ランダムだし……
知らない人のために言っておくと、吸血鬼はね、妖怪の一種なの。

つまり、血を吸うのよ、人間の。
その友人は、人間と一緒に日々楽しくやっているわ。
もちろん、あなたのような一般人とは違う、特殊な人間なんだけどね。
友人には妹がいて、彼女も吸血鬼なの。
友人は少食だし、妹のほうは色々あって、二人ともそれほど人間を食べるほうじゃないわ。
でも、そこは吸血鬼ね。
一定の間隔でその周期はくるのだけれど……
血が吸いたくなるのよ、無性に。
こればかりは種族としての本能だから、二人とも抗いかねるわ。
でも、二人は人間を襲わない。
何故だかわかる?

たとえば、あなたがその友人と、懇意だったとしましょう。
あなたは人間、友人は吸血鬼、でも日々仲睦まじくやっていた。
ある日、あなたは友人が人間を襲っているところを発見する。
むごたらしく引き裂かれた肉に牙を立て、顔を、服を真っ赤に染める。
生物として本能が命ずるまま、血を、精気を、その歯から吸い取る。
その姿を見て、あなたはどう思うかしら。
「次は自分かもしれない」
例えそう思わなくとも、自身と同種族が殺され、喰われている所を見たあなた。
それまでと同じ通りに、何もなかったかのように接していけるかしらね。
……ふふ、恐ろしい?
でも駄目よ、読むのをやめちゃ。

といっても、あなたはいま、この手紙を読むのを中断することは叶わない。
何故かって?
私がそうなるように魔法を掛けたから、と言ったらどうする?
この魔法は読んでいるだけで、自動的に発動するわ。
少しでも力のある者なら抵抗することができる、とても弱い魔法。
でもあなた程度の、普通の人間ならなんら問題ない。
読んでいるうちに、足、首、と自由が利かなくなり、最終的に声も出せなくなる。
大丈夫、一時的なものだし、何も殺そうってものじゃないわ。
それにこの手紙は読めるように、手と目は動くはずよ。
目を逸らすことは出来ないけどね。
つまり、最後まで読んで欲しいのよ、あくまでもね。

きっと、あなたはいま、私の目的が何か、とか、そんなことを考えているでしょうね。
それともただただ、恐怖しているだけかしら。
そうね……目的はもう少し後に書くことにしましょう、そのほうが面白いわ。
あなたも私もね。
私は魔法使いという種族だけど、広義に解釈すると私も妖怪。
あなたは妖怪と言われると、どんなものを想像するかしら?
人を襲ったり、食べたり、そんな物の怪を想像する人もいるでしょうね。
まぁ、あながち間違っていはいないけど、それは一部の話ね。
現に友人は人を食べこそすれ襲わないし、私なんかは襲いも食べもしないわ。

既成概念に囚われては駄目よ。
妖怪は人を襲うもの。
これは正しい、それが妖怪か否かの分かれ目と言ってもいい。
でもいまでは、人間がそうあるように妖怪も平和的になったのよ。
ルールができた。
人を襲うにも、それは形式的なもので、実際に取って喰う者は稀。
それが現代の、妖怪というもの。
友人もご多分に漏れず、襲うフリならばよくするわ。
誰かさんに構って欲しいからなんだろうけど。

にしても、友人についてあなたはまだ何も知らないのよね。
それはさすがに可哀想だし、少し話してあげましょうか。
あぁ、こっちの話よ。
で、友人のことだけど、彼女の名前は、レミリア・スカーレット。
前述の通り、吸血鬼よ。
私は普段レミィって呼んでいるんだけど、彼女。
一種のカリスマ性というのかしら、人を惹きつける何かを持っているわ。
彼女の名の元に、主従関係を結んでいる者は多い。
妖精やら妖怪やら人間やら、ほんとそう考えると何でもありね。
中でも、筆頭の従者は彼女……かしら。

咲夜っていうんだけど、あなたと同じ人間よ。
彼女はレミィや私の住む館、紅魔館のメイド長。
完全かつ瀟洒……ふふ、あ、いや、ちょっとね。
あーあ、自動書記だから書いちゃった。
まぁいいか、話しましょう。
ちょっと思い出し笑いしたのよ。
完全で瀟洒なんて言っても、あれだもの。

夜、私は本を読んでいたわ。
もっとも、一日中読んでいるから昼も夜もないのだけれど。
彼女、咲夜は気を利かして私の所に紅茶を淹れてきてくれたわ。
それだけならいつもの、何でもないこと。
ありがとう、私はそう言ったわ。

はい、と。
彼女はそう言ったのだけれど、その後
「それではカップは後で回収いたしますので、ごひゅっくり」
しゃっくりしたのよ、最後に。
普段の澄ましている彼女とのギャップが可笑しくて可笑しくて、今思い出してもあれは楽しかったわ。
気が付いたら彼女はいなかったけどね、きっと時間を止めて逃げたんだと思うわ。
そんな彼女だけど、あながちあなたと関係がないわけじゃないのよ。
実は、こうしてある種無駄な話をしているのにもちゃんと理由があるの。

あなた、途中で気づいたのじゃないかしら。
物事には何でも、理由がある。
原因と言ってもいいわ。
原因があって、結果がある。
因果。
実は、こうして無駄話をしているのは時間を稼いでるというのが大きいわ。
手紙に掛けた、自由を封じる魔法。
それの直ぐ後に、もうひとつ自動で発動する魔法を掛けたの。
先のそれと比べて、少し時間のかかる魔法でね。
その魔法が発動するまでの間、あなたが暇だろうと思ってこうして無駄話をしているの。
まぁ、一応計算はしてあるから、そろそろ発動するころだと思うわ。
それは、あなたの現在位置を知る魔法。

なんでかって?

たった、あなたという人間一人の自由を奪って、それで満足するわけがない。
それはあなたもわかっていたでしょう。
それでも手紙を読むのをやめることはできない。
そう、目の前に断崖絶壁があるのに、あなたは歩くことをやめられない。
安心なさい、私がやさしく受け止めてあげるから。
それが安全なマットの上か、鋭利な針山の上かは、わからないけどね。

のっけに言ったはず、ある理由がある、と。
そう、私はレミィの友人よ。
彼女を慕っている。
彼女の力になりたい。
その為なら、何でもするわ。
先述したとおり、彼女は吸血鬼ゆえ定期的に血が必要よ。
それに加え、無性に、我慢できないくらい血が滾る時期がある。
でも、彼女は自身の都合で人を襲うことはしない。

背に腹は変えられぬ、そう言うでしょ。
そうなの、“彼女”が襲う必要はない、“彼女”が襲わなければ、いい。
彼女はただ、喰らうだけ。
人間を喰う事が目的であって、襲うことは手段なのよ。
紅魔館には、外の者には絶対に知りえない場所がいくつかあるわ。
紅魔館の中ならば、誰にも見つからない。
心置きなく人を、喰う事ができる……

後悔はしていない。
彼女の役に立てるのならば、私は何にだって魂を売るわ。
人間の価値観ではわからないだろうけど、友人というものは、それくらい重いもの。
これはレイムや……マリサも知らない、私が独自にやっていること。
捕らえた獲物は、私が調合し、飲みやすくするわ。
血を凝縮し、少食な彼女でも、特濃の物が飲めるよう、ね。
もちろん、フランの分も。

にべもないようだけど、それが真実。
さぁ、そろそろ彼女があなたのところに着くはずよ。
誰かって?
これから死ぬ人間に、そんなこと言っても無駄だと思うけど、ね。
もう無駄話はおしまいにしましょう。
さぁ、もうおやすみなさいな。
二度と起きることのない、永い眠りだけれど……
各段落の、一文字目を繋げて読むと……
ハリー
http://kakinotanesyottogan.blog66.fc2.com/
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.290簡易評価
3.無評価名前が無い程度の能力削除
立て読みさせる以前に文章が雑過ぎて……SSとして評価出来ません。
5.50名前が無い程度の能力削除
発想は面白かったです。
それ故に惜しい。
7.80名前が無い程度の能力削除
咲夜さんに後ろからナイフを突き立てられた俺が通りますよっと。

面白い構想でした。そんなトリックがあるとは全く気付かなかったですよ。
お話自体も面白かったです。ぱっちぇさんならやりかね……ない、のか? 面倒臭がってやらない気も……。
12.70名前が無い程度の能力削除
わーい、咲夜さんがきtぐはっ

パッチェさんのことだから、今までに同じ文面で
いくつも出してるのかなーとかおもったり
ただまぁ、あんまり縦読み的な要素はSSには要らないかもしれません
手紙の中にこんなメッセージを残す必要性とか